財団等が助成金を交付する際の審査と交付条件を定める規程です。申請要件、交付決定、実績報告、返還事由を明確にします。ひな型をもとに数分で自社仕様に調整できます。
⚠ 本書式は弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布・公開を禁止する。 本書式は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別・具体的な法律相談に代わるものではない。
助成金交付規程(助成する側)
第1部: 書式本文
第1条(目的) 本規程は、【法人名】(以下「法人」という。)が行う助成金の交付に関し、審査の方法、交付決定の手続、実績報告及び返還事由その他必要な事項を定め、助成事業の適正な実施及び助成金の有効な活用を図ることを目的とする。
第2条(定義) 1. 「助成事業」とは、法人が助成対象として定める分野に係る事業であって、次条に基づき助成金の交付を受けて実施されるものをいう。 2. 「被助成者」とは、法人から助成金の交付決定を受けた個人又は団体をいう。
第3条(助成対象事業) 助成の対象は、【〇〇分野に関する調査研究・活動・事業】であって、法人の設立目的に資すると認められるものとする。
第4条(助成金の額) 助成金の額は、募集要項において公表する上限額の範囲内で、審査の結果を踏まえて理事会が決定する。
第5条(申請) 1. 助成金の交付を受けようとする者は、法人が定める様式により、事業計画書、収支予算書その他法人が必要と認める書類を添えて申請しなければならない。 2. 申請期間その他募集に関する事項は、募集要項において別途定める。
第6条(審査) 1. 法人は、審査委員会を設置し、申請のあった事業について、事業の公益性、実現可能性、収支予算の妥当性その他募集要項に定める基準に基づき審査を行う。 2. 審査委員会は、必要に応じて申請者に対しヒアリング又は追加資料の提出を求めることができる。
第7条(交付決定) 1. 法人は、審査委員会の審査結果に基づき、理事会の承認を経て助成金の交付の可否及び交付額を決定し、申請者に通知する。 2. 交付決定に当たっては、事業の実施期間、実績報告の期限その他必要な条件を付すことができる。
第8条(助成金の交付) 1. 法人は、交付決定を受けた被助成者に対し、【交付決定後・事業開始後・実績報告後】に助成金を交付する。 2. 法人は、事業の性質に応じ、助成金の全部又は一部を概算払として交付することができる。
第9条(事業内容の変更) 被助成者は、助成の対象となった事業の内容、実施期間又は収支予算を変更しようとするときは、あらかじめ法人の承認を受けなければならない。
第10条(状況報告) 法人は、必要と認めるときは、被助成者に対し、助成事業の実施状況について報告を求めることができる。
第11条(実績報告) 1. 被助成者は、助成事業が完了したときは、【完了後1か月】以内に、事業の実施結果及び収支決算を記載した実績報告書を法人に提出しなければならない。 2. 法人は、前項の実績報告書の内容を審査し、助成金の額を確定する。
第12条(交付決定の取消し) 法人は、被助成者が次の各号のいずれかに該当すると認めるときは、交付決定の全部又は一部を取り消すことができる。 (1)申請書類に重大な虚偽の記載があったとき (2)正当な理由なく事業を実施しなかったとき (3)助成金を第3条の目的以外に使用したとき (4)第9条の承認を得ずに事業内容を変更したとき (5)その他本規程又は交付決定の条件に違反したとき
第13条(助成金の返還) 1. 法人は、前条の規定により交付決定を取り消した場合において、既に助成金を交付しているときは、被助成者に対し、当該助成金の全部又は一部の返還を請求することができる。 2. 実績報告に基づき確定した助成金の額が既に交付した額を下回るときは、被助成者は、その差額を返還しなければならない。
第14条(取得財産の管理) 被助成者は、助成金により取得し、又は効用の増加した財産を、助成の目的に従って善良な管理者の注意をもって管理し、法人の承認を得ずに助成対象事業の目的以外に使用し、又は処分してはならない。
第15条(規程の改廃) 本規程の改廃は、理事会の決議による。
以上
第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン
A節: 助成団体の立場から
A-1. 第12条の取消事由を包括化する修正
修正例: 「前各号に定めるもののほか、被助成者の行為が法人の名誉若しくは信用を著しく損なうと認められるとき、又は助成事業の適正な実施が困難と認められるときは、法人は交付決定を取り消すことができる。」 解説: 助成団体としては、列挙事由に厳密に該当しない事情変更(被助成者の不祥事等)にも対応できるよう、包括的な取消事由を確保しておくことがガバナンス上望ましい。
A-2. 第8条の交付時期を実績報告後払いに寄せる修正
修正例: 「助成金は、第11条の実績報告書の審査を経て額が確定した後に交付するものとする。ただし、事業の初期費用に充てるため必要と認めるときは、交付決定額の一部を概算払として先行交付することができる。」 解説: 全額を先行交付すると、事業が実施されないまま資金が流出するリスクを負う。助成団体の立場からは、原則後払いとしつつ必要な範囲でのみ概算払を認める設計の方が資金保全の観点から望ましい。
B節: 被助成者の立場から
B-1. 第8条の交付時期を前払い中心にする修正
修正例: 「助成金は、交付決定後【1か月】以内に、決定額の【8割】を概算払として交付し、残額は実績報告書の確定後に交付するものとする。」 解説: 被助成者、特に資金力の乏しい団体にとっては、事業実施に先立つ資金手当てが不可欠である。前払い比率を明記することで、事業開始時点での資金繰りの見通しを立てやすくなる。
B-2. 第12条の取消し・第13条の返還に手続保障を追加
修正例: 「法人は、交付決定の取消し又は返還を求める場合、あらかじめ被助成者に対し弁明の機会を付与し、被助成者の説明を考慮した上で最終的な判断を行うものとする。」 解説: 一方的な取消し・返還請求は被助成者の事業継続に重大な影響を及ぼすため、被助成者の立場からは、弁明機会の付与を手続として明記しておくことが不利益処分に対する防御手段となる。
場面別バリエーション: 複数年度にわたる継続助成の場合
研究助成等、複数年度にわたり継続して助成する事業の場合、第7条の交付決定を年度ごとの更新審査とし、「法人は、次年度の継続助成の可否を、当該年度の状況報告及び中間評価の結果を踏まえて別途決定する」旨を追加することが考えられる。あわせて第11条の実績報告についても、最終年度に加え各年度末に中間報告を求める規定に改めることが望ましい。
第3部: 書き方と法的ポイント解説
使う場面・使ってはいけない場面の解説
本書式は、財団法人その他の非営利法人が、外部の個人又は団体に対して研究・活動等の助成金を交付する場面で使用することを想定している。労働の対価として金銭を支払う業務委託や、成果物の納品を条件とする発注契約の場面には適さず、それぞれ業務委託契約書等、対価性のある契約類型を用いるべきである。また、法人自らが実施主体となる自主事業の予算執行には、助成金交付規程ではなく経理規程の予算執行手続を用いることになる。
根拠法令の解説
民間の財団等が行う助成金の交付は、法律上は民法第549条が定める贈与契約(当事者の一方が自己の財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによってその効力を生ずる契約)としての性質を有すると解される。もっとも、実績報告や取得財産の管理義務を課す点では、単純な贈与にとどまらず負担付きの性質を帯びる場合が多い。国及び地方公共団体が交付する補助金については、補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律(補助金適正化法)が交付申請、交付決定、実績報告、交付決定の取消し及び返還という一連の手続を法定しているが、同法は民間助成には直接適用されない。本規程は、同法が採用する交付申請から実績確定・返還に至る制度設計の考え方を参考にしつつ、民間助成としての柔軟性を確保する構成としている。
よくある失敗と対策の解説
第一に、交付決定の条件を曖昧にしたまま助成金を交付し、事後的に使途違反を指摘しにくくなる失敗がある。対策として、第7条の交付決定通知に個別の条件を付す運用を明記し、条件違反が第12条の取消事由に直結する構成にしておく。第二に、実績報告の様式や確認方法を定めず、報告の質が被助成者ごとにばらつく失敗がある。対策として、第11条の実績報告書に記載すべき事項(収支決算・成果物等)を募集要項で具体的に示す。第三に、取消し・返還の判断過程を記録せず、被助成者との紛争時に法人側の説明が困難になる失敗がある。対策として、審査委員会及び理事会での判断過程を議事録として保存する運用を第6条・第7条の実施細則に組み込む。取消事由への該当性や返還額の算定は個別の事実関係により結論が異なるため、個別事案は専門家に確認することが望ましい。
第4部: 使用前チェックリスト
- 助成対象事業の分野及び対象者の範囲(個人か団体か)を明確にしたか
- 審査基準(公益性・実現可能性・収支の妥当性等)を募集要項で具体化したか
- 審査委員会の構成及び利益相反の排除方法を定めたか
- 助成金の交付時期(前払い・概算払・後払い)を助成事業の性質に応じて設定したか
- 事業内容の変更に関する事前承認手続を定めたか
- 実績報告書の提出期限及び記載事項(収支決算・成果物等)を具体的に定めたか
- 交付決定の取消事由を、想定される違反類型に照らして網羅的に列挙したか
- 返還請求の範囲(全額か未使用相当額か)及び算定方法を明確にしたか
- 取得財産の管理・処分制限に関する被助成者の義務を定めたか
- 交付決定の取消し・返還に先立つ弁明機会その他の手続保障を設けるか検討したか