民法第151条の協議を行う旨の合意により時効の完成猶予を得るため、債権額や協議方法を提示して書面での合意を申し入れる通知書です。
⚠ 本書式は弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布・公開を禁止する。 本書式は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別・具体的な法律相談に代わるものではない。
協議を行う旨の合意申入書
第1部: 書式本文
協議を行う旨の合意申入書
【通知日付】
【相手方氏名又は名称】 殿 【相手方住所】
【申入人住所】 【申入人氏名又は名称】 ㊞
第1条(本件債権の表示) 申入人は、相手方に対し、下記債権(以下「本件債権」という)を有していると考えている。 (1) 発生原因:【契約の名称・締結日】 (2) 請求金額(元本):金【元本額】円 (3) 弁済期:【弁済期日】 (4) 消滅時効の完成が見込まれる日:【時効完成予定日】
第2条(協議申入れの趣旨) 申入人は、相手方に対し、本件債権の存否及び支払方法について協議を行うことを申し入れる。本件申入れは、民法第151条第1項に定める「権利についての協議を行う旨の合意」を書面により成立させることを目的とするものである。
第3条(合意成立の方法) 相手方が本協議申入れに応じる場合は、本書面末尾の【合意書欄・別紙合意書】に署名又は記名押印の上、【回答期限】までに申入人宛てに返送するものとする。当該合意は、民法第151条第4項により書面によってされたものとみなされる方法(電磁的記録による場合を含む)による。
第4条(協議期間及び完成猶予の効力) 本協議に関する合意が成立した場合、民法第151条第1項第1号により、その合意があった時から1年を経過した時までの間、本件債権の消滅時効の完成が猶予される。当事者は、当該期間内に、本件債権の存否及び支払方法について誠実に協議するものとする。
第5条(協議期間の再合意) 前条の協議期間内に合意がまとまらない場合、当事者は、書面により再度協議を行う旨の合意をすることができる。ただし、民法第151条第2項により、時効の完成が猶予される期間は、本来の時効完成時から通じて5年を超えることができない。
第6条(協議不調の場合の対応) 第4条の期間内に協議がまとまらない場合、申入人は、訴訟提起、支払督促の申立てその他法令上認められる手続を検討する。
第7条(催告との調整) 申入人は、本協議申入れと催告(民法第150条)を重複して行う場合には、民法第151条第3項の規定により、いずれか一方の完成猶予の効力が生じている間に他方の措置を講じても重複して猶予期間が延長されない点に留意し、両手続の時期的な調整を行うものとする。
第8条(連絡先) 本件に関する連絡は下記宛先まで願いたい。 【申入人連絡先(住所・電話番号・メールアドレス)】
以上
【合意書欄】 私は、上記協議申入れの内容を確認し、本件債権に関する協議を行う旨の合意をします。 【回答日】 【相手方氏名又は名称】 ㊞
第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン
A. 申し入れる側(債権者側で協議を促したい場合)
修正後の文例:
申入人は、本件債権の消滅時効が【時効完成予定日】に完成することを認識しているところ、直ちに訴訟提起等の措置を講じることが困難な事情があるため、民法第151条第1項に基づく協議を行う旨の合意により、時効の完成猶予を得たいと考えている。
一言解説: 協議を行う旨の合意による完成猶予は、催告(民法第150条)と異なり、当事者双方の書面による合意が必要である。相手方が返送に応じない場合には猶予の効力が生じないため、時効完成予定日に十分な余裕を持って早期に申し入れる必要がある。
B. 申入れを受けた側(債務者側で対応を検討する場合)
修正後の文例:
相手方は、申入人からの協議申入れの内容を確認したが、本件債権の存否について【争いの有無・具体的な事情】があるため、存否を争う姿勢を維持したまま協議に応じるか、又は協議自体に応じないかを検討する。
一言解説: 協議申入れに応じて合意書に署名押印すること自体は、債務の存在を認める「承認」(民法第152条)には当たらないと一般に解されているが、協議の過程での発言や書面のやり取りの内容によっては承認と評価されるリスクもあるため、存否を争う場合はその旨を明確にした上で協議に応じるか、応じずに時効の進行に委ねるかを検討する必要がある。
第3部: 書き方と法的ポイントの解説
本書式は、当事者間で権利の存否や履行方法について実質的な話し合いの余地があるものの、時効完成までに訴訟提起等の準備が整わない場合に、書面による合意で時効の完成猶予を得るために使用する。使用すべき場面は、相手方との関係が対立的でなく、協議による解決の可能性が見込まれる事案である。他方、相手方が協議自体に応じる見込みが乏しい事案では、合意が成立せず完成猶予の効力が生じないため、時効完成が迫っている場合には催告(民法第150条)を優先的に検討すべきである。
根拠法令は民法第151条である。同条第1項は、権利についての協議を行う旨の合意が書面でされたときは、合意があった時から1年を経過した時、当事者が定めた協議期間(1年に満たない期間に限る)を経過した時、又は当事者の一方から協議続行拒絶の書面通知があった時から6箇月を経過した時のいずれか早い時までの間、時効の完成が猶予される旨を定める。同条第2項は、再度の合意により完成猶予期間を更新できるが、通じて5年を超えることができない旨を定める。同条第4項は、この合意が書面(電磁的記録を含む)によってされることを要件としている点が重要であり、口頭の合意のみでは効力が生じない。
実務上よくある失敗の第一は、口頭での協議の申入れや相手方の口頭での了承のみで満足し、書面による合意を取り付けないまま時効完成予定日を迎えてしまう例である。民法第151条第4項の要件を満たすため、第3条のように署名又は記名押印による返送を明確に求める必要がある。メールやチャットのやり取りであっても電磁的記録として書面性の要件を満たし得るが、合意の成立時期や内容が後日不明確にならないよう、やり取りの保存方法にも注意する必要がある。第二の失敗は、催告(民法第150条)による完成猶予中に協議を行う旨の合意をした場合、あるいはその逆の場合について、猶予期間が重複して延長されると誤解する例であり、民法第151条第3項により、いずれかの完成猶予の効力が生じている間に他の完成猶予事由が生じても、その効力は重複して認められない点を第7条のように明記しておくことが望ましい。第三に、協議期間を定めずに合意した結果、1年経過時点が明確にならず、猶予期間の終期をめぐって争いになる例が見られるため、第4条のように協議期間や終期の計算方法を明示しておくことが重要である。第四に、協議続行拒絶の通知を口頭で行い、6箇月の猶予期間の起算日が不明確になる例もあるため、拒絶の意思表示も書面で行うことが望ましい。個別の事案における合意の成否や猶予期間の計算については、弁護士等の専門家に確認することを推奨する。
第4部: 使用前チェックリスト
- [ ] 本件債権の発生原因及び弁済期を裏付ける資料を確認したか
- [ ] 消滅時効の完成予定日を正確に計算したか
- [ ] 相手方が協議に応じる見込みがあるかを事前に見極めたか
- [ ] 合意書欄への署名又は記名押印による返送を明確に求めているか
- [ ] 書面(電磁的記録を含む)による合意の要件を満たす形式になっているか
- [ ] 催告(民法第150条)を既に行っている場合、猶予期間の重複関係を確認したか
- [ ] 協議期間及びその終期の計算方法を明記したか
- [ ] 協議が不調に終わった場合の次の対応方針(提訴等)を検討したか
- [ ] 債務者の現住所を最新の情報で確認したか
- [ ] 送付前に弁護士等の専門家へ相談する必要性を検討したか