月内で繁閑差がある職場向け。起算日・各日の所定労働時間・シフト周知手続を定め、労働基準法第32条の2に基づく変形労働時間制を適法に運用します。

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1か月単位の変形労働時間制に関する規程

第1部: 書式本文

第1条(目的) 本規程は、労働基準法第32条の2の規定に基づき、1か月以内の期間を平均して1週間当たりの労働時間が法定労働時間を超えない範囲で、特定の日又は週に法定労働時間を超えて労働させる変形労働時間制(以下「本制度」という。)の実施に関し必要な事項を定める。

第2条(適用対象部門及び対象者) 本制度は、【シフト勤務を実施する店舗運営部門】に所属する従業員に適用する。ただし、妊娠中若しくは産後1年を経過しない女性従業員が請求した場合、又は満18歳未満の年少者には、労働基準法第60条・第66条の定めるところにより適用しない。

第3条(対象期間及び起算日) 対象期間は毎月【 】日を起算日とする1か月間とする。

第4条(1週間の平均労働時間) 対象期間における1週間当たりの平均労働時間は、40時間(労働基準法第40条及び同法施行規則第25条の2の特例措置対象事業場は44時間)を超えないものとする。 2 対象期間中の総労働時間の上限は、次の算式により算定する。 40時間 ×(対象期間の暦日数 ÷ 7)

第5条(勤務シフトの編成及び特定) 各従業員の始業・終業時刻、休憩時間及び各日の所定労働時間は、勤務シフト表(以下「シフト表」という。)により対象期間の開始日の前日までに具体的に特定する。 2 シフト表には、各日の始業時刻、終業時刻、休憩時間及び所定休日を明記する。 3 1日の所定労働時間の上限は【10】時間、1週間の所定労働時間の上限は【52】時間とする。

第6条(シフト表の周知) 会社は、確定したシフト表を、対象期間の開始日の少なくとも【7】日前までに、事業場の見やすい場所への掲示、書面の交付又は電子メールその他の方法により、対象従業員に周知する。

第7条(シフトの変更) いったん特定したシフトは、原則として変更しない。ただし、次の各号のやむを得ない事由が生じた場合に限り、会社は従業員と協議のうえ変更することができる。 一 天災その他の不可抗力 二 従業員の傷病その他やむを得ない一身上の事由 三 会社の事業運営上、緊急にシフトを変更する必要がある場合であって、対象となる従業員の同意を得たとき 2 前項によりシフトを変更する場合、会社は変更後のシフトを速やかに書面等により周知する。

第8条(休日) 休日は、シフト表において特定する。休日は1週間に少なくとも1日又は4週間を通じ4日以上を確保する。

第9条(時間外労働の取扱い) 次の各号に該当する労働時間は時間外労働として取り扱い、労働基準法第37条に基づく割増賃金を支払う。 一 シフト表であらかじめ8時間を超える所定労働時間が定められた日については、当該所定労働時間を超えて労働した時間 二 シフト表であらかじめ8時間以内の所定労働時間が定められた日については、8時間を超えて労働した時間 三 シフト表であらかじめ40時間を超える所定労働時間が定められた週については、当該所定労働時間を超えて労働した時間(前2号により時間外労働となる時間を除く。) 四 シフト表であらかじめ40時間以内の所定労働時間が定められた週については、40時間を超えて労働した時間(前2号により時間外労働となる時間を除く。) 五 対象期間における労働時間の合計が、第4条第2項に定める総労働時間の上限を超える場合の当該超えた時間(前各号により時間外労働となる時間を除く。)

第10条(休日労働・深夜労働の割増賃金) シフト表に定める休日に労働させた場合は、労働基準法第37条に基づき休日労働の割増賃金を支払う。 2 午後10時から午前5時までの間に労働させた場合は、深夜労働の割増賃金を、前条及び前項の割増賃金に加えて支払う。

第11条(1週間または1日の起算時刻) 1日とは午前0時から午後12時までの暦日をいい、1週間とは日曜から土曜までの7日間をいう。

第12条(労使協定又は就業規則による導入) 本制度は、就業規則(本規程を含む。)に定めることにより導入する。ただし、常時10人未満の労働者を使用し就業規則の作成義務(労働基準法第89条)がない事業場では、労使協定を締結し所轄労働基準監督署長に届け出ることにより導入することができる。

第13条(規程の改廃) 本規程の改廃は、労働基準法第89条・第90条の定めるところにより従業員代表の意見を聴取したうえで会社が行う。

附則 本規程は【西暦】年【 】月【 】日から施行する。

第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン

A節: シフト勤務職場向け

小売店舗や飲食店等、日々のシフトを組んで運営する職場では、シフト作成の柔軟性と法定の事前特定義務の両立が課題となる。

修正条文例(第5条第1項の書き換え): 「各従業員の始業・終業時刻、休憩時間及び各日の所定労働時間は、店舗ごとに店長が作成するシフト表により、対象期間の開始日の前日までに具体的に特定する。シフト表の作成に当たっては、繁忙時間帯に配置人員を厚くする一方、1日及び1週間の所定労働時間の上限(第5条第3項)を超えないよう調整する。」

一言解説: シフト制職場では、店長等の現場責任者がシフトを作成する運用が一般的だが、特定義務は使用者(法人)にあるため、シフト作成権限を現場に委譲する場合でも、周知の期限(第6条)や変更事由の限定(第7条)を本部として統一的にルール化しておく必要がある。

B節: 月末繁忙型職場向け

経理・物流等、月末や特定の週に業務が集中する職場では、あらかじめ繁忙週の所定労働時間を長く設定する設計が有効である。

修正条文例(第4条に第3項として追加): 「3 対象期間のうち、毎月【25】日から末日までの週については、シフト表において1日の所定労働時間を【9】時間、1週間の所定労働時間を【45】時間まで特定することができる。ただし、対象期間全体の平均が第4条第1項の週平均労働時間を超えないよう、閑散週の所定労働時間を短縮して調整する。」

一言解説: 月末に業務が集中する職場では、繁忙週の所定労働時間を長く設定し、閑散週で相殺する設計により、時間外割増賃金の発生を抑制できる。ただし、対象期間を通じた総労働時間の上限(第4条第2項)を必ず遵守し、繁忙週の設定が恒常的な長時間労働の固定化にならないよう、閑散週の労働時間短縮を実際に運用することが重要である。

第3部: 書き方と法的ポイントの解説

本規程は、1か月以内の期間で業務量に日次・週次の繁閑差がある職場において、法定労働時間の枠を柔軟に配分し、時間外割増賃金の発生を抑えつつ運用したい場面で導入する。他方、業務の繁閑パターンが不規則で対象期間開始前にシフトを具体的に特定することが困難な職場や、恒常的な人員不足を変形制の導入で補おうとする場合には適さない。シフトの特定が困難な場合はフレックスタイム制(労働基準法第32条の3)等、他の制度の検討が必要である。

根拠法令は労働基準法第32条の2(1か月単位の変形労働時間制)であり、同条は、就業規則その他これに準ずるもの、又は労使協定により、1か月以内の一定期間を平均し1週間当たりの労働時間が法定労働時間(週40時間、特例措置対象事業場は週44時間)を超えない定めをした場合、特定の週又は日において法定労働時間を超えて労働させることができる旨を定める。労使協定で導入する場合は所轄労働基準監督署長への届出(同法第32条の2第2項)が必要である点は共通するが、1年単位の変形労働時間制(同法第32条の4)とは異なり、対象期間の労働日数の上限(いわゆる年280日規制)は設けられていない。また、各日・各週の労働時間は対象期間開始前にあらかじめ具体的に特定しなければならない(事前特定義務)。

実務上よくある失敗として、第一に、シフトを対象期間開始後に作成・変更したり、「業務の都合により変更することがある」といった包括的な留保のみで事後的に確定させたりする運用があり、これは事前特定義務違反とされ、変形制自体が否定されて通常の法定労働時間(1日8時間・週40時間)を基準とした割増賃金の支払義務が生じるリスクがある。対策として、第5条・第6条のようにシフト確定の期限と周知方法を具体的に定め、第7条のように変更事由を限定列挙することが有効である。第二に、対象期間全体の週平均労働時間が法定労働時間を超えていないかの確認を怠り、繁忙週を長く設定したまま閑散週の調整を実施しないケースがある。対策として、第4条第2項のように総労働時間上限の算式を明記し、作成時に必ず検算する運用を定めることが望ましい。第三に、あらかじめ8時間を超える所定労働時間が定められた日についてはその所定労働時間を超えた部分から時間外労働とすべき判定基準(第9条各号)を誤って適用し、割増賃金の過少払いが生じるケースがある。対策として、第9条のように日・週・対象期間の3段階での判定基準を条文上明確にすることが重要である。

なお、特例措置対象事業場の該当性やシフト変更が許容される範囲の具体的な判断は、事業場の実情によって異なり得るため、個別事案については社会保険労務士又は弁護士等の専門家に確認することを推奨する。

第4部: 使用前チェックリスト

  • [ ] 対象期間を1か月以内の範囲で定め、起算日を規定したか(労働基準法第32条の2)
  • [ ] 対象期間平均の1週間当たり労働時間が法定労働時間(週40時間、特例事業場は週44時間)を超えない設計か
  • [ ] 就業規則か労使協定かを明確にし、労使協定の場合は所轄労働基準監督署長への届出を予定しているか
  • [ ] 各日・各週の始業・終業時刻及び所定労働時間を、開始前にシフト表等で具体的に特定する運用か
  • [ ] シフト表の周知期限(開始日の何日前までか)を具体的に定めたか
  • [ ] シフト変更が認められる事由を限定的に列挙し、恣意的な変更を防ぐ設計か
  • [ ] 1日・1週間の所定労働時間の上限を定めたか
  • [ ] 時間外労働の判定基準(日・週・対象期間の3段階)を条文上明確にしたか
  • [ ] 休日(週1日又は4週4日)の付与を確保する設計か
  • [ ] 妊産婦・年少者に対する適用除外の取扱いを定めたか
  • [ ] 深夜労働・休日労働の割増賃金の取扱いを別途明記したか
  • [ ] 1年単位の変形労働時間制(同法第32条の4)との混同がなく、対象期間1か月以内を前提とした条文になっているか