セット内容
- 保守運用委託契約書 2バージョン(発注側/受注側)Word形式
- 障害対応時間・対応レベルの取り決め例
- 月次保守レポート様式
こんな場面で
システム・Webサイトの構築後、継続的な保守・運用・障害対応を外部業者へ委託する場面。
特長
- 障害発生時の一次対応時間・復旧目標時間をあらかじめ明示する条項構成
- 保守範囲(軽微な修正/仕様変更を伴う改修)の切り分けを明確化
- 制作委託契約書(seisaku-itaku-keiyaku)の納品後フェーズを補完する位置づけ
保守運用委託契約書(システム・Webサイト)(監修用ドラフト)
⚠ 本ファイルは弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布を禁止する。
商品ID: hosyu-unyo-keiyaku / 価格: 2,980円 / 立場バージョン: 発注側有利・受注側有利
本ドラフトは第2部で2バージョンの差分を提示する構成とし、第1部には中立に近いベース条文(準委任型)を掲載する。本商品は、システム・Webサイトの構築後、継続的な保守・運用・障害対応を外部業者へ委託する場面を想定し、制作委託契約書の納品後フェーズを補完する位置づけとする。
第1部: 契約書本文(ベース版)
保守運用委託契約書
〇〇〇〇(以下「甲」という。)と〇〇〇〇(以下「乙」という。)とは、甲が運用する別紙記載のシステム又はWebサイト(以下「本システム」という。)の保守及び運用業務の委託に関し、以下のとおり保守運用委託契約(以下「本契約」という。)を締結する。
第1条(目的)
本契約は、甲が乙に対し本システムの保守及び運用に関する業務(以下「本業務」という。)を委託し、乙がこれを受託するにあたり、甲乙間の権利義務関係を定めることを目的とする。
第2条(契約の性質)
本契約に基づき乙が行う本業務は、民法第656条に定める準委任契約とし、乙は善良な管理者の注意をもって本業務を遂行する義務(善管注意義務)を負うものとし、特段の定めがない限り特定の成果物の完成を約するものではない。
第3条(本業務の範囲)
- 本業務の範囲は、次の各号に定めるとおりとする。 (1)本システムの稼働監視及び障害発生の検知 (2)本システムに障害が発生した場合の一次対応及び復旧対応 (3)別紙「保守作業一覧」に定める軽微な修正作業(以下「軽微修正」という。) (4)本システムの利用状況に関する月次報告書の作成及び提出 (5)その他甲乙が別途書面により合意した業務
- 前項第3号の軽微修正とは、既存の仕様及び設計を変更することなく行う次に掲げる作業をいう。 (1)誤字脱字、表記揺れ等の軽微な修正 (2)画像・テキスト等コンテンツの差し替え(既存のレイアウト・機能構成を変更しないものに限る。) (3)軽微なバグ修正であって、新たな機能の追加又は既存機能の仕様変更を伴わないもの (4)その他前各号に準ずる程度の軽微な作業として甲乙間で合意したもの
- 新機能の追加、既存の仕様若しくは設計の変更、又はデザインの大幅な変更を伴う改修(以下「仕様変更を伴う改修」という。)は、本業務の範囲に含まれないものとし、甲乙別途協議のうえ、個別の業務委託契約又は本契約の変更契約を締結して実施するものとする。
- 軽微修正に該当するか仕様変更を伴う改修に該当するかの判断に疑義が生じた場合、甲乙誠実に協議のうえ決定するものとし、協議が調わないときは、作業内容、影響範囲及び工数を踏まえ、乙が合理的な見解を提示し、甲の承諾を得るものとする。
第4条(契約期間及び自動更新)
- 本契約の有効期間は、〇〇〇〇年〇〇月〇〇日から1年間とする。
- 前項の規定にかかわらず、期間満了の2か月前までに甲乙いずれからも書面による更新拒絶の意思表示がない場合、本契約は同一条件でさらに1年間自動的に更新されるものとし、以後も同様とする。
第5条(委託料及び支払方法)
- 甲は乙に対し、本業務の対価として、月額金〇〇〇〇円(消費税別途)を委託料として支払う。
- 乙は、毎月末日締めで請求書を発行し、甲は当該請求書受領後翌月末日までに、乙の指定する銀行口座に振り込む方法により支払うものとする。振込手数料は甲の負担とする。
- 第3条第3項に定める仕様変更を伴う改修を実施する場合の費用は、前2項の委託料に含まれないものとし、甲乙別途協議のうえ決定する。
- 甲の支払が遅延した場合、甲は年3パーセントの割合による遅延損害金を乙に支払う。
第6条(障害対応)
- 本条において「障害」とは、本システムが甲乙間で合意した仕様どおりに動作しない状態又は稼働が停止した状態をいう。
- 乙は、甲又は監視システムから障害発生の連絡を受けた場合、別紙「障害対応レベル一覧」に定める区分に応じ、次の目標時間内に一次対応(障害内容の確認及び甲への状況報告の一次連絡をいう。以下同じ。)を行うよう努めるものとする。 (1)緊急度「高」(本システムの全部又は主要機能が停止している状態): 連絡受信後1時間以内 (2)緊急度「中」(一部機能に不具合が生じている状態): 連絡受信後4時間以内(乙の営業時間内) (3)緊急度「低」(軽微な表示不具合等、業務への影響が限定的な状態): 連絡受信後翌営業日中
- 乙は、前項の一次対応後、可能な範囲で速やかに復旧作業に着手し、別紙に定める復旧目標時間を目安として復旧に努めるものとする。ただし、当該時間は乙が復旧を保証するものではなく、障害の原因及び影響範囲によっては目標時間内に復旧できない場合があることを甲は了承する。
- 乙の帰責事由によらない障害(甲の指示に起因するもの、第三者が提供するサーバー・回線等の外部インフラの障害、天災その他不可抗力によるものを含むがこれらに限らない。)への対応に要した費用は、甲乙協議のうえ甲の負担とすることができる。
- 乙は、本条に定める対応時間及び復旧目標時間について、別紙により甲乙合意のうえ、本システムの重要度に応じて変更することができる。
第7条(月次報告)
- 乙は、毎月、前月分の本業務の実施状況について、別紙様式の月次保守レポート(稼働状況、障害発生件数及び対応状況、軽微修正の実施内容等を記載したものをいう。)を作成し、翌月〇〇日までに甲に提出するものとする。
- 甲は、月次保守レポートの内容について疑義がある場合、受領後2週間以内に乙に説明を求めることができる。
第8条(甲の協力義務)
- 甲は、乙が本業務を遂行するために必要な情報、資料、システムへのアクセス権限その他の環境を、乙の求めに応じて速やかに提供するものとする。
- 甲の協力の遅延又は不備に起因して本業務の遂行に支障が生じた場合、当該支障により生じた結果について乙は責任を負わないものと解される。
第9条(再委託)
- 乙は、本業務の全部又は一部を第三者に再委託することができる。ただし、主要な業務を再委託する場合は、事前に甲の承諾を得るものとする。
- 乙は、再委託先に対し、本契約に基づき乙が甲に対して負う義務と同等の義務を課すものとし、再委託先の行為について甲に対し自己の行為と同様の責任を負う。
第10条(秘密保持)
- 甲及び乙は、本契約の履行に関連して相手方から開示を受けた技術上・営業上の情報及び本業務を通じて知り得た相手方の業務上の情報(以下「秘密情報」という。)を、相手方の事前の書面による承諾なく第三者に開示又は漏えいしてはならず、本契約の目的以外に使用してはならない。
- 前項の規定は、開示を受けた時点で既に公知であった情報、開示後自己の責めによらず公知となった情報、正当な権限を有する第三者から秘密保持義務を負うことなく取得した情報については適用しない。
- 本条の義務は、本契約終了後も3年間存続するものとする。
第11条(個人情報の取扱い)
- 乙は、本業務の遂行にあたり甲から取扱いを委託された個人情報(個人情報の保護に関する法律に定めるものをいう。以下「個人情報」という。)を、善良な管理者の注意をもって取り扱い、本業務の遂行の目的以外に使用してはならない。
- 乙は、個人情報の漏えい、滅失又はき損の防止その他の個人情報の安全管理のために必要かつ適切な措置を講じるものとする。
- 乙は、個人情報の取扱いを第三者に再委託する場合、甲の事前の承諾を得るとともに、再委託先に対し本条と同等の義務を課すものとする。
- 乙は、個人情報の漏えい等の事故が発生し、又はそのおそれがあることを知った場合、直ちに甲に報告し、甲の指示に従い必要な措置を講じるものとする。
- 本契約が終了した場合、乙は甲の指示に従い、個人情報を返還し、又は消去若しくは廃棄するものとする。
第12条(資料等の帰属)
- 甲が本業務遂行のために乙に提供した資料、データ及び本システムに関する権利は、甲に帰属する。
- 乙が軽微修正の実施過程で新たに作成した成果物(プログラムコード、ドキュメント等)に関する著作権(著作権法第27条及び第28条の権利を含む。)その他の知的財産権は、甲が乙に対し当該作成に係る対価を支払った時点をもって甲に帰属するものとする。ただし、乙が本契約締結前から保有していたプログラム、ノウハウその他の汎用的な技術・素材に関する権利は乙に留保されるものとする。
- 乙は、甲に対し、前項の成果物について著作者人格権を行使しない。
第13条(契約不適合責任)
- 乙が提供する本業務の内容が本契約又は別紙の内容に適合しない場合、甲は、乙に対し、履行の追完、代金(委託料相当額)の減額、損害賠償又は契約の解除を、民法の定めるところに従い請求することができる。
- 前項の請求は、甲が本業務の内容が本契約に適合しないことを知った時から1年以内にその旨を乙に通知した場合に限りするものとし、当該期間内に通知がない場合、甲は当該請求をすることができないものと解される。
- 前2項の規定は、乙の故意又は重過失により生じた不適合については適用しない。
第14条(損害賠償)
- 甲又は乙は、本契約に関し相手方の責めに帰すべき事由により損害を被った場合、相手方に対し、当該損害の賠償を請求することができる。
- 乙が甲に対して負う損害賠償責任の累計額は、請求原因を問わず、損害発生月の直近12か月分の委託料相当額を上限とする。ただし、乙の故意又は重過失による場合はこの限りでない。
- 前項の規定にかかわらず、逸失利益その他の間接損害、特別損害については、乙の予見の有無を問わず、乙は賠償の責めを負わないものと解される。
第15条(反社会的勢力の排除)
- 甲及び乙は、それぞれ相手方に対し、自己(自己の役員を含む。)が、暴力団、暴力団員、暴力団員でなくなった時から5年を経過しない者、暴力団準構成員、暴力団関係企業、総会屋等、社会運動等標ぼうゴロ又は特殊知能暴力集団その他これらに準ずる者(以下「反社会的勢力」と総称する。)に該当しないこと、及び反社会的勢力と社会的に非難されるべき関係を有しないことを表明し、保証する。
- 甲及び乙は、自ら又は第三者を利用して、暴力的な要求行為、法的な責任を超えた不当な要求行為、取引に関する脅迫的言動又は暴力の行使、風説の流布・偽計・威力を用いた信用毀損又は業務妨害、その他これらに準ずる行為を行わないことを表明し、保証する。
- 甲又は乙が前2項に違反した場合、相手方は、何らの催告を要せず本契約を解除することができる。この場合、解除した当事者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負わない。
第16条(解除)
- 甲又は乙は、相手方が本契約の条項に違反し、相当の期間を定めて是正を催告したにもかかわらず当該期間内に是正されないときは、本契約を解除することができる。
- 甲又は乙は、相手方について次の各号のいずれかの事由が生じた場合、何らの催告を要せず本契約を解除することができる。 (1)支払停止若しくは支払不能又は破産手続、民事再生手続、会社更生手続その他の倒産手続の申立てがあったとき (2)手形若しくは小切手が不渡りとなったとき、又は銀行取引停止処分を受けたとき (3)差押え、仮差押え、仮処分、強制執行又は競売の申立てを受けたとき (4)解散、事業の全部若しくは重要な一部の譲渡を決議したとき (5)前条の表明保証に違反したとき
第17条(中途解約)
甲又は乙は、解約を希望する日の3か月前までに書面により相手方に通知することにより、本契約を中途解約することができる。この場合、既に履行された本業務に係る委託料の精算方法は甲乙協議のうえ定めるものとする。
第18条(存続条項)
第10条から第14条まで、第19条及び本条から第21条までの規定は、本契約が終了した場合においても、なお効力を有する。
第19条(権利義務の譲渡禁止)
甲及び乙は、相手方の事前の書面による承諾を得ることなく、本契約上の地位並びに本契約に基づく権利及び義務を第三者に譲渡し、承継させ、又は担保に供してはならない。
第20条(協議事項)
本契約に定めのない事項又は本契約の解釈に疑義が生じた事項については、甲乙誠意をもって協議のうえ解決するものとする。
第21条(合意管轄)
本契約に関する紛争については、〇〇地方裁判所を第一審の専属的合意管轄裁判所とする。
以上、本契約締結の証として本書2通を作成し、甲乙記名押印のうえ、各自1通を保有する。
〇〇〇〇年〇〇月〇〇日
(甲)住所 商号又は名称 代表者名 印
(乙)住所 商号又は名称 代表者名 印
別紙: 保守作業一覧/障害対応レベル一覧/月次保守レポート様式(各様式は別途Word形式で添付する。)
第2部: 立場別修正パターン
商品には「発注側有利」「受注側有利」の2バージョンを収録する。第1部は中立に近いベース条文であり、以下は各バージョンを作成する際の差分(代替条文)である。
A. 発注側有利バージョンへの変更
発注側(システムの運用を委託する側。甲)に有利にするための修正パターン。
A-1. 第2条(契約の性質)に成果物完成に近い義務を追加
追加条文例: 「乙は、前項の善管注意義務に加え、本システムの安定稼働という結果の実現に向けて最大限の努力を尽くすものとし、稼働率については別紙に定める目標水準を達成するよう努めるものとする。」
解説: 準委任の性質を維持しつつも、稼働率目標を明記することで乙に事実上の結果責任に近い水準を求める修正である。乙側からは、稼働率保証は業務内容の性質になじまないとの反論が想定される。
A-2. 第6条(障害対応)の目標時間を「努める」から確定義務に変更
修正後: 「乙は、緊急度「高」の障害について、連絡受信後1時間以内に一次対応を完了しなければならない。」(「努めるものとする」の努力義務表現を削除し、確定的な義務とする。)
解説: 対応時間を確定義務化すると、未達成が直ちに債務不履行を構成しやすくなる。乙にとっては外部要因(回線障害等)による遅延リスクを負うことになるため、免責事由の明記とセットで交渉されることが多い。
A-3. 第14条(損害賠償)の上限を撤廃又は引き上げ
修正後: 「乙が甲に対して負う損害賠償責任の累計額は、直近24か月分の委託料相当額を上限とする。」又は上限条項自体を削除する。
解説: 障害対応の遅延により甲の事業に重大な影響が生じる可能性がある場合、発注側は上限額の引き上げ又は撤廃を求める傾向がある。乙にとっては受託料と責任のバランスが崩れるリスクがあるため、保険加入の有無等を踏まえた調整が実務上想定される。
A-4. 第16条(解除)にサービスレベル未達成を解除事由として追加
追加条文例: 「乙が別紙に定める復旧目標時間又は稼働率目標を、直近3か月間のうち2か月以上達成できなかった場合、甲は本契約を解除することができる。」
解説: サービスレベル未達成を明確な解除事由として定める修正であり、発注側の実効的な牽制手段となる。乙側は、達成できなかったことの原因が乙の帰責事由による場合に限定するなどの修正を求めることが多い。
A-5. 第17条(中途解約)の予告期間を短縮
修正後: 「解約を希望する日の1か月前までに書面により通知する」に短縮する。
解説: 発注側は他業者への切替えの柔軟性を確保するため予告期間の短縮を望む一方、乙は人員体制の調整や後任業者への引継ぎ負担を理由に、一定期間(2〜3か月)の確保を求めることが一般的である。
B. 受注側有利バージョンへの変更
受注側(保守運用業務を受託する側。乙)に有利にするための修正パターン。
B-1. 第3条(本業務の範囲)の軽微修正の判断権限を乙に明確化
修正後: 「軽微修正に該当するか仕様変更を伴う改修に該当するかについては、乙が一次的に判断するものとし、甲が当該判断に異議がある場合、甲は書面によりその理由を示して協議を求めることができる。」
解説: 切り分けの一次判断権を乙に付与することで、範囲外作業を無償対応させられるリスクを軽減する。発注側からは恣意的な運用への懸念が示されやすいため、判断基準の別紙化・具体化とセットで提示することが望ましい。
B-2. 第6条(障害対応)の目標時間を努力義務であることを明記
修正後: 「乙は、前項の目標時間内に一次対応を行うよう合理的な範囲で努めるものとし、当該目標時間の未達成のみをもって債務不履行を構成するものではないと解される。」
解説: 対応時間はあくまで目安であり、外部要因や複合的な障害原因によって左右されるため、目標未達成が直ちに契約違反とならない旨を明記する修正である。発注側との交渉では、重大障害に限り一定のペナルティを設ける代替案が落としどころになりやすい。
B-3. 第14条(損害賠償)の上限を低く設定し、間接損害の免責を明記
修正後: 「乙が甲に対して負う損害賠償責任の累計額は、損害発生月の委託料の3か月分相当額を上限とする。」
解説: 月額委託料の水準に比して過大な賠償リスクを負わないよう上限を低めに設定する修正である。特に無償に近い低額の保守契約においては、責任と対価のバランスを保つための重要な交渉ポイントとなる。
B-4. 第8条(甲の協力義務)の違反時の免責範囲を拡張
追加条文例: 「甲が第1項の協力義務を履行しないことにより本業務の遂行が遅延し、又は障害対応が遅延した場合、当該遅延について乙は一切の責任を負わないものと解される。また、当該遅延により生じた追加費用は甲の負担とする。」
解説: システムへのアクセス権限提供や情報提供の遅延は保守業務の遅延の典型的な原因であるため、乙にとっては免責範囲の明確化が重要となる。
B-5. 第17条(中途解約)に違約金相当の規定を追加
追加条文例: 「甲の都合により本条に定める予告期間より前に契約を終了させる場合、甲は、残存期間に相当する委託料の合計額の50パーセントを、解約金として乙に支払うものとする。」
解説: 保守運用業務は人員体制を継続的に確保する必要があるため、突然の解約による損失を補填する規定を設けることは受注側にとって合理性があると考えられる。発注側からは金額水準について交渉が生じやすい。
第3部: 逐条解説(購入者向け)
第1条・第2条(目的・契約の性質) 保守運用業務は成果物の完成を目的とする請負契約ではなく、業務の遂行自体を目的とする準委任契約として整理するのが一般的である。もっとも、実務上は稼働率保証等、請負的な色彩を帯びた条項が交渉により追加されることも少なくないため、契約類型と実際の条項内容に齟齬が生じないよう留意することが望ましい。
第3条(本業務の範囲) 本テンプレートの中核となる条項である。軽微修正と仕様変更を伴う改修の切り分けは、実務で最も紛争になりやすい論点であり、別紙にできる限り具体例(作業時間の目安、対象範囲の例示等)を列挙しておくことがトラブル防止につながると考えられる。切り分けが曖昧なまま契約を締結すると、「軽微な修正のつもりが実質的な仕様変更だった」という認識の齟齬が生じやすい。
第4条(契約期間及び自動更新) 自動更新条項は保守運用契約において一般的だが、更新拒絶の通知期間(本文では2か月前)は、後任業者の選定・引継ぎに要する期間を踏まえて設定することが望ましい。システムの重要度が高い場合は、3か月前後の通知期間を設ける例も見られる。
第5条(委託料及び支払方法) 月額固定制を基本としつつ、仕様変更を伴う改修は別料金とする構成が一般的である。固定額に含まれる作業範囲(軽微修正の上限工数等)を明記しておくと、想定外の作業量増加によるトラブルを避けやすいと考えられる。
第6条(障害対応) 本商品の特長にあたる条項であり、緊急度別の一次対応時間・復旧目標時間をあらかじめ明示する構成としている。もっとも、復旧目標時間はSLA(サービスレベルアグリーメント)に近い性質を持つものの、確定的な義務として設計するか努力義務にとどめるかは、委託料の水準や乙の体制と密接に関連するため、契約当事者の力関係や業界慣行に応じて調整すべき箇所であると考えられる。目標未達成時のペナルティ(委託料減額、解除事由化等)を設けるか否かも交渉の焦点になりやすい。
第7条(月次報告) 月次保守レポートは、対応実績の可視化により後日の紛争を防止する機能を有する。レポート様式には、障害発生件数、対応時間の実績値、軽微修正の対応件数等、客観的に検証可能な指標を含めることが望ましい。
第8条(甲の協力義務) 発注側の協力不足に起因する遅延について乙の免責を明確にする条項であり、受注側にとって重要な自衛条項である。発注側の窓口担当者の連絡体制(緊急連絡先、休日対応の可否等)を別紙で具体化しておくと、実効性が高まると考えられる。
第9条(再委託) 保守運用業務は監視ツールの提供事業者やデータセンター事業者等、第三者の関与を伴うことが多いため、包括的な再委託承諾条項を設けることが実務上一般的である。もっとも、個人情報を取り扱う業務を再委託する場合は、第11条との整合を確認する必要がある。
第10条・第11条(秘密保持・個人情報の取扱い) 保守運用業務では、システムのソースコードや顧客データベースへのアクセス権限を乙に付与することが多く、秘密保持及び個人情報保護の水準は制作委託契約以上に厳格に定める必要があると考えられる。個人情報を取り扱う場合は、委託先の監督義務(個人情報保護法第25条相当)を踏まえた条項設計が望ましい。
第12条(資料等の帰属) 軽微修正によって生じた成果物の権利帰属を明確にする条項。制作委託契約書で成果物の著作権を発注側に譲渡する条項を設けている場合、保守運用契約においても同様の整理を踬襲することで、契約間の整合性を保つことができると考えられる。
第13条(契約不適合責任) 2020年施行の民法改正により、従来の「瑕疵担保責任」は「契約不適合責任」に整理された。本条は改正民法に対応し、追完請求・代金減額請求・損害賠償請求・解除の各救済手段を明記するとともに、権利行使期間(本文では「知った時から1年以内の通知」)を明確化している。準委任型の役務提供契約においても契約不適合責任類似の規律を及ぼす例が実務上見られるが、適用の可否については契約書上明記しておくことが望ましい。
第14条(損害賠償) 損害賠償の上限設定は、月額委託料の水準と乙が負うリスクのバランスを取るための重要な条項である。上限額の目安(直近12か月分の委託料相当額等)はあくまで一例であり、システムの重要度や損害発生時の影響規模に応じて調整することが望ましい。
第15条(反社会的勢力の排除) 現在の契約実務でほぼ必須の条項であり、表明保証違反時の無催告解除及び解除側の免責を定める標準的な構成としている。
第16条・第17条(解除・中途解約) 継続的契約であることを踏まえ、催告解除・無催告解除に加えて中途解約の規定を設けている。中途解約の予告期間及び解約金の要否は、業務の性質上、発注側・受注側の利害が対立しやすい箇所であり、第2部の各パターンを参考に調整することが考えられる。
第18条〜第21条(存続条項・譲渡禁止・協議・合意管轄) 存続条項の列挙漏れがあると、契約終了後にその条項の効力が争われるリスクがあるため、契約内容を修正した際は本条の列挙内容も併せて見直すことが望ましい。
第4部: 監修者への確認依頼事項
- 第6条の障害対応時間及び復旧目標時間について、努力義務(「努めるものとする」)と確定義務のいずれを標準形として提示するのが実務上望ましいか、また緊急度区分(高・中・低)の時間設定の目安が業界水準として妥当か確認いただきたい。
- 第3条第2項の軽微修正の定義及び例示について、実務上頻出する境界事例(例: レイアウトを維持したままのCMS機能追加)を追加すべきか確認いただきたい。
- 第13条の契約不適合責任について、準委任型の役務提供契約に契約不適合責任類似の規律を及ぼす条項構成が2020年民法改正後の実務・裁判例に照らして適切か確認いただきたい。
- 第14条第2項の損害賠償上限額の設定水準(直近12か月分の委託料相当額)が、保守運用契約の実務相場として妥当か、商品の想定価格帯(中小規模のシステム・Webサイト)に照らしてより低い水準を提示すべきか確認いただきたい。
- 第11条の個人情報の取扱いに関する条項について、個人情報保護法上の委託先監督義務及び令和2年・令和3年改正個人情報保護法の内容を踏まえて過不足がないか確認いただきたい。
- 第17条の中途解約条項について、解約金条項(第2部B-5)を設ける場合の金額水準が消費者契約法・公序良俗の観点から問題とならないか確認いただきたい(本契約は事業者間契約を想定しているが、参考として確認いただきたい)。
- 第9条の再委託条項について、クラウドサービス事業者等への再委託を包括的に許容する構成が、情報セキュリティ上の観点から追加の条件設定(再委託先の選定基準の明示等)を要するか確認いただきたい。
- 別紙として想定している「保守作業一覧」「障害対応レベル一覧」「月次保守レポート様式」の各様式について、監修の対象に含めるか、別途デザイン・様式面のみの確認とするか、進め方を確認いただきたい。