訪問看護ステーションが在宅療養者と結ぶサービス利用契約書。健康保険法と介護保険法の給付区分を踏まえ、主治医の指示書に基づく提供内容・利用料・緊急時対応を定める。
⚠ 本書式は弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布・公開を禁止する。 本書式は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別・具体的な法律相談に代わるものではない。
訪問看護利用契約書
第1部: 書式本文
訪問看護ステーション【 】(以下「甲」という。)と、サービス利用者【 】(以下「乙」という。)及びその家族【 】(以下「丙」という。)は、甲が乙に対し訪問看護サービスを提供するに当たり、次のとおり利用契約(以下「本契約」という。)を締結する。
第1条(サービス内容) 甲は乙に対し、主治医の交付する訪問看護指示書に基づき、療養上の世話又は必要な診療の補助として、次の各号に掲げるサービスを提供する。 (1) バイタルサインの確認及び健康状態の観察 (2) 医療処置(点滴管理、褥瘡処置、カテーテル管理等)の実施 (3) 療養上の相談及び指導 (4) 前各号に付随する日常生活上の世話
第2条(適用保険の区分) 1. 乙に提供する訪問看護サービスは、乙の状態及び年齢に応じ、健康保険法に基づく訪問看護療養費又は介護保険法に基づく訪問看護費のいずれかの給付対象となる。 2. 甲は、乙が要介護認定又は要支援認定を受けている場合、原則として介護保険法に基づく訪問看護を優先して提供するものとし、厚生労働大臣が定める疾病等(いわゆる別表第七該当者)に該当する場合その他法令が定める場合には、健康保険法に基づく訪問看護を優先して提供する。
第3条(訪問看護指示書) 1. 甲は、乙の主治医が交付する訪問看護指示書の有効期間内に限り、本契約に基づくサービスを提供する。 2. 甲は、指示書の有効期間が満了する前に、主治医に対し新たな指示書の交付を依頼し、有効期間の管理を行う。指示書の更新が得られない場合、甲は訪問看護の提供を一時中止する。
第4条(利用料及び自己負担) 1. 乙は、甲が提供するサービスの対価として、適用される保険制度に応じた自己負担割合に基づく利用料を甲に支払う。 2. 甲は、緊急時訪問看護加算その他の加算が適用される場合、その内容及び追加費用について、あらかじめ乙又は丙に説明する。
第5条(人員及び運営基準の遵守) 甲は、指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準(厚生労働省令)に定める人員基準及び運営基準を遵守し、サービスを提供する。
第6条(緊急時の連絡体制) 1. 甲は、乙の病状急変その他の緊急事態に備え、24時間対応可能な緊急連絡先【電話番号】を乙及び丙に周知する。 2. 甲は、深夜及び休日における緊急時の対応者(当番看護師等)をあらかじめ定め、その体制を乙及び丙に説明する。 3. 甲は、緊急時訪問を行った場合、速やかに主治医に報告する。
第7条(サービス提供時間及び回数) 甲が乙に提供するサービスの標準的な訪問時間及び頻度は、訪問看護指示書及び甲乙間の協議により別紙のとおり定める。
第8条(秘密保持) 甲は、乙の療養上の情報を、個人情報保護法その他関係法令の定めるところにより適切に管理し、乙又は丙の同意がある場合その他法令に定める場合を除き第三者に開示しない。
第9条(契約の中止・終了) 1. 甲は、次の各号のいずれかに該当する場合、本契約に基づくサービスの提供を中止し、又は終了することができる。 (1) 訪問看護指示書の有効期間が満了し、更新がなされない場合 (2) 乙又は丙が正当な理由なく利用料の支払を遅滞した場合 (3) 乙の状態が入院治療を要すると判断される場合 2. 乙又は丙は、甲に事前に通知することにより、いつでも本契約を解約することができる。
第10条(損害賠償) 甲又は乙若しくは丙は、本契約に関し相手方に損害を与えた場合、故意又は過失に応じて、その損害を賠償する責任を負う。
令和【 】年【 】月【 】日
甲(訪問看護ステーション): 【名称・所在地・管理者氏名】 印 乙(利用者): 【住所・氏名】 印 丙(家族・代理人): 【住所・氏名・続柄】 印
第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン
A. 訪問看護ステーション(甲)向けの修正
A-1. 医療保険と介護保険の切替時期を明確化する修正
追加条文例:「乙が要介護認定を新たに取得した場合、甲は、認定日を起点として速やかに適用保険を介護保険法に基づく訪問看護へ切り替え、切替日以前の利用分については従前の保険制度により請求する。」 解説: 認定の取得時期と請求の切替時期がずれると誤請求の原因となるため、切替の基準日を条文上明確にしておくことが有効である。
A-2. 複数の訪問看護ステーションが連携する場合の役割分担
修正後:「甲が乙に対し他の訪問看護ステーション【名称】と連携してサービスを提供する場合、甲及び連携先の訪問頻度及び役割分担を別紙に定め、乙に開示する。」 解説: 頻回の訪問を要する利用者について複数事業所が連携する運用が想定される場合、役割分担を明文化することで責任の所在を明確にできる。
B. 利用者・家族(乙・丙)向けの修正
B-1. 遠方に居住する家族の連絡体制への関与
追加条文例:「丙が乙と同居していない場合、甲は、緊急時の一報を丙にも同時に行うものとし、丙の連絡先(電話番号・メールアドレス)を別途届け出るものとする。」 解説: 家族が遠方に居住する在宅療養では、緊急時の一次連絡先を利用者本人に限定せず、家族への同時連絡を契約上担保しておくことが望ましい。
B-2. 終末期における対応方針の事前共有
追加条文例:「乙又は丙は、乙の病状が終末期に至った場合の対応方針(救急搬送の要否、看取りの希望等)についてあらかじめ甲に伝え、甲は主治医と共有のうえサービス提供に反映する。」 解説: 在宅での看取りを希望する利用者・家族については、意向を事前に共有しておくことで、緊急時に希望と異なる対応がなされる事態を防ぎやすくなる。
第3部: 書き方と法的ポイント解説
使う場面・使ってはいけない場面の解説 本書式は、訪問看護ステーションが在宅療養を行う利用者及びその家族との間でサービス利用契約を締結する場面で用いる。医療機関に併設された訪問看護部門が病院内の診療契約の一部としてサービスを提供する場合や、介護保険の居宅サービス全般(訪問介護等看護以外のサービス)を対象とする契約には、本書式をそのまま使うべきではなく、別途対応する書式を検討する必要がある。
根拠法令の解説 訪問看護は、健康保険法に基づく訪問看護療養費の給付対象となるほか、要介護者・要支援者については介護保険法に基づく訪問看護費の給付対象となる。両制度が重複する場合、原則として介護保険が優先するが、厚生労働大臣が定める疾病等に該当する場合や急性増悪時の特別訪問看護指示がある場合等には医療保険が優先する取扱いとなる。訪問看護事業者の人員・設備・運営基準は、指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準(厚生労働省令)に定められている。訪問看護の実施は、主治医が交付する訪問看護指示書に基づくことが健康保険法上の給付要件として位置づけられている。
実務でよくある失敗と対策の解説 第一に、医療保険と介護保険のどちらが優先適用されるかの整理が契約書上なされておらず、請求誤りが生じる失敗がある。第2条のように優先順位の考え方及び例外的に医療保険が優先する場合を明記することが対策となる。第二に、訪問看護指示書の有効期間管理を怠り、指示が失効したまま訪問看護を継続してしまう失敗がある。第3条のように有効期間内に限定してサービスを提供する旨及び更新手続を明記することが対策となる。第三に、深夜・休日の緊急時連絡体制が具体的に定められておらず、利用者・家族が対応に迷う失敗がある。第6条のように24時間対応の緊急連絡先及び当番体制を明示することが対策となる。適用保険の優先順位の判断や指示書の有効期間の解釈が個別ケースで分かれる場合は、その都度、弁護士等の専門家やケアマネジャーに確認することが望ましい。
第4部: 使用前チェックリスト
- [ ] サービス内容(療養上の世話・診療の補助等)を具体的に列挙したか
- [ ] 医療保険と介護保険のどちらが優先適用されるか整理したか
- [ ] 訪問看護指示書の有効期間及び更新手続を確認したか
- [ ] 利用料及び自己負担割合の算定方法を明記したか
- [ ] 緊急時訪問看護加算等の説明を行ったか
- [ ] 24時間対応の緊急連絡先及び深夜・休日の当番体制を定めたか
- [ ] 人員・設備・運営基準(厚生労働省令)の遵守を確認したか
- [ ] 契約の中止・終了事由を明記したか
- [ ] 遠方居住の家族への連絡体制を検討したか
- [ ] 終末期の対応方針を事前に共有する仕組みを設けたか