自動ドアの定期点検と調整を委託する契約書です。安全性の確認項目、事故発生時の対応、消耗部品の負担区分を明確にします。後日の紛争を防ぐための確認欄をあらかじめ設けています。
⚠ 本書式は弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布・公開を禁止する。 本書式は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別・具体的な法律相談に代わるものではない。
自動ドア保守点検契約書
第1部: 書式本文
【建物所有者・管理者商号】(以下「甲」という。)と【保守業者商号】(以下「乙」という。)とは、甲が管理する建物の自動ドアの保守点検業務の委託に関し、次のとおり契約(以下「本契約」という。)を締結する。
第1条(目的) 本契約は、甲が乙に対し、後記対象自動ドアの定期点検、調整及び修繕業務(以下「本業務」という。)を委託し、乙がこれを受託することについて定めることを目的とする。
第2条(対象自動ドア) 対象は【建物名称・所在地】に設置された自動ドア【設置場所、種類(引き分け・スイング等)、台数】とする。
第3条(点検頻度及び点検項目) 乙は、定期点検を【3】か月に1回実施し、次の項目について点検及び調整を行う。(1)センサーの検知性能(検知範囲、検知感度)、(2)開閉速度及び開閉力、(3)安全装置(補助センサー、タッチセンサー等)の作動確認、(4)戸先の挟み込み防止機構の作動確認、(5)非常時の手動開放機構の作動確認、(6)駆動部・レール部の摩耗及び異音の有無。
第4条(安全性の確認基準) 1. 乙は、点検の都度、日本工業規格その他業界団体が定める自動ドアの安全に関する基準を参考に、開閉力及び挟み込み時の停止性能が基準の範囲内にあることを確認する。 2. 前項の確認の結果、基準を満たさないと認められる場合、乙は直ちに調整を行い、調整によっても改善しない場合は使用停止を甲に提案する。
第5条(点検記録の作成及び保存) 乙は、点検年月日、点検項目ごとの結果、調整内容、部品交換の有無を記載した点検記録を作成し、甲に提出する。甲は、当該記録を【5】年間保存する。
第6条(消耗部品の負担区分) 1. センサー、タイミングベルト、戸車、パッキン等の消耗部品の交換費用は、本業務の委託料に含まれるものとし、交換基準は別紙のとおりとする。 2. 制御基板、モーターその他主要部品の交換又は大規模な修繕が必要な場合、乙は見積書を提示し、甲の承諾を得たうえで実施する。当該費用は本業務の委託料に含まれない。
第7条(事故発生時の対応) 1. 自動ドアの挟み込み、誤作動等により利用者に人身損害又は物的損害が生じた場合(以下「本件事故」という。)、甲及び乙は相互に速やかに通報し、負傷者への対応を最優先とする。 2. 本件事故が乙の点検・調整の懈怠に起因することが判明した場合、乙は自己の責任と費用においてこれに対応する。本件事故が甲の使用方法の誤り又は第三者の故意過失に起因する場合は、甲乙協議のうえ責任分担を定める。 3. 乙は、本件事故の発生後、原因調査の結果及び再発防止策を記載した報告書を甲に提出する。
第8条(緊急対応) 1. 自動ドアが開閉不能又は開放したまま作動しない状態となった場合、甲は乙に緊急対応を依頼することができる。乙は、依頼を受けてから【2】時間以内を目標に現地に到着し、応急措置(手動開放固定等を含む。)を行う。 2. 緊急対応に要した部品費及び技術料は、第6条2項の取扱いに準じ、甲乙協議のうえ精算する。
第9条(委託料及び支払方法) 1. 本業務の委託料は年額【〇〇】円(消費税別途)とし、甲は乙に対し四半期ごとに【〇〇】円を支払う。 2. 追加費用は、作業完了後に乙が発行する請求書に基づき翌月末日までに支払う。
第10条(契約期間) 本契約の有効期間は【〇〇〇〇年〇〇月〇〇日】から1年間とし、期間満了の【1】か月前までに書面による別段の意思表示がないときは、同一条件で1年間自動更新するものとし、以後も同様とする。
第11条(反社会的勢力の排除) 甲及び乙は、自己が暴力団その他反社会的勢力に該当せず、これらと関係を有しないことを表明し保証する。
第12条(合意管轄) 本契約に関する紛争については、【〇〇地方裁判所】を第一審の専属的合意管轄裁判所とする。
以上の合意を証するため本書2通を作成し、甲乙記名押印のうえ各自1通を保有する。
【〇〇〇〇年〇〇月〇〇日】
(甲) 住所:【 】 商号:【 】 代表者:【 】印 (乙) 住所:【 】 商号:【 】 代表者:【 】印
第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン
A. 建物所有者・管理者向け書き換え
A-1. 高齢者や車椅子利用者が多く出入りする施設の場合
第4条1項修正例:「乙は、点検に際し、通常の歩行速度より遅い通行者を想定した検知感度の調整を行い、開閉速度についても急な開閉により利用者が驚くことのないよう配慮した設定とする。」 一言解説: 福祉施設や医療機関等では標準的な設定基準だけでなく利用者属性に応じた調整が求められるため、施設特性を踏まえた条項を追加することが望ましい。
A-2. 事故発生時の初動対応を明確にしたい場合
第7条1項修正例:「甲は、本件事故発生時、直ちに当該自動ドアの運転を停止し、手動開放又は他の出入口への迂回誘導を行う。乙は、甲からの通報を受けてから【1】時間以内に現地に到着し、原因調査を開始する。」 一言解説: 事故直後の運転停止と迂回誘導という甲側の初動対応を明記することで、二次被害の防止と証拠保全の両立を図ることができる。
B. 保守業者向け書き換え
B-1. 旧式のセンサーで検知性能に限界がある場合
第4条2項修正例:「対象自動ドアが製造から【10】年を超え、センサーの検知性能に構造的な限界があると乙が判断する場合、乙は調整による対応の限界を甲に説明し、センサーの更新を提案する。更新までの間、乙の調整義務は当該センサーの性能の範囲内にとどまる。」 一言解説: 旧式設備では調整のみで最新基準を満たせない場合があり、限界を明示しておくことで過大な安全保証を負わない構成にできる。
B-2. 甲の清掃業者による自動ドア周辺の清掃が影響する場合
第3条追加例:「乙は、点検時にセンサー面の汚損や敷居レール部の異物によるものと判断される不具合を発見した場合、甲又は甲が別途委託する清掃業者による清掃不足である旨を指摘し、点検記録に付記する。」 一言解説: センサーの誤作動が清掃不足に起因する場合があるため、原因が保守業務外にあることを記録上明確にし、責任の混同を防ぐ。
第3部: 書き方と法的ポイント解説
使う場面・使ってはいけない場面 本書式は、店舗、オフィスビル、医療・福祉施設等の出入口に設置された自動ドアについて、定期点検、安全装置の調整及び消耗部品交換を委託する場合に用いる。新設の自動ドア設置工事そのものを委託する場合や、手動ドアの改修工事を委託する場合には、本書式の点検・調整を前提とした条項構成は適合しないため、別途の請負契約書を用いる必要がある。
根拠法令及び留意点 自動ドアの安全性に関する統一的な法定基準は限定的であるが、日本工業規格(JIS)その他業界団体が定める開閉力・挟み込み検知等の基準が実務上の目安として広く用いられている。自動ドアの不具合により利用者に損害が生じた場合、建物の設置又は保存の瑕疵として民法第717条の土地工作物責任が建物所有者に生じ得るほか、点検・調整を担う保守業者についても、点検義務の懈怠があれば債務不履行責任(民法第415条)や不法行為責任(同法第709条)が問題となり得る。適用される安全基準や責任の所在は設備の設置状況や事故態様によって異なるため、個別事案は専門家に確認することが望ましい。
実務でよくある失敗と対策 第一に、点検項目に安全装置(挟み込み防止機構等)の作動確認が明記されておらず、事故発生後に点検が不十分であったとの指摘を受ける例がある。対策として、点検項目を条文上具体的に列挙し、安全装置の確認を独立した項目として明記する。第二に、事故発生時の責任分担が曖昧なまま契約を締結し、原因が保守側にあるか利用者の使用方法にあるかで対立が長期化する例がある。対策として、原因調査報告書の提出を義務付け、原因類型ごとの責任分担の枠組みをあらかじめ定めておく。第三に、旧式設備の性能限界を踏まえずに一律の安全基準遵守を約束してしまい、履行不能な義務を負う例があるため、設備の経年による限界と更新提案の手続を条項化しておくことが望ましい。
第4部: 使用前チェックリスト
- [ ] 対象自動ドアの設置場所・種類・台数を特定したか
- [ ] 点検頻度と点検項目(センサー・開閉力・安全装置等)を具体的に定めたか
- [ ] 安全性の確認基準(参照する規格等)を明記したか
- [ ] 基準を満たさない場合の調整・使用停止提案の手続を定めたか
- [ ] 点検記録の記載項目と保存期間を定めたか
- [ ] 消耗部品と主要部品の負担区分を明確にしたか
- [ ] 事故発生時の初動対応と責任分担の枠組みを定めたか
- [ ] 緊急対応の到着目標時間を定めたか
- [ ] 旧式設備における性能限界と更新提案の手続を検討したか
- [ ] センサー汚損等、保守業務外の原因による不具合の扱いを定めたか