保険業法に基づく募集人の登録管理と教育、コンプライアンス体制を定める規程です。意向把握や比較推奨の運用ルールも含みます。
⚠ 本書式は弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布・公開を禁止する。 本書式は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別・具体的な法律相談に代わるものではない。
保険募集人管理規程
第1部: 書式本文
第1条(目的) 本規程は、【会社名】(以下「当社」という)における保険募集人(以下「募集人」という)の登録、教育、業務管理及びコンプライアンス体制に関する事項を定め、保険業法その他関係法令を遵守した適正な保険募集を確保することを目的とする。
第2条(適用範囲) 本規程は、当社に所属し、または当社と業務委託契約を締結して保険募集を行う役員、従業員及び委託先募集人のすべてに適用する。
第3条(募集人登録の管理) 1. 当社は、募集人として業務に従事させる者について、内閣総理大臣(金融庁長官への権限委任先を含む)の登録を受けさせた後でなければ保険募集を行わせてはならない。 2. 当社は募集人登録原簿を備え、氏名、登録番号、所属区分、取扱可能な保険種類、登録年月日及び異動履歴を記録し、【毎月末日】までに最新化する。 3. 登録内容に変更が生じた場合、当該募集人は変更事由発生後【2】週間以内に管理部門へ届け出るものとする。
第4条(教育・研修体制) 1. 当社は、募集人に対し年【2】回以上の法令遵守研修及び商品別研修を実施する。 2. 新規登録者に対しては、業務従事開始前に【8】時間以上の初期研修を実施し、修了確認を行う。 3. 研修の未受講者は、当該研修科目に係る保険募集業務から除外する。
第5条(意向把握・確認義務の履行) 1. 募集人は、顧客との保険契約締結の媒介または代理に際し、あらかじめ顧客の意向を把握し、当該意向に沿った保険プランを提案するものとする。 2. 募集人は、契約締結前に、提案内容が顧客の最終的な意向と合致していることを確認し、その結果を所定の意向把握記録に記載する。
第6条(比較推奨販売のルール) 1. 複数の保険会社の商品を取り扱う募集人が、特定の商品を比較のうえ推奨する場合、その選定理由及び比較の基準となった事項を顧客に説明しなければならない。 2. 比較推奨の対象とした商品群及び選定基準は、社内記録として【5】年間保存する。
第7条(禁止行為の遵守) 募集人は、虚偽の説明、不利益事実の不告知、乗換募集における比較説明義務違反その他保険業法上禁止される行為を行ってはならない。
第8条(苦情等の処理) 1. 募集人に関する顧客からの苦情は、受付後【3】営業日以内に管理部門へ報告する。 2. 管理部門は苦情内容を調査し、必要に応じて是正措置及び再発防止策を講じる。
第9条(委託先募集人の管理) 当社は、委託先である乗合代理店及びその所属募集人について、定期的な業務品質モニタリングを実施し、問題が認められた場合は是正指導または委託契約の見直しを行う。
第10条(記録の保存) 本規程に基づき作成された記録は、作成日から【5】年間、当社の定める保管場所に保存する。
第11条(監査及び是正) 内部監査部門は年【1】回以上、本規程の遵守状況を監査し、その結果を代表者に報告する。
第12条(規程の改廃) 本規程の改廃は、【コンプライアンス委員会】の承認を経て行う。
第13条(募集関連行為従事者の取扱い) 募集人本人ではなく、募集の準備行為や事務補助のみを行う者(募集関連行為従事者)についても、当社は氏名及び担当業務を名簿に記載し、募集行為に該当する言動を行わせないよう教育する。
第14条(反社会的勢力の排除) 募集人及び委託先が反社会的勢力に該当し、または関係を有することが判明した場合、当社は直ちに委託契約を解除できるものとする。
第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン
A節: 代理店の立場からの修正例
代理店として複数の募集人を雇用・委託する場合、第3条を次のように補強することが望ましい。
第3条(修正例) 「当社は、所属する募集人ごとに管理責任者を選任し、当該責任者が登録状況及び教育履歴を四半期ごとに点検するものとする。」
一言解説: 代理店は募集人個人の遵法状況について使用者としての監督責任を負うため、責任者選任と点検頻度を明文化し、監督体制の実効性を示す条項に置き換える。
B節: 募集人(個人・乗合)の立場からの修正例
乗合代理店に所属する個人募集人の場合、第6条を次のように修正する例が考えられる。
第6条(修正例) 「募集人は、自らが取り扱う保険会社【3】社以上の商品のうち、顧客の意向に最も適合する商品を選定した理由を、書面または記録可能な方法で顧客に交付する。」
一言解説: 個人募集人は所属先の統一書式に依存しがちだが、自らの説明義務履行の証跡を残す主体であることを明確にし、比較推奨の記録主体を自分自身に引き寄せる修正である。
さらに、募集人が複数の代理店に所属せず単一の乗合代理店のみに所属する場合は、第9条に相当する監督条項を「所属代理店による定期面談」という形に読み替え、代理店側の監督義務と自らの報告義務を対応させる書き方も実務上有効である。
第3部: 書き方と法的ポイント解説
本規程は、保険会社の代理店または乗合代理店が、所属する募集人の業務品質を統制するために使用する。単発の保険契約の媒介のみを行う個人事業主が、社内規程を持たないまま流用することは想定されておらず、その場合は業務委託契約書や個人向けコンプライアンスマニュアルとして別途整備すべきである。また、金融商品仲介業や少額短期保険業など、適用される規制体系が異なる業態にそのまま使うことも避けるべきである。
根拠法令としては、保険業法第100条の2が保険会社に対し業務の健全かつ適切な運営を確保するための体制整備義務を課しており、これが募集人管理規程を整備する根拠となる。また同法第294条の2は、保険募集を行う者に対し、契約締結前に顧客の意向を把握し、これに沿った内容の保険契約の締結を勧誘するとともに、締結前に当該意向と提案内容が合致しているかを確認する義務を定めている。同法第294条の3は、複数の保険会社の商品を比較して推奨する場合の追加的な説明義務(比較の基準や理由の明示等)を定めたものであり、第6条の内容はこれに対応する。さらに同法第300条は、虚偽告知、重要事項の不告知、特別利益の提供など、募集人が行ってはならない禁止行為を列挙しており、第7条の根拠となる。
よくある失敗として、第一に、意向把握記録を契約締結後にまとめて作成し、実際の把握プロセスと記録の作成時期が乖離してしまう例がある。対策として、第5条に「契約締結前に記録を完成させる」旨を明記し、事後作成を防止する運用ルールと連動させることが有効である。第二に、比較推奨の基準を統一的に定めず、募集人ごとに異なる説明をしてしまう例がある。対策として、第6条に選定基準の社内統一化と保存年限を明記し、属人化を防ぐ。第三に、委託先募集人の監督が形式的な点検にとどまり、実質的な是正につながらない例がある。対策として、第9条にモニタリング結果に基づく是正指導または契約見直しという具体的な帰結を明記することが望ましい。また、監督官庁の検査対応を念頭に置くと、規程本文だけでなく、実際の研修実施記録・意向把握記録・苦情処理記録が相互に整合しているかを定期的に突合する運用が求められる。規程を整備しても記録が伴わなければ体制整備義務を果たしたと評価されない点に留意する。なお、規程の適用範囲や罰則の水準、委託契約との整合性については、業態や取扱商品によって個別事案は専門家に確認することが不可欠である。
第4部: 使用前チェックリスト
- [ ] 適用対象となる募集人の範囲(役員・従業員・委託先)を明確にしたか
- [ ] 募集人登録原簿の記載事項と更新頻度を定めたか
- [ ] 初期研修・継続研修の時間数と実施頻度を具体的に定めたか
- [ ] 意向把握記録の様式と作成タイミングを明記したか
- [ ] 比較推奨販売を行う場合の説明事項と保存期間を定めたか
- [ ] 禁止行為の具体例を社内周知資料と整合させたか
- [ ] 苦情処理の受付から報告までの期限を定めたか
- [ ] 委託先募集人のモニタリング方法と是正措置の内容を定めたか
- [ ] 記録の保存期間が保険業法施行規則の実務水準と整合しているか
- [ ] 内部監査の実施頻度と報告ルートを定めたか
- [ ] 規程の改廃手続と決裁者を明記したか