パワハラやセクハラの相談を社内窓口で受け付ける場面の初動記録様式。労働施策総合推進法第30条の2が求める相談体制の整備と守秘の運用に対応している。
⚠ 本書式は弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布・公開を禁止する。 本書式は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別・具体的な法律相談に代わるものではない。
ハラスメント相談受付票
第1部: 書式本文
【受付日時】令和【 】年【 】月【 】日【 】時【 】分 【受付方法】□ 対面 □ 電話 □ メール・社内フォーム □ その他【 】 【相談窓口担当者】【氏名・所属】 【相談者氏名】【 】(【所属部署】/【役職】/【雇用形態】) 【相談者の希望する対応方法】□ 事実確認・調査を希望 □ 話を聞いてもらうのみで対応保留 □ 匿名での対応を希望 □ その他【 】 【相談内容の種別】□ パワーハラスメント □ セクシュアルハラスメント □ 妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント □ その他【 】 【行為者とされる者】【氏名・所属・役職(相談者との関係:上司/同僚/部下等)】 【発生時期(初回・直近・頻度)】【 】 【発生場所】【 】 【相談者が説明する具体的な言動(要旨)】【日時・場所・言動の内容を可能な範囲で時系列に記載】 【目撃者・同席者の有無】□ あり(【氏名】) □ なし □ 不明 【関連する証拠の有無】□ メール・チャット記録 □ 録音 □ 診断書・通院記録 □ その他【 】 □ なし 【相談者の心身の状況】□ 通院・受診の予定あり □ 就業継続に支障あり □ 特段の支障なし 【緊急性の有無(行為者との接触回避の要否)】□ 至急の配置転換等が必要 □ 経過観察で可 【相談者への説明事項】□ 秘密保持の範囲を説明済み □ 不利益取扱いの禁止を説明済み □ 今後の対応フロー(調査移行の可否・目安期間)を説明済み 【次回連絡予定日】令和【 】年【 】月【 】日 【本受付票の共有範囲】【共有を予定する役職者・部署(原則として必要最小限)】
第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン
A節: 相談窓口担当者用
- 記載例1: 「【本受付票の共有範囲】欄は、共有前に相談者本人の同意有無を別途チェックする欄を追加し、同意がない場合は人事部長のみへの限定共有とする運用にする。」 一言解説: 相談受付段階では事実未確定であるため、関係者への安易な共有は二次被害(プライバシー侵害)につながりやすく、共有範囲の限定が重要。
- 記載例2: 「【緊急性の有無】欄で『至急の配置転換等が必要』を選択した場合、担当者は受付当日中に上長へエスカレーションする旨を様式上に明記する。」 一言解説: 受付から初動対応までの時間差が二次被害の拡大につながるため、緊急度判定と初動アクションを様式内で連動させる。
- 記載例3: 「担当者が複数名で受付にあたる場合に備え、【相談窓口担当者】欄に主担当・記録担当を分けて記載する欄を設ける。」 一言解説: 相談者は一人に集中して話したいと考えることが多いため、聞き役と記録役を分担しておくと相談者の心理的負担を軽減できる。
B節: 相談者本人記入用
- 記載例1: 「【相談者が説明する具体的な言動(要旨)】欄は、相談者が口頭で話した内容を担当者が要約する場合でも、必ず相談者本人に読み上げて確認を取った旨のチェック欄を設ける。」 一言解説: 担当者の要約と相談者の認識にずれがあると、後の調査段階で信用性の争いになりやすいため、初動段階での本人確認が重要。
- 記載例2: 「【相談者の希望する対応方法】欄で『匿名での対応を希望』を選んだ場合、匿名のままでは事実調査が困難になる可能性がある旨を担当者が説明した記録を残す欄を追加する。」 一言解説: 匿名相談は制度上尊重されるべきだが、調査に進めない場合があることを事前に伝えておくと後日のトラブルを防げる。
- 記載例3: 「【相談者の心身の状況】欄で『通院・受診の予定あり』を選んだ場合、相談者本人の希望に応じて産業医・保健スタッフへの連携要否を選べるチェック欄を追加する。」 一言解説: ハラスメント相談は心身の不調を伴うことが多く、相談窓口と健康管理部門の連携経路を相談者自身が選べるようにしておくと支援につながりやすい。
第3部: 書き方と法的ポイント解説
本様式は、パワーハラスメントやセクシュアルハラスメント等の相談を社内の相談窓口が最初に受け付ける場面、すなわち事実調査の開始前の初動記録として使用する。根拠となるのは、労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(労働施策総合推進法)第30条の2であり、事業主は職場におけるパワーハラスメントについて、相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。同条第2項は、相談を行ったことを理由とする不利益取扱いを禁止しており、本様式の【相談者への説明事項】欄はこの禁止事項の説明履行を記録する趣旨で設けている。セクシュアルハラスメントについては雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律第11条、妊娠・出産等に関するハラスメントについては同法第11条の3及び育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律第25条が同様の措置義務を定めており、相談内容の種別に応じて根拠条文が異なる点に注意を要する。厚生労働省が定める各指針は、相談窓口の担当者があらかじめ相談対応の手順を定め、相談者のプライバシーを保護しつつ内容や状況に応じた適正な対応を行うことを求めており、本様式はこの「相談対応の手順」を具体化する一次書式として機能する。
使ってはいけない場面としては、既に事実関係の確認・認定まで完了し、行為者への処分や措置の判断段階に至っている場合である。その段階では本様式ではなく調査結果をまとめた別書式(ハラスメント調査報告書)を用いるべきであり、本様式に事実認定や処分の当否を書き込むことは、初動記録としての客観性を損なうため避けるべきである。
実務でよくある失敗として、第一に、相談を受けた担当者が相談内容を関係者に安易に共有し、相談者の特定につながって二次被害を生じさせる例がある。対策として、【本受付票の共有範囲】欄を必要最小限に限定し、相談者の同意確認を明示している。第二に、相談者の話をそのまま鵜呑みにして行為者への事情聴取前に対応方針を決めてしまい、後の調査で事実と異なることが判明する例がある。対策として、本様式はあくまで相談者側の申告内容の記録にとどめ、行為者側の言い分は別途の調査手続で確認する前提を第1部の項目構成で示している。第三に、相談を受け付けたこと自体を放置し、次回連絡や初動対応が遅れる例がある。対策として、【次回連絡予定日】と【緊急性の有無】を必須記載事項とした。第四に、相談者が話す内容を担当者の主観で要約・整理しすぎてしまい、相談者本人の言葉が失われ、後の調査で「言った・言わない」の争いになる例もある。対策として、【相談者が説明する具体的な言動(要旨)】欄はできる限り相談者の発言をそのまま記録し、要約する場合は必ず本人確認を得る運用を第2部B節で示した。なお、ハラスメントの該当性判断や調査への移行要否は事案の内容により異なるため、個別事案については弁護士等の専門家に確認することが望ましい。
第4部: 使用前チェックリスト
- [ ] 受付日時・受付方法が記録されているか
- [ ] 相談窓口担当者の氏名・所属が記載されているか
- [ ] 相談内容の種別(パワハラ・セクハラ・妊娠出産関係等)が特定されているか
- [ ] 行為者とされる者と相談者との関係性が記載されているか
- [ ] 具体的な言動が可能な範囲で時系列に記載されているか
- [ ] 目撃者・証拠の有無が確認されているか
- [ ] 相談者の心身の状況・緊急性が確認されているか
- [ ] 秘密保持と不利益取扱い禁止の説明を行った記録があるか
- [ ] 共有範囲が必要最小限に限定され、相談者の同意状況が記録されているか
- [ ] 匿名希望の場合、調査への移行可否についての説明記録があるか
- [ ] 次回連絡予定日が設定されているか
- [ ] 行為者側の事情聴取結果や事実認定を本様式に書き込んでいないか
- [ ] 主担当・記録担当など複数名で対応する場合の役割分担が記載されているか
- [ ] 心身の不調がある場合、産業医・保健スタッフへの連携要否が確認されているか