居住用として貸した物件を事務所や登記上の本店として使用することを認める承諾書。民法第616条の用法遵守義務の例外として使用範囲と原状回復条件を明示する。

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事務所使用承諾書

第1部: 書式本文

事務所使用承諾書

貸主【貸主氏名・名称】(以下「甲」という。)は、借主【借主氏名・名称】(以下「乙」という。)に対し、甲乙間の下記賃貸借契約(以下「原契約」という。)に関し、次のとおり本物件の一部を事務所又は法人登記上の本店所在地として使用することを承諾する(以下「本承諾」という。)。

第1条(原契約の特定) - 物件所在地: 【物件所在地】 - 物件名称・号室: 【建物名称・号室】 - 原契約締結日: 【原契約締結日】 - 原契約上の使用目的: 居住用

第2条(承諾の内容) 1. 甲は乙に対し、民法第616条が準用する第594条第1項の用法遵守義務の例外として、本物件の一部を、乙が営む【業種・事業内容】の事務所として使用すること、及び当該事務所を乙が設立する法人【法人名(設立予定を含む)】の本店所在地又は営業所所在地として登記することを承諾する。 2. 前項の承諾は、本物件の全部を事務所として使用することを認めるものではなく、居住の用途を主とし、事務所使用は従たる範囲(【使用範囲・面積の目安】)に限る。

第3条(使用範囲の限定) 1. 乙は、本承諾に基づき事務所として使用する範囲を、来客対応、書類保管、電話・パソコン作業等の事務作業に限るものとし、従業員を常時複数名勤務させる、又は来客が頻繁に出入りする形態の事業には使用しない。 2. 乙が前項の範囲を超えて使用しようとするときは、改めて甲の承諾を得るものとする。

第4条(近隣への配慮) 乙は、事務所使用に伴い、来客の出入り、看板の掲示、荷物の搬入出等により近隣に迷惑を及ぼさないよう配慮する。

第5条(承諾の撤回) 1. 甲は、乙による事務所使用が近隣とのトラブルを生じさせ、又は本承諾の範囲を逸脱していると認めるときは、乙に対し是正を求めることができる。 2. 乙が相当期間内に是正しないときは、甲は本承諾を撤回することができる。この場合であっても、原契約自体は別段の解除事由がない限り存続する。

第6条(原状回復) 本承諾に基づき乙が設置した什器、看板、通信設備等は、原契約終了時又は本承諾撤回時、乙の費用負担で撤去し、原状に回復する。

第7条(登記事項の抹消) 原契約が終了し、又は本承諾が撤回されたときは、乙は速やかに本物件を本店所在地又は営業所所在地とする登記を抹消又は変更する手続を行う。

第8条(協議事項) 本承諾に定めのない事項は、甲乙誠実に協議して定める。

以上、本承諾締結の証として本書2通を作成し、甲乙記名押印の上、各1通を保有する。

【締結日】

甲(貸主): 【住所】 【氏名・名称】 印 乙(借主): 【住所】 【氏名・名称】 印 立会人(管理会社): 【管理会社名】 印

第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン

A節: 貸主向け(火災保険・用途変更リスクを限定したい場合)

A-1 第2条への追加例 「甲は、本承諾により、原契約に付帯する火災保険その他の保険契約の用途区分(居住用)が変更となる場合があることを乙に説明し、乙は、事務所使用に起因して保険適用外となる損害が生じた場合、自己の責任で対応することを確認する。」 一言解説: 居住用物件を前提とした火災保険は用途変更により補償対象外となる場合があるため、貸主としては保険上のリスクを借主に説明し、責任の所在を明確にしておくことが望ましい。

B節: 借主向け(在宅ワーク・個人事業主として登記のみ行いたい場合)

B-1 第3条の修正例 「乙は、本物件を法人の本店所在地として登記するのみとし、実際の業務は主として在宅ワークの形態で行い、来客対応は月【 】回程度、従業員の常駐はさせないものとする。」 一言解説: 借主が実質的にはほぼ登記上の住所利用にとどまる場合、実態を具体的に説明しておくことで、貸主・管理会社の懸念(近隣トラブルや用途逸脱)を軽減しやすくなる。

C節: 管理会社向け(区分所有建物の管理規約との整合を確認する場合)

C-1 第2条への追加確認 「本承諾は、本物件が属する区分所有建物の管理規約上、事務所使用又は法人登記が禁止されていないことを甲及び管理会社が確認したことを前提とする。管理規約上の制限が判明した場合、本承諾は効力を生じない。」 一言解説: 分譲マンション等の区分所有建物では管理規約で住居専用が定められていることが多く、管理会社は個別の使用承諾に先立って規約の確認を行う必要がある。

第3部: 書き方と法的ポイント解説

本書式は、居住用として賃貸した物件について、借主が事務所として使用すること、又は法人の本店所在地として登記することを貸主が例外的に承諾する場面で使用する。もともと事業用途で賃貸された物件(店舗・事務所物件)には本書式は不要であり、また区分所有建物の管理規約で事務所使用や法人登記が明確に禁止されている場合には、本書式による承諾があっても管理規約違反の問題は解消されない点に注意が必要である。

根拠法令は、民法第616条が準用する第594条第1項の用法遵守義務である。賃借人は、契約又は目的物の性質によって定まった用法に従い目的物を使用する義務を負い、居住用として契約された物件を無断で事業用途に転用することは、原則として用法遵守義務違反(債務不履行)となり、貸主による契約解除事由(民法第541条)となりうる。本書式は、この用法遵守義務の例外として、貸主が事務所使用を個別に承諾する書面であり、承諾の範囲を明確にすることで、後日の「無断用途変更」との評価を回避する機能を持つ。また、法人登記については商業登記法上、本店所在地の実在性や使用権限が問題となることがあり、貸主の承諾書は登記申請の際の疎明資料としても用いられることがある。

実務でよくある失敗の一つ目は、承諾の範囲を明確にせず、事実上物件全体が事務所化してしまい、当初想定していた居住用としての使用実態が失われることである。第3条のように、事務所使用の範囲(面積・業務内容・来客頻度等)を具体的に限定し、範囲を超える使用には改めて承諾を要する旨を明記することが重要である。

二つ目の失敗は、区分所有建物の管理規約を確認せずに承諾書を作成し、後に管理規約違反が発覚して管理組合との間でトラブルになることである。C節のように、管理規約の確認を承諾の前提条件として明記しておくことが望ましい。

三つ目の失敗は、原契約が終了し、又は承諾が撤回された後も、借主が法人登記の変更手続を怠り、貸主の物件が第三者から見て当該法人の所在地であるかのような状態が継続することである。第7条のように、登記事項の抹消・変更手続を借主の義務として明記しておく必要がある。

事務所使用の承諾が、原契約における用途(居住用)を実質的に変更するものと評価されるか、また火災保険等の付帯契約への影響については、個別事案は専門家に確認することが望ましい。

第4部: 使用前チェックリスト

  • [ ] 原契約(賃貸借契約)の使用目的が居住用であることを確認したか
  • [ ] 区分所有建物の場合、管理規約上の用途制限を確認したか
  • [ ] 事務所使用の範囲(面積・業務内容・来客頻度)を具体的に限定したか
  • [ ] 従業員常駐や頻繁な来客の有無など事業の実態を確認したか
  • [ ] 火災保険等の付帯契約への影響について借主に説明したか
  • [ ] 近隣への配慮事項(騒音・搬入出等)を明記したか
  • [ ] 承諾の撤回条件と撤回後の扱い(原契約は存続する旨)を明記したか
  • [ ] 法人登記の抹消・変更手続を借主の義務として明記したか
  • [ ] 什器・看板等の設置に伴う原状回復義務を明記したか
  • [ ] 立会人(管理会社)の関与が必要な場合、署名欄を設けたか