図面・規格値・試験方法など製品仕様を確定させる品質協定書。民法第566条の通知期間制限を踏まえ、仕様変更手続と変更時の在庫責任を定めます。

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品質協定書(スペック合意)

第1部: 書式本文

品質協定書

発注者【発注者名】(以下「甲」という。)及び製造者【製造者名】(以下「乙」という。)は、甲が乙に発注する下記製品(以下「本製品」という。)の品質仕様に関し、以下のとおり協定を締結する。

記 製品名称:【製品名称】 型式・品番:【型式・品番】

第1条(目的) 本協定は、本製品の仕様、規格値及び試験方法を確定し、甲乙間における品質基準の齟齬を防止することを目的とする。

第2条(仕様の確定) 1. 本製品の仕様は、甲乙合意の上で別紙として添付する仕様書【仕様書番号・版数】、図面【図面番号・版数】及び規格値一覧に定めるとおりとする。 2. 前項の規格値には、寸法公差、材料成分、強度・耐久性等の性能値並びに外観基準を含む。 3. 乙は、本製品の製造に当たり、前二項の仕様書及び図面に厳密に従うものとし、独自の判断で仕様を変更してはならない。

第3条(試験方法及び検査基準) 1. 本製品の適合性は、別紙に定める試験方法【試験方法名・規格番号】により判定する。 2. 乙は、出荷前に自社の品質管理部門において全数又は抜取りによる検査を実施し、検査記録を【保管期間】保管する。 3. 甲は、乙の製造工程及び検査記録を、事前に通知の上、営業時間内に監査することができる。

第4条(仕様変更手続) 1. 甲又は乙が仕様の変更を必要と認めるときは、変更内容、理由及び希望実施時期を記載した仕様変更申請書を相手方に交付し、協議を求めるものとする。 2. 仕様変更は、甲乙双方が変更後の仕様書に記名押印し、変更管理台帳に登録した時点で効力を生じる。 3. 乙は、甲の書面による承認を得ない限り、仕様変更後の製品を出荷してはならない。

第5条(変更時の在庫責任) 1. 仕様変更の実施日以前に乙が保有する旧仕様の原材料、仕掛品及び完成品(以下「旧仕様在庫」という。)の取扱いは、甲乙協議の上で別途定める。 2. 甲の指示に起因する仕様変更の場合、甲は、乙が既に発注済み又は製造済みであった旧仕様在庫のうち、他用途への転用が合理的に困難なものについて、乙の実費相当額を補償する。 3. 乙の都合による仕様変更(乙の製造工程上の必要性等)の場合、旧仕様在庫の処分費用は乙の負担とする。 4. 甲及び乙は、仕様変更の申入れの時点で、それぞれが保有する在庫数量を相手方に開示するものとする。

第6条(受入検査及び通知義務) 1. 甲は、本製品の納入を受けたときは、遅滞なく受入検査を行う。 2. 甲は、本製品が本協定に定める仕様に適合しないこと(以下「不適合」という。)を発見したときは、これを知った時から【1】年以内に乙に通知しなければ、当該不適合を理由とする追完請求、代金減額請求、損害賠償請求及び契約解除をすることができない。ただし、乙が納入時に不適合を知り、又は重大な過失によって知らなかったときはこの限りでない。 3. 前項の通知期間は、民法第566条の趣旨を踏まえて定めるものであり、当事者間の合意により伸長又は短縮することを妨げない。

第7条(秘密保持) 甲及び乙は、本協定に基づき知り得た相手方の仕様書、図面、規格値その他技術上・営業上の情報を、相手方の事前の書面による承諾なく第三者に開示又は漏洩してはならない。

第8条(有効期間) 本協定の有効期間は、締結日から【1】年間とする。ただし、期間満了の【1】か月前までにいずれの当事者からも書面による終了の申出がないときは、同一条件でさらに【1】年間自動更新されるものとし、以後も同様とする。

第9条(協議事項) 本協定に定めのない事項又は本協定の解釈に疑義が生じた事項については、甲乙誠実に協議の上、これを解決する。

以上を証するため、本協定書2通を作成し、甲乙記名押印の上、各1通を保有する。

【作成日】

甲(発注者) 住所: 名称: 代表者: 印

乙(製造者) 住所: 名称: 代表者: 印

第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン

A節 発注者(仕様提示側)向け

自社が仕様を設計し、複数の製造委託先に同一仕様で発注する場面を想定する。第2条の仕様提示義務を乙側に一方的に負わせるだけでなく、甲が提示した仕様書自体に誤りがあった場合の責任分担を明確にしておく必要がある。 before:「乙は、本製品の製造に当たり、前二項の仕様書及び図面に厳密に従うものとし、独自の判断で仕様を変更してはならない。」 after:「乙は、前二項の仕様書及び図面に従うものとする。ただし、乙は、当該仕様書又は図面に製造上の重大な支障又は誤りを発見したときは、直ちに甲に書面で報告し、甲の指示があるまで当該箇所の製造に着手してはならない。」 仕様提示側が図面ミスの責任まで乙に転嫁されないよう、乙からの指摘・報告義務と甲の再指示義務をセットで規定することが望ましい。

B節 製造者(仕様遵守側)向け

自社が甲から提示された仕様に基づき量産を担う場面では、仕様が抽象的・不完全なまま発注されるリスクに備え、第2条に仕様確定前の量産着手拒否権を追加する。 before:「乙は、本製品の製造に当たり、前二項の仕様書及び図面に厳密に従うものとし、独自の判断で仕様を変更してはならない。」 after:「乙は、甲が提出する仕様書及び図面に不明確な箇所又は数値の欠落があると認めるときは、量産開始前に甲に確認を求めることができ、甲の回答があるまで量産を留保することができる。」 また、第5条の在庫補償について、甲都合の変更にとどまらず量産開始後の需要変動による発注中止の場合にも準用する条項を追加し、製造者側の在庫リスクを限定する工夫が有効である。

第3部: 書き方と法的ポイント解説

本書式は、部品や部材の量産発注に先立ち、寸法・材料・強度・外観などの規格値と試験方法を書面で確定させる場面で使用する。取引基本契約とは別に、製品ごと・型式ごとに個別の品質協定として締結することで、仕様変更履歴を追跡しやすくなる。他方、単発の小口取引や、仕様が口頭確認で足りる汎用品の購入には過剰であり、取引基本契約書中の品質条項のみで足りる場合もある。

根拠法令としては、契約不適合責任における買主の通知期間制限を定める民法第566条、追完請求権を定める民法第562条、代金減額請求権を定める民法第563条が中心となる。加えて、量産部品の継続的取引においては下請代金支払遅延等防止法(下請法)第3条の書面交付義務や第4条の禁止行為(不当な給付内容の変更等)との関係も意識する必要がある。

実務でよくある失敗として、第一に、仕様変更の合意を口頭やメールのやり取りのみで行い、変更管理台帳に反映しないまま量産が進み、旧仕様品と新仕様品が混在するケースがある。対策として第4条第2項のように、記名押印及び変更管理台帳への登録という客観的な効力発生要件を設ける。第二に、甲都合の仕様変更で発生した旧仕様在庫の処分費用を巡って交渉が難航するケースがある。対策として第5条のように、変更原因(甲都合か乙都合か)に応じた費用負担基準をあらかじめ定めておく。第三に、受入検査での不適合発見が長期間放置され、民法第566条の通知期間を徒過して追完請求ができなくなるケースがある。対策として第6条第2項のように具体的な通知期限を明記し、期限管理を徹底する。

なお、規格値の技術的妥当性や下請法の適用有無は取引の実態によって判断が異なるため、個別事案は専門家に確認の上で条項の最終化を行うことを推奨する。

第4部: 使用前チェックリスト

  • [ ] 製品名称・型式・品番を具体的に特定しているか
  • [ ] 仕様書・図面・規格値一覧を別紙として添付し、版数管理をしているか
  • [ ] 試験方法及び検査基準(全数検査か抜取検査か)を明記しているか
  • [ ] 仕様変更申請の手続と承認権者を定めているか
  • [ ] 仕様変更の効力発生時点(記名押印・登録)を明確にしているか
  • [ ] 旧仕様在庫の補償ルールを甲都合・乙都合それぞれで規定しているか
  • [ ] 受入検査の実施時期と不適合の通知期間を明記しているか
  • [ ] 通知期間の起算点(発見時か納入時か)を明確にしているか
  • [ ] 秘密保持の対象情報(仕様書・図面等)を具体的に特定しているか
  • [ ] 有効期間及び自動更新の有無を確認したか
  • [ ] 下請法の適用対象取引に該当するか確認したか
  • [ ] 監査・工程確認の権限と手続を規定しているか