店舗やロードサイド事業のため事業用定期借地権を設定する場面の合意書。借地借家法第23条に基づき存続期間10年以上50年未満とし、公正証書作成を前提とする。
⚠ 本書式は弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布・公開を禁止する。 本書式は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別・具体的な法律相談に代わるものではない。
事業用定期借地権設定合意書
第1部: 書式本文
事業用定期借地権設定合意書
地主【地主氏名・名称】(以下「甲」という。)と、事業者【事業者氏名・名称】(以下「乙」という。)は、下記のとおり事業用定期借地権の設定について合意する(以下「本合意」という。)。なお、本合意に基づく借地権設定契約は、借地借家法第23条第3項の要件に従い公正証書によって締結するものとする。
第1条(目的) 甲は乙に対し、乙が下記事業用建物を所有する目的で、下記土地を賃貸することに合意する。
第2条(対象土地) - 所在地: 【土地所在地】 - 地番: 【地番】 - 地目・地積: 【地目】・【地積】平方メートル
第3条(事業用建物の用途) 乙は、本件土地上に【店舗・営業所・倉庫等の用途】の用に供する建物を所有し、専ら事業の用に供するものとする。乙又は乙の役員・使用人の居住の用に供する部分を含めてはならない。
第4条(存続期間) 1. 本件借地権の存続期間は、【始期】から【終期】までの【 】年間とする。 2. 前項の存続期間は、借地借家法第23条に基づき10年以上50年未満の範囲で定めるものとし、同法第3条から第8条まで、第13条及び第18条の規定は適用しない。
第5条(公正証書の作成) 1. 甲及び乙は、本合意締結後【 】日以内に、本合意の内容に基づき事業用定期借地権設定契約公正証書を作成する。 2. 公正証書の作成費用は、【甲乙折半・乙負担】とする。
第6条(保証金) 乙は、甲に対し、本件借地権設定の保証金として金【 】円を、公正証書作成と同時に甲に預託する。保証金は無利息とし、本件借地権消滅時、乙の未払債務を控除の上、甲は乙に返還する。
第7条(地代) 1. 乙は甲に対し、地代として月額金【 】円を、毎月末日までに翌月分を甲の指定口座へ振り込んで支払う。 2. 地代は、公租公課の増減、地価の変動その他の事情により、甲乙協議のうえ改定することができる。
第8条(建物の建築・滅失時の取扱い) 1. 乙は、本件土地上に建物を建築するときは、事前に甲の書面による承諾を得るとともに、行政庁の許可等必要な手続を自己の責任と負担において行う。 2. 存続期間中に建物が滅失した場合であっても、乙は再築することができるが、再築によって存続期間は延長されない。
第9条(期間満了時の明渡し) 1. 存続期間満了時、乙は、自己の費用負担で建物を収去し、本件土地を更地に復して甲に明け渡す。 2. 借地借家法第13条の建物買取請求権は、本件借地権には適用されない。
第10条(禁止事項) 乙は、甲の書面による事前の承諾なく、本件借地権又は建物を第三者に譲渡し、又は転貸してはならない。
第11条(協議事項) 本合意及び公正証書に定めのない事項が生じたときは、甲乙誠実に協議して解決する。
以上、本合意締結の証として本書面2通を作成し、甲乙記名押印の上、各1通を保有する。
【締結日】
甲(地主): 【住所】 【氏名・名称】 印 乙(事業者): 【住所】 【氏名・名称】 印
第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン
A節: 地主向け(建物用途を厳格に限定したい場合)
A-1 第3条の修正例 「乙は、本件土地上に建築する建物を【コンビニエンスストア・ロードサイド店舗等の具体的業種】の用途に限定して使用するものとし、用途変更を行う場合は事前に甲の書面による承諾を得るものとする。承諾なき用途変更は、本合意の重大な違反とみなす。」 一言解説: 地主にとっては近隣環境や地代水準に影響する用途変更を制限することが重要であり、承諾なき変更を契約違反として明示すると牽制になる。
B節: 事業者(借地人)向け(中途解約権を確保したい場合)
B-1 第4条への追加例 「乙は、事業計画の変更等やむを得ない事情がある場合、存続期間中であっても【 】か月前の書面による予告をもって本件借地権を解約することができる。この場合、乙は既払保証金の返還を受けられないものとし、原状回復義務は第9条に従う。」 一言解説: 事業用定期借地権は原則として期間内解約権が法定されていないため、事業者側は中途解約条項を個別に交渉して盛り込む必要がある。
第3部: 書き方と法的ポイント解説
本書式は、店舗・倉庫・工場等の事業の用に供する建物の所有を目的として土地を貸借する場面で使用する。居住用建物の所有を目的とする場合や、建物の一部でも役員・従業員の社宅・寮として使用する計画がある場合には、事業用定期借地権の要件を満たさなくなるため使用してはならない。
根拠法令は借地借家法第23条である。同条第1項及び第2項は、専ら事業の用に供する建物(居住の用に供するものを除く)の所有を目的とし、存続期間を10年以上30年未満(第1項、更新等の規定を排除する特約付き)又は30年以上50年未満(第2項、通常の借地権に近い扱い)とする借地権を事業用定期借地権と定める。本書式は10年以上50年未満の範囲を包括的に扱う構成としているが、実際の期間設定によって適用条文と排除される規定の範囲が異なる点に注意が必要である。第3項は、事業用定期借地権の設定契約は公正証書によってしなければならないと定める要式行為であり、私署証書での締結は無効となる重大なリスクがある。
実務でよくある失敗の一つ目は、公正証書によらずに私文書のみで契約を締結してしまい、後に借地借家法第23条第3項違反により事業用定期借地権としての効力(更新排除・建物買取請求権排除等の特約の効力)が否定されることである。本書式第5条のように、合意書はあくまで公正証書作成前の合意事項の確認にとどめ、最終的な契約は必ず公正証書で締結する運用を徹底する必要がある。
二つ目の失敗は、建物の用途に社宅や従業員寮など居住の要素が混入し、事業用定期借地権の要件(居住用を除く)を満たさなくなることである。第3条のように用途を明確に限定し、用途変更には地主の承諾を要する条項を設けることが有効である。
三つ目の失敗は、存続期間を10年未満又は50年以上に設定してしまい、事業用定期借地権の範囲を外れることである。この場合、通常の借地権(更新あり)として扱われ、地主が想定していた期間限定の土地利用計画が実現できなくなるおそれがある。
存続期間の区分(10年以上30年未満か30年以上50年未満か)によって適用除外される条文の範囲が異なるため、事業計画に応じた期間設計と公正証書の文言については、個別事案は専門家に確認することが望ましい。
第4部: 使用前チェックリスト
- [ ] 建物の用途が専ら事業用であり、居住用途を含まないことを確認したか
- [ ] 存続期間を10年以上50年未満の範囲で設定したか
- [ ] 存続期間の区分(10年以上30年未満/30年以上50年未満)による適用条文の違いを確認したか
- [ ] 最終契約を公正証書で締結する段取りを決めたか(合意書のみで終わらせていないか)
- [ ] 保証金の額・無利息の扱い・返還条件を明記したか
- [ ] 地代改定の条件と協議方法を定めたか
- [ ] 建物滅失時の再築と存続期間の関係を明記したか
- [ ] 期間満了時の建物収去・更地返還義務を明記したか
- [ ] 建物買取請求権(借地借家法第13条)を排除する旨を明記したか
- [ ] 譲渡・転貸の禁止と承諾手続を定めたか
- [ ] 公正証書作成費用の負担者を決めたか