期限の利益を喪失した後、残元本と経過利息、遅延損害金を合算して一括で支払うよう求める請求書。民法第419条の算定根拠も示します。
⚠ 本書式は弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布・公開を禁止する。 本書式は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別・具体的な法律相談に代わるものではない。
残債務一括支払請求書
第1部: 書式本文
残債務一括支払請求書
【送付日】年月日
【債務者住所】 【債務者氏名(名称)】 様
【債権者住所】 【債権者氏名(名称)】 【担当部署・氏名】
第1条(請求の趣旨) 貴殿(貴社)は、当方との間で【契約の名称】(以下「本契約」という。)を締結し、【金銭消費貸借・売買代金分割払い等の内容】に基づき金銭債務を負担しています。貴殿(貴社)は【期限の利益喪失事由発生日】において【期限の利益喪失事由(例:第◯回目の分割金の支払を◯日以上遅滞したこと)】に該当したため、本契約【第◯条】の定めにより期限の利益を喪失しました。
第2条(残元本) 期限の利益喪失時点における残元本は金【 】円です。
第3条(期限の利益喪失前の約定利息) 【約定利率】%(年率)により、【起算日】から期限の利益喪失日である【 年 月 日】までの期間に生じた約定利息は金【 】円です。
第4条(期限の利益喪失後の遅延損害金) 期限の利益喪失日の翌日である【 年 月 日】から本請求書到達日までの日数【 】日間について、民法第419条第1項の定めに従い、【約定遅延損害金利率が定められている場合はその利率、定めがない場合は法定利率(年3%、3年ごとに変動)】により算定した遅延損害金は金【 】円です(計算式:残元本【 】円×利率【 】%÷365日×【 】日)。
第5条(合計請求額) 上記第2条から第4条までの合計額として、金【 】円の一括支払を求めます。
第6条(支払期限及び方法) 本請求書到達後【 】日以内に、下記口座へお振り込みください。振込手数料は貴殿(貴社)のご負担とします。分割弁済をご希望の場合は、期限内に下記問い合わせ先までご相談ください。 【振込先金融機関・口座情報】
第7条(遅延した場合の措置) 上記期限までにお支払いいただけない場合、やむを得ず法的手続(支払督促、訴訟、強制執行等)への移行を検討いたします。
第8条(担保・保証人がある場合の措置) 本契約に担保(抵当権・質権等)又は保証人(連帯保証人を含む。)が付されている場合、上記期限までにお支払いいただけないときは、担保権の実行又は保証人に対する請求を並行して検討することがあります。
第9条(問い合わせ先) 本請求書についてのご照会は下記までご連絡ください。 【担当者名・電話番号・メールアドレス】
以上
第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン
A: 請求する側(債権者)として送付する場合
第1条の期限の利益喪失事由は、契約書の該当条項番号と喪失事由の事実(支払遅滞の回数・日数、信用不安事由の発生等)を具体的に特定して記載する。第4条の遅延損害金利率は、契約書に約定利率の定めがあるかを必ず確認し、約定がある場合はそれを優先して引用する。約定がない場合にのみ民法第419条第1項後段により法定利率を用いる旨を明記し、算定根拠を示すことで後の訴訟移行時の主張整理を容易にする。
B: 請求を受けた側(債務者)として反論・分割協議を申し入れる場合
第5条の合計請求額に異議がある場合は、残元本の金額自体に相違がないか(既払金の充当計算に誤りがないか)、遅延損害金の起算日・利率が契約書と一致しているかを確認する。特に、既に一部弁済を行ったにもかかわらず請求書の残元本に反映されていない場合は、弁済を証する領収証や振込明細を添えて金額の訂正を求めることが重要である。分割弁済を希望する場合は、第6条を書き換え、「本請求書到達後14日以内に分割弁済についてご相談させていただきたく、下記までご連絡いたします」といった形で、一括弁済が困難である事情と代替の弁済計画案を記載した回答書を作成する。連帯保証人が本請求書を受け取った場合は、主債務者との求償関係(民法第459条以下)を意識しつつ、主債務の内容(残元本・利息・遅延損害金の内訳)を保証人自身も確認できるよう、内訳の開示を求める条項を追加した回答書とすることが望ましい。
第3部: 書き方と法的ポイント解説
使う場面・使わない場面
本書式は、金銭消費貸借契約や分割払いの売買契約等で期限の利益を喪失した債務者に対し、残元本・約定利息・遅延損害金をまとめて一括請求する場面で使用する。期限の利益喪失事由が契約書に明記されていない場合や、喪失事由の発生自体に争いがある場合には、まず喪失の効力を確認してから送付する必要があり、拙速な送付は交渉を硬直化させる恐れがある。逆に、分割払いの一部が遅延しているに過ぎず、契約上まだ期限の利益を喪失していない段階では、残債務全額の一括請求は契約違反となり得るため使用を避け、遅延した回分のみの督促にとどめるべきである。
根拠法令
民法第419条第1項は、金銭債務の不履行による損害賠償額について、約定利率が法定利率を超えるときは約定利率により、それ以外は法定利率(民法第404条、年3%を起点に3年ごとに見直し)によると定めている。同条第2項は債権者が損害の証明を要しないこと、第3項は債務者が不可抗力を抗弁できないことを定める特則であり、遅延損害金の算定根拠として本書式で必ず引用すべき条文である。期限の利益喪失については民法第137条(期限の利益の喪失事由)及び契約書の期限の利益喪失条項が根拠となる。同条は破産手続開始決定を受けたとき、担保を滅失・損傷・減少させたとき、担保供与義務を履行しないときを法定の喪失事由として定めるが、実務上は分割金の支払遅滞を独自の喪失事由として契約書に定める例が多く、本書式第1条ではその契約条項を具体的に引用することが不可欠である。
実務でよくある失敗と対策
第一に、約定利率と法定利率を混同し、契約書に約定遅延損害金利率の定めがあるにもかかわらず法定利率で計算してしまう失敗がある。特に約定利率が消費貸借契約書の別紙や金銭消費貸借契約公正証書に定められている場合、本体契約書のみを確認して見落とすことがあるため、関連書類一式を確認する必要がある。第3条・第4条で契約書の該当条項を明示し、利率の根拠を書面上で特定することで防止する。第二に、期限の利益喪失日の特定を誤り、喪失前の期間にも遅延損害金を課してしまう失敗がある。第3条(約定利息)と第4条(遅延損害金)を明確に分離し、起算日を契約書の記載と照合して記載することが対策となる。第三に、既払金の充当順序(民法第489条)を無視して残元本を過大に計上する失敗があり、充当計算書を添付するなど内訳の透明性を確保することが望ましい。第四に、担保・保証人の有無を確認せずに一括請求のみを行い、後日担保権実行や保証人請求を追加する際に整合性を欠く失敗もあるため、送付前に契約書全体(担保設定契約・保証契約を含む)を確認し、第8条のように担保・保証人への対応方針をあらかじめ示しておくことが望ましい。個別の事案については弁護士等の専門家に確認することを推奨する。
第4部: 使用前チェックリスト
- [ ] 期限の利益喪失事由が契約書の条項と一致していることを確認したか
- [ ] 期限の利益喪失日を契約書・通知記録から特定できているか
- [ ] 残元本の金額に既払金の充当計算の誤りがないか
- [ ] 約定利率の有無を契約書で確認したか
- [ ] 約定利率がない場合、民法第404条の現行法定利率を確認したか
- [ ] 遅延損害金の起算日・終期・日数計算に誤りがないか
- [ ] 合計請求額の内訳(元本・利息・遅延損害金)を明確に分けて記載したか
- [ ] 振込先口座情報に誤りがないか
- [ ] 支払期限を明確に設定したか
- [ ] 送付方法(配達証明付内容証明郵便等)を検討したか
- [ ] 担保権(抵当権・質権等)の設定の有無を確認したか
- [ ] 連帯保証人の有無及び連絡先を確認したか