登録意匠を用いた製品の製造販売を認める場面の契約書。意匠法第27条の専用実施権と第28条の通常実施権、関連意匠の扱いを規定します。

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意匠実施許諾契約書

第1部: 書式本文

意匠実施許諾契約書

【意匠権者】(以下「甲」という。)と【製造販売者】(以下「乙」という。)は、甲が保有する下記登録意匠の実施許諾に関し、次のとおり契約(以下「本契約」という。)を締結する。

第1条(定義) 本契約において「本意匠」とは、次の意匠登録に係る意匠をいう。 意匠登録番号:【意匠登録番号】 意匠に係る物品:【対象物品】 関連意匠の登録番号(該当する場合):【関連意匠登録番号】

第2条(実施許諾の種類及び範囲) 1. 甲は乙に対し、本意匠につき【専用実施権/通常実施権】(以下「本実施権」という。)を許諾する。 2. 本実施権の範囲は、次のとおりとする。 実施の内容:製造、使用、譲渡、貸渡し、輸出入及び譲渡等の申出 地域:【許諾地域】 期間:【許諾期間の始期】から【許諾期間の終期】まで 独占性:【独占的/非独占的】

第3条(専用実施権の登録) 1. 本実施権が専用実施権である場合、甲及び乙は、意匠法第27条第1項に基づき、本実施権の設定について特許庁における登録手続を共同して行う。専用実施権の設定は、当該登録により初めてその効力を生ずる。 2. 前項の登録に要する費用は、別段の合意がない限り乙の負担とする。 3. 本実施権が通常実施権である場合、乙は意匠法第28条に基づく通常実施権としてこれを取得し、意匠法第28条第3項が準用する特許法第99条の規定により、登録を要さずに本意匠権の移転を受けた第三者に対しても本実施権を対抗することができる。

第4条(関連意匠の取扱い) 本意匠に意匠法第10条の関連意匠が存在する場合、当該関連意匠についても本実施権の対象に含めるかどうかは、別紙記載のとおり個別に定める。関連意匠を対象外とする場合、乙は当該関連意匠に類似する製品の製造販売を行ってはならない。

第5条(実施料) 1. 乙は甲に対し、本実施権の対価として次のいずれかの方法によるロイヤリティを支払う。 【固定額方式:契約一時金として金【一時金の額】円を【支払期日】までに支払う。】 【従量方式:本意匠を実施した製品の純販売価格に【実施料率(%)】を乗じた額を、四半期ごとに算定し、翌月末日までに支払う。】 2. 乙は、毎四半期終了後【15】日以内に、対象製品の製造数量、販売数量及び純販売価格を記載した実施料算定報告書を甲に提出する。 3. 甲は、乙の帳簿書類を、事前通知の上、事業年度ごとに1回を限度として監査することができる。

第6条(実施品質の維持) 乙は、本意匠を用いた製品の製造にあたり、甲が別途指定する意匠の要部及び形態的特徴を損なわない品質を維持するものとし、甲は必要に応じて製品サンプルの提出を求めることができる。

第7条(第三者の侵害への対応) 1. 本意匠権を侵害する第三者を発見した場合、甲及び乙は速やかに相手方に通知する。 2. 専用実施権が設定されている場合、乙は自らの名において当該第三者に対し差止請求等の措置を講じることができる。通常実施権の場合、乙は甲に対し侵害排除措置を講ずるよう要請できるにとどまり、自ら差止請求権を行使することはできない。

第8条(表示義務) 乙は、本意匠を用いた製品又はその包装に、甲の指定する意匠登録表示を付するものとする。

第9条(再実施許諾の禁止) 乙は、甲の事前の書面による承諾なく、本実施権に基づき第三者に対し再実施許諾(サブライセンス)をしてはならない。

第10条(契約期間及び解除) 1. 本契約の有効期間は第2条第2項に定めるとおりとする。 2. 甲又は乙は、相手方が本契約に違反し、書面による是正要求後【30】日以内に是正しない場合、本契約を解除できる。

第11条(契約終了後の措置) 本契約が終了した場合、乙は速やかに本意匠を用いた製品の製造を中止する。ただし、終了時点で製造済みの在庫品については、終了日から【90】日間に限り販売を継続できる。

第12条(準拠法及び管轄) 本契約は日本法に準拠し、本契約に関する紛争については【管轄裁判所】を第一審の専属的合意管轄裁判所とする。

以上、本契約の成立を証するため本書2通を作成し、甲乙記名押印の上、各1通を保有する。

【契約締結日】

甲(意匠権者) 住所: 名称: 代表者: 印 乙(製造販売者) 住所: 名称: 代表者: 印

第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン

A節 意匠権者向け

甲が複数のライセンシーに並行して許諾する事業モデルの場合、第2条の独占性を非独占に固定した上で、乙の実施地域・販路が他のライセンシーと抵触しないよう限定列挙する。 before:「独占性:【独占的/非独占的】」 after:「独占性:非独占的。ただし乙は、甲が別途許諾する第三者と競合しないよう、許諾地域を【国内某地域】に限定して実施するものとし、甲は同一地域について重複して第三者に許諾しない。」 非独占許諾では甲が複数のロイヤリティ収入源を確保できる反面、地域や販路が重複すると乙同士の紛争に甲が巻き込まれるため、地理的・チャネル的な棲み分けを明記する。

B節 製造販売者向け

乙が独占的に大規模投資を行う場面では、専用実施権の設定登録を必須とし、甲の登録協力義務を強化する。 before:「甲及び乙は…本実施権の設定について特許庁における登録手続を共同して行う。」 after:「甲は、本契約締結後【14】日以内に専用実施権設定登録に必要な書類一式を乙に交付し、乙が単独で登録申請手続を行うことに同意する。甲が本項の義務を履行しない場合、乙は違約金として金【違約金額】円を甲に請求できる。」 専用実施権は登録が効力発生要件であり(意匠法第27条第1項)、未登録のままでは乙が第三者に権利を対抗できず投資回収のリスクを負うため、登録の実効性を担保する条項が重要となる。

C節 独占的実施/非独占の書き分け

独占的通常実施権(登録なきセミエクスクルーシブ)の場合、専用実施権と異なり乙に差止請求権がない点を明確にする。 before:「専用実施権が設定されている場合、乙は自らの名において当該第三者に対し差止請求等の措置を講じることができる。」 after:「本実施権が独占的通常実施権である場合、乙は甲に対し侵害者への差止請求権行使を求めることができ、甲が正当な理由なく【30】日以内に対応しないときは、乙は甲に代位して仮処分の申立てを検討できるものとし、この場合の費用は甲乙協議の上で分担する。」 独占的通常実施権者には意匠法上当然の差止請求権が認められないため、契約上の手当てがなければ侵害対応が事実上機能しなくなる。

第3部: 書き方と法的ポイント解説

本書式は、意匠権者が第三者に対し登録意匠を用いた製品の製造販売を認める場面、すなわちライセンスの設定に使用する。意匠権そのものを移転する場合や、意匠登録を受ける権利がまだ発生していない開発段階の案件には適用できない。また、著作権法上の著作物性が併存するデザインについては、意匠の実施許諾だけでは著作権の利用許諾を包含しないため、別途著作権法上の許諾条項を要する点に留意する。

根拠法令は、専用実施権を定める意匠法第27条(登録を効力発生要件とする)、通常実施権を定める意匠法第28条、及び関連意匠制度を定める意匠法第10条である。専用実施権の設定登録は意匠法第20条に定める意匠権設定登録の制度と対をなすものとして理解するとよい。

実務でよくある失敗として、第一に、専用実施権のつもりで契約を締結しながら登録手続を怠り、法的には通常実施権にとどまってしまい第三者対抗力を欠くケースがある。対策として第3条及び第2部B節のとおり登録手続の期限と違約金を明記する。第二に、実施料算定の基礎となる「純販売価格」の定義が曖昧で、控除項目(返品・値引き等)を巡って甲乙間に紛争が生じるケースがある。対策として第5条の実施料算定条項に別紙で純販売価格の定義及び控除項目を具体的に列挙する運用が望ましい。第三に、関連意匠が許諾範囲に含まれるか不明確なまま契約し、乙が類似デザインの製品を製造して甲との間で許諾範囲を巡る紛争になるケースがある。対策として第4条のように関連意匠の取扱いを別紙で個別に確定する。

実施料率の相場や独占的通常実施権者の権利行使の可否は業界慣行や個別事情により異なるため、個別事案は専門家に確認の上で条件を確定することを推奨する。

第4部: 使用前チェックリスト

  • [ ] 専用実施権と通常実施権のいずれを許諾するかを明確に選択しているか
  • [ ] 専用実施権の場合、登録手続の期限・費用負担・違約金を定めているか
  • [ ] 許諾地域・許諾期間・実施内容(製造・譲渡・輸出入等)を具体的に特定しているか
  • [ ] 独占的か非独占的かを明記し、独占的の場合は競合許諾の禁止範囲を定めているか
  • [ ] 関連意匠が許諾範囲に含まれるかどうかを別紙等で明確化しているか
  • [ ] 実施料の算定方式(固定額・従量制)と「純販売価格」の定義を明確にしているか
  • [ ] 実施料算定報告書の提出頻度及び甲の監査権を定めているか
  • [ ] 侵害発見時の対応(差止請求権の所在)を実施権の種類ごとに整理しているか
  • [ ] 意匠登録表示等の表示義務を定めているか
  • [ ] 再実施許諾(サブライセンス)の可否を明記しているか
  • [ ] 契約終了後の在庫品販売猶予期間を定めているか
  • [ ] 管轄裁判所の指定が実務上適切な場所になっているか