試合や公演の放送権を許諾する契約書です。放送地域、回数、独占性、二次利用とアーカイブの取扱い、対価の支払を規定します。後日の紛争を防ぐための確認欄をあらかじめ設けています。
⚠ 本書式は弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布・公開を禁止する。 本書式は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別・具体的な法律相談に代わるものではない。
放送権許諾契約書
第1部: 書式本文
放送権許諾契約書
権利者(主催者):【主催者名】(以下「甲」という。) 放送事業者:【放送事業者名】(以下「乙」という。)
甲及び乙は、甲が主催する【大会・試合・公演名】(以下「本件イベント」という。)の放送権の許諾に関し、次のとおり契約(以下「本契約」という。)を締結する。
第1条(許諾の内容) 甲は乙に対し、本件イベントを撮影・収録し、【テレビ放送、インターネット配信、ラジオ放送等】(以下「本件放送」という。)により送信することを許諾する。
第2条(放送地域) 本件放送の許諾地域は【日本国内/特定の地域】とする。
第3条(放送回数・形態) 1. 本件放送は、生中継【 】回、録画放送【 】回を上限とする。 2. ハイライト映像の放送は、本件イベント終了後【 】時間以降、【 】分以内の長さで行うことができる。
第4条(独占性) 1. 本許諾は【独占的/非独占的】とし、独占的とする場合、甲は許諾期間中、乙以外の放送事業者に対し本件イベントの同種の放送権を許諾しない。 2. ただし、甲は、報道目的での短時間(ニュース素材としての利用等)の映像提供を、独占性の例外として乙以外の報道機関に行うことができる。
第5条(対価) 乙は甲に対し、放送権の対価として金【 】円(税別)を、【契約締結時/放送実施前】までに、甲の指定する口座に振り込む方法により支払う。
第6条(制作・技術協力) 1. 甲は、乙による撮影・収録に必要な範囲で、会場内へのカメラ設置、電源・回線の確保等について合理的な協力を行う。 2. 撮影・収録に伴う追加費用の負担については別紙のとおりとする。
第7条(二次利用及びアーカイブ) 1. 乙が本件放送の映像を、放送後にオンデマンド配信、DVD化その他の二次利用に供する場合、事前に甲の承諾を得るものとする。 2. 二次利用に伴う対価の分配は別紙のとおりとする。
第8条(著作権等の帰属) 1. 本件放送のために乙が制作した放送用素材(番組、編集映像等)の著作権は乙に帰属する。 2. 本件イベント自体の実演、興行に関する権利は甲に留保される。
第9条(選手・出演者の肖像等の取扱い) 甲は、本件イベントに出場・出演する選手・出演者から、放送のために必要な範囲での肖像等の使用について、あらかじめ必要な同意を取得しているものとする。
第10条(不可抗力による中止) 天災その他の不可抗力により本件イベントが中止となった場合、甲乙は既払いの対価の取扱いについて協議のうえ定める。
第11条(違反時の措置) 乙が許諾範囲を超えて本件イベントの映像を利用した場合、甲は本契約を解除し、損害賠償を請求することができる。
第12条(準拠法及び管轄) 本契約は日本法に準拠し、本契約に関する紛争は【 】地方裁判所を第一審の専属的合意管轄裁判所とする。
甲:【 】 乙:【 】
第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン
A節: 権利者(甲)側で放送権収入を最大化したい場合
第4条を強化し、「独占放送権に加え、インターネット配信権、海外向け放送権を区分して別個に許諾し、それぞれ異なる対価を設定する」との権利分割型の許諾条項に修正する。
B節: 放送事業者(乙)側で長期の独占放送関係を築きたい場合
第2条・第4条を修正し、「本許諾は【 】年間の複数シーズンにわたる独占放送権とし、期間中の放送権料は毎年協議のうえ改定する」との複数年契約に変更する。
C節: インターネット配信(ストリーミング)を主体とする場合
第1条・第3条を修正し、「本件放送はインターネット配信を主体とし、配信のアーカイブ視聴期間、同時視聴可能人数の制限の有無、地域制限(ジオブロック)の設定方法」を具体的に定める条項に修正する。
D節: アマチュア大会・地域イベントで放送権料が発生しない場合
第5条を「乙は本件放送の対価を支払わない代わりに、放送内で甲の主催団体名及び大会の意義について一定時間の紹介を行う」との相互協力型の条項に修正し、金銭対価のない協力関係であることを明確にする。
第3部: 書き方と法的ポイント解説
本書式は、スポーツ大会や公演等のイベント主催者が、放送事業者に対して当該イベントの撮影・放送を許諾する場面で使用します。放送権という言葉が一般に用いられていますが、これは法律上明確に定義された単一の権利ではなく、会場への立入り・撮影を認める施設管理権、興行主としての実演に関する権利、放送内容についての著作権法上の権利等が複合的に組み合わさった契約上の権利であるという理解が実務上一般的です。
法的な位置づけとして、著作権法との関係では、放送事業者が制作する番組(実況・解説・編集映像等)には著作権及び著作隣接権(放送事業者の権利、実演家の権利等)が発生します。本件イベント自体(スポーツの試合等)は、通常、著作物性が認められないと解されていますが、主催者は施設管理権や興行主としての地位に基づき、無許諾での撮影・放送を事実上排除することができ、これが実務上の「放送権」の実質的な根拠となっています。独占的な放送権の許諾については、独占禁止法上の観点から、排他的範囲が事業活動を不当に制限するものとならないよう、許諾範囲(地域・期間・媒体)を合理的に限定することが望ましいとされています。
よくある失敗として、第一に、放送権の許諾範囲が「放送」とのみ定められ、近年拡大しているインターネット配信やオンデマンド配信が含まれるか否かが不明確なケースがあります。第1条・第3条のように配信形態を具体的に列挙することが対策です。第二に、独占的放送権を許諾したにもかかわらず、報道目的でのニュース素材提供との関係が整理されておらず、他の報道機関からの取材対応をめぐって紛争になるケースです。第4条のように報道目的の例外を明記することが有効です。第三に、選手・出演者の肖像等の使用に関する同意取得が不十分なまま放送が行われ、後日肖像権・パブリシティ権侵害を主張されるケースです。第9条のように主催者側の同意取得義務を明記することが望まれます。放送権の法的性質や独占的許諾の適法性については、個別事案は専門家に確認することを推奨します。また、近年はSNS上での試合映像の切り抜き投稿等、視聴者による無許諾の二次利用が問題となる場面も増えており、甲乙間で著作権侵害への対応方針(削除要請の主体、費用負担等)をあらかじめ整理しておくことも実務上有用です。
第4部: 使用前チェックリスト
- [ ] 許諾する放送形態(生中継・録画・配信・ハイライト等)を具体的に定めたか
- [ ] 放送地域(国内・海外・地域制限)を明確にしたか
- [ ] 独占性の範囲及び報道目的での例外を定めたか
- [ ] 放送権料の金額・支払時期を明確にしたか
- [ ] 会場内での撮影・収録に関する制作協力の内容を定めたか
- [ ] 二次利用(オンデマンド配信・DVD化等)の許諾及び対価分配を定めたか
- [ ] 著作権等の帰属(放送用素材と興行権の区分)を明確にしたか
- [ ] 選手・出演者の肖像等の使用同意の取得責任者を明確にしたか
- [ ] 不可抗力による中止時の対価の取扱いを定めたか
- [ ] 許諾範囲を超えた利用があった場合の措置(解除・損害賠償)を定めたか
- [ ] SNS等での無許諾二次利用への対応方針(削除要請等)を検討したか
- [ ] 準拠法及び紛争解決の合意管轄を明記したか