敷地内のごみの堆積や悪臭で生活環境が害される場合に、民法第709条や廃棄物処理法を挙げて片付けと再発防止を求める申入書です。
⚠ 本書式は弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布・公開を禁止する。 本書式は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別・具体的な法律相談に代わるものではない。
ごみ堆積・悪臭改善申入書
第1部: 書式本文
ごみの堆積及び悪臭の改善に関する申入書
【申入れ先住所】 【申入れ先氏名・名称】 様
作成日: 【西暦】年【月】月【日】日
差出人: 【申入人住所】 【申入人氏名・名称】 印
件名: 敷地内のごみ堆積・悪臭の改善に関する申入れ
申入人は、貴殿に対し、下記のとおり申し入れる。
- 申入人は【申入人住所】に居住しており、貴殿の所有(占有)する【対象不動産の所在地】は、申入人宅と【位置関係。例: 隣接、道路を挟んで向かい】の関係にある。
- 貴殿の敷地内には、【堆積物の内容。例: 家庭ごみ、資源物、不要品、生ごみ】が【堆積開始時期】頃から堆積されており、【現在の堆積状況】に至っている。
- これに伴い、【具体的被害。例: 悪臭、害虫(ハエ・ゴキブリ等)の発生、景観の悪化、放火等の防犯上の懸念】が生じており、申入人の生活環境に支障を来している。
- 申入人は、【申入れ済みの場合はその経緯】において改善を求めたが、【現在の状況】。
- 民法第709条は、故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う旨を定めており、生活環境の悪化が受忍限度を超える場合には不法行為に該当し得る。
- 廃棄物の処理及び清掃に関する法律(廃棄物処理法)第5条第1項は、土地又は建物の占有者は、その土地又は建物の清潔を保つように努めなければならない旨を定めている。
- 悪臭防止法は、工場その他の事業場における事業活動に伴って発生する悪臭を規制することを主眼とするが、規制地域内においては都道府県知事等に対する申告制度が設けられており、行政による指導の端緒となり得る。
- 申入人は、貴殿に対し、下記事項の実施を求める。
- 堆積物の速やかな撤去及び適正な処分
- 悪臭・害虫発生の防止措置
- 再発防止のための管理体制の見直し
- 本申入書到達後【回答期限。例: 2週間】以内に、対応方針についてご回答いただきたい。
- 期限までに改善が見られない場合、申入人は、自治体の環境衛生担当部局への相談、いわゆるごみ屋敷対策条例に基づく調査・指導の要請、その他法的手続の検討を行う。
- 本申入書は、申入人の有するその他の請求権その他一切の権利を放棄するものではない。
以上
回答書送付先その他の連絡先 【送付先住所】 【申入人氏名】 【電話番号・メールアドレス】
第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン
A. 申し入れる側
修正後の文例:
申入人は、【撮影日】に撮影した写真及び【記録方法】による記録により、貴殿の敷地内における堆積状況及び臭気の程度を確認している。ついては、廃棄物処理法第5条第1項及び民法第709条を踏まえ、貴殿に対し、本申入書到達後【期限】以内に堆積物を撤去するよう求める。
一言解説: 写真や日誌等で堆積状況・臭気の程度・発生時期を客観的に記録しておくと、後日自治体への相談や損害賠償請求に移行する際の証拠として活用できる。
B. 申入れを受けた側
修正後の文例:
ご指摘の点について確認したところ、【堆積の経緯。例: 片付けが追いつかず堆積してしまった事情】があったことを認める。当職は、【撤去予定日】までに堆積物を撤去し、以後は【再発防止策。例: 定期的な収集日の遵守、粗大ごみの計画的処分】を実施する。
一言解説: 堆積の経緯を認めたうえで具体的な撤去予定日と再発防止策を示すことで、行政指導や訴訟等への発展を避けやすくなる。
第3部: 書き方と法的ポイントの解説
本書式は、隣接又は近隣の土地・建物にごみや不用品が堆積し、悪臭・害虫の発生・景観の悪化等により周辺の生活環境が害されている場合に、堆積物の撤去と再発防止を求める場面で用いる。単発的に少量のごみ出しルール違反があった程度で直ちに本書式を用いるのではなく、堆積の継続性や被害の程度を踏まえて使用の要否を判断すべきである。また、堆積物の中に有害物質や産業廃棄物が含まれる疑いがある場合は、生活環境上の申入れにとどまらず、速やかに自治体の廃棄物対策部局や保健所への通報を検討すべきであり、本書式のみで対応を完結させるべきではない。
根拠法令としては、まず民法第709条(不法行為による損害賠償)が挙げられ、受忍限度を超える生活妨害があれば損害賠償請求の対象となり得る。次に、廃棄物処理法第5条第1項は土地又は建物の占有者に清潔保持の努力義務を課しており、同法にはこのほか生活環境の保全上支障が生じ、又は生じるおそれがある事態に対して都道府県知事等が必要な措置を命じることができる規定も置かれている。悪臭防止法は本来、工場等の事業活動に伴う悪臭を規制対象とする法律であり、個人宅のごみ堆積による悪臭に直接適用されるとは限らないが、規制地域内であれば都道府県知事等への申告制度を通じて行政指導につながる可能性がある。近年は、いわゆる「ごみ屋敷条例」を制定する自治体が増えており、条例に基づく実態調査、助言・指導、勧告、公表、さらには行政代執行に至る仕組みが整備されている地域もあるため、対象不動産の所在する自治体の条例の有無を確認することが実務上重要である。条例の内容は自治体ごとに調査権限、指導・勧告の要件、代執行の手続がそれぞれ異なるため、本申入書とあわせて条例の運用状況を確認しておくと、行政への相談段階での見通しが立てやすくなる。
実務でよくある失敗の一つ目は、悪臭防止法を個人宅のごみ堆積にそのまま適用できる根拠と誤解し、規制基準違反を断定的に主張してしまうことである。同法は主として事業活動に伴う悪臭を対象とするため、対策として本文7項のように申告制度の存在を紹介するにとどめ、個人間の請求根拠としては民法709条及び廃棄物処理法5条を中心に据えている。
二つ目の失敗は、堆積状況や被害の程度を裏付ける記録を残さないまま抽象的な苦情のみを述べることである。臭気や害虫の発生は時間の経過とともに変化しやすく、後日になって当時の状況を立証することが難しくなるため、対策として、写真や記録による客観的な証拠化を第2部Aの文例で明示している。撮影の際は、堆積場所だけでなく撮影日時が分かる形で記録し、可能であれば定期的に継続して記録することが望ましい。
三つ目の失敗は、堆積者本人に精神的・身体的な事情(いわゆるセルフネグレクト等)が背景にある場合に、法的請求のみを一方的に行い、かえって関係を悪化させ改善が進まなくなることである。この種の事案では、自治体の福祉部局と環境衛生部局が連携して対応する枠組みが用意されている地域もあるため、法的手続に先立って行政への相談を組み合わせることが有効である。また、堆積物の撤去を強行しようとすると、堆積者本人の所有権を侵害する行為となりかねないため、撤去はあくまで堆積者本人又は正当な権限を有する者が行うべきであり、対応方針については専門家に確認することが望ましい。
第4部: 使用前チェックリスト
- [ ] 堆積物の内容・数量・堆積開始時期を具体的に記録したか
- [ ] 写真や日誌など臭気・害虫発生状況の客観的な証拠を準備したか
- [ ] 過去の申入れ・相談の経緯を整理したか
- [ ] 対象不動産の所在する自治体にごみ屋敷対策条例があるか確認したか
- [ ] 悪臭防止法の規制地域に該当するかどうかを確認したか
- [ ] 堆積物に産業廃棄物や有害物質が含まれる可能性がないか確認したか
- [ ] 廃棄物処理法第5条を占有者の努力義務として適切に引用したか
- [ ] 回答期限を明確に設定したか
- [ ] 堆積者の生活状況等に配慮した記載になっているか確認したか
- [ ] 自治体の環境衛生部局・福祉部局への相談窓口を把握したか