株主が総会に出席せず書面で議決権を行使するための用紙。会社法第311条の行使期限と施行規則第66条の賛否記載欄の要件を満たす様式で、集計時の取扱いも付記。

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議決権行使書面

第1部: 書式本文

以下は、書面投票制度を採用した株式会社が株主総会に際して株主へ交付する議決権行使書面の記載項目一覧である。用紙の体裁は各社の様式に委ねられるが、下記の各項目を欠くと会社法施行規則第66条が求める記載を満たさないおそれがあるため、実務上はすべて盛り込む。招集通知に同封して株主へ送付し、株主が自書又は押印のうえ返送することで、総会当日に出席しなくとも議決権を行使したのと同一の効果を生じさせる書面である点を、様式冒頭の説明文にも簡潔に記載しておくと、株主の理解を助ける。

  1. 表題「議決権行使書」及び会社名【株式会社〇〇】
  2. 開催する株主総会の種別(定時・臨時の別)と開催年月日時刻【〇年〇月〇日午前〇時】
  3. 開催場所【本店所在地又は会場名】
  4. 株主の氏名又は名称、住所、議決権を行使できる株式数【〇株】
  5. 議案の表示。議案が複数ある場合は議案ごとに番号を付し、それぞれ独立した賛否欄を設ける(施行規則66条1項1号)
  6. 各議案の内容の要領(会社提案・株主提案の別を明示)
  7. 賛否記載欄。「賛成」「反対」を明確に区分し、二者択一で丸印又はレ点を付す方式とする
  8. 棄権の取扱いがある場合はその旨の記載欄
  9. 賛否の記載がない議案があった場合の取扱いに関する記載(会社提案は賛成、株主提案は反対とみなす旨など。施行規則66条1項2号)
  10. 一の株主が同一議案について異なる意思表示をした議決権行使書面を複数提出した場合の取扱い(先に到達したものを有効とする等)
  11. 議決権行使書面の到達期限。会社法第311条1項により総会の日時の直前の営業時間の終了時までに会社に到達することを要する旨を明記する【〇年〇月〇日午後〇時到着分まで有効】
  12. 返送方法(同封の返信用封筒又は指定の宛先)
  13. 株主本人の署名又は記名押印欄(電磁的方法による提供の場合はその代替措置)
  14. 集計方法に関する付記。到達した議決権行使書面は議決権行使書面集計担当者において開票し、株主名簿記載の議決権数と照合のうえ、総会当日の決議の定足数及び賛否数に算入する旨
  15. 問い合わせ先(株主名簿管理人又は総務部門の連絡先)
  16. 様式の発行年月日又は版数管理(改訂により旧様式が誤って使用されることを防ぐための表示)

第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン

A節: 書面投票制度

修正条文例: 「当会社は、議決権を行使することができる株主の数が千人以上であることから、会社法第298条第2項の規定により、本総会につき書面による議決権行使を認めるものとし、招集通知に際して本行使書面を交付する。」

一言解説: 書面投票制度は株主数が千人以上の会社では取締役会決議で義務化されるため(会社法298条2項)、この場合には行使書面の交付根拠を明示しておくと、後日の招集手続の適法性を確認しやすくなる。任意採用の会社では「取締役会の決議により書面投票を採用することとした」といった任意採用である旨の表現に置き換える。

B節: 株主返送用

修正条文例: 「本行使書面は、株主ご本人が各議案について賛否いずれかに○印を付し、〇年〇月〇日午後五時までに同封の返信用封筒にて当会社宛てにご返送ください。到着時刻をもって行使の効力発生時とし、消印日時ではありません。」

一言解説: 実務でつまずきやすいのは「発信主義」と誤解されるケースである。会社法311条1項は到達主義を採るため、締切間際の投函では間に合わない場合がある旨を返送用の文面に明記し、株主に誤解を与えないようにする。返送用封筒に料金受取人払の表示を付す場合は、日本郵便への届出内容と返送先住所の表記を一致させ、宛先不明で返送が滞ることのないよう事前に確認しておくとよい。

第3部: 書き方と法的ポイントの解説

本書式は、株主総会に出席しない株主が書面によって議決権を行使する場面で用いる。すでに電磁的方法による議決権行使(電子投票)のみを提供し書面投票を実施しない会社や、株主全員が出席する非公開の少人数会社で招集手続自体を省略するようなケースでは使用の必要がない。

根拠法令は、書面による議決権行使を定める会社法第298条第1項第3号及び第311条、並びに記載事項の細目を定める会社法施行規則第66条である。第311条2項は、書面投票による議決権行使書面は会社が定めた期限までに到達したものに限り効力を生ずる旨を定めており、招集通知の発送日から逆算した現実的な到達期限の設定が求められる。また、書面投票の内容は会社法第311条3項により議決権を行使した株主の数及びその有する議決権の数に算入されるため、集計結果が総会議事録上の出席株主数・議決権数の記載と整合しているかを確認するプロセスも合わせて設計しておく必要がある。

実務でよくある失敗の一つ目は、賛否欄の設計不備である。一枚の用紙に議案を列挙しながら賛否欄を議案共通にしてしまい、株主が一部の議案にのみ反対する意思を表示できない様式になっている例が見られる。対策としては、議案ごとに独立した賛否欄を設けるとともに、施行規則66条1項2号が求める「記載がない場合の取扱い」の一文を必ず添えることである。

二つ目は、到達期限の周知不足である。招集通知の発送から総会日までの期間が短い会社では、返送用封筒の郵送日数を考慮しないまま期限を設定し、期限内に到達しない行使書面が続出することがある。対策として、期限は総会前日ではなく余裕を持った日時に設定し、期限の表現も「〇月〇日消印有効」ではなく「〇月〇日午後〇時到着分まで」という到達基準で統一する。

三つ目は、同一株主から複数の行使書面が提出された場合の集計トラブルである。書面投票と電子投票を並行して認める会社では、同一株主が両方の方法で異なる意思表示をする例があり、優先順位の定めがないと集計担当者が判断に迷う。あらかじめ「電磁的方法による行使を書面による行使に優先する」等のルールを議決権行使書面又は招集通知に記載しておくことが望ましい。もっとも、集計ルールの設計や定足数計算への算入方法は会社の定款・株主構成によって結論が異なり得るため、個別事案は専門家に確認したうえで最終的な様式を確定させることが望ましい。

四つ目は、様式の版管理の不備である。前回総会からの様式変更(議案の追加、賛否欄の様式変更等)を反映せずに旧版の用紙を誤って印刷・発送してしまうと、株主が古い議案に基づいて意思表示をしてしまう事態を招きかねない。発行年月日や版数を様式の隅に表示し、印刷担当部門と総会運営担当部門との間で最新版の共有を徹底することが対策となる。

第4部: 使用前チェックリスト

  • [ ] 株主数が千人以上か、書面投票を任意採用したかを確認し、採用根拠(会社法298条2項/取締役会決議)を明記したか
  • [ ] 議案ごとに独立した賛否記載欄を設けたか
  • [ ] 賛否未記載の場合の取扱い(みなし賛成・みなし反対)を記載したか
  • [ ] 到達期限を「到着時刻基準」で明記し、消印基準と誤認されない表現にしたか
  • [ ] 到達期限が招集通知発送日から返送に要する日数を踏まえた現実的な日時になっているか
  • [ ] 株主の氏名・住所・議決権数の記載欄を設けたか
  • [ ] 電子投票と書面投票を併用する場合の優先関係を定めたか
  • [ ] 同一株主から複数の行使書面が到達した場合の取扱いを定めたか
  • [ ] 返送用封筒や返送方法の案内を同封したか
  • [ ] 集計結果を株主名簿の議決権数と照合するプロセスを社内で確立しているか
  • [ ] 個人情報(住所等)の取扱いについて社内規程との整合を確認したか