セット内容
- 販売店契約書 2バージョン(メーカー側/販売店側)Word形式
- テリトリー(地域・取扱チャネル)制限条項の解説
- 最低購入数量・在庫保有義務の取り決め例
こんな場面で
メーカーが特定地域・チャネルの販売店に商品を卸売りし、独占的または非独占的に販売を任せる取引を書面化する場面。
特長
- 売買契約と異なり、独占的販売権・テリトリー制限を条項化できる構成
- 最低購入数量未達時の契約解除・独占権喪失条件を標準装備
- 代理店契約書(dairiten-keiyaku)との違い(売買形式か媒介形式か)を解説
販売代理店契約書(監修用ドラフト)
⚠ 本ファイルは弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布を禁止する。
商品ID: hanbaiten-keiyaku / 価格: 3,480円 / 立場バージョン: メーカー側(供給者)有利・販売店側有利・基準(中立)
本ドラフトは第2部で2バージョン(メーカー側有利・販売店側有利)の差分を提示する構成とし、第1部には基準(中立)版をベース条文として掲載する。
なお、実務上「販売代理店」という名称は、(1)自己の名と計算で商品を買い取り再販売する「販売店(特約店)型」と、(2)メーカーの名において又はメーカーの計算において取引を媒介・取次ぐ「代理店型」の双方を指して用いられることがあり、両者は法的性質・在庫リスクの所在・報酬の形式等が大きく異なる。本テンプレートは実務上より一般的な「販売店(特約店)型」(買取再販型)を基本形として起草し、代理店型(媒介・取次型)との相違点は第3部で解説する。契約当事者の実態が代理店型(在庫を保有せず、手数料を収受する形態)である場合は、本テンプレートをそのまま用いず、委任・準委任型の代理店契約書に切り替えることを検討すべきである。
第1部: 契約書本文(基準版・中立)
販売代理店契約書
〇〇〇〇(以下「甲」という。)と〇〇〇〇(以下「乙」という。)とは、甲が製造又は輸入する商品の販売に関し、以下のとおり販売代理店契約(以下「本契約」という。)を締結する。なお、本契約は、乙が自己の名と計算において甲から商品を買い取り、これを第三者に再販売する形態(買取再販型・特約店型)を前提とするものであり、乙が甲の名において又は甲の計算において取引を媒介・取次ぐ形態(代理店型)を前提とするものではない。
第1条(目的)
本契約は、甲が別紙記載の商品(以下「本商品」という。)を乙に販売し、乙がこれを買い取って第三者に再販売するにあたり、甲乙間の権利義務関係を定めることを目的とする。
第2条(取扱商品の範囲)
- 本契約に基づき乙が取り扱う商品は、別紙に定める本商品とする。
- 甲は、本商品の仕様、規格又は品目を変更し、又は別紙記載の商品を追加若しくは削除しようとするときは、あらかじめ乙に通知するものとし、当該変更等が乙の販売活動に重大な影響を及ぼすと認められる場合には、甲乙協議のうえこれを決定する。
第3条(発注・供給条件)
- 乙は、本商品を購入しようとするときは、品目、数量、希望納期その他甲所定の事項を記載した注文書を甲に交付するものとする。
- 甲は、前項の注文書を受領した場合において、在庫状況その他合理的な事情があるときは、注文の全部又は一部を承諾しないことができる。
- 甲は、注文を承諾したときは、合理的な期間内に本商品を乙の指定する場所に納品する。納品に要する費用の負担及び危険負担の移転時期は、別途甲乙間で定めるところによる。
- 乙は、本商品の納品を受けたときは、遅滞なく数量及び品質について検査(以下「検収」という。)を行い、その結果を甲に通知するものとする。検収の方法及び期間は、別途甲乙協議のうえ定める。
第4条(契約不適合責任)
- 前条の検収の結果、本商品が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないもの(以下「契約不適合」という。)であることが判明した場合、乙は、甲に対し、目的物の修補、代替物の引渡し若しくは不足分の引渡しによる履行の追完、代金の減額、損害賠償又は契約の解除を、民法その他の法令の定めるところに従い請求することができる。
- 乙は、前項の契約不適合を知った時から1年以内にその旨を甲に通知しない場合、当該契約不適合を理由とする権利を行使することができない。ただし、甲が納品の時においてその契約不適合を知り、又は重大な過失によって知らなかったときは、この限りでない。
- 本条に基づく請求権は、民法所定の消滅時効(契約不適合を知った時から5年間又は納品の時から10年間)に服する。
第5条(販売価格及び再販売条件)
- 甲が乙に本商品を販売する価格(以下「取引価格」という。)は、別紙のとおりとする。取引価格の改定については、甲乙協議のうえ定める。
- 乙が本商品を第三者に再販売する価格は、乙が自己の判断と責任において自由に決定するものとし、甲は乙に対し再販売価格を指示し、又はこれに事実上拘束を及ぼす行為を行わないものとする。
- 前項の定めは、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(以下「独占禁止法」という。)上、再販売価格の拘束が原則として不公正な取引方法に該当し得ることを踏まえたものであり、甲乙は、取引価格その他の取引条件の設定にあたり、独占禁止法その他関連法令を遵守するものとする。
第6条(独占的販売権及び販売地域)
- 甲は、乙に対し、別紙記載の地域(以下「本地域」という。)における本商品の独占的な販売権を許諾する。
- 甲は、本地域内において、乙以外の第三者に対し本商品を直接又は間接に販売しないものとする。ただし、甲が自ら本地域内の顧客に直接販売する必要がある場合その他甲乙間で別段の合意をした場合は、この限りでない。
- 本条の独占的販売権の付与は、乙による本商品の販売促進努力及び第9条の最低購入数量の達成を前提とするものであり、その見直しの要否については第10条及び第11条の定めるところによる。
第7条(最低購入数量)
- 乙は、別紙に定める期間中、別紙に定める数量(以下「最低購入数量」という。)以上の本商品を甲から購入するよう努めるものとする。
- 甲及び乙は、市場環境の変化その他合理的な事情が生じた場合には、最低購入数量の見直しについて協議することができる。
第8条(商標及び商号の使用許諾)
- 甲は、乙に対し、本契約の有効期間中、本商品の販売促進に必要な範囲に限り、甲の商標及び商号(以下「甲商標等」という。)を使用することを許諾する。
- 乙は、甲の事前の書面による承諾を得ることなく、甲商標等を本契約の目的以外の用途に使用し、又は第三者に使用させてはならない。
- 乙は、甲商標等の信用を損なう行為を行ってはならない。
- 本契約が終了したときは、乙は直ちに甲商標等の使用を中止し、甲商標等を付した広告物、看板その他の表示物を撤去するものとする。
第9条(競合品の取扱制限)
- 乙は、本契約の有効期間中、本地域において、甲の事前の書面による承諾を得ることなく、本商品と競合する商品(以下「競合品」という。)を製造し、輸入し、又は販売してはならない。
- 前項の競合品の範囲は、本商品と機能・用途・顧客層において実質的に競合する商品をいうものとし、その具体的な範囲については別紙に定める。
- 甲及び乙は、本条の制限が独占禁止法上の拘束条件付取引又は排他条件付取引に該当するおそれがあることを踏まえ、制限の範囲を必要最小限のものとするよう努めるものとする。
第10条(在庫及び返品条件)
- 乙は、本商品の販売に支障が生じないよう、適正な水準の在庫を保有するよう努めるものとする。
- 乙が購入した本商品について、契約不適合その他甲の責めに帰すべき事由がある場合を除き、乙は原則として甲に対し返品をすることができない。
- 前項にかかわらず、甲乙間で別途合意した場合には、甲は、合理的な範囲で乙からの返品に応じることができる。
第11条(契約期間)
- 本契約の有効期間は、本契約締結日から1年間とする。
- 期間満了の3か月前までに甲又は乙のいずれからも書面による更新拒絶の意思表示がないときは、本契約は同一条件でさらに1年間更新されるものとし、以後も同様とする。
- 甲又は乙は、6か月前までに書面により相手方に通知することにより、期間満了を待たずに本契約を中途解約することができる。
第12条(契約終了時の措置)
- 本契約が期間満了、解約その他の事由により終了した場合、乙は、甲商標等の使用を中止するほか、甲の指示に従い、顧客情報その他甲から開示を受けた資料を返還し、又は廃棄するものとする。
- 本契約終了時に乙が保有する本商品の在庫の取扱い(甲による買取りの要否、買取価格の算定方法等を含む。)については、別紙に定めるところによる。別紙に定めがない場合は、甲乙協議のうえこれを決定する。
- 本契約の終了は、終了前に生じた甲乙間の債権債務に影響を及ぼさない。
第13条(知的財産)
- 本商品に関する特許権、実用新案権、意匠権、商標権、著作権その他の知的財産権は、本契約に別段の定めがある場合を除き、すべて甲に帰属する。
- 乙は、本商品に関する甲の知的財産権を侵害し、又はそのおそれのある行為を行ってはならない。
- 乙は、本商品に関して第三者から知的財産権侵害の主張を受けた場合、直ちに甲に通知し、甲の指示に従うものとする。
第14条(秘密保持)
- 甲及び乙は、本契約の履行にあたり相手方から開示を受けた技術上・営業上の情報(本商品の仕様、取引価格、顧客情報等を含む。)を秘密として保持し、相手方の事前の書面による承諾を得ることなく第三者に開示し、又は本契約の目的以外に使用してはならない。
- 前項の規定は、開示を受けたときに既に公知であった情報その他一般的な秘密保持契約における適用除外事由に該当する情報には適用しない。
- 本条の義務は、本契約終了後も3年間存続する。
第15条(反社会的勢力の排除)
- 甲及び乙は、それぞれ相手方に対し、自己(自己の役員を含む。)が、暴力団、暴力団員、暴力団員でなくなった時から5年を経過しない者、暴力団準構成員、暴力団関係企業、総会屋等、社会運動等標ぼうゴロ又は特殊知能暴力集団その他これらに準ずる者(以下「反社会的勢力」と総称する。)に該当しないこと、及び次の各号のいずれにも該当しないことを表明し、保証する。 (1)反社会的勢力が経営を支配していると認められる関係を有すること (2)反社会的勢力が経営に実質的に関与していると認められる関係を有すること (3)自己若しくは第三者の不正の利益を図る目的又は第三者に損害を加える目的をもってするなど、不当に反社会的勢力を利用していると認められる関係を有すること (4)反社会的勢力に対して資金等を提供し、又は便宜を供与するなどの関与をしていると認められる関係を有すること (5)自己の役員又は経営に実質的に関与している者が反社会的勢力と社会的に非難されるべき関係を有すること
- 甲及び乙は、自ら又は第三者を利用して、次の各号の行為を行わないことを表明し、保証する。 (1)暴力的な要求行為 (2)法的な責任を超えた不当な要求行為 (3)取引に関して脅迫的な言動をし、又は暴力を用いる行為 (4)風説を流布し、偽計を用い又は威力を用いて相手方の信用を毀損し、又は相手方の業務を妨害する行為 (5)その他前各号に準ずる行為
- 甲又は乙が前2項の表明保証に違反した場合、相手方は、何らの催告を要せず本契約を解除することができる。この場合、解除した当事者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負わない。
第16条(権利義務の譲渡禁止・存続条項・協議事項・合意管轄)
- 甲及び乙は、相手方の事前の書面による承諾を得ることなく、本契約上の地位並びに本契約に基づく権利及び義務の全部又は一部を第三者に譲渡し、担保に供し、又はその他の処分をしてはならない。
- 第4条、第8条第4項、第12条、第13条、第14条及び本条第4項の規定は、本契約終了後も有効に存続する。
- 本契約に定めのない事項又は本契約の条項の解釈に疑義が生じた事項については、甲乙誠実に協議のうえ解決する。
- 本契約に関する一切の紛争については、〇〇地方裁判所を第一審の専属的合意管轄裁判所とする。
以上、本契約締結の証として本書2通を作成し、甲乙記名押印のうえ、各自1通を保有する。
〇〇〇〇年〇〇月〇〇日
(甲)住所 商号又は名称 代表者名 印
(乙)住所 商号又は名称 代表者名 印
第2部: 立場別修正パターン
商品には「メーカー側有利」「販売店側有利」「基準(中立)」の3バージョンを収録する。第1部は「基準(中立)」を前提としており、以下は他2バージョンを作成する際の差分(代替条文)である。
A. メーカー側(供給者)に有利なバージョンへの変更
A-1. 第6条(独占的販売権)を撤回可能な条件付き付与に変更
修正前(中立版): 独占的販売権を無条件で付与し、見直しは協議事項にとどめる
修正後(メーカー側有利): 「甲は、乙が別紙記載の最低購入数量その他甲が定める販売目標を達成することを条件として、乙に対し本地域における独占的な販売権を許諾する。甲は、乙が当該条件を達成できないと合理的に判断した場合には、乙に対する書面通知により、独占的販売権を非独占的販売権に変更し、又はこれを撤回することができる。」
解説: 独占的販売権を無条件・恒久的に付与すると、販売店の営業努力が不十分な場合であっても甲が本地域で自ら又は他の販売店を通じて販売する途が閉ざされてしまう。目標未達を独占権見直しの契機として明記することで、メーカー側の機動性を確保する趣旨である。
A-2. 第7条(最低購入数量)に未達時の解除・独占権剥奪条項を追加
修正前(中立版): 最低購入数量は努力目標にとどまり、未達の効果が明記されていない
修正後(メーカー側有利): 「乙が2四半期連続して最低購入数量の80%を下回った場合、甲は、乙に対する催告のうえ、独占的販売権を撤回し、若しくは本地域を縮小し、又は本契約を解除することができる。」
解説: 最低購入数量を単なる努力義務とした場合、未達が生じても契約上の対応手段がなく、事実上のノルマとしての機能を果たさない。未達を明確な解除・独占権剥奪事由とすることで、メーカー側が販売網の実効性を確保しやすくなる。
A-3. 第12条(契約終了時の措置)から在庫買取義務を削除
修正前(中立版): 在庫買取りの要否・条件は別紙又は協議による
修正後(メーカー側有利): 「本契約終了時に乙が保有する本商品の在庫については、甲は買取義務を負わないものとする。乙は、自己の責任と負担において在庫を処分するものとし、これにより生じた損失について甲に対しその補償を求めることができない。」
解説: 在庫買取義務を明記すると、契約終了時にメーカー側に想定外の資金負担が生じる。買取義務を明確に否定することで、契約終了に伴うメーカー側のコストをあらかじめ限定することができる。
A-4. 第9条(競合品取扱制限)の範囲を拡大
修正前(中立版): 競合品を本商品と実質的に競合する商品に限定
修正後(メーカー側有利): 「乙は、本契約の有効期間中及び本契約終了後1年間、本地域の内外を問わず、甲の事前の書面による承諾を得ることなく、本商品と同一又は類似の用途を有する商品(直接の競合品に限らない。)を製造し、輸入し、又は販売してはならない。」
解説: 競合品の範囲を拡大し、地域及び期間を拡張することで、乙が本商品の販売終了後に類似商品の取扱いへ乗り換えることを防止できる。ただし、この修正は独占禁止法上の拘束条件付取引・競争者との取引制限に該当するリスクを高めるため、範囲・期間の設定にあたっては特に慎重な検討を要する。
A-5. 第3条(供給条件)における発注応諾義務の明確な否定
修正前(中立版): 甲は合理的な事情がある場合に注文を承諾しないことができる
修正後(メーカー側有利): 「甲は、乙からの注文に対し、理由の如何を問わず、その全部又は一部を承諾しないことができるものとし、甲は乙に対しその理由を開示する義務を負わない。」
解説: メーカー側の需給調整の自由度を高める修正であるが、独占的販売権を付与しつつ発注応諾義務を全面的に否定すると、乙の事業継続に不当な不利益を及ぼすものとして独占禁止法上の優越的地位の濫用に該当するおそれがある点には留意すべきである。
B. 販売店・代理店側に有利なバージョンへの変更
B-1. 第6条(独占的販売権)の恒久化及び地域拡大請求権の付与
修正前(中立版): 独占的販売権の見直しは甲乙協議による
修正後(販売店側有利): 「甲は、乙が本契約に基づく義務を著しく懈怠しない限り、本契約の有効期間中、本地域における独占的販売権を継続して乙に付与するものとし、正当な理由なくこれを撤回し、又は本地域を縮小してはならない。乙は、販売実績が良好な場合には、本地域の拡大を甲に申し入れることができ、甲はこれに誠実に対応するものとする。」
解説: 販売店の立場からは、多大な販売投資(人員配置、在庫確保、広告宣伝等)を独占的地位の存続を前提に行うことが多いため、独占権の安定性を高める規定は投資回収の予見可能性を高める。
B-2. 第7条(最低購入数量)未達時の猶予措置
修正前(中立版): 未達の効果が不明確、又は(Aバージョンでは)直ちに解除・独占権剥奪事由となる
修正後(販売店側有利): 「乙が最低購入数量を達成できなかった場合であっても、当該未達が市場環境の悪化その他乙の責めに帰さない事由による場合には、甲は、乙に対し独占的販売権の撤回、契約解除その他の不利益な措置を講じてはならない。甲がやむを得ず措置を講じようとする場合には、乙に対し3か月以上の改善期間を与えるものとする。」
解説: 最低購入数量の未達を直ちに解除事由とすると、販売店は市況変動のリスクを一方的に負担することになりかねない。責めに帰さない事由による未達を除外し、改善期間を設けることで、販売店の事業継続に配慮する。
B-3. 第12条(契約終了時の措置)にメーカーの在庫買取義務を明記
修正前(中立版): 在庫買取りの要否は別紙又は協議による
修正後(販売店側有利): 「本契約が甲の都合による解約又は甲の債務不履行を理由とする解除により終了した場合、甲は、乙が保有する本商品の在庫(未使用かつ再販売可能なものに限る。)を、乙の購入価格相当額で買い取るものとする。」
解説: 販売店は独占的販売権に基づき甲の指示する数量の在庫を保有することが多く、甲の都合による契約終了時に在庫がそのまま販売店の損失となることは酷である。買取義務を明記することで、販売店の在庫リスクを軽減する。
B-4. 第9条(競合品取扱制限)の範囲を限定
修正前(中立版): 実質的に競合する商品全般を制限
修正後(販売店側有利): 「乙が制限を受ける競合品は、本商品と同一の製品カテゴリーに属し、かつ、本地域における主要な顧客層が実質的に重複する商品に限るものとし、乙が既に取り扱っている商品及び本契約締結前から取引のある取引先との取引を制限するものではない。」
解説: 競合品の範囲を広く解すると、販売店は他の取引機会を大幅に制限されることになる。範囲を限定することで、販売店が本商品以外の事業機会を維持できるようにする趣旨である。
B-5. 第5条(販売価格)における取引価格の凍結・改定制限
修正前(中立版): 取引価格の改定は甲乙協議による
修正後(販売店側有利): 「甲は、本契約の有効期間中、正当な理由なく取引価格を引き上げてはならず、取引価格を改定しようとするときは、実施の3か月前までに乙に通知し、乙の同意を得るものとする。」
解説: メーカー側が一方的に仕入価格を引き上げることができる場合、販売店は再販売価格を自由に決定できる建付け(第5条第2項)であっても、実質的な利益率の悪化を通じて不利益を受ける。価格改定に事前通知と同意を要求することで、販売店の採算性を確保する。
C. 基準(中立)バージョンの位置づけ
第1部の本文がこれに該当する。基準版は、独占的販売権を付与しつつもその見直しの可能性を留保し、最低購入数量を努力義務にとどめ、在庫買取りの要否を個別合意(別紙)又は協議に委ねるなど、メーカー側・販売店側いずれか一方に著しく偏らない設計とした。実際の取引においては、市場における甲乙の交渉力、乙の投資規模、独占禁止法上のリスク許容度等を踏まえ、A・Bいずれの方向に修正するか、あるいは基準版のまま用いるかを個別に検討する必要がある。
第3部: 逐条解説(購入者向け)
販売店(特約店)型と代理店(媒介・取次)型の違い
「販売代理店契約」という名称は実務上多義的に用いられており、契約書を作成・レビューする際には、まず自社の取引実態がいずれの類型に該当するかを見極める必要がある。
- 販売店(特約店)型: 販売店が自己の名と計算で商品をメーカーから買い取り、これを第三者に再販売する形態。法的性質としては、メーカー・販売店間の売買契約が反復継続する構造であり、販売店は在庫リスク(売れ残りリスク、価格下落リスク等)を自ら負担する。収益は仕入価格と再販売価格の差額(マージン)である。本テンプレートはこの類型を基本形としている。
- 代理店型(媒介・取次型): 代理店がメーカーの名において、又はメーカーの計算において、第三者との間の売買契約の締結を媒介し、若しくは取次ぐ形態。法的性質としては準委任又は代理の性質を有し、代理店は在庫を保有せず、在庫リスクを負担しない。収益は取引金額に応じた手数料(コミッション)の形式をとることが一般的である。
両者は、独占禁止法上の位置づけ(後述の再販売価格拘束の問題は、代理店型では取引の相手方が実質的にメーカーであるため問題になりにくい場合がある)、下請法の適用可能性、消費税の扱い(売買か手数料か)等の点で取扱いが異なるため、契約類型の選択及び名称と実態の一致には注意を要する。本テンプレートを利用する際は、実態が代理店型(媒介・取次型)である場合には、本テンプレートをそのまま使用せず、委任・準委任型の代理店契約書に切り替えることを検討すべきである。
第1条(目的)
本契約が買取再販型(特約店型)であることを冒頭で明示し、後続条項の解釈指針とする趣旨の条項である。
第2条(取扱商品の範囲)
取扱商品の範囲及びその変更手続を定める。商品の仕様変更や取扱終了は販売店の事業計画に影響するため、事前通知及び協議の機会を確保している。
第3条(発注・供給条件)
発注、納品、検収の一連の流れを定める基本条項である。甲の発注応諾義務の有無は、独占的販売権とのバランスで検討すべき論点であり、第2部A-5で解説したとおり、応諾義務を過度に否定すると優越的地位の濫用のリスクが生じ得る。
第4条(契約不適合責任)
2020年施行の民法(債権法)改正に対応し、「瑕疵担保責任」の語を用いず「契約不適合責任」の語を用いている。追完請求、代金減額請求、損害賠償請求、契約解除という民法上の救済手段を確認的に規定し、通知期間(知った時から1年以内)及び消滅時効(契約不適合を知った時から5年、引渡しの時から10年)についても民法の原則に沿って整理した。
第5条(販売価格及び再販売条件)
再販売価格の拘束(再販売価格維持行為)は、独占禁止法上、原則として不公正な取引方法(一般指定)に該当するとされており、価格カルテルと並んで公正取引委員会が特に重視する規制類型である。本条は、乙が再販売価格を自由に決定する旨を明記することで、この点のリスクを可能な限り低減する設計とした。取引価格そのもの(甲から乙への卸売価格)を甲が一方的に定めること自体は直ちに独占禁止法違反となるものではないが、乙の再販売価格への関与(示唆、事実上の強制、価格を守らない場合の出荷停止等)は避けるべきである。
第6条(独占的販売権及び販売地域)
独占的販売権の付与は、販売店に投資インセンティブを与える一方、メーカー側の販売チャネルの柔軟性を制約する。基準版では独占を原則としつつ、最低購入数量の達成状況等を踏まえた見直しの余地を残す設計としている。独占的な取扱いを内容とする契約は、独占禁止法上の排他条件付取引に該当し得るため、制限の必要性・合理性を欠く場合には不公正な取引方法として問題となる可能性がある点にも留意が必要である。
第7条(最低購入数量)
いわゆる「ノルマ」条項である。未達成の効果を明記するか否か、明記する場合にどの程度厳格にするかは、メーカー側・販売店側の交渉力関係によって大きく異なる部分であり、第2部のA-2・B-2で対照的な修正例を示した。
第8条(商標及び商号の使用許諾)
商標・商号の使用許諾に加えて経営指導・統一的な販売方法の指定等が伴う場合、後述のとおりフランチャイズ契約としての規制(中小小売商業振興法等)が問題となり得るため、使用許諾の範囲は販売促進に必要な限度にとどめることが望ましい。
第9条(競合品の取扱制限)
競合品取扱制限は、独占禁止法上の拘束条件付取引に該当し得る典型的な条項である。制限の範囲が過度に広範である場合、市場閉鎖効果が生じるものとして問題視されるおそれがあるため、対象商品・地域・期間を必要最小限度に絞ることが望ましい。
第10条(在庫及び返品条件)
返品を無制限に認めると、乙の在庫リスクが実質的に消滅し、契約の類型が買取型から委託販売型に近づくことになる。基準版では、契約不適合等の甲の責めに帰すべき事由がある場合を除き返品を制限し、買取型の性質を維持する設計とした。
第11条(契約期間)
自動更新条項及び中途解約条項を設けた。中途解約の予告期間(本条例では6か月)は、独占的販売権を付与している場合には特に、販売店の事業計画への影響を考慮し、一定程度長期に設定することが望ましいと考えられる。
第12条(契約終了時の措置)
契約終了時の在庫買取義務の要否は、本テンプレートにおける最大の交渉論点の一つである。基準版では、買取りの要否を別紙又は協議に委ねる中立的な建付けとし、メーカー側有利版(A-3)では買取義務の明確な否定、販売店側有利版(B-3)ではメーカーの都合による終了の場合の買取義務化を、それぞれ提示した。
第13条(知的財産)
本商品に関する知的財産権が甲に帰属することを確認する条項である。乙が独自に開発したロゴ、販促物等の知的財産権の帰属については、必要に応じて別途規定することが望ましい。
第14条(秘密保持)
簡潔な相互秘密保持条項とした。取引の実態に応じ、より詳細な秘密情報の定義や例外事由が必要な場合は、別途秘密保持契約(NDA)を締結することも一案である。
第15条(反社会的勢力の排除)
近時の契約書において標準的に規定される反社会的勢力排除条項である。表明保証違反時の無催告解除及び解除者の損害賠償責任の不発生を定める点は、他の契約類型と同様である。
第16条(権利義務の譲渡禁止・存続条項・協議事項・合意管轄)
契約上の地位・権利義務の譲渡禁止、契約終了後も存続すべき条項(契約不適合責任、商標使用中止義務、契約終了時の措置、知的財産、秘密保持等)の指定、協議条項及び合意管轄条項をまとめて規定した。存続条項の対象範囲は、契約終了後に実際に問題となり得る条項を漏れなく含めることが重要である。
独占禁止法上の再販売価格拘束のリスクについて
メーカーが販売店に対し再販売価格を指示し、これを遵守しない販売店に対して出荷停止や契約解除等の不利益な取扱いを行うことは、再販売価格維持行為として独占禁止法上の不公正な取引方法に該当するとされている。再販売価格維持行為は、市場における価格競争を直接制限するものとして、公正取引委員会による法執行上特に重視されている類型であるため、契約書上及び運用上、乙の再販売価格決定の自由を尊重する必要がある。
独占禁止法上の排他条件付取引・拘束条件付取引のリスクについて
独占的販売権の付与(乙以外への販売禁止)や競合品取扱制限は、それ自体が直ちに違法となるものではないが、当該制限により競争者の取引機会が減少し、市場閉鎖効果が生じる場合には、排他条件付取引又は拘束条件付取引として不公正な取引方法に該当するおそれがある。制限の必要性、代替的な取引先の存否、制限を課す当事者の市場における地位等を総合的に考慮し、制限の範囲及び期間を必要最小限度にとどめることが望ましい。
第4部: 監修者への確認依頼事項
- 第5条第2項の再販売価格に関する不拘束の定めについて、実務上マージン確保のための「希望小売価格」の提示等、独占禁止法上許容される範囲の関与の仕方をどこまで条文上明記すべきか、ご確認いただきたい。
- 第6条の独占的販売権及び第9条の競合品取扱制限について、排他条件付取引・拘束条件付取引に該当するリスクの評価は取引当事者の市場シェアや市場構造に大きく依存するため、テンプレート利用者向けの注意書き(購入者向け解説)の記載内容で十分か、ご確認いただきたい。
- 第8条の商標・商号使用許諾に関連して、経営指導料の収受や統一的な店舗運営方法の指定等が加わる場合には中小小売商業振興法上のフランチャイズ規制(法定開示書面の交付義務等)が適用される可能性があるため、本テンプレートの解説における注意喚起の要否・程度についてご確認いただきたい。
- 本契約類型(買取再販型の販売店契約)について、下請法(下請代金支払遅延等防止法)上の親事業者・下請事業者の該当性(資本金区分及び取引類型としての「販売の委託」への該当性)を、第3部の解説にどの程度具体的に記載すべきか、ご確認いただきたい。
- 第12条第2項の契約終了時の在庫買取義務について、基準版を協議事項にとどめる設計が妥当か、あるいは何らかのデフォルトルール(例: 契約終了事由がいずれの当事者の責めに帰すべき場合かによって扱いを分けるなど)を基準版に組み込むべきか、ご確認いただきたい。
- 第4条の契約不適合責任における通知期間(知った時から1年以内)及び消滅時効の記載が、本商品の性質(消費財か耐久財か等)によって修正を要するか、ご確認いただきたい。
- 第11条の中途解約予告期間(6か月)及び自動更新条項の組み合わせが、独占的販売権を付与する契約として一般的な水準か、業種別の相場観も踏まえてご確認いただきたい。
- 第15条の反社会的勢力排除条項について、他の商品テンプレート(NDA等)との表現の整合性を保っているか、念のためご確認いただきたい。