特定の相続人が財産を取得し他の相続人へ代償金を支払う協議書です。支払時期、分割払いの場合の担保、税務上の留意点を示します。

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遺産分割協議書(代償分割型)

第1部: 書式本文

第1条(前提) 被相続人【被相続人氏名】(【生年月日】生、最後の住所【被相続人住所】、【死亡年月日】死亡。以下「被相続人」という。)の相続人である【相続人1氏名】、【相続人2氏名】及び【相続人3氏名】(以下それぞれ「甲」「乙」「丙」といい、併せて「相続人ら」という。)は、被相続人の遺産の分割について、次のとおり協議が成立したことを確認する。

第2条(遺産の範囲の確認) 相続人らは、別紙遺産目録記載の財産(以下「本件遺産」という。)が被相続人の遺産の全部であることを相互に確認する。

第3条(甲の取得財産) 甲は、本件遺産のうち下記の財産を単独で取得する。 (1) 土地 所在【所在】、地番【地番】、地目【地目】、地積【地積】平方メートル (2) 建物 所在【所在】、家屋番号【家屋番号】、種類【種類】、床面積【床面積】平方メートル (3) その他【動産・預貯金等の表示】

第4条(代償金の支払) 1 甲は、前条の財産を取得する代償として、乙に対し金【金額】円、丙に対し金【金額】円(以下併せて「代償金」という。)を支払う。 2 甲は、代償金を【支払期限:年月日】限り、乙及び丙がそれぞれ指定する金融機関口座に振込送金する方法により支払う。振込手数料は甲の負担とする。

第5条(分割払いとする場合の特則) 1 前条の代償金の全部又は一部を分割して支払うときは、甲、乙及び丙は別途、支払回数、各回の金額及び支払期日を定める合意書を作成する。 2 甲が分割金の支払を1回でも怠り、その額が金【金額】円に達したときは、乙又は丙の書面による催告後【7】日以内に是正しない限り、甲は当然に期限の利益を失い、残額を直ちに一括して支払う義務を負う。

第6条(担保の設定) 甲は、代償金の支払を担保するため、第3条第(1)号及び第(2)号記載の不動産に、乙及び丙のためにそれぞれ【抵当権/根抵当権】を設定し、その設定登記手続に必要な書類を交付するとともに登記手続に協力する。当該担保権は代償金全額の支払完了時に抹消する。

第7条(遅延損害金) 甲が代償金の支払を遅滞したときは、乙及び丙に対し、支払期日の翌日から支払済みに至るまで年【3】分の割合による遅延損害金を支払う。

第8条(相続債務の負担) 被相続人の債務(公租公課を含む。)は甲が単独で負担し、乙及び丙に負担をかけないものとする。ただし、債権者との関係では、相続人らが法定相続分に応じた責任を免れない場合があることを相続人らは了解する。

第9条(名義変更手続への協力) 乙及び丙は、甲が第3条記載の財産につき相続を原因とする所有権移転登記その他の名義変更手続を行うに際し、必要書類の交付その他の協力を行う。

第10条(祭祀承継) 被相続人の祭祀に関する権利義務は、【承継者氏名】が承継する。

第11条(後日判明した財産の取扱い) 本協議書作成後に本件遺産に属する財産が新たに判明した場合は、相続人ら全員で別途協議して分割方法を定める。ただし、その価額が金【金額】円未満である場合は甲が取得し、乙及び丙への追加の代償金支払を要しないものとする。

第12条(清算条項) 相続人らは、本協議書に定めるもののほか、被相続人の遺産に関し相互に債権債務のないことを確認する。

第13条(協議の成立) 本協議の成立を証するため本書3通を作成し、相続人らが記名押印の上、各自1通を保有する。

【日付】

甲(住所)【住所】 (氏名)【氏名】㊞ 乙(住所)【住所】 (氏名)【氏名】㊞ 丙(住所)【住所】 (氏名)【氏名】㊞

第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン

A節: 取得する相続人(代償金を支払う側)の立場からの修正例

不動産の売却等により支払原資の確保に時間を要する場合は、第4条第2項を次のように修正する。 「甲は、代償金を、本協議成立日から【6】か月以内に、乙及び丙に対し支払う。ただし、甲の責めに帰さない事由により支払が遅延する場合は、乙及び丙と協議の上、支払期限を延長することができる。」 一言解説: 支払原資が不動産売却代金である場合、確定的な期日を約束すると資金繰りが破綻した際に即座に期限の利益を失うリスクがあるため、協議による延長の余地を残す文言を加えることが実務上多い。

B節: 代償金を受け取る相続人の立場からの修正例

支払が確実に履行されるよう、担保だけでなく連帯保証人を付す例が見られる。第6条に続けて次の条項を追加する。 「【連帯保証人氏名】は、甲の乙及び丙に対する代償金支払債務について、甲と連帯して保証する。」 一言解説: 不動産担保だけでは処分に時間を要し実効性に欠ける場合があるため、資力のある第三者の連帯保証を組み合わせることで回収可能性を高めることができる。あわせて公正証書化により強制執行受諾文言を付す方法も検討に値する。

第3部: 書き方と法的ポイント解説

使う場面: 不動産や自社株式など分割しにくい財産が遺産の中心を占め、特定の相続人がその財産を単独で承継する必要がある場合(自宅の維持、事業承継等)に、他の相続人との公平を金銭で調整する目的で用いる。

使ってはいけない場面: 代償金を支払う相続人に支払能力がなく、履行の見込みが乏しい場合には安易に代償分割を選択すべきではない。この場合は換価分割等、他の分割方法を検討する必要がある。

根拠法令: 遺産分割は民法907条1項に基づき相続人間の協議により行うことができ、代償分割は同条の遺産分割の一態様として判例・実務上確立した方法である。分割払いとする場合の期限の利益喪失条項や担保設定(抵当権等)は民法の一般原則及び不動産登記法の手続に従う。また、代償金は相続税法上、代償分割による代償財産の交付として、当事者間の相続税の課税価格の計算に影響を与える点に留意が必要である。

よくある失敗と条項上の対策 1. 代償金の支払期日を定めず「速やかに支払う」等の曖昧な表現にとどめてしまい、履行遅滞の有無が争いになる。→第4条のように具体的な年月日または起算点からの期間を明記する。 2. 分割払いとした場合に、一部不履行が生じても直ちに残額請求ができず、督促を繰り返す事態になる。→第5条のように期限の利益喪失条項を設け、一定額の不履行で残債務を一括請求できるようにする。 3. 代償金の額を決めるにあたり不動産の評価方法(固定資産税評価額、路線価、時価鑑定等)を明示せず、後日評価額をめぐって蒸し返しの協議が生じる。→評価の基準時・方法を協議書内又は別紙で明記する。

また、代償分割は不動産等の現物を分けずに済む反面、代償金の負担者に一時的に多額の資金負担が生じやすい方法でもある。協議に先立ち、支払原資の見込み(自己資金、金融機関からの借入れ、対象不動産の賃貸収入等)を具体的に確認したうえで支払期日を設定しないと、成立後に不履行が続発し、結局は調停や訴訟に発展しかねない。分割払いの回数や利率(遅延損害金の利率を含む。)についても、当事者間の実情に応じて無理のない水準に設定することが望ましい。

なお、代償金の額の算定や相続税・不動産取得税等の税務上の取扱いについては個別の事情により結論が異なるため、個別の事案については専門家(弁護士・税理士・司法書士等)に確認することが望ましい。

第4部: 使用前チェックリスト

  • [ ] 相続人全員が特定され、戸籍謄本等により相続関係が確認されているか
  • [ ] 遺産目録が漏れなく作成され、相続人全員が内容を確認しているか
  • [ ] 代償金の算定根拠(不動産評価額等)が明確になっているか
  • [ ] 代償金の支払期日・支払方法が具体的に定められているか
  • [ ] 分割払いとする場合、期限の利益喪失条項と督促の手続が明記されているか
  • [ ] 担保(抵当権等)を設定する場合、設定登記に必要な書類が準備されているか
  • [ ] 代償金を支払う相続人に実際の支払能力があるか確認したか
  • [ ] 相続債務の負担者及び債権者との関係における責任の所在が明記されているか
  • [ ] 後日判明財産の取扱いについて条項を設けているか
  • [ ] 相続税・不動産取得税等の税務上の影響について税理士に確認する予定があるか
  • [ ] 全相続人が実印で押印し、印鑑証明書を添付する準備ができているか