民泊の家主が住宅宿泊管理業者へ宿泊者対応や衛生管理を委託する契約書。住宅宿泊事業法第11条の管理業務委託義務と同法上の管理業者の責務に対応した書式。

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住宅宿泊管理業務委託契約書

第1部: 書式本文

【住宅宿泊事業者(家主)】〇〇(以下「甲」という。)と【住宅宿泊管理業者】〇〇(以下「乙」という。)は、甲が住宅宿泊事業法に基づき届出を行った住宅(以下「届出住宅」という。)の管理業務の委託に関し、次のとおり契約(以下「本契約」という。)を締結する。

第1条(目的) 本契約は、住宅宿泊事業法第11条第1項の規定に基づき、甲が届出住宅の全部を人を宿泊させる期間として業務を行う日数が180日を超えないよう管理する必要がある場合その他同項各号に該当する場合に、甲が乙に対し届出住宅の管理業務(以下「本件管理業務」という。)を委託し、乙がこれを受託することを約するものである。

第2条(届出住宅の表示) 届出住宅の所在地、住宅宿泊事業の届出番号及び構造・設備の概要は別紙物件目録記載のとおりとする。

第3条(委託業務の範囲) 乙が受託する本件管理業務の範囲は、次の各号に定めるとおりとし、住宅宿泊事業法第5条各号に定める宿泊者の衛生の確保、安全の確保、外国人観光旅客である宿泊者の快適性及び利便性の確保、苦情等への対応その他国土交通省令・厚生労働省令で定める措置を含むものとする。 一 宿泊者名簿の作成及び保管に関する事務 二 届出住宅の清掃、寝具類の交換その他衛生の確保に関する業務 三 非常用照明器具の設置、避難経路の表示その他安全の確保に関する業務 四 騒音の防止に関する説明その他宿泊者への注意事項の周知 五 苦情及び問い合わせへの対応(24時間対応を含む。) 六 標識の掲示に関する事務

第4条(再委託の制限) 乙は、本件管理業務の全部を一括して他の者に再委託してはならない。一部を再委託する場合は、あらかじめ甲の書面による承諾を得るものとする。

第5条(住宅宿泊管理業務の実施基準) 乙は、住宅宿泊事業法第9条から第18条までに定める住宅宿泊管理業者の業務(宿泊者名簿の備付け、標識の掲示、届出住宅の維持保全、苦情等の処理等)を、法令及び国土交通省の定める基準に従って適正に実施する。

第6条(業務報告) 乙は、甲に対し、毎月〇日までに前月の稼働状況、宿泊者数、苦情対応状況その他本件管理業務の実施状況を書面又は電磁的方法により報告する。

第7条(委託料) 1. 甲は乙に対し、本件管理業務の対価として月額金〇〇円(消費税別)、又は宿泊売上の〇%を委託料として支払う。 2. 委託料の支払期日及び方法は別紙のとおりとする。

第8条(緊急時対応) 乙は、届出住宅において事故、火災その他の緊急事態が発生した場合、直ちに必要な措置を講じるとともに、遅滞なく甲に報告する。

第9条(近隣対応及び標識掲示への協力) 乙は、住宅宿泊事業法第13条に基づき甲が届出住宅の玄関その他公衆の見やすい場所に掲示する標識について、掲示状況の確認及び維持を行うとともに、近隣住民からの苦情窓口として甲に代わり一次対応を行う。

第10条(契約期間) 本契約の有効期間は契約締結日から1年間とし、期間満了の1か月前までにいずれかの当事者から書面による申出がない限り、同一条件で1年間自動更新するものとする。

第11条(秘密保持及び個人情報の取扱い) 乙は、本件管理業務の遂行にあたり知り得た宿泊者及び甲の個人情報を、個人情報の保護に関する法律その他関係法令に従い適正に取り扱う。

第12条(解除) 甲又は乙は、相手方が住宅宿泊事業法に基づく登録の取消し若しくは業務停止命令を受けたとき、又は本契約の重要な条項に違反し催告後も是正されないときは、本契約を解除することができる。

第13条(反社会的勢力の排除) 甲及び乙は、自己が暴力団員等反社会的勢力に該当しないことを表明し、これに違反した場合は無催告で本契約を解除できるものとする。

第14条(協議事項) 本契約に定めのない事項は、甲乙誠実に協議のうえ定める。

第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン

A節: 住宅宿泊事業者(家主)向け

A-1 第6条の修正例 「乙は、稼働率が急激に低下した場合又は苦情が3件以上発生した月については、翌月10日までに書面で原因分析及び改善策を報告する。」 一言解説: 家主側としては定型の月次報告だけでなく、異常値が生じた場合の個別報告義務を課すことで、管理状況の悪化を早期に把握できるようにする趣旨である。

A-2 第7条第1項の修正例 「委託料は、宿泊売上から住宅宿泊仲介業者への手数料を控除した後の実収入額の〇%とし、甲は算定根拠となる明細の提出を求めることができる。」 一言解説: 委託料の算定基礎が不透明だと家主が受け取る手取り額を正確に把握できないため、算定根拠の開示請求権を明記しておくことが望ましい。

B節: 住宅宿泊管理業者向け

B-1 第3条柱書の修正例 「乙が行う本件管理業務は、住宅宿泊事業法施行規則に定める内容に限るものとし、同規則に定めのない付随業務を行う場合は別途甲乙間で協議のうえ委託料を定める。」 一言解説: 管理業者側から見ると、法定業務の範囲を超える追加対応(例えば鍵の現地受け渡しや特別清掃等)まで無償で行う義務を負わないよう、業務範囲の外縁を明確にしておく必要がある。

B-2 第8条の修正例 「乙が緊急時対応として支出した費用のうち、乙の善良な管理者の注意をもってしても回避できなかったものについては、甲がこれを負担する。」 一言解説: 緊急対応時の実費(修理費、応急措置費用等)を管理業者が一方的に負担する構造は経営上のリスクが大きいため、費用負担の帰属を条文上明確にしておくことが実務上重要である。

第3部: 書き方と法的ポイント解説

本書式は、住宅宿泊事業法の届出を行った家主(住宅宿泊事業者)が、自ら管理業務の全部を実施できない場合に、登録を受けた住宅宿泊管理業者へ管理業務を委託する場面で使用する。家主自身が届出住宅に居住しながら自ら管理業務の全部を行う、いわゆる家主居住型で委託の必要がない場合や、近隣住民向けに事業内容を周知する説明書としては用いることができず、その場合は別途の書式を要する点に注意する。

根拠法令の中心は住宅宿泊事業法第11条第1項であり、届出住宅に人を宿泊させる期間が1年間で180日を超える場合その他一定の場合には、住宅宿泊事業者は住宅宿泊管理業者に対し届出住宅の管理業務を委託しなければならないと定めている。委託を受けた住宅宿泊管理業者は、同法第5条に定める宿泊者の衛生確保・安全確保等の措置義務や、第9条以下に定める誠実義務、標識の掲示(第13条)、宿泊者名簿の備付け、苦情等の処理といった業務を適正に行う責務を負う。したがって本契約書では、委託される業務の範囲がこれら法定業務と一致しているかを条文上突き合わせることが不可欠である。

実務でよくある失敗の一つ目は、委託業務の範囲を抽象的に「管理業務一式」とだけ記載し、法定業務(衛生確保・安全確保・苦情対応等)のうち実際にはカバーされていない業務が生じ、法令違反状態に気づかないまま運用されるケースである。第3条のように法定の各要素を号立てで具体的に列挙することで、業務の抜け漏れを防ぐことができる。二つ目は、委託料の算定基礎(固定額か歩合か、控除項目の範囲)が曖昧で、家主と管理業者の間で受取額の認識が食い違うトラブルであり、第7条のように算定方法と支払期日を明記することが対策となる。三つ目は、緊急時対応における費用負担や再委託の可否を定めずに運用し、事故発生時に責任の所在が不明確になることであり、第4条・第8条のように再委託の制限と費用負担の帰属を条文化しておく必要がある。個別の物件規模や委託範囲によって適切な条項は異なるため、契約締結にあたっては専門家に確認することを推奨する。

第4部: 使用前チェックリスト

  • [ ] 甲が届出住宅につき住宅宿泊事業法上の届出を完了しているか確認したか
  • [ ] 乙が住宅宿泊管理業者の登録を受けているか登録簿で確認したか
  • [ ] 住宅宿泊事業法第11条第1項各号の委託義務が生じる場合に該当するか確認したか
  • [ ] 委託業務の範囲が同法第5条の衛生・安全確保等の法定業務と対応しているか確認したか
  • [ ] 再委託の可否及び承諾手続を明記したか
  • [ ] 委託料の算定方法・控除項目・支払期日を明記したか
  • [ ] 緊急時対応の手順及び費用負担の帰属を定めたか
  • [ ] 標識の掲示状況の確認方法を定めたか
  • [ ] 宿泊者の個人情報の取扱いについて個人情報保護法に沿った条項を設けたか
  • [ ] 契約期間及び更新・解除の条件を明記したか
  • [ ] 反社会的勢力排除条項を挿入したか