配置転換や育成に社員の意向を活かす企業向け。申告項目や提出時期、秘密保持を定め、労働契約法第3条第3項の仕事と生活の調和の理念を反映します。

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自己申告制度規程

第1部: 書式本文

第1条(目的) 本規程は、【株式会社〇〇】(以下「会社」という。)が従業員の職務に対する意向、キャリア展望及び家庭事情等を定期的に把握し、配置転換、人材育成及び処遇の決定に活用するための自己申告制度について、実施時期、申告事項、手続並びに申告内容の取扱いを定めることを目的とする。会社は、本制度の運用を通じ、労働契約法第3条第3項に定める仕事と生活の調和にも配慮した人事管理に努める。

第2条(定義) 本規程において「自己申告」とは、従業員が所定の様式により、現在の職務に対する評価、異動・転換の希望、キャリア形成上の希望その他会社が定める事項を会社に申告することをいう。

第3条(適用対象者) 本規程は、就業規則第【 】条に定める正社員のうち、勤続【 】年以上の者に適用する。会社は、契約社員その他の従業員についても、別途の定めにより本制度を準用することができる。

第4条(実施時期) 自己申告は、原則として年【 】回、会社が指定する期間内に実施する。会社は、組織再編その他の事情により、臨時に自己申告を実施することができる。

第5条(申告事項) 自己申告の対象事項は、次のとおりとする。 一 現在の職務内容及び担当業務に対する自己評価 二 異動、職種転換又は昇進に関する希望 三 資格取得、研修受講等の能力開発に関する希望 四 育児、介護その他家庭事情に関し配置上の配慮を要する事項 五 その他会社が別途定める事項

第6条(申告の方法) 1. 従業員は、会社が指定する自己申告書に必要事項を記入し、所定の期限までに人事部門に提出するものとする。 2. 提出された自己申告書は、直属の上司を経由せず、人事部門が直接受領する。

第7条(面談の実施) 1. 人事部門又はその指名する者は、自己申告書の内容を踏まえ、必要に応じて従業員との面談を実施することができる。 2. 面談は、従業員の希望を確認する趣旨で行うものであり、面談の結果が直ちに異動又は処遇の決定を意味するものではない。

第8条(異動希望の取扱い) 1. 会社は、自己申告の内容を配置転換及び人材育成の検討に当たっての参考資料として取り扱う。 2. 会社は、自己申告により示された異動希望を最大限尊重するよう努めるが、業務上の必要性その他の事情により、申告された希望どおりの異動を約束するものではない。

第9条(人事評価との峻別) 自己申告の内容及び申告の有無自体は、人事評価の直接の評価対象としない。会社は、自己申告を行ったこと又はその内容を理由として、従業員に不利益な取扱いを行ってはならない。

第10条(秘密保持) 1. 自己申告の内容は、配置転換及び育成計画の検討に必要な範囲でのみ利用し、人事部門及び決裁権限者以外の者に開示しない。 2. 直属の上司に対しては、本人が同意した場合を除き、自己申告の内容を個別に開示しない。

第11条(申告内容の変更・撤回) 従業員は、申告後であっても、事情の変更があったときは、人事部門に対し申告内容の変更又は撤回を申し出ることができる。

第12条(記録の保管) 会社は、自己申告書及び面談記録を、個人情報の保護に関する法律に従い適切に管理し、利用目的の達成に必要な期間を経過した後は速やかに廃棄する。

第13条(改廃) 本規程の改廃は、就業規則の変更手続に準じて行う。

第14条(附則) 本規程は【西暦年】年【 】月【 】日から施行する。

第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン

A節: 年1回実施型向け(定期的な棚卸しとして運用したい企業)

A-1 第4条の修正例 「自己申告は、毎年【4】月から【5】月までの間に年1回実施する。ただし、組織改編その他会社が必要と認める場合は、臨時に実施することができる。」 一言解説: 年1回に固定することで、人事考課や異動時期のサイクルと連動させやすく、運用の予見可能性が高まる。

A-2 第5条の修正例 「自己申告書には、現在の職務に対する自己評価及び中長期的なキャリア希望を記載するものとし、当面の異動希望の有無は必須記載事項としない。」 一言解説: 年1回型では異動の即時性よりも中長期的な育成計画への反映を主眼とするため、申告事項を評価・育成寄りに設計するとよい。

B節: 異動希望調査重視型向け(配置転換に社員の意向を強く反映させたい企業)

B-1 第5条・第8条の修正例 「自己申告書には、希望する部署、職種及び勤務地を具体的に記載させるものとし、会社は、年【2】回実施する自己申告の結果を配置転換の検討資料として優先的に参照する。」 一言解説: 異動希望調査を重視する企業では、申告頻度を高め、具体的な希望先まで記載させることで、配置転換の検討材料としての実効性を高められる。

B-2 第7条の修正例 「異動希望を申告した従業員に対しては、人事部門は原則として全員と面談を実施し、希望を実現できない場合はその理由を可能な範囲で説明する。」 一言解説: 異動希望を重視する制度では、希望が通らなかった場合の説明機会を設けることで、従業員の制度に対する信頼を維持できる。

第3部: 書き方と法的ポイントの解説

本規程を導入すべき場面は、配置転換や人材育成の判断に際し、従業員本人の意向や家庭事情を組織的に把握する仕組みを持たない企業、あるいは異動を会社主導のみで決定してきた結果、従業員のモチベーション低下や早期離職につながっている企業である。逆に、既に上司と部下との定期面談(1on1等)が制度化され、そこで異動希望や育成希望を十分に吸い上げられている企業では、屋上屋を架す形で自己申告制度を別途新設すると、申告窓口が重複し従業員の負担が増すだけになる場合がある。

根拠法令としては、労働契約法第3条第3項が使用者及び労働者に対し、労働契約の内容について仕事と生活の調和にも配慮すべきことを求めており、家庭事情等を申告事項に含める本制度は、この理念を人事管理の実務に反映する仕組みと位置付けられる。また、育児・介護休業法第26条は、労働者を転勤させようとする場合に、その育児又は介護の状況に配慮すべき旨を事業主に義務付けており、第5条第4号のように家庭事情に関する申告事項を設けることは、この配慮義務を履行するための情報収集手段としても機能する。加えて、自己申告書に記載される家庭状況等の情報は、健康情報ほどではないにせよ機微性を有し得るため、個人情報の保護に関する法律に基づく適正な取得・利用・管理が求められる。

実務でよくある失敗の一つ目は、自己申告の内容をそのまま人事評価に反映させてしまい、従業員が低い自己評価や率直な希望を記載することを避けるようになり、制度が形骸化することである。第9条のように申告内容と人事評価を峻別する旨を明記することで、この弊害を防止できる。

二つ目の失敗は、提出された自己申告書が直属の上司の目に触れる運用となっており、異動希望等を率直に書けない、あるいは書いたことで上司との関係が悪化することである。第6条・第10条のように、提出先を人事部門に限定し、本人の同意なく上司へ開示しない旨を定めることで、この問題を回避できる。

三つ目の失敗は、異動希望を申告すれば必ず実現されると従業員が誤解し、希望が通らなかった際に不満や不信感が生じることである。第8条のように、申告内容を参考資料として扱う旨及び希望どおりの異動を約束しない旨を明記し、B節のように面談で理由を説明する運用を組み合わせることで、期待値のずれを防止できる。

自己申告の対象範囲や面談実施の要否、家庭事情に関する申告事項の設計については、事業場の実情や労使関係の状況によって適切な内容が異なるため、専門家に確認することを推奨する。

第4部: 使用前チェックリスト

  • [ ] 自己申告の実施頻度(年1回・複数回等)を明記したか
  • [ ] 申告事項を職務評価・異動希望・育成希望・家庭事情等に区分して具体的に定めたか
  • [ ] 申告書の提出先を人事部門に限定し、上司を経由しない手続としたか
  • [ ] 申告内容を人事評価の直接の対象としない旨を明記したか
  • [ ] 申告を理由とした不利益取扱いの禁止を明記したか
  • [ ] 異動希望が必ずしも実現されるものではない旨を明記したか
  • [ ] 育児・介護休業法第26条に基づく配置上の配慮事項を申告事項に含めたか
  • [ ] 直属の上司への開示制限(本人同意の要否)を定めたか
  • [ ] 面談実施の要否及び位置付けを明記したか
  • [ ] 申告書・面談記録の保管期間及び廃棄方法を定めたか