窓口や製造ラインを止められず交替で休憩を取らせる必要がある場面で用いる書式。労働基準法第34条第2項但書に基づき対象労働者の範囲と休憩の与え方を定める。
⚠ 本書式は弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布・公開を禁止する。 本書式は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別・具体的な法律相談に代わるものではない。
一斉休憩の適用除外に関する労使協定書
第1部: 書式本文
〇〇株式会社〇〇事業場(以下「会社」という。)と、当該事業場の労働者の過半数を代表する〇〇(以下「労働者代表」という。)は、休憩の一斉付与の原則の適用除外に関し、労働基準法第34条第2項ただし書の規定に基づき、以下のとおり協定する。
第1条(目的) 本協定は、窓口業務、製造ラインその他常時対応を要する業務において、全従業員に休憩を一斉に付与することが業務の性質上困難な部署について、交替による休憩の付与方法を定め、休憩に関する労働基準法上の権利を確実に確保することを目的とする。
第2条(適用除外の対象部署) 本協定による休憩の一斉付与の適用除外は、次に掲げる部署に限り適用する。 一 窓口業務部門(店頭対応、電話対応等により常時の受付体制を要する部署) 二 製造ライン部門(ラインの稼働を伴い、途中停止が困難な部署)
第3条(対象労働者) 前条各号の部署に所属し、当該業務に直接従事する従業員を対象労働者とする。管理監督者及び前条各号の業務に従事しない従業員は、本協定の対象としない。
第4条(休憩の付与方法) 対象労働者の休憩は、次の各号に定める班編成による交替制により付与する。 一 第1班、第2班及び第3班の3班編成とし、班ごとに休憩の開始時刻を異にする。 二 各班の休憩開始時刻は、会社が別途定めるシフト表により、対象労働者にあらかじめ周知する。
第5条(休憩時間数の確保) 1. 対象労働者の休憩時間は、労働時間が6時間を超え8時間以下の場合は45分以上、8時間を超える場合は1時間以上とし、就業規則の定めるところによる。 2. 会社は、交替制による付与によって、いずれかの班の休憩時間が前項に定める時間数を下回ることのないよう、シフトを編成する。
第6条(休憩時間中の業務対応の禁止) 1. 対象労働者は、休憩時間中、労働からの解放が保障されるものとし、休憩中の電話番、来客対応その他の待機業務を命じられない。 2. 交替制の実施に当たっては、休憩中の班の業務を他の班が代替する体制を整え、対象労働者に休憩時間中の実質的な拘束が生じないようにする。
第7条(休憩の自由利用) 休憩時間は、労働基準法第34条第3項の規定に基づき、対象労働者が自由に利用することができるものとする。ただし、事業場内の秩序維持又は職務専念に関し、就業規則の定める合理的な範囲の制限を妨げない。
第8条(緊急時の取扱い) 突発的な業務量の増加その他やむを得ない事由により、あらかじめ定めた休憩開始時刻の変更が必要となった場合、会社は当該班の休憩開始時刻を繰り上げ、又は繰り下げることができる。この場合であっても、第5条に定める休憩時間数を下回ってはならない。
第9条(付与状況の記録) 会社は、対象労働者ごとに、実際に休憩を取得した時刻及び時間数を勤怠管理システムその他の方法により記録し、当該記録を保存する。
第10条(法定除外業種との関係) 本協定は、労働基準法第40条及び労働基準法施行規則第31条に定める業種(運輸交通業、商業、金融広告業、映画・演劇業、郵便・信書便・電気通信事業、保健衛生業、接客娯楽業、官公署の事業等)であって、一斉付与の規定自体の適用を受けない事業場については適用しない。
第11条(見直し) シフト編成又は業務体制に変更が生じ、休憩の付与方法を見直す必要があると認めるときは、会社及び労働者代表は協議の上、本協定の内容を改定する。
第12条(有効期間) 本協定の有効期間は【西暦年】年【 】月【 】日から【西暦年】年【 】月【 】日までの1年間とする。期間満了時に労使双方協議の上、更新の可否を決定する。
第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン
A節: 交替制事業場向け(コールセンター・銀行窓口など多人数の職場)
A-1 第4条の修正例 「コールセンター部門については、対象労働者を4班に分割し、各班30分ずつ休憩開始時刻をずらすことにより、受電体制を常時8割以上維持する。」 一言解説: 席数が多いコールセンター等では班を細分化し休憩開始時刻を分散させることで、応答率を落とさず全員に休憩を確保しやすくなる。
A-2 第9条の修正例 「休憩の取得状況は、着席管理システムのログイン・ログアウト記録と連動させ、休憩未取得者が生じた場合はシステムが自動的に管理者へ通知する。」 一言解説: 多人数の交替制では手作業での確認漏れが生じやすいため、システムによる自動検知の仕組みを組み込むことが望ましい。
B節: 少人数事業場向け(数名規模の店舗・事務所)
B-1 第4条の修正例 「従業員が3名以下の店舗については、班編成によらず、当日の勤務者間で個別に休憩時刻を調整する方式とし、少なくとも1名は常時対応にあたるものとする。」 一言解説: 人数が少ない事業場では固定的な班編成になじまないため、当日調整方式を認めつつ、対応要員を最低1名確保する条件を残す。
B-2 第8条の修正例 「少人数事業場において、当日の欠勤等により休憩の交替が困難となった場合、会社は近隣店舗からの応援又は休憩時間帯の一時的な短縮(ただし法定時間数の範囲内)により対応する。」 一言解説: 少人数事業場は欠勤の影響を受けやすいため、応援体制などの代替手段をあらかじめ協定に組み込んでおくと運用が安定する。
第3部: 書き方と法的ポイントの解説
本書式を用いるべき場面は、銀行窓口、店舗、コールセンター、製造ラインのように、全従業員が同時に休憩に入ると業務が完全に停止してしまう部署において、交替で休憩を取らせたい場合である。他方、労働基準法第40条及び同法施行規則第31条により一斉付与の規定自体の適用を受けない業種(運輸交通業、商業、金融広告業、映画・演劇業(映画の製作の事業を除く)、郵便・信書便・電気通信事業、保健衛生業、接客娯楽業、官公署の事業等)に属する事業場では、そもそも一斉付与の原則自体が適用されないため、本協定を締結する必要がない。この区別を誤り、法定除外業種であるにもかかわらず不要な協定締結の手続を行ってしまう例が見られる。
根拠法令は労働基準法第34条第2項であり、同項本文は休憩を一斉に与えなければならない旨を定める一方、ただし書は「当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合(それがない場合は労働者の過半数を代表する者)との書面による協定があるときは、この限りでない」と定め、労使協定の締結により一斉付与の例外を認めている。第40条・同法施行規則第31条による業種別の法定除外とは、根拠条文及び要件を異にする点に留意が必要である。
実務でよくある失敗の一つ目は、法定除外業種に該当するか否かを確認しないまま、一律に本協定の締結を試みてしまうことである。第10条のとおり、法定除外業種に該当する事業場については本協定は不要であり、いたずらに労使協定手続の負担を生じさせないよう業種該当性を先に確認すべきである。
二つ目の失敗は、交替制による休憩を導入した結果、休憩中の班に電話番や来客対応の待機を命じてしまい、労働基準法第34条第3項に定める休憩の自由利用の原則に反する運用となることである。第6条のように、休憩中の対象労働者に実質的な拘束が生じない体制を明記する必要がある。
三つ目の失敗は、休憩の付与状況を記録せず、実際に休憩が適切に付与されたかどうかを客観的に証明できない状態のまま運用を続けることである。第9条のような記録の保存は、労働基準監督署の調査対応や紛争時の立証において重要な意味を持つ。
対象業務が労働基準法第40条の法定除外業種に当たるか否かの判断を誤ると本協定自体が不要又は不十分となるため、業種該当性及び個別の運用設計については専門家の確認を経ることが望ましい。
第4部: 使用前チェックリスト
- [ ] 対象事業場が労働基準法第40条・労働基準法施行規則第31条の法定除外業種に該当しないか確認したか
- [ ] 適用除外の対象部署及び対象労働者の範囲を具体的に定めたか
- [ ] 交替制の班編成及び各班の休憩開始時刻を明確にしたか
- [ ] 各班の休憩時間数が労働基準法第34条第1項の基準(6時間超45分、8時間超1時間)を満たしているか
- [ ] 休憩中の対象労働者に電話番等の待機業務を命じない体制を整えたか
- [ ] 休憩時間の自由利用の原則(労働基準法第34条第3項)との両立を確認したか
- [ ] 緊急時に休憩時刻を変更する場合の手続及び時間数確保のルールを定めたか
- [ ] 休憩の付与状況を記録・保存する仕組みを設けたか
- [ ] 少人数事業場における欠勤等の代替対応策を検討したか
- [ ] 有効期間及び見直しの手続を定めたか