当事者間で生じた事実関係を書面で確認する様式です。日時、場所、経緯、認識の一致点と相違点を整理して証拠化します。関連書式とあわせて使うことで手続の漏れを防げます。
⚠ 本書式は弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布・公開を禁止する。 本書式は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別・具体的な法律相談に代わるものではない。
事実確認書
第1部: 書式本文
事実確認書は、当事者間で発生した特定の出来事について、日時・場所・経緯等の客観的事実関係を書面に落とし込み、双方の認識を照合・記録するための書式である。合意書とは異なり、必ずしも権利義務の発生を目的とせず、事実の存在・経過を確認することに主眼を置く。
第1条(表題および前文) 「本書は、【当事者A】(以下「甲」という)と【当事者B】(以下「乙」という)との間で、下記の事実関係について確認した内容を記録するものである。」
第2条(対象となる事実の特定) 「甲及び乙は、令和◯年◯月◯日【時刻:午前◯時頃】、【場所:東京都◯◯区◯◯所在の◯◯】において生じた下記の事実(以下「本件事実」という)について、本書のとおり確認する。」
第3条(経緯の記載) 「本件事実の経緯は次のとおりである。 一、【令和◯年◯月◯日、甲が乙に対し◯◯を依頼した】 二、【同月◯日、乙が◯◯の作業を行った】 三、【同月◯日、◯◯という結果が生じた】」
第4条(認識が一致する事項) 「甲及び乙は、次の各事項について認識が一致することを確認する。 一、【◯◯という事実が発生したこと】 二、【当該事実が発生した日時が令和◯年◯月◯日であること】」
第5条(認識が相違する事項) 「甲及び乙の認識が相違する事項は、次のとおりである。 一、甲の認識:【◯◯】 二、乙の認識:【◯◯】 本書は、上記相違点についていずれかの正当性を認定するものではなく、双方の主張内容を記録するものである。」
第6条(証拠資料の添付) 「本件事実に関連する証拠資料として、次のものを本書に添付する。 一、【写真◯枚】 二、【メールのやり取りの写し】 三、【その他: 】」
第7条(本書の目的外使用の制限) 「本書は事実関係の確認・記録を目的とするものであり、当事者双方の同意なく、本書の内容を第三者に開示し、または本書をもって権利義務の発生・変更・消滅を主張する目的で使用しないものとする。」
第8条(署名) 「以上のとおり相違ないことを確認し、本書2通を作成し、甲乙各自1通を保有する。」
作成日:【令和◯年◯月◯日】 甲:住所【 】氏名【 】 印 乙:住所【 】氏名【 】 印
第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン
A節: 確認する当事者側(事実を主張する側)の視点からの書き換え
事実を主張する側(たとえば損害を被ったと考える当事者)は、第4条の「認識が一致する事項」をできる限り具体的かつ詳細に記載し、後日の立証負担を軽減しておくことが望ましい。特に日時・場所・数量など客観的に検証可能な事項は数値や固有名詞で特定する。曖昧な表現(「おおむね」「多少」等)は、後日の解釈の幅を広げてしまい確認書としての証拠価値を下げるため避ける。
また、第6条の証拠資料について、写真のファイル名・撮影日時のメタデータ、メールのヘッダー情報等、真正性を裏付ける付随情報も別紙で残しておくことを推奨する記載を加えることで、民事訴訟法228条にいう文書の成立の真正について後日争われた場合の備えとなる。
B節: 相手方の視点からの書き換え
相手方(事実確認を求められた側)は、第5条の「認識が相違する事項」欄を積極的に活用し、自らの認識を正確に記載しておくことが重要である。安易に相手方の記載内容をそのまま承認すると、後日その記載が自己に不利な自認として扱われる可能性があるため、事実と異なる点や評価が分かれる点については必ず自己の認識を併記する。
書き換え例として、第4条冒頭を「甲及び乙は、次の各事項について、現時点における認識として次のとおり整理する」と修正し、「一致」という表現を避け、あくまで現時点の整理である旨を明確にすることで、将来の立場変更の余地を残す構成とすることもできる。ただしこの修正は事実確認書としての証拠力を弱める側面もあるため、目的に応じて選択する。
場面バリエーション: トラブルの初期段階で緊急に作成する場合
事故やクレーム発生直後など、時間的制約が大きい場面では、第3条の経緯記載を簡略化し、まず第2条(日時場所の特定)と第6条(証拠資料の添付)を優先して作成し、詳細な経緯は後日補足書として追加する運用に変更することがある。この場合、本書の表題に「(暫定版)」と付記し、後日正式版を作成する予定である旨を明記しておくと、記載の未了部分について誤解を招きにくい。
場面バリエーション: 第三者(立会人)を交えて作成する場合
当事者間の対立が激しく、双方のみでは事実確認書の内容について合意形成が難しい場合、第三者(上司、仲介者、社外の関係者等)を立会人として同席させ、本書に「立会人」欄を追加する運用が考えられる。立会人欄には「本書作成の場に立ち会い、甲乙双方の陳述内容を確認した」旨を記載し、署名を求める。これにより、後日、確認書作成時の状況について第三者の証言を得やすくなるという実務上の利点がある。
第3部: 書き方と法的ポイント解説
使う場面 契約履行のトラブル、事故、クレーム対応など、当事者間で事実関係の食い違いが生じている、または将来生じるおそれがある場面において、早期に事実関係を書面化し証拠として残すために用いる。民事訴訟法228条は文書の成立の真正について規定しており、当事者双方の署名・押印がある事実確認書は、私文書の成立の真正が推定される資料として機能し得る。
使ってはいけない場面 事実確認書は事実関係の記録を目的とするものであり、権利義務の発生・変更を目的とする合意書の代用として用いるべきではない。損害賠償の金額や責任の所在について合意する必要がある場合は、別途、合意書・示談書等の書式を用いるべきである。また、一方当事者のみの認識を「事実」として断定的に記載し、相手方の署名を得ないまま「確認書」と称して使用することは、証拠としての信頼性を欠くため避けるべきである。加えて、相手方に対して署名を強要するような形で作成された確認書は、後日、意思表示の瑕疵(強迫等)を主張される余地があるため、あくまで任意の確認として作成する姿勢が重要である。
よくある失敗と対策 第一に、経緯の記載が主観的な評価(「乙が不誠実な対応をした」等)に偏り、客観的事実と評価が混在してしまうケースがある。対策として、第3条は客観的に観測可能な事実(行為・発言・結果)のみを記載し、評価・意見は第5条の「認識が相違する事項」に分離して記載する。 第二に、証拠資料を添付する旨を記載しながら実際には添付を怠り、後日資料の所在が不明になるケースがある。対策として、添付資料には通し番号を付し、本書と一体として保管する。 第三に、一方当事者が単独で作成し署名欄を空欄のまま関係者に送付し、相手方の確認を得ないまま「確認済み」として扱ってしまうケースがある。署名・押印がない限り本書は一方当事者の主張書面にとどまる旨を第7条等で明確にしておく。 第四に、日時や場所の記載を後から都合よく修正し、訂正の経緯を残さないまま書き換えてしまうケースがある。加除訂正を行う場合は必ず訂正印を押し、いつ・誰が・どの箇所を修正したかが分かる形で記録する。
事実の評価や本書の証拠価値の程度については個別の事案により異なるため、弁護士等の専門家に確認することを推奨する。
第4部: 使用前チェックリスト
- [ ] 対象となる事実の日時・場所が具体的に特定されているか
- [ ] 経緯の記載が客観的事実と主観的評価に分離されているか
- [ ] 認識が一致する事項と相違する事項が明確に区分されているか
- [ ] 相違する事項について双方の認識がそれぞれ記載されているか
- [ ] 添付する証拠資料の一覧と通し番号が整理されているか
- [ ] 甲乙双方の署名・押印欄が設けられているか
- [ ] 本書の目的外使用を制限する条項が入っているか
- [ ] 暫定版として作成する場合、その旨が表題等に明記されているか
- [ ] 第三者への開示に関する取り決めが必要か検討したか
- [ ] 本書を将来の紛争解決手続でどのように利用する想定か整理したか
- [ ] 訂正箇所がある場合、訂正印による処理がなされているか
- [ ] 立会人を交える必要があるか検討したか