後継者が取得した自社株を遺留分の対象から外す場面の書式。中小企業経営承継円滑化法第4条の除外合意・固定合意と経済産業大臣確認に対応します。

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遺留分に関する合意書(除外合意・固定合意)

第1部: 書式本文

旧代表者(推定被相続人)〇〇〇〇(以下「甲」という。)、後継者〇〇〇〇(以下「乙」という。)及び甲の推定相続人〇〇〇〇・〇〇〇〇(以下「丙ら」と総称する。)は、中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律(以下「経営承継円滑化法」という。)第4条に基づき、次のとおり合意(以下「本合意」という。)する。

第1条(前提事実) 甲は〇〇株式会社(以下「対象会社」という。)の代表取締役であり、乙は甲の推定相続人であって対象会社の後継者である。乙は、甲から対象会社の株式【株式数】株(以下「本件株式」という。)の贈与を受け、又は受ける予定である。丙らは、甲の乙以外の推定相続人である。

第2条(除外合意) 甲、乙及び丙らは、本件株式の全部について、経営承継円滑化法第4条第1項第1号に基づき、甲を被相続人とする相続が開始した場合における遺留分を算定するための財産の価額から除外する旨を合意する。

第3条(固定合意との選択関係) 前条の除外合意に代えて、当事者が本件株式の価額を遺留分算定の基礎財産に算入する価額として固定することを希望する場合には、経営承継円滑化法第4条第1項第2号に基づき、本合意締結時における本件株式の価額(合意の時における相当な価額として税理士等の証明を受けたもの)を固定する旨を合意することができる。本書式では除外合意を選択するものとし、固定合意を選択する場合は別紙のとおり読み替える。

第4条(付随合意) 甲、乙及び丙らは、本件株式以外に乙が甲から贈与を受けた対象会社の事業用資産についても、経営承継円滑化法第5条に基づき、遺留分算定の基礎財産から除外する旨の付随合意をすることができる。本書式では【付随合意の対象財産】について付随合意をする。

第5条(推定相続人全員の合意) 本合意は、甲の推定相続人全員(丙らを含む。)の合意によって成立するものであり、一部の推定相続人でも合意しない場合は本合意は効力を生じない。

第6条(経済産業大臣の確認及び家庭裁判所の許可) 甲は、本合意締結後1か月以内に経済産業大臣に対し確認の申請を行い、当該確認を受けた日から1か月以内に家庭裁判所に対し許可の申立てを行う。本合意は、家庭裁判所の許可を受けることによってその効力を生ずる。

第7条(合意の効力発生後の措置) 家庭裁判所の許可により本合意の効力が生じた後、乙は速やかに丙らに対しその旨を通知する。

第8条(合意の変更・終了) 本合意は、甲、乙及び丙らの全員の合意、又は経営承継円滑化法第10条に基づく後継者の代表者でなくなったこと等を理由とする合意の効力の主張により、変更又は終了することがある。

【合意日】

甲: 【住所・氏名】 印 乙: 【住所・氏名】 印 丙ら: 【住所・氏名】 印(推定相続人ごとに全員分)

第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン

A. 旧代表者(推定被相続人)向けの修正

A-1. 合意対象株式の範囲限定

修正後:「除外合意の対象は、本合意締結時点で乙に贈与済みの株式に限るものとし、将来追加で贈与する株式については別途合意を要する。」 一言解説: 将来の追加贈与分まで包括的に除外対象とすると、丙らの遺留分がさらに縮小するため、旧代表者側は合意時点での対象を明確に区切る修正を行う。

B. 後継者向けの修正

B-1. 株式価値変動リスクへの対応(固定合意の活用)

修正後:「本件株式について、甲、乙及び丙らは第3条の固定合意を選択し、合意時における相当な価額として税理士【氏名】の証明を受けた1株あたり【固定価額】円を、将来の相続開始時における遺留分算定基礎財産への算入価額として固定する。」 一言解説: 後継者が経営努力により株式価値を増加させた場合、除外合意によらず固定合意を選択することで、増加分が遺留分算定に反映されず後継者の経営意欲を損なわない効果がある。

C. 推定相続人全員向けの修正

C-1. 丙らへの代償措置の明記

追加条文例:「乙は、丙らが本合意により遺留分算定の基礎財産から除外されることの代償として、丙らに対しそれぞれ金【代償額】円を支払う。」 一言解説: 遺留分特例により経済的利益を失う推定相続人の納得を得るため、代償措置を合意書に明記し、合意成立の実効性を高める修正である。

第3部: 書き方と法的ポイント解説

使う場面/使ってはいけない場面 本書式は、中小企業の後継者が先代経営者から自社株式の贈与を受けた場合に、当該株式の価額を遺留分算定の基礎財産から除外し(除外合意)、又はその価額をあらかじめ固定する(固定合意)ことで、将来の相続における遺留分紛争によって後継者の経営権が不安定化することを防ぐ場面で用いる。推定相続人の全員の合意が成立要件であるため、一部の相続人が反対している場合には利用できず、その場合は他の事業承継スキーム(信託の活用等)を検討する必要がある。また、対象会社が上場企業である場合や、後継者が株式を贈与ではなく売買により取得した場合には、経営承継円滑化法上の適用要件を満たさない可能性がある点にも留意する。

根拠法令 遺留分に関する民法特例は、経営承継円滑化法第4条から第9条までに規定される。同法第4条第1項第1号が除外合意、第2号が固定合意を定め、いずれも旧代表者の推定相続人全員の合意を要件とする。同法第5条は事業用資産等に関する付随合意を定める。合意が効力を生じるためには、同法第7条に基づき合意後1か月以内に経済産業大臣への確認申請を行い、確認を受けた日から1か月以内に、同法第8条に基づき家庭裁判所への許可の申立てを行う必要があり、家庭裁判所の許可を受けて初めて民法上の遺留分に関する特例としての効力が生じる(同法第9条)。この点で、当事者間の合意のみでは効力が生じない特殊な制度であることに留意が必要である。

実務でよくある失敗と対策 第一に、推定相続人の一部が合意に応じず、全員合意という成立要件を満たせないまま手続を進めようとする失敗がある。第5条のように全員合意が要件であることを明記し、事前に丙らへの十分な説明と代償措置(C-1)を検討することが対策となる。第二に、経済産業大臣への確認申請及び家庭裁判所への許可申立てというそれぞれ1か月の期間制限を徒過し、合意が効力を生じないまま放置される失敗がある。第6条のように手続の期限を明記し、進捗管理を行うことが対策となる。第三に、除外合意により株式価値の増加分の恩恵を丙らが一切受けられなくなることへの不満から、合意後も感情的な対立が続く失敗がある。B-1のように固定合意との選択を検討し、後継者の経営努力と丙らの公平感のバランスを図ることが対策となる。

遺留分特例の適用要件や固定合意における株式評価の相当性は個別の会社状況により判断が分かれるため、個別事案は専門家に確認することが望ましい。

第4部: 使用前チェックリスト

  • [ ] 甲の推定相続人全員の合意が得られる見込みであるか確認したか
  • [ ] 除外合意と固定合意のいずれを選択するか検討したか
  • [ ] 固定合意を選択する場合、税理士等による株式価額証明を取得したか
  • [ ] 付随合意の対象とする事業用資産の範囲を確認したか
  • [ ] 経済産業大臣への確認申請の期限(合意後1か月以内)を確認したか
  • [ ] 家庭裁判所への許可申立ての期限(確認後1か月以内)を確認したか
  • [ ] 丙らへの代償措置の要否及び内容を検討したか
  • [ ] 対象会社が経営承継円滑化法の適用対象要件を満たすか確認したか
  • [ ] 合意の変更・終了事由(後継者の代表者資格喪失等)を確認したか
  • [ ] 家庭裁判所の許可を受けた後の丙らへの通知方法を定めたか