利用者からの問合せ一次受付業務を外部委託する契約書。民法第656条の準委任に加え、応対記録に含まれる個人データの取扱いを個人情報保護法に沿って規定。

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ヘルプデスク業務委託契約書

第1部: 書式本文

第1条(目的) 甲(委託者)は、乙(受託者)に対し、甲の【製品/サービス名】に関する利用者からの問合せの一次受付業務(以下「本業務」という。)を委託し、乙はこれを受託する。

第2条(業務内容) 本業務の内容は次のとおりとする。 一 電話、メール又はチャットによる問合せの一次受付 二 FAQ及びナレッジベースに基づく回答対応 三 一次対応で解決しない案件の甲又は二次窓口への引継ぎ(エスカレーション) 四 対応記録の作成及び甲への報告

第3条(業務の性質) 本業務は準委任(民法第656条)とし、乙は善良な管理者の注意(民法第644条)をもってこれを行う。

第4条(対応品質目標) 乙は、次の各号を目標として業務を遂行する。 一 応答率 【〇】%以上 二 平均応答時間 【〇秒】以内 三 一次解決率 【〇】%以上

第5条(エスカレーション基準) 乙は、FAQ及びナレッジベースで解決できない案件、苦情・クレームに該当する案件、法的な判断を要する案件について、別紙エスカレーション基準に従い、速やかに甲の指定する窓口に引き継ぐ。

第6条(対応記録に含まれる個人データの取扱い) 乙は、本業務の遂行にあたり取得する利用者の氏名、連絡先その他の個人データについて、個人情報保護法及び甲の定める安全管理措置に従って取り扱い、本業務の目的以外に利用してはならない。

第7条(委託先としての義務) 乙は、個人情報保護法第25条に基づき甲が行う監督に応じるとともに、対応記録へのアクセス権限を業務上必要な者に限定する等の安全管理措置を講じる。

第8条(応対品質のモニタリング) 甲は、乙の応対品質を確認するため、通話録音の抽出確認その他の方法によりモニタリングを行うことができる。乙は、これに必要な協力を行う。

第9条(苦情対応) 乙は、利用者からの苦情のうち、甲の製品・サービスの瑕疵、法令違反の疑いその他重要な事案については、直ちに甲へ報告する。

第10条(委託料) 委託料は、【固定額/対応件数に応じた変動制】とし、甲は乙に対し【支払サイト】に従い支払う。

第11条(再委託) 乙は、本業務の全部又は一部を第三者に再委託する場合、事前に甲の書面による承諾を得るものとする。

第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン

A. 受託者向け

A-1. 対応品質目標の努力目標化

修正条文例:「第4条の各数値は乙が達成に努める目標値であり、問合せ件数の急増その他やむを得ない事由がある場合、乙はその責任を負わない。」 一言解説: キャンペーンや障害発生時の問合せ急増による目標未達がそのまま契約違反とされないための修正である。

A-2. エスカレーション後の責任分界

修正条文例:「乙は、第5条に基づき案件を甲の窓口へ引き継いだ後の対応について、責任を負わない。」 一言解説: 一次受付業務の範囲を明確にし、引継ぎ後の対応品質についてまで受託者が責任を負わないようにする修正である。

B. 委託者向け

B-1. エスカレーション基準の具体化

修正条文例:「乙は、利用者が『解約』『法的措置』『損害賠償』等のキーワードを用いた場合、FAQでの対応にかかわらず直ちに甲の指定窓口へエスカレーションする。」 一言解説: エスカレーション基準を抽象的な「重要案件」に留めず、具体的なトリガーを設定して見落としを防ぐ修正である。

B-2. モニタリング結果に基づく改善要求権

修正条文例:「甲は、モニタリングの結果、応対品質が著しく低いと認める場合、乙に対し改善計画の提出を求めることができ、乙はこれに従い【〇日】以内に改善計画を提出する。」 一言解説: モニタリングを実施するだけでなく、結果を品質改善に結びつける実効性のある条項とする修正である。

第3部: 書き方と法的ポイント解説

使う場面/使ってはいけない場面 本書式は、製品・サービスの利用者からの問合せについて、一次受付とFAQベースの回答対応を外部のヘルプデスク事業者に委託する場面で用いる。技術的な障害切分けや復旧作業まで委託する場合は、監視業務委託契約や運用保守契約と組み合わせて役割分担を明確にする必要があり、本書式のみで技術対応まで包含させることは責任の所在を曖昧にするため避けるべきである。

根拠法令 ヘルプデスク業務は継続的な役務提供であり、民法第656条の準委任として整理される。応対記録には利用者の氏名、連絡先、問合せ内容等の個人データが含まれることが通常であり、委託者は個人情報保護法第25条に基づき委託先を監督する義務を負う。受託者は、取得した個人データを委託された業務の目的以外に利用しないことが求められ、目的外利用は同法第18条の目的外利用の制限に抵触するおそれがある。また、通話録音によるモニタリングを行う場合、録音の実施について利用者への周知(通話冒頭のアナウンス等)を検討することが望ましい。

実務でよくある失敗と対策 第一に、応対品質目標(応答率、応答時間等)を確約と解釈されうる表現で定め、繁忙期の目標未達がそのまま契約違反とされる失敗がある。A-1のように努力目標であることを明記することが対策となる。第二に、エスカレーション基準を「重要な案件は速やかに報告する」といった抽象的な定めに留め、実際には深刻な苦情が一次受付の段階で止まってしまい対応が遅れる失敗がある。B-1のように具体的なトリガーワードや基準を設けることが有効である。第三に、対応記録に含まれる個人データの管理について、アクセス権限の限定や委託先の再委託先における管理体制まで手当てせず、情報漏えい時に監督義務違反を問われる失敗がある。第7条のように安全管理措置を具体的に定める必要がある。

第四に、再委託の可否を定めずに契約し、受託者が委託者の知らないうちに海外の外部拠点へ問合せ対応業務の一部を再委託していたことが後日判明し、対応記録に含まれる個人データの越境移転の適法性が問題となる失敗もある。第11条のように再委託の事前承諾制を明記し、再委託先の所在地についても報告を求めることが望ましい。

エスカレーション基準の設計や品質目標の水準は、対象となる製品・サービスの性質によって異なるため、個別事案は専門家に確認することが望ましい。

第4部: 使用前チェックリスト

  • [ ] 業務範囲(一次受付、FAQ対応、エスカレーション、記録作成)を具体的に定めたか
  • [ ] 対応品質目標(応答率、応答時間、一次解決率)が努力目標であることを明記したか
  • [ ] エスカレーション基準を具体的なトリガーで定めたか
  • [ ] 対応記録に含まれる個人データの取扱いを個人情報保護法に沿って規定したか
  • [ ] 委託先の監督(個人情報保護法第25条)に必要な安全管理措置を明記したか
  • [ ] モニタリングの方法及び結果に基づく改善要求の手続を定めたか
  • [ ] 苦情・クレーム対応時の報告基準を定めたか
  • [ ] 委託料の算定方法(固定額/変動制)を定めたか
  • [ ] 再委託の可否及び再委託先への義務付けを定めたか
  • [ ] 通話録音を行う場合の利用者への周知方法を確認したか