プロバイダから開示請求への意見を求められた発信者が、プロバイダ責任制限法の照会に対し開示への同意又は不同意と理由を回答します。
⚠ 本書式は弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布・公開を禁止する。 本書式は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別・具体的な法律相談に代わるものではない。
発信者情報開示に係る意見照会回答書
第1部: 書式本文
発信者情報開示に係る意見照会回答書は、開示関係役務提供者(プロバイダ)から、情報流通プラットフォーム対処法(旧プロバイダ責任制限法)第6条第1項に基づき、発信者情報の開示について意見を求められた発信者が、開示への同意又は不同意とその理由を回答する書面である。他の4書式が権利侵害を主張する側からの請求であるのに対し、本書式は開示請求を受ける側である発信者本人が作成する点で立場が逆転している。
- 宛先: 【開示関係役務提供者(プロバイダ)名】意見照会担当窓口 御中
- 回答者: 発信者(アカウント名義又は契約者名)、連絡先
- 回答日: 【回答書作成年月日】
- 意見照会番号・受付番号の引用: プロバイダから通知された照会書面記載の管理番号
- 対象投稿の特定: 照会書面に記載されたURL・投稿ID等の確認
- 開示への同意・不同意の別: 【同意する/同意しない】のいずれかを明示
- 不同意とする場合の理由: 当該投稿が正当な論評・意見の表明であること、事実の摘示を含まないこと、権利侵害の明白性が認められないこと等、具体的な反論
- 法的根拠(不同意の場合): 表現の自由(憲法第21条)に基づく正当な表現行為であること、名誉毀損の違法性阻却事由(公共性・公益目的・真実性又は相当性)に該当すること
- 同意する場合の付言: 開示先の限定を求める場合はその範囲(氏名・住所・電話番号等、開示関係情報の限定)についての意見
- 開示命令手続に関する認識の表明: 発信者情報開示命令事件(情報流通プラットフォーム対処法第8条以下の非訟手続)が係属している場合はその認識、意見陳述の機会が付与されている場合の対応方針
- 添付資料: 投稿の正当性を裏付ける資料(引用元、公開情報等)
- 回答期限の遵守: 照会書面に記載された期限(通常7日程度)内に回答する旨
- 末尾文言: 期限内の回答がない場合、プロバイダの判断で開示の可否が決せられる可能性がある旨の認識
- 連絡先: 郵送先、メールアドレス、電話番号
- 代理人が回答する場合: 委任状の写しを添付し、本人からの授権があることを明示する
- 今後の連絡方法の指定: 郵送・メール等、追加の照会や開示命令事件における通知の受領方法についての希望
意見照会書面は、契約者(回線名義人)と実際の投稿者(発信者)が異なる場合、契約者宛てに送付されることがある。この場合、契約者は投稿の実行者を確認した上で、投稿者本人の意見も踏まえて回答することが望ましい。
第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン
A. 回答する発信者側の書き換え
「本件投稿は、私が実際に体験した事実に基づく感想及び意見の表明であり、具体的な事実を摘示して相手方の社会的評価を低下させるものではありません。したがって、発信者情報の開示には同意いたしません。」
一言解説: 意見・論評型であることを主張し、名誉毀損の要件である事実摘示性を否定することで開示の要件(権利侵害の明白性)が満たされないと反論する書き方。
「仮に本件投稿が事実を摘示するものであるとしても、その内容は真実であり、かつ公共の利害に関する事実に係り、専ら公益を図る目的でなされたものです。」
一言解説: 事実摘示型と評価される可能性を踏まえた予備的主張として、違法性阻却事由(真実性・相当性、公共性、公益目的)を主張する書き方。
B. 照会するプロバイダ側の書き換え
「貴殿より頂戴したご回答内容を踏まえ、情報流通プラットフォーム対処法第6条第1項に基づく意見照会の結果として記録し、開示の可否について検討いたします。なお、開示命令事件が申し立てられた場合には、裁判所からの意見聴取に応じていただく場合があります。」
一言解説: 意見照会は開示の可否を確定させるものではなく、あくまで判断材料の一つであることを明示し、非訟手続への移行可能性を示す。
「照会期限までにご回答をいただけなかったため、貴殿のご意見がないものとして、他の資料に基づき開示の可否を判断いたします。」
一言解説: 不応答の場合の取扱いを明示することで、発信者に回答の重要性を認識させる文例。
「貴殿が開示に不同意である旨のご回答をいただきましたが、権利侵害の明白性が認められると当社が判断した場合には、貴殿の不同意にかかわらず開示に応じることがあります。」
一言解説: 発信者の不同意が絶対的な拒否権ではなく、プロバイダ又は裁判所の判断材料の一つにとどまることを明確にする文例。
第3部: 書き方と法的ポイントの解説
本書式は、プロバイダから発信者情報開示請求に関する意見照会(通常は郵送又はメールで、回答期限は7日程度に設定されることが多い)を受けた発信者が、開示への同意・不同意を回答する場面で使用する。他方、既に発信者情報開示命令事件として裁判所での非訟手続が開始され、裁判所から直接意見聴取の期日が指定されている場合には、本書式のみで対応を完結させず、当該手続における意見陳述の準備を並行して行う必要がある。
根拠法令は、情報流通プラットフォーム対処法(旧プロバイダ責任制限法)第6条第1項(開示関係役務提供者による発信者への意見照会義務)である。令和3年改正により新設された発信者情報開示命令事件の手続(同法第8条以下、非訟事件手続法の特則)により、従来は仮処分と本案訴訟の2段階が必要であった開示手続が一体的な非訟手続として整理された経緯があり、意見照会はこの手続の入口に位置づけられる。発信者が開示に同意した場合、プロバイダは原則として開示に応じることになり、後日の紛争リスクが低減される一方、不同意とした場合はプロバイダが権利侵害の明白性等を独自に判断し、又は開示命令事件における裁判所の判断に委ねられることになる。
実務でよくある失敗として、第一に、意見照会に対して期限内に回答せず、結果として発信者の意見が反映されないままプロバイダの判断のみで開示の可否が決せられてしまう例がある。対策として第1部12項のとおり期限の厳守を徹底する。第二に、不同意とする理由を「開示されたくないから」といった感情的な記載にとどめ、正当な論評であることや違法性阻却事由の該当性など法的な理由を示さないため、プロバイダの判断において考慮されにくい例がある。対策として第1部7項・8項の法的根拠を具体的に記載する。第三に、開示に同意する場合において、開示される発信者情報の範囲(氏名・住所のみか、電話番号まで含むか等)について意見を述べる機会があることを認識せず、包括的な同意をしてしまう例がある。発信者情報開示の可否や範囲の判断は事案ごとに異なるため、専門家に確認することが望ましい。
第4部: 使用前チェックリスト
- [ ] プロバイダから送付された意見照会書面の管理番号・対象投稿を確認したか
- [ ] 開示への同意・不同意のいずれかを明確に選択したか
- [ ] 不同意とする場合、正当な論評・意見の表明であることを具体的に説明したか
- [ ] 事実摘示型と評価される可能性を踏まえた予備的主張(違法性阻却事由)を検討したか
- [ ] 開示に同意する場合、開示される発信者情報の範囲について意見を述べる余地があるか確認したか
- [ ] 回答期限(通常7日程度)を確認し、期限内に回答したか
- [ ] 発信者情報開示命令事件として裁判所手続が開始されているか確認したか
- [ ] 添付資料(投稿の正当性を裏付ける資料等)を準備したか
- [ ] 感情的な表現ではなく法的根拠に基づく記載になっているか
- [ ] 回答内容が将来の開示命令事件における主張と矛盾しないか確認したか