会員企業へ蓄積データを有償提供する場面の契約書。不正競争防止法第2条第7項の限定提供データに該当させるID管理と利用制限を規定。
⚠ 本書式は弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布・公開を禁止する。 本書式は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別・具体的な法律相談に代わるものではない。
限定提供データ提供契約書
第1部: 書式本文
【株式会社○○】(以下「甲」という。)と【株式会社△△】(以下「乙」という。)は、甲が保有するデータの乙への提供に関し、次のとおり契約(以下「本契約」という。)を締結する。
第1条(目的) 本契約は、甲が業として特定の者に提供する電磁的データ(以下「本データ」という。)を乙に有償で提供するにあたり、不正競争防止法第2条第7項に定める限定提供データとしての管理を継続しつつ、甲乙間の権利義務を定めることを目的とする。
第2条(定義) 1 「本データ」とは、甲が【ID・パスワードによるアクセス制御】の下で管理し、会員である乙を含む特定の者に反復して提供する【市場調査データ・センサーデータ等】をいう。 2 「本サービス」とは、乙が本データを閲覧・取得するために甲が提供するシステム又はプラットフォームをいう。
第3条(提供方法及びアクセス管理) 1 甲は、乙に対し、本サービスにログインするためのID及びパスワード(以下「本ID等」という。)を発行し、乙は本ID等により本データにアクセスする。 2 乙は、本ID等を厳重に管理し、【担当者【1】名】を超える範囲での共有及び第三者への貸与を行ってはならない。 3 乙は、本ID等の漏えい又は不正使用の事実を知った場合、直ちに甲に通知し、甲の指示に従うものとする。
第4条(利用目的の制限) 乙は、本データを【自社の内部分析・商品開発】の目的の範囲内でのみ利用するものとし、当該目的の範囲を超えて利用してはならない。
第5条(第三者提供の禁止) 1 乙は、甲の事前の書面による承諾を得ない限り、本データの全部又は一部を第三者に提供、開示、貸与又は再許諾してはならない。 2 乙が前項に違反して本データを第三者に提供した場合、甲は本契約を解除できるものとし、乙は甲に生じた損害を賠償する責任を負う。
第6条(複製及び加工の制限) 乙は、本サービスが提供する機能の範囲を超えて本データを複製し、又は本データを含む二次的著作物その他の成果物を作成する場合、事前に甲の承諾を得るものとする。
第7条(禁止行為) 乙は、次の各号に定める行為を行ってはならない。 (1) 本サービスへの不正アクセス、又はアクセス制御を回避する行為 (2) 本データを大量に抽出するスクレイピング等の行為 (3) 本データの改変、逆解析その他甲の管理体制を損なう行為 (4) 電子計算機を損壊し、又はその使用目的に反する不正な指令を与える行為その他刑法上問題となりうる行為
第8条(利用料) 1 乙は、甲に対し、本データの利用料として【月額○○円/従量課金○○円】を、甲が指定する期日までに支払う。 2 消費税等は別途乙の負担とする。
第9条(データの正確性等) 甲は、本データについて完全性、正確性又は特定目的への適合性を保証するものではなく、本データを利用した乙の判断について責任を負わない。
第10条(契約期間) 本契約の有効期間は、契約締結日から【1】年間とし、期間満了の【1】か月前までにいずれの当事者からも書面による解約の申出がないときは、同一条件でさらに【1】年間更新するものとし、以後も同様とする。
第11条(利用停止及び解除) 甲は、乙が本契約に違反した場合、催告なく本ID等を停止し、本契約を解除することができる。
第12条(契約終了後の措置) 本契約が終了した場合、乙は速やかに本データ及びその複製物を消去又は破棄し、甲の求めに応じて廃棄証明書を提出する。
第13条(秘密保持) 甲及び乙は、本契約の履行を通じて知り得た相手方の秘密情報を、相手方の事前の承諾なく第三者に開示してはならない。
第14条(損害賠償) 乙が本契約に違反し甲に損害を生じさせた場合、乙は甲に対し、当該損害(弁護士費用を含む。)を賠償する責任を負う。
第15条(準拠法及び管轄) 本契約は日本法に準拠し、本契約に関する紛争については【○○地方裁判所】を第一審の専属的合意管轄裁判所とする。
附則 本契約の締結を証するため、本書2通を作成し、甲乙記名押印の上、各1通を保有する。
第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン
A節: データ提供者向け 提供者側では、第5条の第三者提供禁止に加え、第7条に「本データの再現又は類似データベースの構築を目的とした利用」を禁止行為として明記し、第9条の免責範囲を広げる。一言解説として、限定提供データの要件維持のため、契約書上も「特定の者」への提供である旨(会員登録制であること等)を明確にしておくことが望ましい。
B節: データ受領者向け 受領者側では、第9条の無保証条項に対し「甲の故意又は重過失による誤データ提供の場合を除く」旨のただし書きを追加し、第14条の損害賠償額に上限(例:直近【1】年分の利用料相当額)を設ける修正を検討する。一言解説として、無制限の損害賠償リスクを負わないよう、上限設定は受領者側の交渉における重要ポイントとなる。
C節: 会員限定配信型 会員制のプラットフォームでデータを配信する場合、第2条に「本データは甲が運営する会員制サービスの会員に限定して提供するものであり、非会員への提供を行わない」旨を明記し、第3条に会員資格の喪失時にID等を自動停止する条項を追加する。一言解説として、「特定の者」への提供という限定提供データの要件を契約文言上も裏付けるため、会員資格と提供範囲の連動を明確にしておくことが重要である。
第3部: 書き方と法的ポイント解説(解説)
本書式は、自社が業として蓄積したデータを会員企業や取引先に有償で反復提供する場面で使用する。単発かつ無償で情報を共有するにすぎない場合や、著作権法上のデータベースの著作物としての保護が別途問題となる場合には、本書式のみでは対応できない可能性がある点に注意する。
根拠法令は不正競争防止法第2条第7項であり、限定提供データとして保護を受けるためには、①業として特定の者に提供する情報であること、②電磁的方法により相当量蓄積され、及び管理されていること(電磁的管理性)、③技術上又は営業上の情報であることが要件とされている。電磁的管理性を満たすには、ID・パスワード等のアクセス制御によって特定の者に限定提供していることを示す必要があり、第3条・第7条の管理条項はこの要件を裏付ける実務上の根拠となる。
実務でよくある失敗の一つは、契約書上でアクセス制御の仕組みを定めていながら、実際には共有アカウントを複数人で使い回しており、限定提供データとしての管理実態が伴わないケースである。第3条第2項のようにID等の共有範囲を明記し、運用面でも遵守を徹底することが対策となる。二つ目は、無断で第三者に転売・提供された場合の責任関係が契約書上不明確なケースであり、第5条・第14条のように無断提供時の解除権と損害賠償を明記しておくことが必要である。三つ目は、悪意ある大量抽出(スクレイピング)行為への対処が抜け落ちているケースであり、第7条のような不正アクセス禁止条項に加え、不正アクセス禁止法や刑法の電子計算機損壊等業務妨害罪(刑法第234条の2)による対応の余地があることも念頭に置く必要がある。
限定提供データの該当性判断や損害賠償額の設計は、データの性質や取引実態によって結論が異なるため、個別事案については専門家に確認しながら契約条件を確定することが望ましい。
第4部: 使用前チェックリスト(チェックリスト)
- [ ] 提供するデータが「業として特定の者に提供」する実態にあるか確認したか
- [ ] データへのアクセスをID・パスワード等で電磁的に管理しているか確認したか
- [ ] 提供対象を会員等の特定の範囲に限定する仕組みを整えているか
- [ ] 利用目的の範囲を具体的に特定したか
- [ ] 第三者提供・再許諾を禁止する条項を設けたか
- [ ] 不正アクセスやスクレイピング等の禁止行為を列挙したか
- [ ] 利用料の算定方法及び支払期日を明記したか
- [ ] データの正確性に関する免責範囲を検討したか
- [ ] 契約終了後のデータ消去・廃棄義務を定めたか
- [ ] 損害賠償の範囲及び上限の要否を検討したか
- [ ] 準拠法及び管轄裁判所を定めたか