遠方の相続人がいる場合に各自が個別に署名押印して分割内容を証明する書式。民法第907条の協議成立を相続人ごとに立証し、登記実務に対応します。
⚠ 本書式は弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布・公開を禁止する。 本書式は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別・具体的な法律相談に代わるものではない。
遺産分割協議証明書
第1部: 書式本文
私、下記署名者は、被相続人【氏名】(本籍【 】、最後の住所【 】、【〇〇〇〇年〇〇月〇〇日】死亡。以下「被相続人」という。)の共同相続人の一人であるところ、他の共同相続人との間で下記内容の遺産分割協議(民法第907条第1項)が真正に成立していることを証明する。本証明書は、共同相続人が遠隔地に居住する等の事情により一堂に会し又は1通の書面を順次回覧することが困難なため、相続人ごとに同一内容の書面へ個別に署名押印する方式によるものである。
第1条(被相続人及び証明者の表示) 被相続人 氏名【 】 本籍【 】 最後の住所【 】 死亡日【〇〇〇〇年〇〇月〇〇日】 証明者(相続人) 氏名【 】 続柄【 】 住所【 】
第2条(遺産分割の内容) 別紙遺産目録記載の被相続人の遺産について、共同相続人間で次のとおり分割する旨の協議が成立していることを証明する。 (1) 別紙遺産目録第1記載の不動産は、相続人【氏名】が取得する。 (2) 別紙遺産目録第2記載の預貯金は、相続人【氏名】が取得する。 (3) 別紙遺産目録第3記載のその他の財産は、相続人【氏名】が取得する。
第3条(代償金) 第2条(1)の不動産取得に伴う法定相続分との差額調整として、取得者は他の相続人に対し代償金として各金【 】円を、【〇〇〇〇年〇〇月〇〇日】までに支払う。
第4条(債務の承継) 被相続人が負担していた別紙遺産目録記載の債務は、相続人【氏名】が承継する。証明者は、民法第896条の規定により相続人が法定相続分に応じて債権者から履行を請求され得ることを理解した上で本条に同意する。
第5条(本証明書の効力) 本証明書は、他の共同相続人がそれぞれ署名押印した同一内容の証明書と合わせて、1通の遺産分割協議書と同一の効力を有するものとし、不動産の相続登記手続、預貯金の解約手続その他の相続手続において、遺産分割協議書に代わる書面として使用することができる。
第6条(証明書の作成通数及び内容の同一性) 本証明書は相続人の人数分作成するものとし、各相続人が作成する証明書は、いずれも別紙遺産目録及び分割内容を同一の記載とする。記載内容に相違がある証明書が発見された場合、取りまとめ相続人は速やかに全相続人に通知し、当該証明書を差し替える。
第7条(取りまとめ相続人への送付) 証明者は、本証明書の原本及び印鑑証明書を、取りまとめ相続人【氏名】(住所【 】)に郵送等の方法により送付する。取りまとめ相続人は、相続人全員分の証明書が揃った時点で、これを合綴して保管する。
第8条(押印及び印鑑証明書) 証明者は、本証明書に実印を押印し、作成日から3か月以内に発行された印鑑証明書1通を添付する。国外に居住する証明者は、実印及び印鑑証明書に代えて、在外公館の発行するサイン証明書(署名証明書)を添付することができる。
第9条(後日判明財産) 本証明書作成後に被相続人の遺産であることが判明した財産については、相続人全員が別途協議し、必要に応じて追加の証明書を作成する。
第10条(戸籍等による相続人の確認) 取りまとめ相続人は、戸籍法に基づき収集した戸籍謄本等により、証明者を含む相続人の範囲に漏れがないことを確認した上で本証明書の原案を作成したものであることを、証明者は確認する。
第11条(原本の保管及び提出先ごとの写しの利用) 取りまとめ相続人は、相続人全員分の証明書原本を1か所に保管し、法務局、金融機関その他の提出先ごとに必要な通数の写しを作成して提出する。提出先が原本の提示又は提出を求める場合は、原本を持参の上、確認後に還付を受ける。
以上のとおり相違ないことを証明する。
【〇〇〇〇年〇〇月〇〇日】
証明者(相続人) 住所【 】 氏名【 】 実印
(本証明書は相続人ごとに1通ずつ作成し、各自が個別に署名押印する。)
第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン
A. 署名する相続人向け書き換え
A-1. 証明書の内容に一部異論がある場面
第2条追加例:「証明者は、第2条(3)の記載につき留保があるため、別途取りまとめ相続人に対し書面で協議事項を申し入れる。」 解説: 内容に異論がある場合は署名を保留し、取りまとめ相続人へ協議事項を申し入れる手順を明記することで、不本意な確定を防げる。
A-2. 海外居住で印鑑証明書の取得が困難な場面
第8条修正例:「国外に居住する証明者は、印鑑証明書に代えて、居住地の公証人又は日本国在外公館が発行する署名証明書を添付する。」 解説: 海外居住相続人は日本の印鑑登録制度を利用できないため、在外公館のサイン証明書等の代替手段をあらかじめ明記しておく。
B. 取りまとめ相続人向け書き換え
B-1. 相続人の一部から返送が滞る場面
第7条追加例:「取りまとめ相続人は、証明書の送付から【〇】週間を経過しても返送のない相続人に対し、書面又は電話で状況を確認する。」 解説: 返送遅延は登記等の手続全体の停滞につながるため、督促のタイミングと方法をあらかじめ定めておく。
B-2. 証明書の記載内容に相違が生じた場面
第6条修正例:「取りまとめ相続人は、相違を発見した証明書を無効なものとして取り扱い、当該相続人に訂正版の再送付を求める。既に送付済みの他の証明書には影響を及ぼさない。」 解説: 記載相違のある証明書のみを差し替える運用を明記し、他の相続人の証明書の効力に影響が及ばないことを明確にする。
第3部: 書き方と法的ポイント解説
使う場面・使ってはいけない場面 本書式は、共同相続人が遠隔地に分散して居住する、海外在住者がいる、高齢や病気で移動が困難であるなど、相続人全員が同一の書面に順次署名押印することが実務上困難な場合に用いる。相続人全員が容易に一堂に会せる、又は1通の書面を短期間で回覧できる場合は、通常の遺産分割協議書を用いる方が書面管理が簡便であり、本書式を用いる必要性は乏しい。
根拠法令の解説 遺産分割協議の成立要件は民法第907条第1項に基づき、本書式のように相続人ごとに書面を分けても、内容が同一であり全員の合意が客観的に確認できる限り、1通の協議書に全員が連署した場合と法的な効果は異ならないと解されている。相続の効力に関する民法第896条は本書式でも共通の前提となる。相続人の範囲確定のための戸籍謄本等の収集根拠は戸籍法にあり、登記実務上も相続人の同一性確認のため戸籍一式の添付が求められる。
実務でよくある失敗と対策 第一に、各証明書の遺産目録や分割内容の記載に微妙な文言の相違が生じ、登記所や金融機関で受理されない失敗がある。第6条のように雛形を固定し、取りまとめ相続人が原案を一括作成して配布する運用とする。第二に、一部相続人の証明書が未着のまま手続を進めてしまい、後日成立要件を欠くことが判明する失敗がある。第7条のように返送状況を管理し、全員分が揃うまで登記等の申請を留保する。第三に、海外居住相続人の押印証明の取得に時間を要し、他の相続人を長期間待たせる失敗がある。第8条のようにサイン証明書等の代替手段を早期に案内しておく。また、証明書一式を取りまとめ相続人以外の第三者が個別に保管してしまい、提出先ごとの原本還付の管理が煩雑になる失敗も見られるため、第11条のように保管者と手続を一元化しておくことが望ましい。個別事案の事情により対応が異なるため、専門家に確認することが望ましい。
第4部: 使用前チェックリスト
- [ ] 戸籍謄本等により相続人の範囲を確定したか
- [ ] 全相続人分の証明書の記載内容が完全に一致しているか
- [ ] 取りまとめ相続人の連絡先と送付先を全員に共有したか
- [ ] 印鑑証明書又は在外公館のサイン証明書の取得方法を案内したか
- [ ] 返送状況を管理する一覧を作成したか
- [ ] 代償金の金額・支払期限を全証明書に統一して記載したか
- [ ] 未成年者・成年被後見人がいる場合の特別代理人選任は完了しているか
- [ ] 全員分の証明書が揃ってから登記・解約手続に着手する運用としたか
- [ ] 記載相違が判明した場合の差し替え手順を定めたか
- [ ] 完成した証明書一式の保管方法及び保管者を決めたか