電気事業法に基づく自家用電気工作物の保安管理を外部委託する契約書です。点検頻度、事故時対応、保安規程との関係を定めます。
⚠ 本書式は弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布・公開を禁止する。 本書式は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別・具体的な法律相談に代わるものではない。
自家用電気工作物保安管理業務委託契約書
第1部: 書式本文
自家用電気工作物保安管理業務委託契約書
【設置者名】(以下「甲」という。)と【電気管理技術者・保安法人名】(以下「乙」という。)は、甲が設置する自家用電気工作物の保安管理業務(以下「本業務」という。)の委託に関し、次のとおり契約(以下「本契約」という。)を締結する。
第1条(目的) 本契約は、電気事業法第42条に基づき甲が定める保安規程の遵守を前提として、甲の自家用電気工作物(設置場所:【設置場所】、設備概要:【受電電圧・契約電力等】)に係る保安管理業務を乙に委託し、もって当該電気工作物の工事、維持及び運用に関する保安を確保することを目的とする。
第2条(委託業務の内容) 乙は、次の各号に掲げる業務を行う。 一 月次点検(毎月【1】回、日中巡視点検及び測定を実施) 二 年次点検(年【1】回、停電を伴う精密点検を実施) 三 電気工作物の巡視、点検及び測定の結果に基づく報告書の作成及び甲への提出 四 電気関係報告規則に基づき甲が行うべき届出・報告に関する助言 五 甲の保安規程の維持及び改定に関する助言 六 その他甲乙が別途書面で合意した業務
第3条(外部委託承認制度との関係) 1 乙は、電気事業法第43条第2項及び電気事業法施行規則第52条の2に定める外部委託承認制度に基づき、経済産業大臣(又は産業保安監督部長)の承認を受けた者又はその要件を満たす者であることを表明し、これを証する書類を甲に提出する。 2 乙は、承認の基礎となった事項(乙の組織、電気管理技術者の資格、業務の実施体制等)に変更が生じたときは、遅滞なく甲に通知する。
第4条(保安規程との整合) 1 乙は、甲が定める保安規程の内容を遵守し、これに従って本業務を実施する。 2 甲は、保安規程を変更しようとするときは、事前に乙の意見を聴取する。 3 乙は、本業務の遂行を通じて保安規程の内容が電気事業法第42条の趣旨に照らして不十分と認めるときは、甲に対し改定を提案することができる。
第5条(点検の実施方法及び記録) 1 乙は、点検の都度、点検年月日、点検箇所、測定値、異常の有無及び是正措置の要否を記載した点検記録を作成し、これを【3】年間保存する。 2 乙は、点検の結果、電気工作物に異常又は法令違反のおそれを発見したときは、直ちに甲に報告するとともに、応急措置について助言する。
第6条(事故時対応) 1 甲又はその従業員は、自家用電気工作物に係る事故(感電、火災、破損等)を発見したときは、直ちに乙に連絡する。 2 乙は、前項の連絡を受けたときは、速やかに現地に赴き、又は電話等により応急措置を指示する。 3 乙は、電気関係報告規則に定める事故報告に該当すると認めるときは、甲に対し、経済産業大臣又は産業保安監督部長への報告の要否及び手続について助言する。 4 事故報告に係る届出は甲の名において行うものとし、乙はこれを代行しない。
第7条(主任技術者の職務) 乙が選任する電気管理技術者は、電気事業法第43条に定める主任技術者の職務代行者として、本業務に係る保安の監督を行う。乙は、電気管理技術者の氏名及び資格を甲に通知する。
第8条(委託料及び支払方法) 1 委託料は月額金【 】円(消費税別)とする。 2 甲は、乙が発行する請求書に基づき、毎月末日までに前項の委託料を乙が指定する銀行口座に振り込む方法により支払う。振込手数料は甲の負担とする。
第9条(緊急時の追加費用) 第6条の事故対応その他緊急を要する業務であって第2条に定める業務の範囲を超えるものについては、甲乙協議の上、別途費用を定める。
第10条(秘密保持) 甲及び乙は、本契約の履行に関連して知り得た相手方の技術上又は営業上の秘密を、相手方の書面による承諾なく第三者に開示し、又は本業務の目的以外に使用してはならない。
第11条(損害賠償) 1 乙の故意又は重大な過失により甲に損害が生じたときは、乙は甲に対しその損害を賠償する。 2 前項の賠償額は、本契約に基づき乙が受領した直近【12】か月分の委託料相当額を上限とする。ただし、乙の故意による場合はこの限りでない。
第12条(契約期間) 本契約の有効期間は、【 】年【 】月【 】日から1年間とする。ただし、期間満了の【1】か月前までにいずれかの当事者から書面による別段の意思表示がないときは、同一条件でさらに1年間更新するものとし、以後も同様とする。
第13条(解除) 甲又は乙は、相手方が本契約に違反し、相当の期間を定めた催告後もその違反が是正されないとき、又は電気事業法上の欠格事由に該当するに至ったときは、本契約を解除することができる。
第14条(反社会的勢力の排除) 甲及び乙は、自己及びその役員が暴力団等反社会的勢力に該当せず、将来にわたっても該当しないことを表明し、保証する。
第15条(協議事項) 本契約に定めのない事項又は本契約の解釈に疑義が生じた事項については、甲乙誠実に協議の上、これを解決する。
第16条(管轄裁判所) 本契約に関する紛争については、【 】地方裁判所を第一審の専属的合意管轄裁判所とする。
本契約締結の証として本書2通を作成し、甲乙記名押印の上、各1通を保有する。
【 】年【 】月【 】日
甲(設置者) 住所: 名称: 代表者: 印
乙(電気管理技術者・保安法人) 住所: 名称: 代表者: 印
第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン
A節: 設置者(甲)側で修正すべきポイント
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責任上限の見直し 第11条第2項の賠償額上限は乙側に有利な条項である。設置者としては、重過失による大規模停電・設備損壊のリスクを踏まえ「直近24か月分」まで上限を引き上げる、又は乙に施設賠償責任保険の付保を義務付ける条項を追加することが望ましい。
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緊急対応の到達時間の明記 第6条第2項は「速やかに」との抽象表現にとどまる。「通報受領後2時間以内に現地到着」等、具体的な到達時間を明記する修正が有効である。到達時間を欠くと事故対応遅延の責任所在が不明確になりやすい。
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点検記録の甲への提供頻度 第5条第1項の点検記録は乙が保存する建付けだが、「点検の都度、記録の写しを電子データで甲に提出する」旨を追加し、自社の是正措置管理台帳と突合できるようにすべきである。
B節: 電気管理技術者・保安法人(乙)側で修正すべきポイント
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保安規程違反時の免責 甲が保安規程に反する運用(無資格者による作業指示等)を行った結果生じた事故については、乙の責任を限定する条項を第11条に追加することが望ましい。
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委託料の改定条項 電気工作物の増設・設備更新により点検工数が増加した場合に備え、「設備容量又は点検箇所数に増減があったときは協議の上、委託料を改定する」旨を第8条に追加する。
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再委託の可否 乙が測定業務の一部を協力事業者に再委託する実務があるため、事前の書面承諾を条件に再委託を認める条項を新設し、運用上の齟齬を防ぐ。
第3部: 書き方と法的ポイントの解説
使う場面・使ってはいけない場面の解説
本書式は、電気事業法上の主任技術者を自ら選任せず、外部委託承認制度(電気事業法施行規則第52条の2)を利用して保安管理業務を外部の電気管理技術者又は電気保安法人に委託する自家用電気工作物設置者向けの契約書である。すでに自社で電気主任技術者を選任している事業者や、高圧受電設備を持たない需要家には適合しない。また、外部委託承認を受けていない者との間で本契約を締結しても、電気事業法第43条の主任技術者選任義務を代替する効果は生じない点に注意が必要である。
根拠法令の解説
本契約の骨格は、電気事業法第42条(保安規程の遵守)、同法第43条(主任技術者の選任義務及びその代行)、電気事業法施行規則第52条の2に定める外部委託承認制度、並びに事故発生時の報告義務を定める電気関係報告規則に基づいている。特に外部委託承認制度は、一定の要件(電気管理技術者の資格、事業所の体制等)を満たす個人又は法人が経済産業大臣等の承認を受けることで、主任技術者の選任に代えて委託契約による保安管理を可能とする制度であり、契約書中に承認の事実を確認する条項(第3条)を設けることが実務上重要である。
よくある失敗と条項上の対策
第一に、外部委託承認の有効性を契約締結時に確認せず、後日承認が失効していたことが判明する失敗が見られる。第3条第2項のように変更通知義務を課すことで、承認状況の継続的な把握を図る。第二に、事故対応における甲乙の役割分担が曖昧なまま契約を締結し、事故発生時に報告主体で紛糾する例がある。第6条第4項のように報告主体が設置者であることを明記し、乙の役割は助言に限定しておく。第三に、点検頻度を「定期的に」とのみ記載し、後日、月次・年次点検の回数について認識の相違が生じる失敗がある。第2条のように具体的な回数を数値で明記することが望ましい。
なお、外部委託承認制度の適用要件や事故報告の要否の判断は個別の設備状況により異なるため、契約締結や運用に際しては個別事案について専門家(弁護士、電気主任技術者等)に確認することを推奨する。
第4部: 使用前チェックリスト
- [ ] 乙が電気事業法施行規則第52条の2の外部委託承認制度の要件を満たしていることを確認したか
- [ ] 乙の電気管理技術者の氏名・資格・連絡先を契約書別紙等に明記したか
- [ ] 月次点検・年次点検の回数及び実施時期を具体的に記載したか
- [ ] 甲の保安規程の写しを乙に交付し、内容の整合を確認したか
- [ ] 事故発生時の連絡体制(緊急連絡先、到達時間の目安)を明記したか
- [ ] 電気関係報告規則に基づく報告義務の主体(甲)を明確にしたか
- [ ] 委託料の金額、支払方法及び緊急対応時の追加費用の取扱いを確認したか
- [ ] 損害賠償の上限及び保険付保の要否を検討したか
- [ ] 契約期間及び自動更新条項の要否を確認したか
- [ ] 秘密保持の対象範囲(設備図面、測定データ等)を確認したか
- [ ] 再委託の可否及びその条件を確認したか
- [ ] 管轄裁判所の指定地が甲乙双方にとって現実的な地であるか確認したか