個人情報の漏えいにより生じた調査費用や見舞金等を請求する書式です。費用の内訳と個人情報保護委員会への報告状況を記載します。
⚠ 本書式は弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布・公開を禁止する。 本書式は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別・具体的な法律相談に代わるものではない。
情報漏えい事故に係る保険金請求書
第1部: 書式本文
情報漏えい事故に係る保険金請求書
【請求日】令和【 】年【 】月【 】日 【請求者(契約者)】【会社名】 【所在地】 【担当部署・氏名】 【連絡先】【 】 【宛先】【保険会社名】 【証券番号】【 】
下記のとおり個人情報漏えい事故が発生し、これに起因して費用が発生したため、保険契約に基づき保険金の支払いを請求します。
- 事故の概要【漏えいの原因(不正アクセス/誤送付/記録媒体の紛失/システム設定不備等)、発生日、発覚日】 記載要領:発生原因を一つに特定できない場合は判明している範囲を記載し、調査継続中である旨を付記する。
- 漏えいした個人情報の項目【氏名、住所、電話番号、メールアドレス、生年月日、クレジットカード情報の有無等】 記載要領:漏えいした情報の類型を具体的に列挙し、要配慮個人情報が含まれる場合はその旨を明示する。
- 漏えい対象人数【確定【 】名/概算【 】名(調査中)】 記載要領:確定数が判明していない場合は上限見込み数を記載し、後日訂正できる旨を付記する。
- 発覚の経緯【自社システム監視により発覚/外部からの指摘(顧客・取引先・警察等)により発覚】 記載要領:発覚のきっかけを具体的に記載し、対応の初動状況を把握しやすくする。
- 個人情報保護委員会への報告状況【速報を令和【 】年【 】月【 】日に提出済み/確報を令和【 】年【 】月【 】日に提出済み/確報準備中】 記載要領:個人情報保護法第26条に基づく報告の履行状況を時系列で記載する。
- 本人への通知状況【通知方法(書面/電子メール/公表による代替通知)、通知(予定)日、通知対象人数】 記載要領:本人への通知が困難な場合の代替措置(公表等)を採用する場合はその理由も記載する。
- 調査費用の内訳【フォレンジック調査費用【 】円、原因究明のための外部委託費用【 】円】 記載要領:見積書・請求書の写しを添付し、支出の根拠を明確にする。
- コールセンター・問い合わせ対応費用【設置期間【 】、想定件数【 】件、費用【 】円】 記載要領:臨時窓口の設置期間と規模の根拠を示す。
- 見舞金・お詫び対応費用【対象者1名あたり【 】円(金券・図書カード等)、総額【 】円】 記載要領:見舞金の支給基準(金額・対象者選定方法)を明記し、社内決裁の記録と整合させる。
- 謝罪広告・公表対応費用【新聞広告費用、ウェブサイト掲載費用、記者会見関連費用】 記載要領:公表方法とその費用の算定根拠を記載する。
- システム改修・再発防止費用【該当する場合のみ、改修内容と費用【 】円】 記載要領:保険約款上、再発防止費用が担保対象に含まれるかを事前に確認したうえで記載する。
- 第三者からの損害賠償請求の有無【あり(請求者数【 】名、請求総額【 】円、対応状況【 】)/なし(現時点)】 記載要領:本人からの損害賠償請求が別途生じている場合はその状況も記載する。
- 請求金額の合計【金【 】円(内訳は上記各項目のとおり)】 記載要領:保険約款上の免責金額(自己負担額)を控除した後の請求額であることを明記する。
- 免責金額(自己負担額)【金【 】円】 記載要領:契約上の自己負担額を明記し、控除計算の透明性を確保する。
- 添付資料【個人情報保護委員会への報告書写し、調査報告書、見積書・領収書一式、本人通知文の写し】 記載要領:保険金支払審査に必要な裏付け資料を漏れなく列挙する。
- 請求者連絡先・担当窓口【リスク管理部門 担当者名【 】、電話【 】、メール【 】】 記載要領:保険会社からの照会に速やかに対応できる窓口を明記する。
以上
第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン
A節: 契約企業の立場からの書き換え
A-1. 誤送付による漏えいの場合 「業務委託先への一斉送信メールの誤操作により、顧客【 】名分のメールアドレスが他の受信者に閲覧可能な状態となったことが判明した。発覚後直ちに誤送信先に削除依頼を行うとともに、対象顧客への個別通知及びお詫びメールを送付した。」 一言解説:誤送付型は不正アクセス型と異なりフォレンジック調査の必要性が低い一方、通知対応費用が中心となる点を反映した記載としている。
A-2. 記録媒体の紛失による漏えいの場合 「従業員が顧客情報を保存したUSBメモリを紛失し、社外への持ち出しに関する社内規程違反が確認された。現時点で第三者による悪用の事実は確認されていないが、念のため対象顧客全員に通知を行い、コールセンターを設置して問い合わせに対応した。」 一言解説:紛失型は悪用の有無が不明な段階での「予防的通知」の考え方を示す記載とし、実害の確認前でも通知・対応費用が発生しうることを明確化している。
A-3. 不正アクセスによる大規模漏えいの場合 「外部からの不正アクセスにより顧客管理システムに保存されていたクレジットカード情報を含む個人情報約【 】名分が流出したことが判明した。個人情報保護委員会への速報を提出済みであり、確報についても準備を進めている。クレジットカード会社への通知及びカード再発行費用の一部負担についても検討中である。」 一言解説:クレジットカード情報を含む大規模漏えいの場合、カード会社対応費用という他の類型にはない費用項目が生じることを反映している。
B節: 保険会社の立場からの書き換え
B-1. 費用の相当性を確認する場合 「見舞金の支給基準及び算定根拠について、社内決裁書類及び算定方法を示す資料のご提出をお願いいたします。相当性が確認できない部分については保険金支払の対象外とさせていただく場合がございます。」 一言解説:見舞金額の恣意的な設定を防ぐため、保険会社が算定根拠を求める典型的な確認文言。
B-2. 個人情報保護委員会への報告未了を指摘する場合 「本請求に係る個人情報保護委員会への報告が確認できておりません。法令上の報告義務の履行状況をご確認のうえ、報告書の写しをご提出ください。」 一言解説:法令上の報告義務の履行が保険金支払審査の前提資料となる場面を想定した文言。
B-3. 免責金額の控除を確認する場合 「ご請求金額から契約上の免責金額を控除した金額を保険金としてお支払いする予定です。控除後の金額にご相違がないかご確認ください。」 一言解説:請求額と支払額の差異について事前に契約者の了解を得るための確認文言。
第3部: 書き方と法的ポイント解説
本書式は、個人情報の漏えいまたはそのおそれが生じ、これに起因する調査費用・通知費用・見舞金等の支出が確定または見込まれる段階で、保険会社に対して保険金の支払いを請求する場面で使用する。他方で、漏えいの事実そのものが未確定な調査初期段階での確定的な保険金請求には適さず、その段階ではまず前段の事故報告書によって状況を共有するのが望ましい。
法的な観点では、個人情報の漏えい等が生じた場合、個人情報保護法第26条に基づき、一定の類型に該当するときは個人情報保護委員会への報告及び本人への通知が義務付けられる。報告書類の写しは保険金請求における重要な裏付け資料となる。また、漏えいにより本人に損害が生じ、本人から損害賠償請求を受けた場合には、民法第709条(不法行為)に基づく責任の有無が問題となりうる。保険金請求権及び保険会社の支払義務の内容は保険契約の約款及び保険法の規律に服する。
よくある失敗として、第一に、見舞金の支給基準を場当たり的に決めてしまい、後日保険会社から算定根拠を求められて説明に窮するケースがある。対策として、第9項目のように支給基準(対象者選定方法・金額根拠)をあらかじめ社内規程等で定め、決裁記録を残しておく。第二に、個人情報保護委員会への報告が未了のまま保険金請求を行い、審査が滞る例がある。対策として、第5項目で報告状況を明確に記載し、報告書の写しを添付資料として必ず添える運用とする。第三に、調査費用や再発防止費用のうち、保険約款上そもそも担保対象外の費用まで請求してしまい、後日減額査定を受ける例がある。対策として、第11項目のように再発防止費用については事前に約款上の担保範囲を確認したうえで記載するかどうかを判断する。
なお、報告義務の該当性や保険金の支払対象範囲は個別の事実関係及び約款の解釈によって異なるため、個別事案は専門家(弁護士・保険代理店・個人情報保護の専門家等)に確認のうえで対応することが望ましい。本書式の使用が保険金の支払いや法令上の義務履行を保証するものではない。
第4部: 使用前チェックリスト
- 漏えいした個人情報の項目・対象人数を最新の調査結果に基づいて記載しているか
- 個人情報保護委員会への速報・確報の提出状況を正確に反映しているか
- 本人への通知方法・通知日・対象人数を具体的に記載したか
- 調査費用・通知費用等の各項目に見積書・領収書等の裏付け資料が添付されているか
- 見舞金の支給基準と社内決裁記録が整合しているか確認したか
- 免責金額(自己負担額)を控除した請求額になっているか確認したか
- 再発防止費用など担保対象外となりうる費用が含まれていないか事前に約款を確認したか
- 第三者からの損害賠償請求の有無・状況を最新の情報で記載したか
- 添付資料一式に不要な個人情報・機密情報が含まれていないか確認したか
- 保険会社からの追加照会に対応できる社内窓口を明記したか
- 請求内容について社内の法務・リスク管理部門の確認を経たか
- 個別の事情に応じて専門家への確認を行ったか