試用期間の満了時に本採用を見送り解約留保権を行使する場面で交付する書式。労働基準法第20条の解雇予告と判例が求める客観的合理性の要件を踏まえた記載例。
⚠ 本書式は弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布・公開を禁止する。 本書式は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別・具体的な法律相談に代わるものではない。
本採用拒否通知書
第1部: 書式本文
本採用拒否通知書
【従業員氏名】 殿
【会社名】 【通知日】
貴殿の試用期間満了に際し、本採用の可否について慎重に検討した結果、下記のとおり本採用を見送ることとしましたので通知します。
第1条(試用期間) 貴殿の試用期間は、【入社日】から【試用期間満了日】までと定められていました(雇用契約書【第 条】、就業規則【第 条】)。
第2条(留保解約権の行使) 本雇用契約は、試用期間中の会社による解約権を留保した労働契約(留保解約権付労働契約)であり、就業規則【第 条】の定めに基づき、本通知により当該解約権を行使します。
第3条(本採用拒否の理由) 本採用を見送る理由は下記のとおりです。 【具体的な理由(勤務状況、業務遂行能力、指摘・注意指導の経過とその後の改善状況、規律違反行為の内容と日時等)を、評価の経緯が分かる形で具体的に記載】
第4条(解約(退職)日) 【選択A: 試用開始から14日以内に通知する場合】 本通知は、貴殿の試用開始日から14日以内に行うものであり、労働基準法第21条第4号の規定により、解雇予告及び解雇予告手当の支払を要しません。解約(退職)日は【 年 月 日(通知日当日又は翌日)】とします。 【選択B: 試用開始から14日を超えて通知する場合】 本通知は貴殿の試用開始日から14日を経過した後に行うものであるため、労働基準法第20条第1項に基づき、解約(退職)日の30日前までに予告するか、又は予告に代えて平均賃金の30日分以上の解雇予告手当を支払います。 解約(退職)日は【 年 月 日】とし、【予告期間を確保する・予告手当【 】円を支払う】ものとします。
第5条(解雇予告手当の支払方法) 前条選択Bにより予告手当を支払う場合、【支払日・支払方法(振込先口座等)】により支払います。
第6条(退職に伴う手続) 貴殿には、退職に伴い、貸与品(【物品名】)の返還、健康保険証の返還、私物の引取り等を【期限】までにお願いします。離職票その他退職に伴う書類は【交付予定時期】に送付します。
第7条(異議・相談窓口) 本通知の内容について、ご質問・ご相談がある場合は【 年 月 日】までに下記までご連絡ください。 【担当部署・連絡先】
以上
第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン
A: 14日以内に通知する場合
第4条は選択Aを用いる。労働基準法第21条第4号は、試用期間中の者について、14日を超えて引き続き使用されるに至った場合を除き、解雇予告に関する同法第20条の規定を適用しない旨を定めているため、試用開始から起算して14日以内(初日を算入して起算する取扱いが一般的)に通知すれば予告手当の支払は不要となる。もっとも、この期間制限はあくまで解雇予告義務の適用除外に関するものであり、解約権行使自体の客観的合理性・社会的相当性の要件が緩和されるわけではない点に注意し、第3条の理由記載は14日という短期間であっても具体的な事実に基づいて記載する。
B: 予告手当を支払う場合
第4条は選択Bを用いる。試用開始から14日を経過した後に本採用拒否を行う場合は、通常の解雇と同様に労働基準法第20条第1項の解雇予告規制が適用されるため、30日前の予告又は平均賃金30日分以上の予告手当の支払(あるいは予告期間の一部と手当の一部を組み合わせる方法)のいずれかを選択する必要がある。第5条で支払時期・方法を明確にし、平均賃金の算定根拠(算定期間、算定対象賃金)を別途資料として保存しておくことが望ましい。
第3部: 書き方と法的ポイント解説
本書式は、試用期間の満了(又は延長後の試用期間の満了)にあたり、会社が留保していた解約権を行使して本採用を見送る場面で使用する。まだ評価が固まっておらず追加の見極め期間を確保したい場合は、本書式ではなく試用期間延長通知書を用いるべきであり、評価不十分な段階で本採用拒否を行うと後に理由の合理性を欠くと判断されるリスクが高まる。また、本採用後(本採用日以降)に問題が発覚した場合の解雇は、試用期間中の留保解約権の行使とは法的性質が異なり、通常の解雇として労働契約法第16条の解雇権濫用法理がそのまま適用されるため、本書式を本採用後の解雇に流用すべきではない。
根拠法令として、労働基準法第20条第1項は使用者が労働者を解雇しようとする場合、少なくとも30日前の予告又は平均賃金の30日分以上の解雇予告手当の支払を要する旨を定め、同法第21条第4号は試用期間中の者について、14日を超えて引き続き使用されるに至った場合を除き、この予告規定の適用を除外する旨を定める。実体的な適法性については、最高裁昭和48年12月12日判決(三菱樹脂事件)が、試用期間中の解約権行使は通常の解雇よりも広い範囲における解雇の自由が認められるとしつつも、その行使は「解約権留保の趣旨、目的に照らして、客観的に合理的な理由が存し社会通念上相当として是認され得る場合」に限られるとしており、単に「期待した水準に達しなかった」という抽象的評価のみでは本採用拒否の理由として不十分と判断され得る。
実務でよくある失敗として、第一に、14日という期間制限を誤って計算し、実際には14日を超えているにもかかわらず予告手当を支払わずに通知してしまう失敗がある。試用開始日を含めた起算方法を事前に確認し、迷う場合は安全側に予告手当を支払う選択Bで対応することが対策となる。第二に、本採用拒否の理由を「会社の求める水準に達しなかった」といった抽象的な記載にとどめ、注意指導の経過や具体的な問題事実を記録していない失敗があり、これでは客観的合理性・社会的相当性の判断において不利になりやすいため、第3条には日時・内容を伴う具体的事実を記載し、日頃から評価記録・注意指導記録を残しておくことが対策となる。第三に、通知のタイミングが試用期間満了日を過ぎてからになり、実質的に本採用が確定したとみなされかねない失敗があり、満了日までに通知が到達するよう事前にスケジュールを管理することが望ましい。第四に、予告手当の金額算定の基礎となる平均賃金(労働基準法第12条)の算定期間や対象賃金の範囲を誤り、支払額が不足してしまう失敗もあるため、算定期間(原則として解約日以前3か月間)と算定対象となる賃金の範囲を給与担当部門と事前にすり合わせておくことが望ましい。個別の事案における本採用拒否の適法性については、専門家に確認することを推奨する。
なお、本採用拒否の通知後に本人から異議が出され、実質的にトラブルに発展した場合には、第3条に記載した理由と、実際に保存されている評価記録・注意指導記録との整合性が問われることになる。理由の記載内容と客観的な記録に食い違いがあると、後付けで理由を構成したと評価されかねないため、通知書を作成する段階で、これまでの評価面談記録やメールでの指摘内容など裏付け資料を確認しながら第3条の記載を確定させることが重要である。
第4部: 使用前チェックリスト
- [ ] 試用開始日から通知日までの経過日数を正確に計算したか
- [ ] 14日以内か14日超かに応じて選択A・Bを正しく選んだか
- [ ] 14日超の場合、予告期間の確保又は予告手当の支払方法を確定したか
- [ ] 予告手当を支払う場合、平均賃金の算定根拠を確認したか
- [ ] 本採用拒否の理由を具体的な事実に基づき記載したか
- [ ] 注意指導・評価の記録が残っているか確認したか
- [ ] 試用期間満了日までに通知が到達するよう手配したか
- [ ] 貸与品返還・離職票交付等の退職手続を明記したか
- [ ] 本採用後の問題事案ではなく試用期間中の事案であることを確認したか
- [ ] 従業員からの質問・相談窓口を明記したか