デリバリー専門の共同調理施設を飲食事業者が区画利用する際の利用契約書。食品衛生法の営業許可の名義と施設基準を整理し、利用時間、衛生責任、退去条件を定める。

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ゴーストキッチン利用契約書

第1部: 書式本文

【  】(以下「甲」といい、共同調理施設(以下「本件施設」という)を運営する事業者とする)と【  】(以下「乙」といい、本件施設の一区画を利用してデリバリー専門の飲食事業を営む事業者とする)は、本件施設の区画利用に関し、次のとおり契約(以下「本契約」という)を締結する。

第1条(利用目的) 甲は乙に対し、本件施設内の別紙記載の区画(以下「本件区画」という)を、デリバリー専用の料理の調理及び受渡しの用途に供するため利用させ、乙はこれを利用する。乙は本件区画を甲の事前の書面承諾なく他の用途に転用してはならない。

第2条(営業許可の名義) 乙は、本件区画において飲食店営業等を行うために必要な食品衛生法上の営業許可を、乙自身の名義で取得しなければならない。甲は、本件施設が同許可の取得に必要な施設基準(区画の独立性、調理設備、給排水設備等)を満たすよう本件施設を維持する。複数の利用事業者が共有部分(厨房設備、保管庫等)を利用する場合の許可上の取扱いについては、甲乙は所轄保健所の指導に従い個別に確認するものとする。

第3条(利用期間及び利用料) 本契約の利用期間は【 】年【 】月【 】日から【 】年【 】月【 】日までとする。乙は甲に対し、月額利用料金【 】円(消費税別)を、毎月末日までに翌月分を甲の指定する口座へ振り込む方法により支払う。

第4条(共益費等) 乙は前条の利用料金のほか、共有部分の水道光熱費、清掃費、廃棄物処理費等について、甲が定める算定基準(専有面積按分又は使用量按分)に従い共益費を負担する。

第5条(利用時間) 本件区画の利用可能時間は【 】時から【 】時までとする。深夜時間帯の利用を希望する場合、乙は甲に事前に申し出て、深夜利用に伴う追加費用及び管理体制について別途協議する。

第6条(衛生管理責任の分担) 乙は、本件区画内における調理、保管及び食材の取扱いに関する衛生管理を自らの責任と費用において行う。甲は、共有部分(共用厨房機器、搬入口、廃棄物保管場所等)の清掃及び衛生管理を行い、その実施記録を保管する。乙が使用する共有設備に起因して衛生上の問題(食中毒事故等)が生じた場合の責任分担は、原因究明の結果に応じて甲乙協議のうえ定める。

第7条(デリバリー事業者との連携) 乙が本件区画を用いてフードデリバリープラットフォームを通じた料理提供を行う場合、当該プラットフォーム事業者との契約締結及び運用は乙の責任において行うものとし、甲は関知しない。ただし、甲は配達員の受渡し動線を確保するため、共有部分における受渡しスペースを提供する。

第8条(設備の維持及び修繕) 本件施設の躯体、共用設備の維持修繕は甲が行う。乙が本件区画内に設置した独自の調理機器等の維持修繕は乙の負担とする。

第9条(禁止事項) 乙は、本件区画において、甲の承諾なく増改築、内装の変更又は他の利用事業者の営業を妨げる行為を行ってはならない。

第10条(中途解約) 乙は、【1】か月前までに書面で甲に通知することにより、本契約を中途解約できる。甲は、乙が第2条の営業許可を維持できなくなったとき、又は本契約に重大な違反があったときは、催告のうえ本契約を解除できる。

第11条(原状回復及び退去) 本契約が終了したときは、乙は本件区画を原状に回復のうえ、甲が指定する期日までに明け渡すものとする。乙は退去に際し、営業許可の廃止届その他行政手続を遅滞なく行う。

第12条(損害賠償) 甲又は乙は、本契約の違反により相手方に損害を与えたときは、その損害を賠償する責任を負う。

第13条(合意管轄) 本契約に関する紛争は、【 】地方裁判所を第一審の専属的合意管轄裁判所とする。

第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン

A節: キッチン運営事業者の立場で有利にする修正

  1. 共有設備の使用ルール厳格化: 第6条に「共有厨房機器の使用前後の洗浄・消毒記録を乙が備え付けの台帳に記入しなければならない」との義務を追加し、責任の所在を明確化する。
  2. 利用料滞納時の即時停止: 第3条に「利用料の支払が【 】日間遅滞したときは、甲は催告なく本件区画の利用を一時停止できる」との条項を加える。
  3. 転貸・再委託の禁止強化: 第9条に「乙は本件区画又はその利用権を第三者に転貸し、又は名義を貸与してはならない」との一文を追加し、無許可の又貸しを防止する。

B節: 利用飲食事業者の立場で有利にする修正

  1. 施設基準維持の担保: 第2条に「甲は本件施設が食品衛生法上の施設基準を継続して満たすことを保証し、基準不適合により乙が営業許可を維持できなくなった場合、甲は乙に生じた損害を賠償する」との条項を追加する。
  2. 共益費の透明化: 第4条に「甲は共益費の算定根拠となる使用量等の資料を乙の求めに応じて開示する」との条項を加え、恣意的な費用転嫁を防ぐ。
  3. 深夜利用の権利化: 第5条を「乙は追加費用の支払により深夜時間帯の利用を妨げられない」との規定に修正し、甲の裁量による利用制限を制約する。

第3部: 書き方と法的ポイントの解説

本書式は、デリバリー専門の共同調理施設(いわゆるゴーストキッチン、シェアキッチン)において、施設運営事業者が複数の飲食事業者へ区画を貸し出し、各事業者がそれぞれ独立してデリバリー専門の飲食店営業を行う場面で用いる。店舗を構えず調理のみを行う業態であっても飲食店営業に該当し、食品衛生法上の営業許可が必要である点は通常の店舗と変わらない。単なる倉庫スペースの賃貸や、乙が独自に区画を確保せず甲の従業員に調理を委託する形態(受託製造)であれば、本書式ではなく賃貸借契約書や製造委託契約書を検討すべきである。

根拠法令としては、食品衛生法が中心となり、特に営業許可の単位(区画ごとに独立した許可が必要か、共有部分の扱いをどうするか)や施設基準(区画の独立性、専用の調理設備、手洗い設備等)については、都道府県・保健所ごとに運用の詳細が異なる場合があるため、契約締結前に所轄保健所への確認が不可欠である。また、契約の法的性質が施設利用契約(準委任・賃貸借の性質を併せ持つ契約)か、借地借家法上の建物賃貸借に該当するかによって、中途解約や更新に関する規律が異なり得る点にも留意が必要である。

実務でよくある失敗として、第一に、複数事業者が同一厨房設備を共有する運用にもかかわらず、営業許可の名義や衛生管理責任の分担を契約書に明記せず、食中毒等の事故発生時に責任の所在が特定できなくなる例がある。共有設備の使用記録・清掃記録を条項で義務付けることが対策となる。第二に、利用契約が実質的に建物の一部の独占的な使用を認める内容であるにもかかわらず、賃貸借契約特有の規律(更新拒絶の正当事由等)を意識せず契約書を作成し、退去を巡って紛争化する例がある。契約の法的性質を意識した条項設計が求められる。第三に、深夜利用や繁忙期の共有部分の利用ルールを定めず、事業者間のトラブルに発展する例も多い。利用時間帯・優先順位を明確化すべきである。営業許可の単位や契約の法的性質の判断は個別の施設構造や自治体運用に左右されるため、専門家に確認したうえで契約条項を確定させることが望ましい。

第4部: 使用前チェックリスト

  • [ ] 本件区画の範囲(専有部分と共有部分の境界)を図面等で特定したか
  • [ ] 乙が自ら食品衛生法上の営業許可を取得できる施設基準を甲が確保しているか
  • [ ] 複数事業者が共有設備を利用する場合の許可上の取扱いを所轄保健所に確認したか
  • [ ] 衛生管理責任の分担(専有部分は乙、共有部分は甲)を明記したか
  • [ ] 利用料・共益費の算定方法と支払時期を明確にしたか
  • [ ] 利用可能時間帯(深夜利用を含む)の取扱いを定めたか
  • [ ] デリバリープラットフォームとの契約関係が乙の責任であることを明記したか
  • [ ] 設備の維持修繕の負担区分(躯体・共用設備は甲、専用機器は乙)を定めたか
  • [ ] 中途解約の予告期間と原状回復義務を定めたか
  • [ ] 契約の法的性質(施設利用契約か建物賃貸借か)を意識した条項になっているか