情報を極秘・秘・社外秘等に区分し取扱方法を定める運用様式。不正競争防止法の秘密管理性を客観的に示す証拠資料として機能します。
⚠ 本書式は弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布・公開を禁止する。 本書式は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別・具体的な法律相談に代わるものではない。
秘密情報の管理レベル区分表
第1部: 書式本文
本様式は、【株式会社○○】(以下「当社」という。)における秘密情報を管理レベルごとに区分し、各区分に応じた取扱方法を明示することにより、社内における統一的な運用を実現するとともに、不正競争防止法上の秘密管理性を客観的に立証する資料として用いるものである。
1 区分の目的 情報の重要性・機密性に応じて【極秘・秘・社外秘・公開】の4段階に区分し、区分ごとに異なる保管・アクセス・持出しのルールを定める。
2 区分基準 (1) 極秘:漏えいした場合に当社の事業継続に重大な支障を及ぼすもの(例:未公開の研究開発データ、M&A関連情報、重要顧客の個人データを含む名簿) (2) 秘:漏えいした場合に競争上の不利益又は取引先との信頼関係の毀損を招くもの(例:製造ノウハウ、価格表、見積原価、人事考課情報) (3) 社外秘:社内では共有されるが社外に流出させるべきでないもの(例:社内会議資料、組織図、社内マニュアル) (4) 公開:プレスリリース等、対外的に公表することを前提とした情報
3 表示方法 書類の場合は各ページ右上に区分名を朱書き又はスタンプで表示し、電子データの場合はファイル名及びプロパティに区分を記載するとともに、可能な場合は電子透かしを付す。
4 閲覧権限マトリクス 極秘:【情報管理責任者及び個別に指定された役職員】に限定 秘:【当該部門の管理職以上及び担当者】に限定 社外秘:【全従業員】に許可(退職者・派遣期間終了者を除く) 公開:制限なし 上記マトリクスの詳細は別紙「役職・部門別アクセス権限一覧」による。
5 保管方法 極秘:施錠付き耐火金庫又は暗号化のうえアクセス制御されたサーバの専用フォルダに保管し、責任者以外は解除できないものとする。 秘:施錠付きキャビネット又はアクセス権限を設定したフォルダに保管する。 社外秘:通常の執務室内で保管して差し支えないが、終業後は書類を机上に放置しない。
6 複製及び持出しの制限 極秘:複製を原則禁止とし、複製が必要な場合は情報管理責任者の個別承認及び複製記録の作成を要する。持出しは原則禁止する。 秘:複製・持出しには部門管理職の事前承認と持出簿への記録を要する。 社外秘:複製は可能だが、社外への持出しには上長の承認を要する。
7 電子データの取扱い 極秘及び秘に区分される電子データは、社外のクラウドストレージや私有端末への保存を禁止し、電子メールで送信する場合はパスワード付き圧縮又は暗号化を行う。
8 第三者への開示 極秘及び秘の情報を取引先・委託先に開示する場合は、事前に秘密保持契約を締結し、開示範囲を必要最小限に限定する。社外秘の情報については、部門長の判断により開示の可否を決定する。
9 保存期間及び廃棄 各区分の情報は、業務上の必要性がなくなった時点で、極秘・秘についてはシュレッダー処理又は溶解処理により、復元不可能な方法で廃棄する。廃棄記録は【3】年間保存する。
10 区分の見直し 情報管理責任者は、年【1】回、各情報の区分の妥当性を点検し、区分の格上げ又は格下げが必要な場合は速やかに見直しを行う。
11 違反時の取扱い 本様式に定める取扱いに違反した場合は、営業秘密管理規程に定める懲戒手続に従う。
12 記録・証跡の保存 アクセスログ、持出簿、複製記録及び廃棄記録は、秘密管理性の立証資料として、少なくとも【当該情報の保有期間中及び退職者に係る訴訟等の可能性を考慮した期間】保存する。
第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン
A節: 情報管理責任者向け 情報管理責任者が全社の運用を統括する場合、第4項の閲覧権限マトリクスを部署別・役職別に細分化した別紙台帳として整備し、第10項の見直しサイクルを半期ごとに短縮する。一言解説として、区分の見直し履歴自体が「継続的に秘密管理を行っている」ことの証拠となるため、見直しの実施記録を残すことが重要である。
B節: 現場部門の運用用 現場担当者が日常的に参照する運用マニュアルとして用いる場合、第2項の区分基準を具体的な業務書類名(例:「見積書は秘」「製品カタログは公開」)に置き換えた一覧表形式に加工し、第6項の持出し承認を部門内の簡易な口頭承認フローに調整する。一言解説として、現場での運用負担が重すぎると形骸化するため、区分数や承認手続を業務実態に合わせて簡素化しつつ、記録だけは省略しないことが実務上のバランスとなる。
C節: 営業秘密規程の附属様式 本様式を営業秘密管理規程の附属様式として位置づける場合、冒頭に「本区分表は営業秘密管理規程第4条に基づく別紙である」旨を明記し、第11項の違反時の取扱いを規程本体の該当条文番号と対応させて引用する形に修正する。一言解説として、規程本体と附属様式の対応関係を明示しておくことで、両書式が一体として秘密管理体制を構成していることを対外的に説明しやすくなる。
第3部: 書き方と法的ポイント解説(解説)
本様式は、既に営業秘密管理規程等の基本方針が存在する組織において、情報の区分基準と取扱方法を具体化し、現場での統一運用を図る場面で使用する。区分基準を定めるだけで実際の運用(表示・アクセス制限・記録化)が伴わない場合は、後述のとおり秘密管理性の立証において不利に働くため、本様式単独の整備で足りるとは考えないことが必要である。
根拠法令は不正競争防止法第2条第6項の秘密管理性要件である。裁判例及び経済産業省が公表している「営業秘密管理指針」では、秘密管理性が認められるためには、当該情報にアクセスできる者を制限し(アクセス制限)、かつ当該情報が秘密であることを従業員が認識できるようにしていること(客観的認識可能性)が重要な考慮要素とされている。本様式のように区分ごとの基準・表示方法・アクセス権限を明文化し運用することは、この2要素を裏付ける具体的な証拠資料として機能する。
実務でよくある失敗の一つは、区分の数を多くしすぎて現場が運用しきれず、結局すべての書類が未区分のまま扱われてしまうケースである。この対策として、第2項のように区分基準を3〜4段階程度に絞り、具体例を明記して現場が判断に迷わないようにすることが有効である。二つ目は、区分表自体は整備されているものの、実際のアクセスログや持出記録が残されておらず、訴訟等の場面で運用実態を立証できないケースである。第12項のように記録・証跡の保存を明文化し、実際に記録を継続することが対策となる。三つ目は、区分の見直しが行われず、退職者や組織変更後もアクセス権限が旧態依然のまま残ってしまうケースであり、第10項のような定期的な見直し手続を組み込むことで対応する。
秘密管理性の立証は個別の事実関係(業種、情報の性質、実際の運用状況)によって評価が異なるため、自社の区分表が十分な証拠力を持つかどうかについては専門家に確認することが望ましい。
第4部: 使用前チェックリスト(チェックリスト)
- [ ] 区分数(3〜4段階)と各区分の定義・具体例を定めたか
- [ ] 区分ごとの書類・電子データへの表示方法を決めたか
- [ ] 役職・部門別の閲覧権限マトリクスを別紙で整備したか
- [ ] 区分ごとの保管方法(施錠・暗号化等)を具体的に定めたか
- [ ] 複製及び社外持出しの承認フローを区分ごとに定めたか
- [ ] 電子データの社外クラウド保存・私有端末利用の可否を定めたか
- [ ] 第三者開示時の秘密保持契約締結ルールを定めたか
- [ ] 廃棄方法及び廃棄記録の保存期間を定めたか
- [ ] 区分の定期見直しの頻度と実施主体を定めたか
- [ ] アクセスログ・持出簿等の記録項目と保存期間を定めたか
- [ ] 営業秘密管理規程等の上位規程との整合性を確認したか
- [ ] 違反時の取扱いを就業規則・規程の懲戒条項と対応付けたか