正当な業務命令に従わない従業員へ改善を求める警告書です。違反事実、就業規則の根拠、改善しない場合の処分可能性を通知します。
⚠ 本書式は弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布・公開を禁止する。 本書式は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別・具体的な法律相談に代わるものではない。
業務命令違反に対する警告書
第1部: 書式本文
警告書
【被通知人住所】 【被通知人氏名】 殿
【作成日】:西暦 年 月 日
【通知人(会社)名称】 【代表者役職・氏名】 印
当社は、貴殿に対し、下記のとおり警告する。
第1条(警告の対象となる業務命令及び違反事実) 当社は、【西暦 年 月 日】、貴殿に対し【具体的な業務命令の内容(配置転換、業務指示、報告義務等)】を命じたが、貴殿は【西暦 年 月 日】現在に至るまで、正当な理由なくこれに従っていない。
第2条(業務命令の正当性の根拠) 本件業務命令は、貴殿との雇用契約及び就業規則【第 条】に基づく当社の業務上の指揮命令権の行使として行ったものであり、業務上の必要性及び合理性を有するものである。
第3条(就業規則上の根拠) 貴殿の行為は、就業規則第【 条】(服務規律)及び第【 条】(懲戒事由)に定める【該当項目】に該当するおそれがある。
第4条(警告の趣旨) 当社は、貴殿の前記行為が就業規則違反に該当すると判断しているが、直ちに懲戒処分を行うのではなく、まず本警告により改善の機会を与えることとする。
第5条(改善を求める事項) 貴殿は、次の事項を改善されたい。 一 【本件業務命令に従い、指示された業務を履行すること】 二 【今後、正当な理由のない業務命令拒否を行わないこと】
第6条(改善期限及び回答方法) 貴殿は、本警告書到達の日から【 日】以内に、前条の業務命令に従うとともに、【書面/面談】により当社に対しその旨を報告されたい。
第7条(正当な理由がある場合の申出) 貴殿において本件業務命令に従わなかったことにつき正当な理由があると考える場合は、前条の期限までに、その理由及び根拠資料を当社担当窓口まで提出されたい。
第8条(改善がない場合の取扱い) 前条の期限までに改善及び報告がない場合、又は正当な理由の疎明がない場合、当社は、就業規則の定めるところにより、貴殿に対し譴責、減給、出勤停止その他の懲戒処分を検討する。
第9条(始末書の提出) 当社は、貴殿に対し、本件に関する経緯を記載した始末書の提出を求めることがある。始末書の提出は、貴殿の意思に反して強制するものではない。
第10条(弁明の機会) 当社は、懲戒処分を検討するに当たり、貴殿に対し事前に弁明の機会を付与する。
第11条(記録の保存) 当社は、本警告書及びこれに対する貴殿の対応状況を、人事記録として保存する。
第12条(問い合わせ窓口) 本警告書に関する問い合わせは、下記まで連絡されたい。 担当部署:【部署名】 担当者:【氏名】 連絡先:【電話番号・メールアドレス】
以上
第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン
A. 会社の立場
A-1. 配置転換命令を拒否している従業員に警告する場面
第1条を「当社は、【西暦 年 月 日】付け辞令により貴殿に対し【異動先部署】への配置転換を命じたが、貴殿は正当な理由なく当該辞令に従った勤務を行っていない」と修正し、第2条に「本件配置転換は、業務上の必要性に基づくものであり、貴殿に著しい不利益を負わせるものではない」と追記する。
一言解説:配置転換命令の適法性が争われやすいため、業務上の必要性と労働者の不利益の程度をあらかじめ整理して記載しておく。
A-2. 在宅勤務中の報告義務違反に対して警告する場面
第1条を「貴殿は、在宅勤務規程第 条に定める日次業務報告を、【西暦 年 月 日】から連続して怠っている」と修正し、改善を求める事項に「所定の報告様式により、翌営業日正午までに前日の業務内容を報告すること」を追加する。
一言解説:在宅勤務下では業務命令違反の外形的な把握が難しいため、対象事実を客観的な記録(送信履歴等)で裏付けられるよう具体的に記載する。
B. 対象労働者の立場
B-1. 命令の内容が労働契約の範囲を超えると考える場面
第7条に基づく申出として「本件業務命令の内容は、労働契約締結時に合意した職種・勤務地の範囲を超えるものであり、正当な理由がある」と記載し、雇用契約書等の根拠資料を添付する。
一言解説:業務命令権は無制限ではなく、労働契約上の合意の範囲内で行使される必要があるため、契約内容との整合性を具体的に指摘することが有効である。
B-2. 改善期限が短すぎて対応が困難な場面
第6条の期限に対し、「【理由】により、期限までの対応が困難であるため、期限の延長を申し入れる」と書面で申し出て、その申出が記録されるよう求める。
一言解説:一方的に定められた期限であっても、合理的な理由があれば延長の協議を申し入れることができ、これを無視した処分は手続的相当性を欠くと評価される余地がある。
B-3. 過去に同様の警告を受けたことがなく、初めて指摘を受けた場面
弁明の機会において「本件は初めての指摘であり、これまで同種の注意・指導を受けたことがない」と述べ、始末書提出欄に「今後は指示内容を書面で確認し、疑義があれば速やかに確認する」との具体的な改善策を記載する。
一言解説:初回の指摘であることや改善意欲を具体的に示すことは、その後の量定判断において考慮される情状となりうる。
第3部: 書き方と法的ポイント解説
使う場面・使ってはいけない場面 本書式は、就業規則上の懲戒事由に該当するおそれがある業務命令違反について、直ちに懲戒処分を行うのではなく、まず改善を促す段階で用いる。既に重大な違反が繰り返され、改善の見込みがないと会社が判断している場合や、緊急に処分を行う必要がある場合には、警告にとどめず懲戒処分手続に直接進むべきであり、本書式はその判断を代替するものではない。
根拠法令及び留意点 使用者の業務命令権は労働契約に基づくものであり、その行使が権利濫用に当たる場合は無効となりうる(労働契約法第3条第5項の信義誠実の原則、同法第5項が定める権利濫用禁止の趣旨)。労働契約法第15条は、懲戒が客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない場合に無効となる旨を定めており、警告を経ずに直ちに重い処分を行うことは、この相当性判断において不利に働く可能性がある。就業規則の周知(労働基準法第106条)がなされていない場合、当該規則を根拠とする懲戒事由の主張が困難になる点にも留意する。業務命令の適法性や処分の相当性の評価は事案ごとに異なるため、個別事案は専門家に確認することが望ましい。
実務でよくある失敗と対策 第一に、業務命令自体の適法性・必要性の説明を欠いたまま、違反の事実のみを記載してしまう失敗がある。対策として、第2条のように業務命令の根拠(契約、就業規則、業務上の必要性)を明記する。第二に、改善期限を定めずに警告のみを発し、その後の処分の際に手続の合理性が争われる失敗がある。対策として、第6条のように具体的な期限と回答方法を明記する。第三に、労働者からの弁明や正当理由の申出を受け付ける仕組みがなく、一方的な警告にとどまる失敗がある。対策として、第7条及び第10条のように、申出や弁明の機会を明示的に設ける。第四に、過去の注意指導の履歴を管理しておらず、初回の指摘か繰り返しの違反かが警告書上判別できない失敗がある。対策として、記録の保存条項に過去の注意指導歴の有無を記載する運用を定めておく。
第4部: 使用前チェックリスト
- [ ] 対象となる業務命令の内容及び違反の事実が具体的に特定されているか
- [ ] 業務命令の根拠(契約、就業規則、業務上の必要性)が明記されているか
- [ ] 該当する就業規則の条項が特定されているか
- [ ] 改善を求める事項が具体的かつ実行可能な内容になっているか
- [ ] 改善期限及び回答方法が明記されているか
- [ ] 正当な理由がある場合の申出手続が設けられているか
- [ ] 改善がない場合の懲戒処分の可能性が明記されているか
- [ ] 懲戒処分検討時の弁明機会の付与が明記されているか
- [ ] 就業規則が労働者に周知されていることを確認したか
- [ ] 問い合わせ窓口が明記されているか
- [ ] 過去の注意指導歴の有無を確認し、初回か繰り返しかを整理したか
- [ ] 警告書の到達を証拠化する送付方法(内容証明・受領確認等)を検討したか