セット内容
- 労働者派遣個別契約書 2バージョン(派遣元/派遣先)Word形式
- 労働者派遣法が定める就業条件明示事項チェックリスト
- 抵触日管理シート
こんな場面で
派遣元事業主が派遣先へ労働者を派遣する際、個別契約として就業条件を書面化する場面。
特長
- 業務内容・就業場所・指揮命令者・派遣期間等の法定明示事項を網羅
- 派遣可能期間の制限(事業所単位・個人単位の抵触日)の管理欄を収録
- SES契約書(ses-keiyaku)との違い(指揮命令権の所在)を解説
労働者派遣個別契約書(監修用ドラフト)
⚠ 本ファイルは弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布を禁止する。
商品ID: haken-kobetsu-keiyaku / 価格: 2,980円 / 立場バージョン: 派遣元有利・派遣先有利
本ドラフトは第2部で2バージョンの差分を提示する構成とし、第1部には標準版(中立に近い基準条文)をベース条文として掲載する。労働者派遣法(労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律。以下「労働者派遣法」という。)第26条が定める就業条件明示事項を中心に、実務上必須と考えられる条項を網羅する構成としている。
第1部: 契約書本文(標準版)
労働者派遣個別契約書
〇〇〇〇(以下「派遣元」という。)と〇〇〇〇(以下「派遣先」という。)とは、派遣元が雇用する労働者を派遣先に派遣し、派遣先の指揮命令の下に労働に従事させることについて、労働者派遣法その他関係法令に基づき、以下のとおり労働者派遣個別契約(以下「本契約」という。)を締結する。
第1条(目的)
本契約は、派遣元及び派遣先が別途締結する労働者派遣基本契約(〇〇〇〇年〇〇月〇〇日付。以下「基本契約」という。)に基づき、派遣元が派遣先に対して行う個別の労働者派遣に関し、労働者派遣法第26条第1項に定める事項その他必要な事項を定めることを目的とする。
第2条(業務内容)
- 派遣先は、派遣元が雇用し、派遣先に派遣する労働者(以下「派遣労働者」という。)に、別紙「就業条件明示書」記載の業務(以下「本件業務」という。)に従事させるものとする。
- 派遣先は、本件業務以外の業務に派遣労働者を従事させてはならないものとし、業務内容を変更する必要が生じた場合は、事前に派遣元と協議のうえ、本契約の変更手続によるものとする。
- 本件業務が労働者派遣法第4条第1項に定める港湾運送業務、建設業務、警備業務その他労働者派遣の対象から除外される業務に該当しないことを、派遣元及び派遣先双方において確認する。
第3条(就業場所及び組織単位)
- 派遣労働者の就業の場所は、別紙「就業条件明示書」記載のとおりとする。
- 派遣労働者が組織上配置される組織単位(部、課その他これに準ずる組織の単位をいう。以下同じ。)は、別紙「就業条件明示書」記載のとおりとする。
- 派遣先は、労働者派遣法第40条の9その他関係法令に照らし、同一の組織単位への派遣可能期間(個人単位の期間制限)が第11条に定める抵触日を超えないよう管理するものとする。
第4条(指揮命令者)
- 派遣先は、派遣労働者に対する指揮命令を行う者(以下「指揮命令者」という。)を別紙「就業条件明示書」のとおり定め、派遣元に通知する。
- 派遣先は、指揮命令者以外の者に派遣労働者への業務指示を行わせないよう、社内体制を整備するものとする。
- 指揮命令者を変更した場合、派遣先は、遅滞なく派遣元に書面(電磁的方法を含む。以下同じ。)により通知するものとする。
第5条(派遣期間及び就業日)
- 派遣労働者を派遣する期間(以下「派遣期間」という。)は、〇〇〇〇年〇〇月〇〇日から〇〇〇〇年〇〇月〇〇日までとする。
- 派遣労働者の就業日は、別紙「就業条件明示書」記載のとおりとする。
- 派遣先は、派遣期間が第11条に定める抵触日以降にわたることのないよう留意するものとし、派遣可能期間の延長を要する場合は、労働者派遣法所定の手続(過半数労働組合等からの意見聴取等)を経たうえで、派遣元と別途協議するものとする。
第6条(始業・終業の時刻及び休憩時間)
- 派遣労働者の始業及び終業の時刻並びに休憩時間は、別紙「就業条件明示書」記載のとおりとする。
- 派遣先が所定労働時間を超えて、又は所定休日に派遣労働者を労働させる必要がある場合は、派遣元が締結している労働基準法第36条に基づく労使協定(36協定)の範囲内で行うものとし、派遣先は事前に派遣元の承諾を得るものとする。
第7条(安全及び衛生)
- 派遣先は、労働者派遣法及び労働安全衛生法に基づき、派遣労働者の安全及び衛生の確保に関し、派遣先が講ずべき措置を誠実に実施するものとする。
- 派遣元及び派遣先は、派遣労働者の安全衛生に関する具体的な役割分担について、別紙「安全衛生に関する措置」に定めるところによるものとする。
- 派遣先は、派遣労働者に労働災害その他の事故が発生した場合、直ちに必要な措置を講ずるとともに、遅滞なく派遣元に報告するものとする。
第8条(苦情の処理)
- 派遣元及び派遣先は、派遣労働者から申出を受けた苦情の処理を担当する者及びその処理方法をあらかじめ定め、別紙「就業条件明示書」に記載するものとする。
- 派遣先は、派遣労働者から申出を受けた苦情について、その内容を派遣元に遅滞なく通知するとともに、派遣元と密接に連携しつつ、誠実かつ迅速にこれを処理するよう努めるものとする。
- 派遣元及び派遣先は、苦情処理の過程で得た派遣労働者に関する情報を、当該苦情処理の目的以外に使用してはならない。
第9条(派遣契約の解除に当たって講ずる派遣労働者の雇用の安定を図るために必要な措置)
- 派遣先は、専ら派遣先に起因する事由により、派遣期間が満了する前に本契約を解除しようとする場合には、あらかじめ派遣元の合意を得るとともに、相当の猶予期間をもって派遣元に解除の申入れを行うものとする。
- 前項の場合において、派遣先は、派遣労働者の新たな就業機会の確保を図るものとし、それが困難なときは、派遣元が休業手当その他の労働基準法上の責任を果たすために要する費用を確保する等、派遣労働者の雇用の安定を図るために必要な措置を講ずるものとする。
- 派遣先は、前2項の措置を講ずるに当たり、その内容を派遣元に対して明らかにするものとする。
- 派遣先は、天災その他やむを得ない事由により本契約の履行が不可能となった場合においても、その理由を派遣元に対して明らかにするよう努めるものとする。
第10条(派遣先が講ずべき措置に関する事項)
- 派遣先は、労働者派遣法第40条第2項から第5項までに定める措置(教育訓練の実施、福利厚生施設の利用機会の付与等)について、派遣先の労働者との均衡を考慮しつつ、必要な措置を講ずるよう努めるものとする。
- 派遣先は、派遣元から求めがあったときは、比較対象労働者の待遇に関する情報その他労働者派遣法第26条第7項に定める情報を、派遣元に提供するものとする。当該情報に変更があったときも同様とする。
- 前項の情報提供がないときは、派遣元は、派遣労働者を派遣先に派遣してはならないものと解される。
第11条(派遣可能期間の制限及び抵触日)
- 派遣先は、労働者派遣法第40条の2に基づく事業所単位の期間制限に関し、派遣先の事業所その他派遣就業の場所ごとの派遣可能期間の抵触日を、別紙「抵触日管理シート」のとおり派遣元に通知するものとする。
- 派遣元は、労働者派遣法第40条の3に基づく個人単位の期間制限に関し、同一の派遣労働者を同一の組織単位に派遣できる期間が3年を超えないよう管理するものとし、その抵触日を別紙「抵触日管理シート」に記載する。
- 派遣先は、事業所単位の抵触日を変更(延長)しようとする場合、当該事業所の過半数労働組合等からの意見聴取その他労働者派遣法所定の手続を、抵触日の1か月前までに完了させ、その結果を派遣元に通知するものとする。
- 派遣元及び派遣先は、前2項の抵触日を超えて労働者派遣を行ってはならないものとし、抵触日到来が見込まれる場合は、遅くとも抵触日の1か月前までに、契約の終了、更新の要否その他の対応について協議するものとする。
- 派遣元は、労働者派遣法第40条の4に基づき、個人単位の期間制限に抵触することとなる最初の日以降、当該派遣労働者を派遣先に派遣しないこととなる場合、当該派遣労働者に係る雇用安定措置を講ずるものとする。
第12条(派遣料金)
- 本件業務に係る派遣料金は、別紙「就業条件明示書」記載のとおりとする。
- 派遣先は、派遣元に対し、派遣料金を別紙記載の支払期日までに、派遣元が指定する銀行口座に振り込む方法により支払うものとする。振込手数料は派遣先の負担とする。
- 派遣先が派遣料金の支払を遅延した場合、派遣元は、支払期日の翌日から支払済みに至るまで、年3パーセントの割合による遅延損害金を請求することができる。ただし、当該利率は民法所定の法定利率の改定に応じて変動しうるものと解される。
- 派遣料金には、派遣労働者に係る社会保険料及び労働保険料の事業主負担分並びに派遣元が支払う諸手当等が含まれるものと解されるが、消費税及び地方消費税は別途加算するものとする。
第13条(派遣元責任者及び派遣先責任者)
- 派遣元は、労働者派遣法第36条に基づき派遣元責任者を、派遣先は同法第41条に基づき派遣先責任者を、それぞれ選任し、別紙「就業条件明示書」に記載する。
- 派遣元責任者及び派遣先責任者は、相互に密接に連絡調整を行い、派遣労働者の適正な就業を確保するものとする。
第14条(社会保険及び労働保険の加入状況)
- 派遣元は、派遣労働者に係る健康保険、厚生年金保険及び雇用保険の加入状況を、別紙「就業条件明示書」のとおり派遣先に明示するものとする。
- 派遣労働者が社会保険及び労働保険に加入していない場合、派遣元は、その具体的な理由を派遣先に通知するものとする。
第15条(教育訓練)
- 派遣元は、労働者派遣法第30条の2に基づき、派遣労働者に対する段階的かつ体系的な教育訓練を実施するものとする。
- 派遣先は、派遣元からの求めに応じ、派遣労働者が従事する業務の遂行に必要な能力を付与するための教育訓練の実施等について、合理的な範囲で協力するよう努めるものとする。
第16条(個人情報の保護)
派遣元及び派遣先は、本契約の履行に関連して知り得た派遣労働者その他の個人情報について、個人情報の保護に関する法律その他関係法令を遵守し、適切に取り扱うものとする。
第17条(機密保持)
派遣元及び派遣先は、本契約の履行に関連して知り得た相手方の業務上の秘密を、相手方の事前の書面による承諾を得ることなく第三者に開示又は漏えいしてはならず、本契約の目的以外に使用してはならない。
第18条(反社会的勢力の排除)
- 派遣元及び派遣先は、それぞれ相手方に対し、自己(自己の役員を含む。)が、暴力団、暴力団員、暴力団員でなくなった時から5年を経過しない者、暴力団準構成員、暴力団関係企業、総会屋等、社会運動等標ぼうゴロ又は特殊知能暴力集団その他これらに準ずる者(以下「反社会的勢力」と総称する。)に該当しないこと、及び反社会的勢力と密接な関係を有しないことを表明し、保証する。
- 派遣元又は派遣先が前項の表明保証に違反した場合、相手方は、何らの催告を要せず本契約を解除することができるものと解される。この場合、解除した当事者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負わないものとする。
第19条(契約期間)
本契約の契約期間は、第5条に定める派遣期間と同一とする。ただし、当該期間は第11条に定める抵触日を超えないものとする。
第20条(中途解除)
- 派遣元又は派遣先は、相手方に本契約上の重大な義務違反があり、相当の期間を定めて是正を催告したにもかかわらず是正されない場合、本契約を解除することができるものと解される。
- 派遣先が第9条に定める措置を履行しないまま本契約を中途解除した場合、派遣元は、これにより生じた損害の賠償を派遣先に請求することができるものと解される。
第21条(損害賠償)
- 派遣元又は派遣先が本契約に違反し、相手方又は派遣労働者に損害を与えた場合、当該違反当事者は、これによって生じた通常損害を賠償する責めを負うものと解される。
- 派遣先の指揮命令に起因して派遣労働者が第三者に損害を加えた場合の責任分担については、労働者派遣法及び民法第715条の趣旨を踏まえ、派遣元及び派遣先が協議のうえ定めるものとする。
第22条(危険負担・履行不能)
天災地変その他当事者の責めに帰することができない事由により本契約の全部又は一部の履行が不能となった場合の処理については、2020年施行の民法(債権法改正)第536条その他関係規定の趣旨に従い、派遣元及び派遣先が協議のうえ定めるものとする。
第23条(不可抗力)
派遣元及び派遣先は、天災、感染症の蔓延、法令の制定改廃、争議行為その他自己の合理的な支配を超える事由により本契約上の義務の履行が遅延し、又は不能となった場合、当該事由が継続する間、当該義務の不履行について責任を負わないものと解される。
第24条(権利義務の譲渡禁止)
派遣元及び派遣先は、相手方の事前の書面による承諾を得ることなく、本契約上の地位並びに本契約に基づく権利及び義務を第三者に譲渡し、承継させ、又は担保に供してはならない。
第25条(基本契約との関係)
本契約と基本契約の内容が抵触する場合、本契約に別段の定めがある場合を除き、本契約の定めが優先して適用されるものと解される。
第26条(協議事項)
本契約に定めのない事項又は本契約の解釈に疑義が生じた事項については、派遣元及び派遣先が誠意をもって協議のうえ解決するものとする。
第27条(合意管轄)
本契約に関する紛争については、〇〇地方裁判所を第一審の専属的合意管轄裁判所とする。
以上、本契約締結の証として本書2通を作成し、派遣元・派遣先記名押印のうえ、各自1通を保有する。
〇〇〇〇年〇〇月〇〇日
(派遣元)住所 商号又は名称 代表者名 印
(派遣先)住所 商号又は名称 代表者名 印
(別紙) ・就業条件明示書 ・安全衛生に関する措置 ・抵触日管理シート(事業所単位/個人単位)
第2部: 立場別修正パターン
商品には「派遣元有利」「派遣先有利」の2バージョンを収録する。第1部はいずれにも偏らない標準版を基準としており、以下は各バージョンを作成する際の差分(代替条文)である。
A. 派遣元有利バージョンへの変更
A-1. 第9条(雇用安定を図るための措置)の派遣先負担を明確化
修正後: 「派遣先は、専ら派遣先に起因する事由により中途解除する場合、少なくとも解除日の30日前までに派遣元に申し入れるものとし、新たな就業機会を確保できないときは、休業手当相当額(休業手当の算定に必要な平均賃金及び休業期間を含む。)を派遣元に対して負担するものとする。」
解説: 猶予期間及び休業手当相当額の負担を具体的な数値・算定方法まで明記することで、派遣先の中途解除リスクを高め、派遣元の収入の安定を図る修正である。派遣先からは負担額の上限設定を求められることが想定される。
A-2. 第12条(派遣料金)に自動改定条項を追加
追加条文例: 「派遣料金は、最低賃金の改定、社会保険料率の変更その他派遣労働者の賃金水準に影響を及ぼす事情の変化があった場合、派遣元の申出により、当該事情に応じた金額に改定されるものとする。」
解説: 最低賃金引上げ等のコスト増を派遣料金に転嫁しやすくする条項であり、派遣元の採算確保に資する。派遣先からは改定幅の上限や協議前置を求められやすい。
A-3. 第20条(中途解除)の解除事由を派遣先に厳格化
修正後: 派遣先からの中途解除事由を「派遣先の事業の廃止その他真にやむを得ない事由がある場合」に限定列挙し、単なる業績悪化等を理由とする解除を制限する。
解説: 派遣先の一方的な都合による解除を抑制し、派遣元の契約期間中の収入を確保する趣旨。派遣先の経営判断の柔軟性を狭める修正であるため、交渉抵抗が予想される。
A-4. 第21条(損害賠償)に上限を設けない
派遣元有利バージョンでは、派遣先の義務違反による損害賠償責任について上限額を設定せず、間接損害及び逸失利益を含む旨を明記する修正を行う。
A-5. 第11条(抵触日)の通知義務を派遣先に一方的に負わせる
修正後: 「事業所単位の抵触日に関する意見聴取手続の懈怠その他派遣先の事情により派遣可能期間の制限に抵触した場合、これにより生じた一切の損害(派遣労働者への休業手当相当額を含む。)は派遣先が負担する。」
解説: 期間制限違反は行政指導・是正勧告の対象となりうるため、その責任の所在を契約上明確化し、派遣元のリスクを派遣先に移転する趣旨の条項である。
B. 派遣先有利バージョンへの変更
B-1. 第9条(雇用安定を図るための措置)の派遣先負担を限定
修正後: 「派遣先が新たな就業機会の確保に努めたにもかかわらずこれができなかった場合の派遣元への費用負担は、派遣先が本契約に基づき派遣元から現に得ていた派遣料金の1か月分相当額を上限とする。」
解説: 派遣先の中途解除に伴う経済的負担に上限(cap)を設ける修正であり、派遣先が最も強く求める交渉ポイントの一つと考えられる。ただし、労働者派遣法上「雇用の安定を図るために必要な措置」を講ずる義務自体は契約条項の如何にかかわらず存続する点に留意が必要である。
B-2. 第12条(派遣料金)の自動改定条項を排除
修正後: 派遣料金の改定は、派遣元及び派遣先の書面による合意がある場合に限り行うものとし、一方当事者の申出のみでは改定されない旨を明記する。
B-3. 第20条(中途解除)に派遣先からの予告解除権を追加
追加条文例: 「派遣先は、〇か月前までに書面で予告することにより、理由を問わず本契約を解除することができる。ただし、この場合においても第9条に定める措置を講ずるものとする。」
解説: 業務量の変動に応じた柔軟な契約終了を可能にする条項。派遣元からは予告期間の長期化や違約金の要求が予想される。
B-4. 第21条(損害賠償)に上限を設定
追加条文例: 「派遣先が本契約に基づき負う損害賠償責任の累計額は、本契約に基づき直近6か月間に派遣先が派遣元に支払った派遣料金の総額を上限とする。ただし、派遣先の故意又は重過失による場合はこの限りでない。」
解説: 損害賠償額の上限設定は派遣先にとって重要な交渉ポイントであり、故意・重過失を除外することで派遣元とのバランスを取る例が一般的と考えられる。
B-5. 第7条(安全衛生)の役割分担を派遣元に厚く配分
修正後: 派遣労働者の安全衛生教育のうち、雇入れ時教育及び一般的な安全衛生に関する教育は派遣元の負担とし、派遣先は業務特有の設備・作業に関する教育のみを負担する旨を明記し、派遣先の実施範囲を限定する。
C. 標準版の位置づけ
第1部の本文がこれに該当する。派遣元・派遣先いずれの立場にも過度に偏らない基準条文として設計しており、実際の取引では取引先の力関係や業界慣行に応じて第2部の修正パターンを組み合わせて調整することが想定される。
第3部: 逐条解説(購入者向け)
第1条(目的)・第25条(基本契約との関係) 労働者派遣は、基本契約(枠組み契約)と個別契約(本契約)の二段階構造をとるのが一般的である。個別契約は労働者派遣法第26条第1項の法定明示事項を定める中心的な書面であり、基本契約と矛盾する場合の優劣関係をあらかじめ定めておくことが望ましい。
第2条(業務内容) 業務内容の記載が抽象的すぎると、派遣先が想定外の業務に派遣労働者を従事させる事態(いわゆる「業務外指示」)を招き、後日の紛争や偽装請負の疑いを招く原因となりうる。第3項の除外業務確認は形式的記載にとどまらず、実態として該当しないかを個別に確認することが重要と考えられる。
第3条(就業場所及び組織単位)・第4条(指揮命令者) 2015年改正以降、期間制限の管理単位が「組織単位」(課・グループ等の実態に即した単位)に変更されており、辞令上の部署名と実際の指揮命令系統が一致しているかを確認する必要がある。指揮命令者の明記は、派遣先の現場責任者が誰であるかを明確にし、後述する偽装請負との区別においても重要な要素となる。
第9条(雇用安定を図るための措置) 労働者派遣法上、派遣先の都合による中途解除の場面では、派遣先に新たな就業機会の確保や休業手当相当額の負担等の措置が求められる。この条項を契約書上どの程度具体化するかは、派遣元・派遣先間の交渉力によって大きく異なる部分であり、第2部A-1及びB-1で示した差分がその典型である。
第10条(派遣先が講ずべき措置に関する事項) 2020年施行の労働者派遣法改正(同一労働同一賃金関連)により、派遣先には比較対象労働者の待遇情報の提供義務が課されている。この情報提供がない場合、派遣元は労働者派遣契約を締結してはならないとされており、実務上は個別契約の締結前に当該情報提供が完了しているかを確認する運用が望ましい。
第11条(派遣可能期間の制限及び抵触日) 本テンプレートで最も実務上の注意を要する条項である。期間制限には「事業所単位」(原則3年、過半数労働組合等からの意見聴取により延長可能)と「個人単位」(同一の組織単位で3年が上限、延長不可)の2種類があり、両者は独立して管理する必要がある。抵触日を徒過した状態での労働者派遣は労働局による是正指導の対象となりうるため、抵触日管理シート(別紙)を用いて事業所単位・個人単位それぞれの抵触日を可視化し、期限の1か月前を目安に対応方針を協議する運用が望ましいと考えられる。
指揮命令権の所在とSES契約書との違い 労働者派遣とSES(システムエンジニアリングサービス、法的性質としては準委任契約が一般的)との最大の相違点は、指揮命令権の所在にある。労働者派遣では、第4条のとおり派遣先が派遣労働者に対する指揮命令権を有し、業務の遂行方法について具体的な指示を行うことが前提となる。これに対し、SES契約(準委任契約)では、受託者側の技術者が自らの裁量で業務を遂行し、委託者(発注者)が個々の作業について具体的な指揮命令を行うことは想定されていない。契約書のタイトルが「業務委託契約書」であっても、実態として発注者が受託者の従業員に直接具体的な指示を行っている場合、労働者派遣法及び職業安定法上の「偽装請負」に該当するおそれがあると解される。偽装請負に該当すると判断された場合、労働局による指導・勧告の対象となるほか、労働契約申込みみなし制度(労働者派遣法第40条の6)が適用される可能性がある点に留意が必要である。
第14条(社会保険及び労働保険の加入状況) 派遣労働者が社会保険・労働保険に加入していない場合の理由明示は法定明示事項であり、単に「未加入」とのみ記載するのではなく、加入要件を満たさない具体的な事情(労働時間が短い等)を明記することが望ましい。
第18条(反社会的勢力の排除) 派遣取引においても現在の契約実務でほぼ必須の条項である。派遣労働者の就業先という性質上、反社会的勢力該当性の確認は派遣元・派遣先双方の社会的責任として重要度が高いと考えられる。
第20条・第21条(中途解除・損害賠償) 中途解除に関する条項は、第9条の雇用安定措置と密接に関連する。中途解除の要件を緩和すればするほど派遣先に有利になる一方、派遣労働者の雇用安定という労働者派遣法の趣旨との整合性にも配慮する必要があると考えられる。
第22条・第23条(危険負担・不可抗力) 2020年施行の民法(債権法改正)により、危険負担に関する規定(旧536条等)の内容が整理され、履行不能の場合の反対給付請求権の帰趨についての考え方が変更されている。本条項は当該改正後の条文構成を踏まえたものであり、感染症の蔓延等、近年の実務で問題となりやすい事由を不可抗力条項に明記している。
第27条(合意管轄) 派遣先の事業所所在地を管轄とするか、派遣元の本店所在地を管轄とするかは交渉になりやすく、複数事業所を有する派遣先との取引では特に調整を要する点と考えられる。
第4部: 監修者への確認依頼事項
- 第2条第3項の「労働者派遣の対象から除外される業務」の列挙が、直近の政令改正(適用除外業務の範囲)に照らして最新の内容になっているか確認いただきたい。
- 第9条の雇用安定を図るための措置について、休業手当相当額の算定方法や新たな就業機会確保の努力義務の記載レベルが、指針(労働者派遣事業関係業務取扱要領等)に照らして過不足ないか確認いただきたい。
- 第10条第2項の比較対象労働者の待遇情報提供義務について、同一労働同一賃金に関する最新の指針・裁判例を踏まえた記載になっているか確認いただきたい。
- 第11条の抵触日管理(事業所単位・個人単位)について、意見聴取手続の記載(1か月前等の期限設定)が実務上の標準的な運用と整合しているか確認いただきたい。
- 第3部で解説した偽装請負とSES契約(準委任契約)との違いについて、労働契約申込みみなし制度に関する記述を含め、購入者向け解説として法的に不正確な点がないか確認いただきたい。
- 第18条の反社会的勢力排除条項の文言が、近年の裁判例及び各都道府県暴排条例のモデル条項に照らして最新の表現になっているか確認いただきたい。
- 第22条・第23条の危険負担・不可抗力条項が、2020年施行の民法(債権法改正)の条文構成(第536条等)と整合しているか、表現の正確性を確認いただきたい。
- 第2部の派遣元有利・派遣先有利バージョンの各修正パターンが、労働者派遣法上の強行法規(雇用安定措置等)に抵触し無効と評価されるおそれがないか確認いただきたい。