本店所在地を他の市区町村へ移す際の議事録。会社法第466条の定款変更決議に加え、具体的な所在場所を取締役会に委任する実務と管轄外移転登記の流れを解説します。

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株主総会議事録(本店移転用・管轄外)

第1部: 書式本文

事業規模の拡大に伴い従業員数が増加し、現在の本店所在地である【現所在地(市区町村)】のオフィスでは執務スペースが不足する事態となった。あわせて主要取引先や採用市場との近接性を高める目的から、本社機能を【新所在地(市区町村)】へ移転する方針が経営会議で決定された。移転先の物件選定にあたっては複数の候補地を比較検討したが、最終的な地番は賃貸借契約の交渉状況によって変動する可能性が残っていた。移転先が定款上定める行政区画をまたぐため、本店移転には定款変更の手続を要することとなり、株主総会に付議した。

【会社名】株主総会議事録

日時 【年月日 時分】から【時分】まで 場所 【現本店所在地】 株主総数【○名】、発行済株式総数【○株】、議決権を行使できる株主数【○名】、議決権数【○個】 出席株主数【○名】(委任状出席【○名】を含む)、出席議決権数【○個】(議決権割合【○】%) 議長 代表取締役【氏名】

議長は、定款の規定に基づき議長となり、本総会が定足数を満たして適法に成立していることを確認し、開会を宣した。

第1号議案 定款一部変更の件(本店所在地の変更) 議長は、当会社の本店を現在の【現所在地(市区町村)】から【新所在地(市区町村)】へ移転するため、定款第【○】条を次のとおり変更したい旨を説明した。

(変更前)第○条 当会社は、本店を【現所在地(市区町村まで)】に置く。 (変更後)第○条 当会社は、本店を【新所在地(市区町村まで)】に置く。

議長がこれを議場に諮ったところ、出席株主の議決権の3分の2以上に当たる賛成をもって、原案どおり可決確定した。

第2号議案 本店移転の具体的所在地及び移転日の決定を取締役会に委任する件 議長は、定款変更後の行政区画内における具体的な地番・移転実施日の決定については、機動的な意思決定を可能とするため、取締役会に一任したい旨を説明し、議場に諮ったところ、出席株主の議決権の過半数の賛成をもって原案どおり承認された。

議長は、本決議に基づき、移転先の具体的所在地が確定次第、旧本店所在地及び新本店所在地の両方を管轄する登記所に対し、それぞれ本店移転登記を申請する旨を付言した。

第3号議案 移転に伴う諸手続に関する報告の件 議長は、本店移転に伴い、取引金融機関、主要取引先、所轄税務署、社会保険事務所等への住所変更届出を計画的に進める旨、また移転日以降の名刺・契約書ひな形・登記事項証明書等の記載を順次更新する旨を報告した。株主からは特段の異議は出されなかった。

以上をもって議事を終えたので、議長は閉会を宣した。

議事の経過及び結果を明らかにするため、本議事録を作成し、議長及び出席取締役が次に記名押印する。

【年月日】 【会社名】株主総会 議長 【氏名】 印 取締役 【氏名】 印

第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン

A節(管轄外移転)

定款記載の行政区画自体を変更する場合の条項例と、同一区画内移転との違いを明示する解説。

第○条 当会社は、本店を【新所在地(市区町村)】に置く。 (付則)本条の変更は、旧所在地【○市】から新所在地【○市】への行政区画の変更を伴うため、会社法466条・309条2項11号に基づく株主総会の特別決議による。

一言解説:定款上は市区町村までの記載で足りるため、同一市区町村内での移転であれば定款変更は不要で取締役会決議のみで足りる場合があるが、本件のように行政区画自体をまたぐ移転では定款変更が必須となる点に注意する。政令指定都市内での区をまたぐ移転など、判断に迷うケースもあるため、定款の記載単位(市区町村か、区か)を事前に確認しておくことが望ましい。

B節(登記申請用)

新旧両方の登記所への申請を意識した決議文言の書き換え例。

議長は、本店移転の効力発生日から2週間以内に旧所在地の登記所において移転登記を申請し、あわせて新所在地の登記所に対しても3週間以内に登記申請を行う必要がある旨を確認した。

一言解説:管轄外への本店移転登記は旧本店所在地・新本店所在地の双方の登記所に対して申請する必要があり、それぞれ申請期限や添付書類の運用が異なるため、担当司法書士と申請スケジュールを事前にすり合わせておくことが望ましい。

第3部: 書き方と法的ポイントの解説

本書式は、定款に記載された行政区画(市区町村)自体が変わるような本店移転、すなわち管轄登記所が変わる本店移転を行う場合の株主総会議事録として用いる。反対に、同一市区町村内でビルを移るだけといった、定款記載の行政区画に変更が生じない移転であれば、原則として定款変更は不要であり取締役会決議のみで足りる場合が多く、本書式を用いる必要はない。

根拠法令として、本店の所在地は定款の絶対的記載事項であるが、定款上は最小行政区画(市区町村)までの記載で足りるとする実務上の取扱いがあり(会社法27条3号)、この行政区画自体を変更する場合には会社法466条・309条2項11号に基づく株主総会の特別決議を要する。他方、行政区画内での具体的な地番の決定は業務執行に関する事項として取締役会に委任することができ、本書式の第2号議案はこれを踏まえた委任決議の例である。管轄外移転の場合、登記実務上は旧本店所在地の登記所と新本店所在地の登記所の双方に対して移転登記を申請する必要がある。

実務でよくある失敗として、第一に、同一区画内移転か管轄外移転かの判断を誤り、不要な定款変更決議を経てしまう、あるいは逆に必要な株主総会決議を省略してしまうケースがある。移転先の住所と現行定款の記載を照合し、行政区画の異同を事前に確認することが望ましい。第二に、取締役会への委任決議を行わず、具体的な移転先地番が未確定のまま株主総会を開催してしまい、後日改めて決議を要するケースがある。本書式のように地番決定を取締役会に委任する決議をあわせて行うことで手戻りを防げる。第三に、旧所在地・新所在地いずれか一方の登記所にのみ申請し、他方への申請を失念するケースがある。

このほか、本店移転に伴い、許認可の要件として本店所在地が指定されている業種(例:宅地建物取引業の免許、労働者派遣事業の許可等)では、移転先での要件充足を別途確認する必要があり、これを見落とすと許認可の失効や再申請を要するおそれがある。移転計画の初期段階で許認可の所管庁に相談しておくことが望ましい。なお、行政区画の異同の判断や登記申請の要否は個別の事情によって異なるため、実行前に必ず司法書士・弁護士等の専門家に確認することを推奨する。

第4部: 使用前チェックリスト

  • [ ] 現行定款上の本店所在地の記載(市区町村までか、番地までか)を確認したか
  • [ ] 移転先が現行定款記載の行政区画内か、区画外(管轄外)かを判定したか
  • [ ] 管轄外移転の場合、定款変更特別決議の要否を確認したか
  • [ ] 具体的な移転先地番の決定を取締役会に委任する決議を行ったか
  • [ ] 特別決議の定足数・賛成要件(会社法309条2項)を満たしているか
  • [ ] 旧本店所在地を管轄する登記所を確認したか
  • [ ] 新本店所在地を管轄する登記所を確認したか
  • [ ] 双方の登記所への申請期限・添付書類を確認したか
  • [ ] 移転に伴う許認可・取引先・金融機関への住所変更通知先を洗い出したか
  • [ ] 移転実施日と登記申請日のスケジュールを整理したか
  • [ ] 本店所在地を要件とする許認可の有無と移転先での要件充足を確認したか
  • [ ] 議事録への記名押印者を確認したか