セット内容
- 記帳代行・経理事務委託契約書 2バージョン(発注側/受注側)Word形式
- 証憑・帳簿データの受け渡し方法チェックリスト
- 守秘義務・再委託制限条項の解説
こんな場面で
中小企業・個人事業主が記帳・経理業務を税理士事務所や記帳代行会社へ外部委託する場面。
特長
- 証憑の受け渡し方法・保管期間・返還義務をあらかじめ明確化
- 顧客の財務情報を扱うことを踏まえた守秘義務・再委託制限を標準装備
- 業務範囲(記帳のみ/申告書作成含む)を選択式で規定
記帳代行・経理事務委託契約書(監修用ドラフト)
⚠ 本ファイルは弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布を禁止する。
商品ID: jimu-itaku-keiyaku-keiri / 価格: 2,480円 / 立場バージョン: 発注側・受注側(税理士・記帳代行業者)
中小企業・個人事業主が記帳・経理業務を税理士事務所や記帳代行会社へ外部委託する場面を想定する。準委任契約としての性質を明確化するとともに、税理士法上の業務独占(税務代理・税務書類の作成・税務相談)との関係を踏まえ、受注側が税理士資格を有しない記帳代行専業者である場合に当該業務を除外する設計とする。本ドラフトは第2部で「発注側」「受注側(税理士・記帳代行業者)」の2バージョンの差分を提示する構成とし、第1部には中立版をベース条文として掲載する。
第1部: 契約書本文(標準版・中立)
記帳代行・経理事務委託契約書
〇〇〇〇(以下「甲」という。)と〇〇〇〇(以下「乙」という。)とは、甲が乙に対し別紙「業務内容」記載の記帳代行・経理事務(以下「本業務」という。)を委託し、乙がこれを受託するにあたり、次のとおり業務委託契約(以下「本契約」という。)を締結する。
第1条(目的)
本契約は、甲が乙に本業務を委託し、乙が善良な管理者の注意をもって本業務を遂行することに関し、甲乙間の権利義務関係を定めることを目的とする。
第2条(契約の性質)
本契約は、民法第656条に定める準委任契約であり、乙は本業務について特定の成果物(試算表、決算書その他の書類)の完成を約束するものではなく、善良な管理者の注意をもって本業務を遂行する義務(善管注意義務)を負う。ただし、乙が別紙「業務内容」において申告書の作成その他の成果完成型の業務を受託する場合は、当該業務の限度で成果物の完成を目的とする合意を別途含むものとする。
第3条(業務内容及び業務範囲)
- 乙が甲から受託する本業務の内容及び範囲は、別紙「業務内容」に定める次の各号の区分に従い、甲乙間で選択し合意した範囲に限る。 (1)記帳代行のみ(現金出納帳・仕訳帳・総勘定元帳等の作成及び会計ソフトへの入力代行) (2)月次試算表の作成(前号の業務に加え、月次試算表・月次収支報告の作成を含む) (3)申告書の作成を含む業務(税務代理、税務書類(申告書等)の作成及び税務相談を含む)
- 前項第3号の業務は、税理士法第2条及び第52条により、税理士又は税理士法人でなければ業として行うことができない。乙が税理士登録を受けていない記帳代行専業者である場合、乙は前項第3号の業務を受託せず、甲乙は当該業務を本契約の対象から明示的に除外するものとする。この場合、甲が申告書の作成等を必要とするときは、甲は別途税理士又は税理士法人にこれを依頼するものとし、乙はその仲介・紹介を行うことができるが、当該業務について乙が責任を負うものではない。
- 甲は、本業務の内容を変更しようとするときは、事前に乙と協議のうえ、書面(電磁的方法を含む。以下同じ。)によりその内容を合意するものとする。
第4条(乙の義務)
- 乙は、本業務の遂行にあたり、善良な管理者の注意をもって、経理・記帳事務の専門家として通常期待される水準の知識及び技能を用いて本業務を遂行しなければならない。
- 乙は、本業務の遂行状況について、甲から請求があったときは、遅滞なく報告しなければならない。
- 乙は、毎月〇日までに、前月分の記帳結果又は試算表その他別紙に定める成果物を甲に提出し、その内容を報告するものとする。
- 乙は、本業務の遂行にあたり、会計処理の基礎となる証憑の記載内容に疑義が生じた場合、速やかに甲に確認を求めるものとし、甲の回答が得られるまでの間、当該事項に係る処理を留保することができる。
第5条(証憑及び帳簿データの受け渡し方法)
- 甲は、本業務の遂行に必要な証憑書類(請求書、領収書、預金通帳の写し、給与関係書類その他会計処理の基礎資料をいう。以下「証憑」という。)を、別紙に定める方法(原本の引渡し、複合機によるスキャンデータの送付、電磁的記録による提供その他甲乙間で合意した方法をいう。)により、別紙に定める期限までに乙に提出する。
- 甲乙間でクラウド会計ソフトを利用する場合、甲は乙に対し、当該ソフトウェアの閲覧又は入力に必要なアカウント若しくは権限を付与するものとし、その範囲(閲覧のみ、入力・仕訳権限の付与等)は別紙に定めるところによる。乙は、付与されたアカウント及び権限を本業務の遂行の目的以外に使用してはならない。
- 乙は、甲から受領した証憑の原本を、本業務の遂行に必要な期間、善良な管理者の注意をもって保管するものとし、紛失、毀損等がないよう適切に管理する。
- 乙は、証憑の原本を預かった場合、その預り証を甲に交付し、又は預り一覧表を作成のうえ甲乙間で確認するものとする。
第6条(証憑等の返還及び保管期間)
- 乙は、本業務に係る記帳処理又は試算表の作成が完了した証憑について、甲から返還の請求があったときは、遅滞なくこれを甲に返還する。
- 甲及び乙は、法人税法第126条若しくは同法施行規則、所得税法第148条若しくは同法施行規則その他の税法令上、帳簿書類(総勘定元帳、仕訳帳、証憑書類等を含む。)につき原則として7年間(欠損金の繰越控除の適用を受ける事業年度にあっては10年間又は当該時点の税法令に定める期間)の保存義務が課される場合があることを相互に確認し、証憑の原本及びこれに基づき作成された帳簿の保管主体(甲・乙のいずれが原本を保管するか)及び保存期間中の保管方法を別紙に定めるものとする。
- 乙が証憑の原本又は複製を保管する場合、本契約の終了後は、甲の指示に従い、速やかに甲に返還し、又は甲の書面による承諾を得たうえで廃棄若しくは消去するものとする。ただし、前項の税法令上の保存義務の履行に必要な範囲での保管継続を妨げない。
- 乙は、電磁的記録により証憑又は帳簿データを保管する場合、電子帳簿保存法その他関連法令に定める要件(真実性の確保、可視性の確保等)に配慮して保管するものとする。
第7条(報酬)
- 甲は、乙に対し、本業務の対価として、別紙に定める次のいずれかの方式による報酬(以下「本件報酬」という。)を支払う。 (1)月額固定制(毎月定額の報酬を支払う方式。処理件数・仕訳数が別紙に定める基準を超えた場合の追加料金の要否を含め、別紙に定める。) (2)従量制(処理件数、仕訳数、証憑枚数その他別紙に定める算定基準に応じて報酬額を算定する方式。算定方法及び単価は別紙に定める。)
- 本件報酬には消費税及び地方消費税を含まないものとし、甲は本件報酬に別途消費税相当額を加算して支払う。
- 前条第1項第3号に定める申告書作成業務等を別途委託する場合の報酬は、別紙に定めるところによる。
第8条(報酬の支払方法及び支払期日)
- 甲は、乙から本業務に関する適法な請求書を受領した日の属する月の翌月末日までに、本件報酬を乙が指定する銀行口座に振り込む方法により支払う。振込手数料は甲の負担とする。
- 甲の責めに帰すべき事由により支払が遅延した場合、甲は乙に対し、当該支払期日の翌日から支払済みまで年3分の割合による遅延損害金を支払う。
第9条(契約期間及び中途解約)
- 本契約の有効期間は、本契約締結日から1年間とする。ただし、期間満了の1か月前までに甲乙いずれからも書面による別段の意思表示がない場合、本契約は同一条件でさらに1年間自動的に更新されるものとし、以後も同様とする。
- 甲又は乙は、少なくとも1か月前に書面で予告することにより、本契約を中途解約することができる。この場合、甲は乙に対し、解約時点までに遂行された本業務の履行割合に応じた報酬を支払う。
- 前項の中途解約に際し、乙は、甲から預かっている証憑の原本及び本業務に関して作成した帳簿データ等を、甲の指示に従い遅滞なく返還し、又は引き渡すものとする。
第10条(秘密保持)
- 甲及び乙は、本契約の履行に関連して知り得た相手方の技術上・営業上・財務上その他一切の秘密情報(顧客の財務状況、取引先情報、給与情報その他の個人情報を含む。)を、相手方の事前の書面による承諾を得ることなく第三者に開示又は漏えいしてはならず、本契約の履行の目的以外に使用してはならない。
- 前項の規定は、次の各号のいずれかに該当する情報については適用しない。 (1)開示を受けたときに既に公知であった情報 (2)開示を受けた後、自己の責めに帰さない事由により公知となった情報 (3)開示を受けたときに既に自己が保有していた情報 (4)正当な権限を有する第三者から秘密保持義務を負うことなく適法に取得した情報 (5)法令、裁判所の命令又は監督官庁の要求により開示を求められた情報(この場合、法令上可能な範囲で事前に相手方に通知する。)
- 乙は、本業務の遂行にあたり甲の役員及び従業員の給与情報その他の個人情報を取り扱う場合、個人情報の保護に関する法律その他関連法令を遵守し、目的外利用及び無断での第三者提供をしてはならない。
- 本条の規定は、本契約が終了した場合においても、5年間有効に存続する。
第11条(再委託の制限)
- 乙は、甲の事前の書面による承諾を得た場合に限り、本業務の全部又は一部を第三者に再委託することができる。ただし、乙が通常利用する記帳入力の補助的な外部委託先については、あらかじめ甲に開示している場合に限り、個別の承諾を要しないものとする。
- 乙は、前項により再委託する場合、再委託先に対し、本契約に基づき乙が負う秘密保持義務及び個人情報の取扱いに関する義務と同等の義務を課すものとし、再委託先の行為について甲に対し自ら本業務を遂行した場合と同様の責任を負う。
- 乙は、本業務の遂行に関連して知り得た甲の財務情報の性質に鑑み、再委託先の選定にあたり、秘密保持体制及び情報セキュリティ体制について相当の注意を払うものとする。
第12条(第三者からの照会への対応)
乙は、本業務の遂行過程で甲の取引先、金融機関その他の第三者から甲の財務情報に関する照会を受けた場合、甲の事前の承諾を得ることなくこれに応じてはならない。
第13条(損害賠償)
- 甲又は乙が本契約に違反し、相手方に損害を与えた場合、当該違反当事者は、相手方に生じた通常かつ直接の損害を賠償する責めを負う。
- 前項の賠償責任の累計額は、乙の責めに帰すべき事由による場合、本契約に基づき甲が乙に支払った直近12か月分の報酬相当額を上限とする。ただし、乙の故意又は重過失による場合はこの限りでない。
第14条(反社会的勢力の排除)
- 甲及び乙は、それぞれ相手方に対し、自己(自己の役員を含む。)が、暴力団、暴力団員、暴力団員でなくなった時から5年を経過しない者、暴力団準構成員、暴力団関係企業、総会屋等、社会運動等標ぼうゴロ又は特殊知能暴力集団その他これらに準ずる者(以下「反社会的勢力」と総称する。)に該当しないこと、及びこれらと資金提供その他の関係を有しないことを表明し、保証する。
- 甲又は乙が前項の表明保証に違反した場合、相手方は、何らの催告を要せず本契約を解除することができる。この場合、解除した当事者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負わない。
第15条(解除)
甲又は乙は、相手方が次の各号のいずれかに該当したときは、何らの催告を要せず、本契約の全部又は一部を解除することができる。
(1)本契約に違反し、相当期間を定めて是正を催告したにもかかわらず当該期間内に是正されないとき (2)支払停止若しくは支払不能の状態に陥ったとき、又は破産手続、民事再生手続その他の倒産手続の申立てがあったとき (3)差押え、仮差押え、仮処分若しくは競売の申立て、又は公租公課の滞納処分を受けたとき (4)解散、会社分割、事業譲渡又は合併の決議をしたとき (5)前条の表明保証に違反したとき
第16条(存続条項)
第5条、第6条、第10条、第12条、第13条、第14条第2項及び本条から第18条までの規定は、本契約が終了した場合においても、なお効力を有する。
第17条(協議事項)
本契約に定めのない事項又は本契約の解釈に疑義が生じた事項については、甲乙誠意をもって協議のうえ解決するものとする。
第18条(合意管轄)
本契約に関する紛争については、〇〇地方裁判所を第一審の専属的合意管轄裁判所とする。
以上、本契約締結の証として本書2通を作成し、甲乙記名押印のうえ、各自1通を保有する。
〇〇〇〇年〇〇月〇〇日
(甲)住所 商号又は名称 代表者名 印
(乙)住所 商号又は名称(税理士事務所の場合は税理士登録番号) 代表者名 印
別紙「業務内容」(業務範囲の区分、証憑受け渡し方法、保管主体・保存期間、報酬方式・金額、クラウド会計ソフトのアカウント権限等を記載)
第2部: 立場別修正パターン
商品には「発注側有利」「受注側(税理士・記帳代行業者)有利」の2バージョンを収録する。第1部は中立版をベースとしており、以下は各バージョンを作成する際の差分(代替条文)である。
A. 発注側有利バージョンへの変更
A-1. 第4条(乙の義務)に報告義務・対応期限を強化
追加条文例: 「乙は、甲から会計処理の内容に関する照会を受けた場合、〇営業日以内に回答しなければならない。」
解説: 発注側が資金繰り管理・金融機関への報告等のため迅速な回答を必要とする場面を想定した修正。受注側の事務処理体制によっては対応が難しい場合があるため、対応期限の設定は乙の業務量に見合ったものとすべきである。
A-2. 第6条(保管期間)の保管主体を乙に集中
修正後: 「証憑の原本は、本契約の存続期間中及び法令上の保存期間中、乙において保管するものとし、甲は乙に対し保管費用を別途支払う。」
解説: 発注側の保管スペース・管理負担を軽減する修正。受注側にとっては保管責任・紛失リスクが増すため、保管費用の別途負担及び損害賠償上限の調整とセットで検討すべき条項である。
A-3. 第13条(損害賠償)の上限を撤廃又は拡大
修正後: 「乙の賠償責任の累計額は、本契約に基づき甲が乙に支払った報酬の総額を上限とする。」(直近12か月分ではなく契約期間全体の累計額に変更)
解説: 誤った記帳処理により税務調査で追徴課税・加算税等が発生した場合の甲の損害をより広くカバーする趣旨の修正。受注側にとっては責任範囲が拡大するため、故意・重過失の除外規定とのバランスに留意する必要がある。
A-4. 第9条(中途解約)の解約権を発注側優位に
修正後: 「甲は、2週間前の書面予告により、いつでも本契約を中途解約できる。乙が中途解約する場合は、甲の後任の記帳代行者への引継ぎが完了するまでの期間、従前の条件で本業務を継続しなければならない。」
解説: 経理業務の性質上、担当者の急な交代は甲の資金管理・税務申告に支障を来すため、乙側からの解約に引継ぎ義務を課す修正。受注側にとっては事実上の拘束期間が生じる点に留意が必要である。
A-5. 第3条第2号の業務範囲を拡大方向で明記
修正後: 「乙は、月次試算表の作成に加え、資金繰り表の作成、予算実績対比表の作成その他甲が別途求める経理関連資料の作成についても、追加料金の有無を別紙に定めたうえで対応する。」
解説: 記帳代行の周辺業務まで対象を広げ、発注側の経理業務全体を一括して委託できるようにする修正。受注側の業務量増加に見合った報酬設計が前提となる。
B. 受注側(税理士・記帳代行業者)有利バージョンへの変更
B-1. 第5条(証憑の提出期限)を厳格化し、遅延時の免責を明記
追加条文例: 「甲が別紙に定める提出期限までに証憑を提出しなかった場合、乙は、当該提出遅延に起因する第4条第3項の報告期限の遅延について責任を負わない。」
解説: 甲側の証憑提出の遅れが記帳・報告の遅延の主原因となることが実務上多いため、受注側の責任範囲を明確化する条項。発注側からは提出期限の設定が厳しすぎないかの確認を求められることが多いと考えられる。
B-2. 第4条(乙の義務)に成果完成義務を負わない旨を強調
追加条文例: 「乙が行う本業務は、甲から提出された証憑及び情報に基づく合理的な処理を行うものであり、証憑自体の真実性、網羅性及び甲による情報提供の遅滞・誤りに起因する結果について、乙は責任を負わない。」
解説: 準委任契約であることを踏まえ、証憑の正確性・網羅性についての責任は甲側にあることを明記する条項。記帳代行業者の実務上、証憑の欠落・誤りに起因するトラブルが多いため、受注側から強く求められる条項である。
B-3. 第7条(報酬)の従量制における追加料金条項を明確化
追加条文例: 「甲から提出される証憑の枚数又は仕訳数が別紙に定める基準を超過した場合、乙は、超過分について別紙に定める単価により追加料金を請求することができる。」
解説: 月額固定制を採用する場合であっても、証憑量が想定を超えた際の追加料金条項を設けることで、受注側の採算悪化を防ぐ趣旨の修正である。
B-4. 第11条(再委託の制限)の対応を緩和
修正後: 「乙は、自己の業務体制の都合により、あらかじめ甲に書面で通知することにより、本業務の補助的な部分(データ入力等)を第三者に再委託することができる。」(事前承諾制から通知制に変更)
解説: 記帳代行業者が繁忙期に外部リソースを活用する実務上の必要性を踏まえた修正。発注側にとっては情報管理の観点から抵抗が予想されるため、再委託先に対する秘密保持義務の実効性確保とセットで検討すべきである。
B-5. 第13条(損害賠償)の上限をより低額に設定
修正後: 「乙の賠償責任の累計額は、本契約に基づき甲が乙に支払った直近3か月分の報酬相当額を上限とする。ただし、乙の故意による場合を除く。」(重過失も除外対象から外し、より受注側に有利に)
解説: 小規模な記帳代行業者・個人の税理士事務所にとって、報酬額に比して過大な賠償リスクを負うことは事業継続上のリスクとなるため、上限額を低く設定する修正である。
C. 中立バージョンの位置づけ
第1部の本文がこれに該当する。記帳代行のみを委託する個人事業主から、月次試算表・申告書作成まで一括して依頼する法人まで、幅広い委託形態に対応できるよう、業務範囲を選択式(第3条)とした汎用的な条文構成としている。
第3部: 逐条解説(購入者向け)
第2条(契約の性質) 記帳代行・経理事務委託は、本来的には準委任契約(民法第656条)として整理されるのが一般的である。もっとも、申告書の作成のように一定の完成物を伴う業務を含める場合、当該部分については成果完成型の要素を含みうる点に留意が必要である。契約類型を曖昧にしたまま業務範囲を拡大すると、責任の所在(善管注意義務違反か、成果物の契約不適合か)が不明確になりやすい。
第3条(業務内容及び業務範囲) 本条は本商品の中核となる条項である。税理士法第2条は、税務代理、税務書類の作成及び税務相談を「税理士業務」と定義し、同法第52条により税理士又は税理士法人以外の者が業としてこれを行うことを禁止している(無資格者による税理士業務は税理士法違反として罰則の対象となりうる)。記帳代行専業者(税理士資格を有しない者)が申告書作成や税務相談まで受託してしまうと、この業務独占規定に抵触するおそれがあるため、本条第2項において、乙が税理士登録を受けていない場合は当該業務を契約対象から明示的に除外する設計としている。購入者が税理士事務所である場合と記帳代行専業者である場合とで、選択すべき業務範囲の区分が異なる点を強調する必要がある。
第4条(乙の義務) 善管注意義務の内容を具体化し、定期的な報告義務(毎月の試算表提出等)を明記した条項。記帳代行の実務では、証憑の記載内容に疑義がある場合の処理(仮勘定処理、甲への確認等)が頻繁に生じるため、確認手続を明記しておくことがトラブル防止に資すると考えられる。
第5条(証憑及び帳簿データの受け渡し方法) 本商品の特長の一つである条項。証憑の受け渡し方法(原本の物理的な引渡し、スキャンデータでの電子提出、クラウド会計ソフトのアカウント共有等)を選択式で明確化することにより、「言った言わない」の紛争を防止する趣旨である。クラウド会計ソフトの利用が普及している実務を踏まえ、アカウント・権限の付与範囲(閲覧のみか、仕訳入力権限まで付与するか)を書き分けられる設計としている。
第6条(証憑等の返還及び保管期間) 帳簿書類の保存義務は、法人については法人税法施行規則第59条等により原則7年間(欠損金の繰越控除の適用を受ける事業年度は最大10年間)、個人事業主については所得税法施行規則第63条等により帳簿は7年間・一部書類は5年間とされる(白色申告・青色申告で異なる場合がある)。記帳代行業者が証憑の原本を預かったまま契約が終了すると、甲が自ら保存義務を履行できなくなるリスクがあるため、保管主体と契約終了時の返還ルールを明確にすることが重要である。電子帳簿保存法上の要件(真実性・可視性の確保)にも触れており、電子データでのやり取りが中心となる実務に対応させている。
第7条・第8条(報酬・支払方法) 月額固定制と従量制のいずれを採用するかは、甲の取引量・証憑量の予測可能性による。取引量が変動しやすい事業者の場合、月額固定制のみだと受注側の採算が悪化するリスクがあるため、超過分の追加料金条項(第2部B-3参照)を組み合わせる例が実務上多いと考えられる。
第9条(契約期間及び中途解約) 経理業務は事業運営の基盤となるため、担当者交代時の引継ぎに一定の期間を要する。予告期間(本文では1か月)は、乙の業務内容の複雑性や甲の会計年度・税務申告スケジュールとの兼ね合いで調整すべき事項である。
第10条(秘密保持) 顧客の財務情報・給与情報等、機密性の高い情報を扱う業務であることを踏まえ、個人情報保護法上の適正管理義務にも言及した条項としている。給与計算業務を含む場合は、従業員の個人番号(マイナンバー)の取扱いに関する特則(番号法上の安全管理措置)を別途検討する必要がある。
第11条(再委託の制限) 顧客の財務情報という機微な情報を扱う性質上、他の業務委託類型よりも再委託の制限を厳格にすることが望ましいと考えられる。記帳代行業者が繁忙期にアウトソーシングを利用する実務上のニーズもあるため、事前開示済みの委託先については個別承諾を不要とする折衷的な設計としている。
第13条(損害賠償) 記帳代行のミスが税務調査での否認・追徴課税に発展するリスクは、本業務類型に特有のリスクである。もっとも、追徴課税額そのものを乙の賠償範囲に含めるかどうかは、甲の証憑提出状況・乙の関与の程度によって個別判断が必要であり、上限設定の水準は特に慎重な検討を要する。
第4部: 監修者への確認依頼事項
- 第3条第2項の税理士法上の業務独占(税務代理・税務書類の作成・税務相談)の記述について、無資格者が誤って該当業務を行った場合の法的リスク(税理士法違反の成否、契約の一部無効の可能性)を購入者向け解説にどこまで明記すべきか確認いただきたい。
- 第6条の帳簿書類の保存期間について、法人税法・所得税法上の保存期間(7年、欠損金繰越の場合10年等)の記載が現行法令に照らして正確か、また電子帳簿保存法上の電磁的記録による保存要件との整合を確認いただきたい。
- 第7条の月額固定制・従量制の選択式報酬条項について、実務上の相場観(証憑枚数・仕訳数と報酬額の対応関係の目安)を第3部の解説に追記すべきか確認いただきたい。
- 第10条の秘密保持義務について、給与計算業務を含む場合のマイナンバー(個人番号)の取扱いに関する安全管理措置を別紙・別条項として追加すべきか確認いただきたい。
- 第13条の損害賠償上限について、記帳ミスに起因する追徴課税・加算税相当額を賠償範囲に含めるか否かの標準的な整理(乙の故意・重過失の有無による切り分け)を確認いただきたい。
- 第9条の中途解約時の引継ぎ義務(第2部A-4)について、税理士法上の税理士の職業倫理・受任義務との関係で、乙が税理士である場合に別段の配慮(帳簿の即時引渡義務等)を追加すべきか確認いただきたい。
- 本商品のメタデータに記載の「守秘義務・再委託制限条項の解説」及び「証憑・帳簿データの受け渡し方法チェックリスト」を別紙として具体化する際、監修者として推奨するチェック項目があれば確認いただきたい。