工事事務所や催事など一時使用のために土地建物を短期間貸す場面の契約書。借地借家法第25条・第40条により同法の保護規定が適用されない旨を明確にした書式。
⚠ 本書式は弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布・公開を禁止する。 本書式は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別・具体的な法律相談に代わるものではない。
一時使用目的の賃貸借契約書
第1部: 書式本文
一時使用賃貸借契約書
貸主【貸主氏名・名称】(以下「甲」という。)と、借主【借主氏名・名称】(以下「乙」という。)は、次のとおり一時使用を目的とする賃貸借契約(以下「本契約」という。)を締結する。
第1条(目的物件) 甲は乙に対し、下記物件(以下「本物件」という。)を、下記の一時的な目的のために賃貸し、乙はこれを賃借する。 - 所在地: 【所在地】 - 物件種別・面積: 【土地・建物の別、面積等】
第2条(一時使用の目的) 本契約は、【工事事務所・仮設店舗・催事場・イベント会場等の具体的目的】のため、下記使用期間に限定して本物件を使用する目的で締結するものであり、借地借家法第25条(建物)又は第40条(借地)に定める一時使用のための賃貸借に該当する。
第3条(使用期間) 1. 使用期間は、【始期】から【終期】までの【 】か月間とする。 2. 使用期間は、当事者双方の書面による合意がある場合を除き、更新又は延長しない。
第4条(賃料) 乙は甲に対し、賃料として月額(又は一括)金【 】円を、【支払時期・方法】により支払う。
第5条(一時使用性の確認事項) 1. 甲及び乙は、本契約が次の事情に照らし、一時使用のための賃貸借であることを相互に確認する。 ① 使用目的が【一時的目的の内容】に限定されていること ② 使用期間が上記のとおり短期間に限定されていること ③ 乙が本物件を生活の本拠又は恒常的な事業拠点として使用する意図を有しないこと 2. 甲及び乙は、本契約に借地借家法第3条から第39条まで(建物の場合)又は第3条から第22条まで(土地の場合)に定める存続期間、更新、正当事由等の規定が適用されないことを確認する。
第6条(原状回復) 乙は、使用期間満了時、自己の費用負担で本物件を原状に回復して甲に返還する。
第7条(禁止事項) 乙は、甲の書面による事前の承諾なく、本物件を第三者に転貸し、又は本契約上の地位を譲渡してはならない。
第8条(期間内解約) 甲又は乙は、相手方に対し【 】か月前に書面で予告することにより、使用期間中であっても本契約を解約することができる。
第9条(損害賠償) 乙が本物件を毀損し、又は本契約に違反したときは、甲は乙に対しこれによって生じた損害の賠償を請求することができる。
第10条(協議事項) 本契約に定めのない事項は、甲乙誠実に協議して定める。
以上、本契約締結の証として本書2通を作成し、甲乙記名押印の上、各1通を保有する。
【締結日】
甲: 【住所】 【氏名・名称】 印 乙: 【住所】 【氏名・名称】 印
第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン
A節: 貸主向け(工事事務所・仮設建物として貸す場合)
A-1 第2条の修正例 「本契約は、乙が施工する【工事名称】に係る工事事務所及び資材置場として使用する目的で締結するものであり、工事の完了予定日である【工事完了予定日】をもって本物件の使用目的が消滅することを前提とする。」 一言解説: 工事事務所目的の場合は、使用期間を暦日で定めるだけでなく工事の完了という客観的事実と紐づけることで、一時使用性の裏付けを強化できる。
B節: 借主向け(催事・イベント会場として借りる場合)
B-1 第3条の修正例 「使用期間は、【イベント名称】の準備・開催・撤収に必要な期間として、【始期】から【終期】までの【 】日間とする。イベントが中止された場合、乙は速やかに甲に通知し、使用期間の短縮について協議する。」 一言解説: イベント利用の場合は準備・撤収期間を含めて使用期間を設定し、中止時の取扱いも合わせて定めておくと、賃料精算をめぐる紛争を防げる。
第3部: 書き方と法的ポイント解説
本書式は、工事事務所、仮設店舗、イベント会場など、期間や目的が明確に限定された一時的な利用のために土地建物を貸借する場面で使用する。使用期間の定めが曖昧であったり、実質的に住居や恒常的な事業拠点として使用させる意図がある場合には、一時使用のための賃貸借とは認められず、通常の借地借家関係として扱われるリスクが高いため、本書式を安易に使用してはならない。
根拠法令は借地借家法第25条(建物)及び第40条(土地)である。両条は、一時使用のために建物又は借地権を設定したことが明らかな場合には、同法の存続期間、更新、正当事由による更新拒絶制限、建物買取請求権等の借主・借地人保護規定を適用しない旨を定める。ただし、契約書の表題や条文上「一時使用」と記載するだけでは足りず、判例上は、使用目的、期間の長短、更新の予定の有無、賃料の定め方等を総合的に考慮して実質的に一時使用性が判断されるとされている。
実務でよくある失敗の一つ目は、契約書のタイトルや条文に「一時使用」と記載しさえすれば借地借家法の保護規定を回避できると誤解し、実際には長期間にわたり反復更新して使用させてしまうことである。本書式第3条のように更新を原則として行わない旨を定めても、実態として長期反復利用が続けば一時使用性は否定されうるため、期間満了時には速やかに明渡しを受ける運用を徹底する必要がある。
二つ目の失敗は、使用目的を具体的に特定せず、単に「一時的に使用する」といった抽象的な記載にとどめることである。第2条・第5条のように、工事名称、イベント名称、完了予定日など客観的に検証可能な事実と結びつけて目的を特定することで、一時使用性の立証がしやすくなる。
三つ目の失敗は、使用期間中の中途解約や期間延長が必要になった場合の手続を定めていないことである。第8条のように解約予告期間を定め、延長が必要な場合は新たな合意(別契約)によることを明確にしておくと、なし崩し的な長期化を防止できる。
四つ目の失敗は、一時使用の趣旨に反して賃料を長期継続的な賃貸借契約と同水準の算定方法(敷金・保証金を高額に設定し、更新料や自動更新条項を組み込む等)にしてしまい、一時使用性の判断において不利な事情として扱われることである。短期利用にふさわしい賃料体系(日割り・月割りの単純計算、更新料や自動更新条項を設けない)を採用することが、一時使用のための賃貸借であることの裏付けにもなる。
一時使用性の判断は個別の事実関係に強く依存し、契約書の記載だけで確定的に判断できるものではないため、想定される使用期間や更新の可能性については、個別事案は専門家に確認することが望ましい。
第4部: 使用前チェックリスト
- [ ] 使用目的が具体的かつ客観的に特定できる内容になっているか(工事名・イベント名等)
- [ ] 使用期間が真に一時的といえる長さに設定されているか
- [ ] 期間満了後に反復更新する予定がないか、ある場合は一時使用性への影響を検討したか
- [ ] 借地借家法の適用除外(第25条又は第40条)に該当する旨を契約書に明記したか
- [ ] 賃料の定め方が長期継続利用を前提とした定め方になっていないか
- [ ] 原状回復義務の範囲と費用負担を明記したか
- [ ] 中途解約の予告期間を定めたか
- [ ] 転貸・契約上の地位譲渡の禁止を明記したか
- [ ] 使用目的が消滅した場合(工事完了・イベント終了等)の速やかな明渡し手続を定めたか
- [ ] 一時使用性が否定された場合のリスクについて社内で共有しているか