秘密保持義務の存続期間を延長する覚書です。延長対象の情報、延長後の期間、返還・廃棄義務の起算点を明確にします。後日の紛争を防ぐための確認欄をあらかじめ設けています。
⚠ 本書式は弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布・公開を禁止する。 本書式は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別・具体的な法律相談に代わるものではない。
秘密保持期間延長覚書
第1部: 書式本文
秘密保持期間延長覚書
【開示者】(以下「甲」という。)と【受領者】(以下「乙」という。)は、甲乙間で【年】年【月】月【日】日付で締結した【原契約名称、例:秘密保持契約書】(以下「原契約」という。)における秘密保持義務の存続期間の延長に関し、以下のとおり合意する。
第1条(延長の対象) 本覚書は、原契約第【 】条に基づき甲が乙に開示した別紙記載の情報(以下「対象情報」という。)に関する秘密保持義務についてのみ適用する。
第2条(延長後の存続期間) 原契約第【 】条に定める秘密保持義務の存続期間は、原契約における満了日である【年】年【月】月【日】日から、これを【 】年間延長し、【年】年【月】月【日】日までとする。
第3条(延長の起算点) 前条の期間延長は、対象情報ごとに原契約に基づく開示日を起算点とし、本覚書締結後に新たに開示される情報には適用しない。新たな開示については原契約及び本覚書の内容に従い別途取り扱う。
第4条(目的外使用の禁止の継続) 乙は、延長期間中も対象情報を原契約第【 】条に定める目的以外に使用してはならず、第三者に開示又は漏えいしてはならない。
第5条(返還及び廃棄) 乙は、延長期間の満了時又は甲の請求があったときは、遅滞なく対象情報が記録された媒体及び複製物を甲に返還し、又は甲の指示に従い廃棄し、その旨を書面で報告する。
第6条(原契約との関係) 本覚書に定めのない事項については、原契約の定めるところによる。原契約と本覚書の内容に矛盾抵触がある場合は、本覚書を優先する。
第7条(損害賠償) 乙が第4条又は第5条に違反したことにより甲に損害が生じたときは、乙は甲に対しその損害を賠償する。
第8条(再委託先等への周知) 乙は、対象情報を取り扱わせている自己の役員、従業員及び委託先が存在する場合、これらの者に対しても本覚書に定める延長後の秘密保持義務を遵守させるものとし、違反があったときは乙自身の違反とみなす。
第9条(通知義務) 乙は、対象情報の漏えい若しくは漏えいのおそれ、又は本覚書に反する事態を知ったときは、直ちにその内容を甲に通知し、甲の指示に従い必要な措置を講じる。
第10条(存続条項) 本覚書に基づき延長された秘密保持義務、第5条(返還及び廃棄)、第7条(損害賠償)及び本条は、延長期間の満了後も、対象情報が現に秘密性を有する限りにおいてなお効力を有する。
第11条(協議事項) 本覚書に定めのない事項及び疑義が生じた事項については、甲乙誠実に協議のうえ解決する。
以上の合意を証するため、本書2通を作成し、甲乙記名押印のうえ各自1通を保有する。
【年】年【月】月【日】日
甲(開示者) 住所: 氏名又は名称: 印
乙(受領者) 住所: 氏名又は名称: 印
[別紙:対象情報の特定] 1. 【情報の名称・内容】 2. 【開示日】 3. 【記録媒体・形態】
第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン
A節:開示者側の視点で強化する場合
開示者としては、延長期間中の管理状況を確認できる権利を追加しておくと安心です。
第4条の2(管理状況の報告) 乙は、甲の書面による求めがあったときは、対象情報の管理状況について報告するものとする。
一言解説:単に延長するだけでなく、期間中に開示者が状況を把握できる仕組みを入れることで、漏えいの早期発見につながります。
B節:受領者側の視点で負担を限定する場合
受領者としては、無期限に近い延長を避け、延長期間の上限や自動更新の禁止を明記しておくことが望ましいです。
第2条(修正例) 延長後の存続期間は【 】年間とし、当該期間満了後は自動更新しない。再延長を行う場合は、甲乙が別途書面で合意した場合に限る。
一言解説:自動更新条項がないと、意図せず義務が延々と継続するリスクを避けられます。
C節:対象情報が広範囲にわたる場合
対象情報を個別に特定せず包括的に定義されている原契約の延長では、対象範囲を再確認する条項を加えます。
第1条(修正例) 本覚書は、原契約に基づき甲が乙に開示した情報のうち、延長時点で秘密保持義務の存続期間が満了していないものに限り適用する。
一言解説:既に義務が消滅した情報にまで遡って延長すると解釈される事態を避けるための限定です。
D節:グループ会社間で情報が流通している場合
乙が対象情報をグループ会社に共有している実態がある場合、延長時にグループ会社への適用関係も併せて確認しておきます。
第8条(修正例) 乙は、対象情報を共有した自己のグループ会社に対しても、本覚書に定める延長後の秘密保持義務と同等の義務を遵守させる。これを怠ったことにより生じた損害は乙が負担する。
一言解説:グループ会社への共有を放置したまま延長しても実効性がないため、共有先まで含めて義務を及ぼす必要があります。
第3部: 書き方と法的ポイント解説
使う場面
既存の秘密保持契約(NDA)における秘密保持義務の存続期間が満了に近づいており、取引継続中で当該情報がなお機密性を有する場合に用います。共同開発やM&A交渉が長期化した場合などが典型例です。
使ってはいけない場面
原契約自体が既に終了し、秘密保持義務の存続期間も満了してしまっている場合、本覚書のみで義務を復活させることは困難です。この場合は新たな秘密保持契約の締結を検討すべきです。また、対象情報が既に不正競争防止法上の「営業秘密」(同法第2条第6項)の要件を欠くに至っている場合、延長しても法的保護の対象とはなりません。
根拠法令
本覚書は民法第521条以下の契約自由の原則に基づく合意です。秘密情報の保護については、営業秘密性の要件(秘密管理性・有用性・非公知性)を定める不正競争防止法第2条第6項が関連します。また、消滅時効に関する民法第166条の考え方も、義務の存続期間設計の際に参考になります。
よくある失敗と条項上の対策
- 延長対象を明確にせず「秘密情報全般」とだけ記載してしまい、後日どの情報が対象か争いになる失敗があります。対策として第1条・別紙で対象情報を具体的に列挙します。
- 起算点を曖昧にしたまま延長期間だけを定め、開示時期の異なる情報について適用関係が不明確になる失敗があります。対策として第3条で情報ごとの起算点を明記します。
- 原契約と延長覚書の優先関係を定めず、矛盾が生じたときの解釈が分かれる失敗があります。対策として第6条のように優先関係を明記します。
また、延長覚書自体を口頭やメールのみで済ませてしまい、後日「延長に合意した事実がない」と争われる例も見られます。秘密保持義務は当事者の合意により内容が確定する契約上の義務であるため、延長の合意も書面(電磁的記録を含む)により明確に残すことが重要です。原契約に更新・変更は書面によるべき旨の条項(いわゆる完全合意条項や書面変更条項)が置かれている場合は、その方式に従う必要があります。
なお、対象情報の性質や取引の背景によって適切な延長期間や条項構成は異なるため、個別事案は専門家に確認のうえ最終的な内容を確定してください。
第4部: 使用前チェックリスト
- 原契約の名称・締結日・条番号を正確に特定したか
- 延長対象となる情報を別紙等で具体的に特定したか
- 延長後の満了日を計算し誤りなく記載したか
- 起算点(開示日基準か契約締結日基準か)を明確にしたか
- 自動更新の有無を明記したか
- 返還・廃棄の方法と報告義務を定めたか
- 原契約との優先関係を明記したか
- 記名押印者が正当な代表権限を有することを確認したか
- 印紙税の要否を確認したか
- 対象情報が営業秘密の要件を満たすかを社内で確認したか
- 相手方の管理体制について報告を求める条項の要否を検討したか
- 締結後、原本を適切に保管する体制を整えたか