自動車事故の状況を図と文章で説明する報告書です。道路形状、進行方向、速度、信号の状況を記録し過失割合の検討に用います。記載例と注記を添えており、初めての担当者でも作成できます。
⚠ 本書式は弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布・公開を禁止する。 本書式は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別・具体的な法律相談に代わるものではない。
自動車事故状況報告書
第1部: 書式本文
自動車事故状況報告書
【証券番号】【 】 【報告者(記名被保険者・運転者)】【 】 【報告日】【 年 月 日】
第1 事故当事者の情報 1. 甲(報告者側)車両番号・車種・運転者氏名・免許証番号 【 】 2. 乙(相手方)車両番号・車種・運転者氏名(判明している範囲) 【 】 3. 同乗者の有無及び人数(甲・乙それぞれ) 【 】
第2 事故発生状況 4. 事故発生日時 【 年 月 日 時頃】 5. 事故発生場所(住所・交差点名・道路種別) 【 】 6. 道路形状(直線・交差点・カーブ・合流地点等) 【 】 7. 信号機の状況(色・点滅の有無・当時の表示) 【 】 8. 天候・路面状況・視界の状況 【 】 9. 甲及び乙の進行方向・走行車線 【 】 10. 事故直前の甲及び乙の速度(推定を含む) 【 】km/h 11. 事故発生の態様(追突・出合い頭・右左折時衝突等) 【 】 12. 事故発生に至る経緯(ブレーキ操作の有無、回避行動の有無等) 【 】
第3 現場見取図 13. 現場見取図(道路形状、両車両の衝突前後の位置、信号機・標識の位置、目撃者の位置を図示) 【別紙添付】
第4 被害の状況 14. 人的被害の有無及び程度(甲・乙・同乗者・歩行者の別) 【 】 15. 物的被害の内容及び程度(車両損傷箇所、その他物損) 【 】
第5 事故後の措置 16. 警察への届出状況(届出日時・警察署名・受理番号) 【 】 17. 負傷者に対する救護措置の内容 【 】 18. 目撃者の有無及び連絡先 【 】
【報告者署名又は記名押印】 【 】
第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン
A節 事故当事者(報告者)の立場からの修正例
A-1 過失割合について争いが見込まれる場合 第2「12.」の下に「相手方の主張する事故態様(判明している範囲)」及び「報告者の認識する事故態様との相違点」を記載する欄を追加する。過失割合の交渉においては、双方の認識の相違点を早期に整理しておくことで、後の主張立証の準備を効率化できる。
A-2 ドライブレコーダーの映像がある場合 第3「13.」の下に「ドライブレコーダー映像の有無・保存状況・提出方法」を追記する欄を設ける。映像記録がある場合、進行方向・速度・信号表示等の客観的な裏付けとして極めて有用であり、上書き保存による消失を防ぐため速やかに保存措置を講じた旨を記載しておくことが望ましい。
A-3 歩行者・自転車が関係する事故の場合 第1の当事者情報欄に「歩行者・自転車運転者の氏名・年齢・進行方向」を追加する項目を設ける。歩行者との事故では、横断歩道の有無、信号表示、歩行者の飛び出しの有無等、車両同士の事故とは異なる着眼点が過失割合の検討上重要となるため、該当する記載欄を独立させておくことが望ましい。
B節 保険会社の立場からの修正例
B-1 過失割合算定の基礎資料とする場合 第2「6.」から「10.」までの記載を、道路幅員・車線数・優先道路の有無等を含めた詳細な図表形式に改める。裁判例に基づく過失相殺基準表(いわゆる別冊判例タイムズの基準等)への当てはめを行う前提として、道路形状や信号表示等の客観的事実を漏れなく把握する必要があるためである。
B-2 物損のみの事故で簡易な報告を求める場合 第4「14.」を「人的被害なし」の場合は記載を省略できる旨の注記を付し、第2「12.」以下を簡略化した様式に改める。軽微な物損事故については詳細な状況報告を簡素化し、報告者の負担を軽減する運用が行われることがある。
B-3 多重事故・玉突き事故の場合 第1の当事者情報欄を「甲・乙・丙…」の順で車両ごとに行を追加できる一覧表形式に改め、第2「11.」の下に「各車両間の衝突の順序及び時間差(判明する範囲)」を記載する項目を設ける。三台以上が関与する事故では、衝突の順序によって各当事者の過失評価が大きく異なり得るため、順序関係を丁寧に記録しておく必要がある。
第3部: 書き方と法的ポイント解説
本書式は、自動車同士の事故、自動車と歩行者・自転車との事故が発生した場合に、当事者が保険会社へ事故状況を報告し、過失割合の検討や保険金の算定の基礎資料とする場面で用いる。事故直後の記憶が新しいうちに作成することが望ましく、記憶が曖昧な部分を推測で断定的に記載することは避けるべきである。特に速度や信号表示など、後の過失割合の判断に直結する事項について、確認していない事実をあたかも確認済みであるかのように記載する使い方は不適切であり、推定である旨を明示すべきである。
自動車の運転者は、道路交通法第72条により、交通事故があったときは直ちに車両等の運転を停止して負傷者を救護し、道路における危険を防止する等必要な措置を講じるとともに、当該事故が発生した日時及び場所、死傷者の数及び負傷の程度、損壊した物及びその損壊の程度、当該交通事故に係る車両等の積載物並びに当該交通事故について講じた措置を、直ちに最寄りの警察署の警察官に報告しなければならないとされている。本書式の第5「16.」で警察への届出状況を記載する欄を設けているのは、この道路交通法上の措置義務の履行状況を確認する趣旨も含んでいる。
過失割合の算定については、民法第722条第2項が、被害者に過失があったときは裁判所がこれを考慮して損害賠償の額を定めることができる旨を定めており、実務上は裁判例の集積に基づく過失相殺の基準が参照されることが一般的である。本書式で道路形状・進行方向・信号の状況・速度等を詳細に記載する項目を設けているのは、この過失割合の検討に必要な客観的事実を漏れなく記録するためである。また、自動車保険の約款上も、事故発生時の状況報告を求める規定が置かれていることが一般的であり、状況報告の内容が不十分な場合、保険会社による損害調査や過失割合の提示に時間を要することがある。
よくある失敗として、第一に、速度や信号の状況について確認していない事項を断定的に記載してしまい、後日相手方の主張と齟齬が生じて信用性を損なう例がある。推定である旨を明示する記載方法への変更が対策となる。第二に、現場見取図を作成せず、文章のみで状況を説明しようとして位置関係が伝わりにくくなる例がある。見取図の添付を必須とする運用が有効である。第三に、目撃者の連絡先を確認せずに現場を離れてしまい、後日過失割合が争いになった際に客観的な証言を得られなくなる例がある。
なお、警察による実況見分が行われた場合には、実況見分調書が作成されることが多く、本書式による報告内容と実況見分調書の記載内容との間に大きな齟齬があると、保険会社による過失割合の検討において報告書の信用性が疑われる可能性がある。実況見分に立ち会った場合は、立会いの日時及び指示説明の内容についても記録し、本書式の記載と突き合わせておくことが望ましい。過失割合の最終的な認定は事故ごとの具体的事情に基づいて個別に判断されるものであるため、個別事案は専門家に確認することが望ましい。
第4部: 使用前チェックリスト
- [ ] 事故発生日時・場所を正確に記載したか
- [ ] 道路形状・信号の状況・進行方向を客観的に確認できる範囲で記載したか
- [ ] 速度等の推定を含む事項は「推定」であることを明示したか
- [ ] 現場見取図を作成し、車両の衝突前後の位置関係を図示したか
- [ ] ドライブレコーダー映像がある場合、保存状況及び消失防止の措置を記載したか
- [ ] 警察への届出状況(道路交通法第72条に基づく報告)を記載したか
- [ ] 負傷者への救護措置の内容を記載したか
- [ ] 目撃者の有無及び連絡先を確認・記載したか
- [ ] 歩行者・自転車が関係する場合、該当する追加項目を記載したか
- [ ] 相手方の主張内容と自身の認識との相違点を整理したか
- [ ] 人的被害・物的被害の程度を区分して具体的に記載したか
- [ ] 多重事故の場合、当事者ごとの車両情報及び衝突の順序を整理したか
- [ ] 報告内容と警察への届出内容(実況見分調書等)との整合性を確認したか