財産の全部または割合を指定して遺贈する遺言書文例です。包括受遺者が相続人と同一の権利義務を有する点を踏まえた記載です。押さえるべき法令上の要件を反映した記載としています。

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包括遺贈の遺言書文例

第1部: 書式本文

遺言者【氏名】は、次のとおり遺言する。

第1条(遺言の趣旨) 遺言者は、その死亡時に有する一切の財産(積極財産及び消極財産を含む。)について、以下のとおり包括して遺贈する。

第2条(包括受遺者の指定及び割合) 1 遺言者は、その財産の全部を、次の者に包括して遺贈する。  受遺者 住所【住所】 氏名【氏名】(遺言者との続柄:【続柄】、生年月日:【生年月日】) 2 前項にかかわらず、遺言者が複数の者に包括遺贈する場合は、各受遺者の割合を次のとおり定める。  受遺者【氏名】 割合【分の一】  受遺者【氏名】 割合【分の一】

第3条(債務等の承継) 包括受遺者は、民法第990条の定めるところにより、相続人と同一の権利義務を有するものとし、前条の割合に応じて、遺言者の債務、保証債務その他一切の消極財産を承継する。

第4条(遺産分割協議への参加) 包括受遺者は、他の相続人がある場合、遺産分割協議に参加し、財産の帰属について協議するものとする。遺言者は、協議が整わないときの分割方法について、次のとおり希望を付記する。【分割方法に関する希望】

第5条(祭祀主宰者の指定) 遺言者は、【氏名】を祭祀主宰者に指定し、系譜、祭具及び墳墓の所有権を承継させる。

第6条(遺言執行者の指定) 1 遺言者は、本遺言の執行者として、次の者を指定する。  住所【住所】 氏名【氏名】 職業【職業】 2 遺言執行者は、不動産の名義変更、預貯金の解約及び払戻し、その他本遺言の執行に必要な一切の行為をする権限を有する。

第7条(遺留分への配慮) 遺言者は、本遺言の内容が他の相続人の遺留分を侵害する可能性があることを認識しており、遺留分侵害額請求がされた場合、包括受遺者は民法第1046条の定めに従い、金銭により対応するものとする。

第8条(付言事項) 遺言者は、本遺言をもって家族が円満に生活することを願い、次のとおり付言する。【付言事項】

第9条(遺言の撤回) 遺言者は、本遺言に抵触する既存の遺言その他の処分をすべて撤回する。

以上

作成日 【日付】 遺言者 【氏名】 印

第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン

A節 遺言者の立場からの書き換え

A-1 財産の一部のみを包括遺贈したい場合

第2条第1項を次のとおり修正する。 「遺言者は、遺言者の財産のうち【割合、例:3分の2】を、次の者に包括して遺贈し、残余の財産は法定相続人に相続させる。」 一言解説: 全部でなく割合による包括遺贈も可能であるが、残余財産の帰属先を明確にしないと、遺産分割協議が長期化するおそれがある。

A-2 負債超過が見込まれる場合の熟慮期間への言及

第3条の末尾に次の一文を加える。 「なお、包括受遺者が本遺贈を放棄し、又は限定承認をしようとするときは、民法第915条に定める熟慮期間内に家庭裁判所へ申述しなければならない旨を申し添える。」 一言解説: 包括受遺者は相続人と同様に単純承認・限定承認・放棄を選択できるため、熟慮期間の起算点に注意喚起する条項を置くと後日の紛争予防になる。

B節 包括受遺者の立場からの確認ポイント

B-1 割合遺贈における取得財産の特定

第2条第2項の割合表示に加え、次の一文を追加することが望ましい。 「各包括受遺者は、遺産分割協議において、前項の割合に応じた財産の分配を求めることができる。」 一言解説: 割合のみの指定では個別財産の帰属が定まらないため、受遺者側から見ると分割協議の実施が前提となることを条文上明記しておくと誤解が少ない。

B-2 債務承継リスクの事前確認

包括受遺者が事前に財産・債務の内容を把握できるよう、第3条に次の一文を加える。 「遺言者は、本遺言作成時点における財産目録を別紙のとおり添付し、包括受遺者の参考に供する。」 一言解説: 財産目録を添付することで、包括受遺者が承認・放棄の判断をしやすくなり、後日の紛争リスクを軽減できる。

第3部: 書き方と法的ポイント解説

本書式は、遺言者が自己の財産の全部又は一定割合を特定の者に包括して遺贈する場合に使用する。相続人以外の第三者(内縁の配偶者、事実上の養子、世話になった知人等)に財産を残したい場合や、相続人の一部にのみ多くの財産を残したい場合に適する一方、特定の不動産や動産など個別財産を特定の者に確実に取得させたい場合には、特定遺贈の書式を用いるべきであり、本書式を使うべきではない。

根拠法令としては、民法第964条が包括遺贈及び特定遺贈の方法を規定し、民法第990条は「包括受遺者は、相続人と同一の権利義務を有する」と定める。この規定により、包括受遺者は積極財産のみならず消極財産(債務)も承継し、他に相続人がいる場合は遺産分割協議に参加する立場となる。また、包括受遺者が遺贈を望まない場合は、民法第915条の熟慮期間(自己のために包括遺贈があったことを知った時から3か月以内)に限定承認又は放棄の手続を家庭裁判所に対して行う必要がある。

よくある失敗として、第一に、割合による包括遺贈で複数の受遺者を指定した際、割合の合計が1を超える、又は下回るという記載ミスが挙げられる。この対策として、割合の合計が1になることを条文中に明記し、可能であれば別紙で検算式を示すことが有効である。第二に、包括遺贈と特定遺贈を混同し、「【不動産】を全財産として遺贈する」といった曖昧な表現を用いてしまう失敗がある。対策として、包括遺贈の場合は「財産の全部」又は「財産の何分の何」という表現に統一し、個別財産を指定する場合は特定遺贈の条項として別途起案する。第三に、債務超過の可能性を考慮せず包括遺贈を行った結果、受遺者が知らぬ間に多額の債務を背負うおそれがある。対策として、財産目録の添付や、遺言者が生前に負債状況を開示する旨の付言事項を設けることが考えられる。

なお、遺留分を有する相続人がいる場合、包括遺贈によってその遺留分が侵害されるときは、遺留分侵害額請求(民法第1046条)の対象となり得るため、遺言者は遺留分割合を踏まえた財産配分を検討する必要がある。

また、自筆証書遺言によって包括遺贈を行う場合、遺言者の死亡後、遺言書の保管者又は発見者は、民法第1004条の定めるところにより、遅滞なく家庭裁判所に遺言書を提出してその検認を受けなければならない(法務局における自筆証書遺言書保管制度を利用した場合は検認不要)。検認を経ないまま不動産の相続登記や預貯金の解約手続を進めることは実務上できないため、包括受遺者は検認手続の要否とおおよその所要期間を事前に把握しておくことが望ましい。加えて、包括受遺者が生前に遺言者から多額の贈与を受けていた場合、その贈与が特別受益として遺産の前渡しと評価され、他の相続人との間で持戻し計算をめぐる争いになることがあるため、遺言者は特別受益の持戻しを免除する旨を付言しておくかどうかもあわせて検討するとよい。個別の事案については専門家(弁護士・司法書士等)に確認することが望ましい。

第4部: 使用前チェックリスト

  • [ ] 包括受遺者に相続人以外の者を指定する場合、続柄や関係性を明確に記載しているか
  • [ ] 複数の包括受遺者を指定する場合、割合の合計が1になっているか確認したか
  • [ ] 積極財産だけでなく消極財産(債務)の承継についても条文で言及しているか
  • [ ] 遺留分を有する相続人の遺留分割合を試算し、侵害の有無を検討したか
  • [ ] 財産目録を作成し、受遺者が承認・放棄を判断できる材料を用意したか
  • [ ] 遺言執行者を指定し、その権限範囲を条文に明記したか
  • [ ] 既存の遺言がある場合、撤回条項を設けているか
  • [ ] 民法第915条の熟慮期間について、受遺者への周知を検討したか
  • [ ] 自筆証書遺言の場合の方式、又は公正証書遺言とする場合の証人要件を満たしているか
  • [ ] 検認手続の要否(自筆証書遺言書保管制度の利用有無)を確認したか
  • [ ] 特別受益の持戻し免除について付言する必要がないか検討したか
  • [ ] 包括受遺者が複数いる場合、遺産分割協議がまとまらないときの対応方針を付言しているか