混雑回避や育児との両立を図る企業向け。始業終業の繰上げ繰下げ区分と申請手続を定め、労働基準法第89条第1号の始業終業時刻の記載義務に対応します。
⚠ 本書式は弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布・公開を禁止する。 本書式は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別・具体的な法律相談に代わるものではない。
時差出勤規程
第1部: 書式本文
第1条(目的) 本規程は、通勤混雑の回避、育児・介護との両立その他の事情に対応するため、始業及び終業の時刻を繰り上げ又は繰り下げる時差出勤制度(以下「本制度」という)の適用要件、区分及び手続について定めるものとする。
第2条(定義) 本規程において「時差出勤」とは、就業規則に定める所定労働時間の長さを変更することなく、始業及び終業の時刻のみを一定の範囲内で繰り上げ又は繰り下げることをいう。所定労働時間そのものを短縮するものではない。
第3条(適用対象者) 本制度は、次の各号のいずれかに該当する従業員であって、所属長の承認を得た者に適用する。 一 満【3】歳に達するまでの子を養育する従業員 二 要介護状態にある家族を介護する従業員 三 通勤経路の混雑緩和その他会社が特に必要と認めた事情がある従業員 四 業務の性質上、始業終業時刻の変更が業務運営に支障を及ぼさないと所属長が認めた従業員
第4条(時差出勤の区分) 時差出勤は、次の区分により行う。 一 早出区分: 始業【7時00分】終業【15時45分】(休憩45分) 二 標準区分: 始業【9時00分】終業【17時45分】(休憩45分) 三 遅出区分: 始業【10時30分】終業【19時15分】(休憩45分) 前項の区分にかかわらず、1日の所定労働時間は【7時間】とし、法定労働時間を超える場合は労働基準法第32条の規定に従い時間外労働として取り扱う。
第5条(申請手続) 1 本制度の適用を受けようとする従業員は、利用開始日の【2週間】前までに、所定の時差出勤申請書を所属長に提出しなければならない。 2 所属長は、業務運営上の支障の有無を確認し、申請から【5営業日】以内に許可又は不許可を決定し、本人に通知する。 3 会社は、事業の正常な運営を妨げると認める場合、区分の変更を求め、又は許可を取り消すことができる。この場合、会社は理由を書面で本人に通知する。
第6条(適用期間及び更新) 時差出勤の適用期間は、申請の都度定めるものとし、最長【6か月】とする。継続を希望する場合は、期間満了前に再度申請するものとする。
第7条(区分の変更) 従業員は、適用期間中であっても、家庭事情の変化その他相当の理由がある場合、所属長の承認を得て区分を変更することができる。
第8条(育児・介護休業法上の措置との関係) 1 本制度は、育児休業、介護休業を取得しない従業員が利用できる制度であり、育児・介護休業法第23条に基づく所定労働時間の短縮措置その他の措置とは別個の制度とする。 2 会社が同法第23条に基づく代替措置として時差出勤を選択する場合は、別途定める育児・介護に関する規程による。
第9条(給与の取扱い) 時差出勤の適用による始業終業時刻の変更は、所定労働時間及び賃金体系に影響を及ぼさない。深夜労働(午後10時から午前5時まで)に該当する時間が生じた場合は、就業規則の定めるところにより深夜割増賃金を支払う。
第10条(休憩時間) 時差出勤の各区分における休憩時間は、労働基準法第34条の規定に従い、労働時間が6時間を超える場合は少なくとも45分、8時間を超える場合は少なくとも1時間を、勤務時間の途中に付与する。
第11条(適用の中止) 会社は、次の各号のいずれかに該当する場合、本制度の適用を中止することができる。 一 業務運営に著しい支障が生じた場合 二 適用対象者の要件を満たさなくなった場合 三 従業員が虚偽の申請を行ったことが判明した場合
第12条(不利益取扱いの禁止) 会社は、本制度の利用を申し出たこと又は利用したことを理由として、従業員に対し解雇、降格その他不利益な取扱いを行わない。
第13条(規程の改廃) 本規程の改廃は、就業規則の変更手続に準じて行う。
附則 本規程は【西暦】年【月】日から施行する。
第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン
A節: オフィス勤務向け
オフィス勤務者は通勤混雑の回避や来客対応時間の調整を目的として時差出勤を利用することが多く、区分数を増やして柔軟性を持たせる例が一般的である。
書き換え例(第4条関連): 「時差出勤は30分刻みで、始業時刻を【8時00分】から【10時30分】までの範囲で従業員が選択できるものとする。ただし、コアタイムとして【10時30分】から【15時00分】までは原則として在席するものとする。」
一言解説: 区分を固定パターンではなく時刻の範囲指定にする場合、コアタイムを設けて業務連携に支障が出ないようにする設計が実務上有効である。
B節: 育児・介護両立支援向け
育児・介護中の従業員向けには、保育園の送迎時間や通院付添いなど具体的な生活事情に即した区分を設けることが望ましい。
書き換え例(第3条第1号・第2号及び第6条関連): 「育児又は介護を理由とする時差出勤の適用期間は、子が小学校就学の始期に達するまで、又は要介護状態が継続する間、更新の申請により延長することができる。第6条の6か月の上限は適用しない。」
一言解説: 育児・介護目的の場合、他の理由による利用と異なり長期の継続利用が想定されるため、適用期間の上限を別立てで緩和しておくことが実態に即した設計となる。
第3部: 書き方と法的ポイントの解説
本規程は、通勤混雑の回避やワークライフバランスの向上を図るオフィス勤務中心の企業、及び育児・介護と就労の両立支援に取り組む企業が導入する場面で用いる。他方、シフト制や交替制勤務が既に運用されている職場、あるいは始業終業時刻の個別調整が業務運営上困難な工場・店舗等の現場では、時差出勤よりもシフト制度や勤務間インターバル制度の整備を優先すべきであり、本制度をそのまま適用することは適さない。
根拠法令としては、まず労働基準法第89条第1号により、始業及び終業の時刻は就業規則の絶対的必要記載事項とされているため、時差出勤の区分ごとの始業終業時刻を就業規則又は本規程に具体的に定める必要がある(第4条)。また、育児・介護休業法第23条は、事業主が講ずべき所定労働時間の短縮等の措置の一つとして、始業時刻変更等の措置を代替的に位置付けており、時差出勤は同条の措置として設計することも可能である(第8条)。さらに、時差出勤によって1日の実労働時間が延びる場合には労働基準法第32条の法定労働時間の規制が及ぶため、時間外労働の取扱いを明確にしておく必要がある。
実務上よくある失敗として、第一に、始業終業時刻の区分を就業規則本体に反映せず、内規のみで運用してしまい、労働基準法第89条第1号の記載義務との整合性を欠く例がある。時差出勤規程を就業規則の一部として位置付け、周知することが対策となる。第二に、時差出勤を所定労働時間の短縮と混同し、区分変更に伴って賃金を減額してしまう例がある。第2条及び第9条のとおり、時差出勤はあくまで時刻の変更であり労働時間数を変えないことを明記する必要がある。第三に、育児・介護休業法第23条の措置として時差出勤を位置付ける場合に、対象者の範囲や申出手続を本制度と混在させ、いずれの制度に基づく利用か不明確になる例がある。第8条のように両制度の関係を条文上で切り分けておくことが望ましい。
なお、区分の設定や対象者の範囲、給与への影響の有無については、事業場の実態や就業規則全体との整合性によって判断が異なるため、個別事案については社会保険労務士や弁護士等の専門家に確認することが望ましい。
第4部: 使用前チェックリスト
- [ ] 時差出勤の区分ごとの始業・終業時刻を具体的に定め、就業規則との整合性を確認したか
- [ ] 各区分の所定労働時間が変更前と同一であることを明記したか
- [ ] 申請手続の期限及び所属長による承認・不許可の判断基準を定めたか
- [ ] 適用対象者の範囲(通勤緩和・育児・介護等)を具体的に定めたか
- [ ] 育児・介護休業法第23条の措置として位置付ける場合の関係規程との整合性を確認したか
- [ ] 深夜労働に該当する時間帯が生じる区分について割増賃金の取扱いを定めたか
- [ ] 休憩時間の付与時刻が労働基準法第34条の要件を満たしているか確認したか
- [ ] 適用期間の上限及び更新手続を定めたか
- [ ] 業務上の支障を理由とする適用中止・区分変更の要件と通知方法を定めたか
- [ ] 制度利用を理由とする不利益取扱いの禁止を明記したか