業務委託先が再度の催告後も報酬を支払わない場合の最終通告。民法第648条の報酬請求権と遅延損害金、訴訟移行の意思を明示します。
⚠ 本書式は弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布・公開を禁止する。 本書式は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別・具体的な法律相談に代わるものではない。
業務委託報酬最終通告書
第1部: 書式本文
業務委託報酬最終通告書
宛先: 【委託者住所】 【委託者商号・氏名】 御中
作成日: 【西暦】年【月】月【日】日
差出人: 【受託者住所】 【受託者商号・氏名】 【担当部署・担当者名】 印
件名: 業務委託報酬の支払に関する最終通告
当社は、貴社に対し、下記のとおり最終的に通告する。
- 当社と貴社は、【西暦】年【月】月【日】日付業務委託契約書に基づき、【業務内容】に関する業務委託契約(以下「本契約」という)を締結した。
- 当社は、本契約に基づき、【西暦】年【月】月【日】日までに合意した業務を遂行し、【業務完了報告・成果物提出等】を行った。
- 民法第648条第1項及び第2項により、受任者は、特約がなければ委任者に対して報酬を請求することができず、報酬を受けるべき場合には、委任事務を履行した後でなければこれを請求することができないのが原則である。当社は本契約における特約及び業務履行の完了により、既に報酬請求権を取得している。
- 貴社は、当社に対し、下記の業務委託報酬債務を負っている。
- 報酬額: 金【報酬額】円
- 支払期限: 【西暦】年【月】月【日】日(既に経過)
- 当社は、貴社に対し、これまで次のとおり複数回にわたり支払を求めてきた。
- 【西暦】年【月】月【日】日付 支払催告書(内容証明郵便)
- 【西暦】年【月】月【日】日 電話・メールによる督促
- しかしながら、本書面作成日現在に至るまで、貴社から入金及び合理的な説明はいずれもない。
- 当社は貴社に対し、本書面到達後【7日】以内、すなわち【最終期限】までに、上記報酬及びこれに対する支払期限の翌日から支払済みまで年3パーセントの割合による遅延損害金の全額を下記口座へ支払うことを求める。当該利率は、民法第404条に定める法定利率(2020年4月以降、3年ごとに見直される変動制)による。
- 上記期限までに支払がない場合、当社は、民法第541条に基づく本契約の解除、支払督促の申立てまたは訴訟提起その他の法的措置に移行する。
- 本通告をもって任意の交渉による解決の最終の機会とする。
- 本通告は、当社が有するその他の権利を放棄する趣旨のものではない。
以上
お振込先・お問い合わせ先 【金融機関名・支店名・口座種別・口座番号】 【口座名義】 【担当部署・担当者名】 【電話番号・メールアドレス】
第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン
A. 受託者側
修正後の文例:
当社は、本契約が準委任契約(民法第656条により準用される委任の規定に服するもの)であり、成果物の完成ではなく善良な管理者の注意をもって業務を遂行する義務を負うにとどまることを前提に、【業務期間中の履行状況】をもって委任事務の履行を完了したと考える。民法第648条第2項に基づき、既に報酬請求権が発生している。
一言解説: 業務委託契約が請負型か準委任型かによって報酬請求権の発生要件が異なるため、契約の性質を明示したうえで請求根拠を特定することが重要である。
B. 委託者側
修正後の文例:
貴社ご指摘の業務委託報酬については、本契約が成果物の完成を目的とする請負型の業務委託契約であると解される場合、民法第633条により報酬は成果物の引渡しと同時履行の関係に立つ。当社としては、成果物の完成及び引渡しの事実が確認できるまでは支払を留保する。
一言解説: 委託者側は、契約が準委任型(履行割合型・成果完成型)か請負型かを整理し、報酬発生時期についての解釈の相違を明確にしたうえで回答することが望ましい。
第3部: 書き方と法的ポイントの解説
本書式は、業務委託先に対して既に一度以上の催告を行ったにもかかわらず報酬が支払われない場合に、任意交渉を打ち切る前段階として送付する最終通告として使用する。業務の履行状況自体に争いがある段階や、そもそも委託業務が完了しているか不明確な段階では、まず履行状況を確認したうえで送付の要否を判断すべきである。
根拠法令は、民法第648条第1項及び第2項(受任者の報酬請求権とその発生時期)、第656条(準委任への準用)、第541条(催告による解除)、第404条(法定利率)である。業務委託契約には、成果物の完成を目的とする請負型と、事務処理そのものを目的とする準委任型があり、2020年施行の改正民法により、準委任のうち成果に対して報酬を支払う「成果完成型」の類型(民法第648条の2)も明文化された。報酬請求権の発生時期は、この契約類型の違いによって異なるため、通告に先立って契約書の文言を確認する必要がある。
実務でよくある失敗の一つ目は、業務委託契約を一律に請負契約と同様に扱い、成果物の完成を前提とした報酬請求の書き方をしてしまうことである。準委任型の契約では、成果物の完成にかかわらず、委任事務の履行(または履行割合)に応じて報酬請求権が発生し得る。対策として、本文3項及び第2部Aの文例で契約の性質(準委任か請負か)を明示し、報酬発生の根拠条文を使い分ける構成としている。
二つ目の失敗は、遅延損害金の利率を約定の商事法定利率のまま記載してしまうことである。2020年4月施行の商法改正により商事法定利率(旧年6パーセント)の規定は廃止され、現在は民法第404条の法定利率(当初年3パーセント、3年ごとの変動制)に一本化されている。対策として、本文7項に法定利率の根拠及び変動制である旨を明記し、契約書に別段の約定利率がある場合はそちらを優先する構成としている。
三つ目の失敗は、これまでの督促の経緯を記載せずに、いきなり解除や訴訟提起を予告してしまうことである。相当な期間を定めた催告を経ずに解除を主張すると、その有効性を争われるおそれがある。対策として、本文5項に過去の督促日・方法を列挙する構成としている。
四つ目の失敗は、フリーランス・個人事業主との業務委託契約において、フリーランス・事業者間取引適正化等法(いわゆるフリーランス新法)上の報酬支払期日規制を考慮しないまま催告してしまうことである。同法の適用対象となる取引では、給付を受領した日から60日以内のできるだけ短い期間内に報酬を支払うことが発注事業者に義務付けられており、契約書上の支払期日がこれに反する場合は、規制上の期日も踏まえて請求内容を検討する必要がある。対策として、受託者が個人か法人か、発注者の規模等を確認したうえで、適用の有無を判断することが望ましい。契約類型の解釈や報酬請求権の発生時期の判断は個別の契約内容により異なるため、専門家に確認することを推奨する。
第4部: 使用前チェックリスト
- [ ] 契約が請負型・準委任型(履行割合型・成果完成型)のいずれに該当するか確認したか
- [ ] 報酬請求権の発生要件(業務完了・履行割合等)を満たしているか確認したか
- [ ] これまでの督促の日付・方法・回数を記載したか
- [ ] 遅延損害金の利率が現行の民法第404条の法定利率(年3パーセント変動制)に基づいているか確認したか
- [ ] 契約書に別段の約定利率・遅延損害金特約がないか確認したか
- [ ] 最終期限を相当な期間で設定したか
- [ ] 解除予告(民法第541条)の文言が契約書の解除条項と矛盾していないか
- [ ] 業務履行状況を裏付ける資料(業務報告書・成果物・メール等)を整理したか
- [ ] 振込先口座情報に誤りがないか確認したか
- [ ] 訴訟移行後の証拠資料(契約書・履行記録)を準備しているか
- [ ] フリーランス新法等の支払期日規制の適用対象取引に該当しないか確認したか