製品デザインの登録意匠を他社へ移転する場面の契約書。意匠法第36条が準用する特許法第98条により移転登録が効力要件となります。
⚠ 本書式は弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布・公開を禁止する。 本書式は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別・具体的な法律相談に代わるものではない。
意匠権譲渡契約書
第1部: 書式本文
意匠権譲渡契約書
【譲渡人】(以下「甲」という。)と【譲受人】(以下「乙」という。)は、甲が保有する下記意匠権の譲渡に関し、次のとおり契約(以下「本契約」という。)を締結する。
第1条(対象意匠権) 甲は、乙に対し、次の意匠権(以下「本意匠権」という。)を譲渡する。 意匠登録番号:【意匠登録番号】 意匠に係る物品(意匠法上の「意匠に係る物品」等):【対象物品】 出願日:【出願日】 登録日:【登録日】 関連意匠の有無及びその登録番号:【関連意匠登録番号(該当する場合)】
第2条(譲渡及び対価) 1. 甲は乙に対し、本意匠権を譲渡し、乙はこれを譲り受ける。 2. 乙は甲に対し、本意匠権の譲渡対価として金【対価の額】円(消費税別)を、【支払期日】までに甲の指定する銀行口座へ振込送金の方法により支払う。振込手数料は乙の負担とする。
第3条(関連意匠の一括譲渡) 1. 本意匠権に意匠法第10条に定める関連意匠が存在する場合、甲は当該関連意匠に係る意匠権の全部を本意匠権と一括して乙に譲渡するものとし、一部のみを譲渡の対象から除外することはできない。 2. 前項は、意匠法第22条が関連意匠の意匠権について基礎意匠の意匠権と分離しての移転を禁じていることに基づく。甲は、本契約締結時点で存在する関連意匠の一覧を別紙のとおり乙に開示する。
第4条(移転登録手続) 1. 本意匠権の移転は、意匠法第36条が準用する特許法第98条第1項第1号の規定により、特許庁における移転登録を経て初めてその効力を生ずる。 2. 甲及び乙は、本契約締結後【14】日以内に、共同して意匠権移転登録申請を行う。申請に必要な書類の作成費用及び登録免許税は、別段の定めがない限り乙の負担とする。 3. 甲は、移転登録手続に必要な委任状その他の書類を、乙の求めに応じ遅滞なく交付する。
第5条(前条の履行前における対価の取扱い) 移転登録が完了するまでの間、甲は本意匠権について乙の書面による事前の承諾なく、質権の設定、専用実施権若しくは通常実施権の許諾又はその他の処分を行ってはならない。
第6条(甲の表明保証) 甲は乙に対し、本契約締結日現在において次の各号の事実を表明し保証する。 一 本意匠権が有効に存続しており、意匠登録無効審判その他の係属中の手続がないこと 二 本意匠権について第三者のための質権、専用実施権その他の負担が設定されていないこと(別紙記載のものを除く。) 三 本意匠権が第三者の権利を侵害するものでないこと
第7条(既存実施許諾の承継) 本意匠権について甲が第三者に許諾した実施権が存在する場合、乙は登録日以降当該実施権を承継するものとし、甲は当該実施権の内容を別紙のとおり乙に開示する。
第8条(登録意匠公報等の記載変更) 乙は、移転登録完了後、意匠権者の名義変更に伴う関係官庁への届出その他の手続を自己の費用と責任において行う。
第9条(表明保証違反の効果) 甲が第6条の表明保証に反することが判明した場合、乙は本契約を解除し、既払対価の返還及び損害賠償を甲に請求することができる。
第10条(秘密保持) 甲及び乙は、本契約の締結及び履行を通じて知り得た相手方の営業上・技術上の秘密情報を、相手方の事前の書面による承諾なく第三者に開示又は漏洩してはならない。
第11条(準拠法及び管轄) 本契約は日本法に準拠し、本契約に関する紛争については【管轄裁判所】を第一審の専属的合意管轄裁判所とする。
以上、本契約の成立を証するため本書2通を作成し、甲乙記名押印の上、各1通を保有する。
【契約締結日】
甲(譲渡人) 住所: 名称: 代表者: 印 乙(譲受人) 住所: 名称: 代表者: 印
第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン
A節 譲渡人向け
甲が対価の分割払いを希望する場面では、移転登録を先行させると対価回収が困難になるリスクがあるため、第4条と第2条の順序を組み替え、対価完済を移転登録申請の前提条件とする。 before:「甲及び乙は、本契約締結後14日以内に、共同して意匠権移転登録申請を行う。」 after:「甲及び乙は、乙が第2条第2項に定める対価全額の支払を完了したことを条件として、支払完了日から【7】日以内に共同して意匠権移転登録申請を行う。」 移転登録前は意匠権が対抗要件を備えていないため、甲にとって対価未回収のまま登録名義だけが移転する事態を防ぐ実務的な工夫である。
B節 譲受人向け
乙が金融機関からの担保設定や第三者へのライセンス展開を予定している場面では、移転登録完了を条件に既存の実施許諾を精査する条項を強化する。 before:「本意匠権について甲が第三者に許諾した実施権が存在する場合、乙は登録日以降当該実施権を承継するものとし」 after:「乙は、移転登録手続に先立ち、本意匠権に付されている専用実施権・通常実施権の登録事項証明書を甲に請求できるものとし、甲はこれに応じる義務を負う。乙は、当該調査の結果、乙の事業計画に支障がある実施権が存在すると判断した場合、本契約を解除できる。」 専用実施権は登録が効力発生要件であるため(意匠法第27条第1項)、登録原簿を確認しないと乙が知らぬ間に専用実施権者が存在するリスクがある。
C節 関連意匠一括譲渡対応
本意匠に複数の関連意匠が連鎖的に存在する場面では、第3条を拡張し、譲渡対象の特定漏れを防ぐ。 before:「甲は、本契約締結時点で存在する関連意匠の一覧を別紙のとおり乙に開示する。」 after:「甲は、本意匠及びその基礎意匠、並びに基礎意匠を同じくする全ての関連意匠(意匠法第10条第1項所定のもの)を漏れなく別紙一覧表に記載し、当該一覧表に記載のない関連意匠が事後的に判明した場合には、甲は追加費用なく当該関連意匠に係る意匠権を乙に譲渡する義務を負う。」 関連意匠制度の下では基礎意匠と関連意匠の意匠権を分離して譲渡できないため、譲渡対象からの一部除外や見落としが将来の権利分散を招く。
第3部: 書き方と法的ポイント解説
本書式は、既に意匠登録を受けている登録意匠権を、他社又は他者へ全部譲渡する場面で使用する。意匠登録出願中で未登録の段階の権利(意匠登録を受ける権利)の譲渡には適用できず、その場合は別途「意匠登録を受ける権利の譲渡証書」を用いるべきである。また、意匠権の一部持分のみの譲渡や、実施権の設定にとどまる場合も本書式の対象外である。
根拠法令は、関連意匠の意匠権の分離移転を禁止する意匠法第22条、及び特許法の準用により移転の効力発生要件を登録に係らしめる意匠法第36条(準用特許法第98条)である。意匠登録の要件に関する意匠法第3条・第9条(先願)も背景知識として押さえておくとよい。
実務でよくある失敗として、第一に、移転登録の効力発生要件性を軽視し、契約締結のみで権利が移転したと誤解して事業を開始してしまうケースがある。対策として第4条に登録が効力要件である旨を明記し、登録完了までの行為制限を第5条で定める。第二に、関連意匠の存在を見落とし、基礎意匠のみを譲渡した結果、関連意匠が譲渡人の下に残り権利が分散するケースがある。対策として第3条及び第2部C節のとおり、関連意匠の網羅的開示義務と追加譲渡義務を設ける。第三に、既存の実施許諾の有無を確認せずに譲渡し、譲受人が想定外の実施権者の存在に後から気づくケースがある。対策として第7条及び第2部B節のように登録原簿の確認機会を設ける。
関連意匠の範囲確定や既存実施権の承継効果は事案ごとに事情が異なるため、個別事案は専門家に確認の上で条項を最終確定することが望ましい。
第4部: 使用前チェックリスト
- [ ] 対象意匠権の登録番号・物品・出願日・登録日を正確に記載しているか
- [ ] 関連意匠の有無を意匠登録原簿で確認し、一覧化しているか
- [ ] 関連意匠が存在する場合、一括譲渡の対象から漏れなく含めているか
- [ ] 移転登録の申請時期・費用負担者・書類準備義務を明記しているか
- [ ] 対価の支払時期と移転登録申請の先後関係を事業リスクに応じて設計しているか
- [ ] 既存の専用実施権・通常実施権の有無を登録事項証明書で確認したか
- [ ] 表明保証の対象事項(有効性・負担の不存在・第三者権利非侵害)を確認したか
- [ ] 表明保証違反時の解除及び損害賠償条項を設けているか
- [ ] 秘密保持の対象範囲・期間を確認したか
- [ ] 移転登録完了後の名義変更届出の実務手続を確認したか
- [ ] 管轄裁判所の指定が実務上適切な場所になっているか
- [ ] 消費税の取扱い(内税・外税)を明記しているか