海外IaaSを国内で再販提供する際の契約書。電気通信事業法上の届出要否と責任分界を整理し、原提供者の約款変更を顧客へ反映させる仕組みを定める。
⚠ 本書式は弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布・公開を禁止する。 本書式は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別・具体的な法律相談に代わるものではない。
IaaS再販契約書
第1部: 書式本文
第1条(目的) 甲(再販事業者)は、海外IaaS事業者【原提供者名】(以下「原提供者」という。)から提供を受けるインフラストラクチャー・サービス(以下「原サービス」という。)を、乙(エンドユーザー)に対し国内で再販提供する。
第2条(再販の仕組み) 甲は、原提供者との契約に基づき原サービスの利用権を取得し、これを自己の名義でエンドユーザーである乙に提供する。乙と原提供者との間に直接の契約関係は生じない。
第3条(電気通信事業法上の位置付け) 甲は、本サービスの提供が電気通信事業法上の電気通信事業(同法第9条の登録又は第16条の届出の要否)に該当するかを確認し、該当する場合は必要な手続を履践する。
第4条(責任分界) 甲は、原サービス自体の稼働及び品質については原提供者の提供条件に従うものとし、乙に対する一次サポート、請求管理及び国内における契約管理について責任を負う。
第5条(原提供者の約款変更の反映) 原提供者が原サービスの利用条件(料金、機能、SLA等)を変更した場合、甲は速やかに乙へ通知し、当該変更内容を本契約の条件に反映する。
第6条(SLAの連動) 甲が乙に提示するSLAは、原提供者が甲に提示するSLAの範囲を超えないものとし、甲は原提供者のSLA未達に起因する損害についてのみ、原提供者から受領した補償の範囲で乙に補償する。
第7条(データの越境移転) 乙は、原サービスの利用にあたり、乙のデータが海外(原提供者のデータセンター所在国)に保存され得ることを了承する。甲は、個人情報保護法第28条に基づき必要な情報提供を行う。
第8条(為替変動の反映) 甲が乙に提示する料金は、原提供者への支払いが外貨建てである場合、為替レートの変動を〔一定期間ごとに反映する/固定とする〕。
第9条(原契約終了時の措置) 甲と原提供者との契約が終了した場合、甲は乙に対し速やかに通知し、代替サービスへの移行に必要な支援を行う。
第10条(準拠法) 甲と原提供者との契約の準拠法が外国法である場合であっても、甲と乙との間の本契約の準拠法は日本法とする。
第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン
A. 再販事業者向け
A-1. 原提供者起因の障害に対する責任限定
修正条文例:「甲は、原サービス自体の稼働不良又は機能不備に起因する損害について、原提供者から甲が受領した補償の範囲を超えて乙に対し責任を負わない。」 一言解説: 再販事業者が原提供者の責任を超えて損害賠償を負うことを防ぐ、いわゆるバックツーバック条項である。
A-2. 為替変動リスクの転嫁
修正条文例:「甲は、為替レートが【〇】%を超えて変動した場合、乙に事前通知のうえ料金を改定することができる。」 一言解説: 外貨建て仕入れに伴う為替リスクを一定の範囲で価格改定により調整できるようにする修正である。
B. エンドユーザー向け
B-1. 原提供者の約款変更に対する解約権
修正条文例:「原提供者の約款変更により乙の利用条件が重大に不利益となる場合、乙は当該変更の通知を受けてから【〇日】以内に本契約を解約することができる。」 一言解説: 再販事業者を介した契約であっても、原提供者の一方的な条件変更から利用者を保護する修正である。
B-2. データ保存場所の情報提供義務の強化
修正条文例:「甲は、乙の求めに応じ、原提供者のデータセンターの所在国及び当該国における個人データ保護制度の概要を情報提供する。」 一言解説: 個人情報保護法第28条が求める移転先国の制度に関する情報提供義務を、再販事業者が代わって果たすための修正である。
第3部: 書き方と法的ポイント解説
使う場面/使ってはいけない場面 本書式は、海外のIaaS(Infrastructure as a Service)事業者から調達したインフラサービスを、国内事業者が自己の名義で国内エンドユーザーに再販提供する場面で用いる。国内エンドユーザーが原提供者と直接契約し、再販事業者は単なる決済代行や販売支援を行うにすぎない場合は、契約構造が異なるため別の書式(取次契約等)を検討すべきである。
根拠法令 電気通信事業法上、他人の通信を媒介する電気通信役務を提供する事業は、原則として同法第9条の登録又は第16条の届出の対象となるが、IaaSの提供形態によっては電気通信事業に該当しない場合もあり、個別の事業内容に応じた該当性の確認が必要である。データが海外に保存される場合、個人情報保護法第28条は、外国にある第三者へ個人データを提供する場合の本人同意の取得又は基準適合体制の整備を求め、同条第2項及び施行規則は、移転先の国の個人情報保護制度等に関する情報を本人に提供することを求めている。再販事業者が原提供者と国内エンドユーザーの間に立つ構造では、この情報提供義務を再販事業者が実質的に代行する必要がある。
実務でよくある失敗と対策 第一に、原提供者の約款変更(料金改定、機能廃止等)が国内エンドユーザーに十分な予告なく反映され、エンドユーザーとの間でトラブルになる失敗がある。第5条及びB-1のように、変更内容の通知義務と重大な不利益変更時の解約権を組み合わせることが対策となる。第二に、SLA未達時の補償について、再販事業者が原提供者から受け取る補償を超えてエンドユーザーに独自の補償を約束してしまい、原提供者からの補償で填補できない差額を再販事業者が自己負担する失敗がある。第6条及びA-1のようにバックツーバック(原提供者からの補償範囲に連動させる)の設計が有効である。第三に、データが海外に保存されることについてエンドユーザーへの説明が不十分で、個人情報保護法第28条の情報提供義務違反を指摘される失敗がある。第7条及びB-2のように移転先国の制度情報を提供する仕組みを組み込む必要がある。
第四に、原提供者との契約が外国法準拠となっているため、再販事業者とエンドユーザーとの契約も同じ外国法準拠と誤解し、国内の消費者保護規定や下請法等の適用関係を見落とす失敗もある。第10条のように国内エンドユーザーとの契約は日本法準拠とすることを明確にし、原契約と再販契約の準拠法の違いを整理しておくことが対策となる。
電気通信事業法上の登録・届出の要否及び越境移転規制の適用は、原提供者の所在国や具体的なサービス内容によって異なるため、個別事案は専門家に確認することが望ましい。
第4部: 使用前チェックリスト
- [ ] 再販事業者と原提供者、エンドユーザーとの契約関係の構造を図示・整理したか
- [ ] 電気通信事業法上の登録・届出の要否を確認したか
- [ ] 責任分界(原サービス自体の品質と国内サポート)を明確にしたか
- [ ] 原提供者の約款変更の反映方法及びエンドユーザーへの通知手続を定めたか
- [ ] SLAの補償範囲を原提供者からの補償にバックツーバックで連動させたか
- [ ] データの越境移転についてエンドユーザーへの情報提供義務(個人情報保護法第28条)を果たす仕組みを定めたか
- [ ] 為替変動の料金への反映方法を定めたか
- [ ] 原契約終了時の代替サービスへの移行支援を定めたか
- [ ] 準拠法及び紛争解決の合意管轄を確認したか
- [ ] 重大な不利益変更時のエンドユーザーの解約権を定めたか