他社の事業全部を譲り受ける際の議事録。会社法第467条第1項第3号の株主総会特別決議と第468条の簡易手続の要件、譲渡会社側の承継債務の確認事項を整理します。
⚠ 本書式は弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布・公開を禁止する。 本書式は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別・具体的な法律相談に代わるものではない。
株主総会議事録(事業の全部の譲受けの件)
第1部: 書式本文
株主総会議事録
- 会社名: 【株式会社◯◯】(以下「当社」又は「譲受会社」という。)
- 開催日時: 【西暦】年【月】日【午前・午後】【時】分
- 開催場所: 【本店所在地又は開催場所】
- 株主総数、発行済株式総数及び議決権総数: 株主総数【◯名】、発行済株式総数【◯株】、議決権総数【◯個】
- 出席株主数及び議決権数: 出席株主数【◯名】(委任状による出席【◯名】を含む)、議決権数【◯個】(議決権総数の【◯】%に相当し、定足数を充足)
- 出席役員: 取締役【◯名】中【◯名】、監査役【◯名】中【◯名】出席
- 議長: 定款の定めに基づき、代表取締役社長【氏名】が議長に就任した。
- 開会: 議長は、定足数の充足を確認し、【時】分開会を宣言した。
第1号議案 事業の全部の譲受けの件
議長は、当社が【株式会社◯◯】(以下「譲渡会社」という。)の営む事業の全部を譲り受けるため、【西暦】年【月】日締結予定の事業譲渡契約(以下「本契約」という。)の内容を説明した。
議案上程: 1. 譲り受ける事業の内容: 【事業の名称、事業の概要】 2. 譲り受ける資産の範囲: 【土地建物、設備、在庫、知的財産権等を個別に特定】 3. 承継する負債の範囲: 【借入金、買掛金、リース債務等を個別に特定】 4. 承継する契約上の地位: 【取引先契約、賃貸借契約、雇用契約等を個別に特定】 5. 譲受けの対価及び支払方法: 金【◯】円、【一括・分割】払い 6. 効力発生日(事業の引渡日): 【西暦】年【月】日 7. 独占禁止法上の企業結合届出の要否: 【要・不要】(要する場合は届出予定時期を付記)
議長は、譲り受ける事業の範囲及び対価の算定根拠、並びに本件が会社法第468条第1項の簡易手続の基準(譲受資産の対価が当社の純資産額の5分の1を超えるか否か)に該当しないため株主総会決議を要する旨を説明した上で、本議案の採否を議場に諮ったところ、出席株主の議決権の3分の2以上に当たる賛成をもって、原案どおり承認可決された(会社法第309条第2項第11号、第467条第1項第3号)。
決議事項確認: 1. 定足数(議決権を行使できる株主の議決権の過半数)を充足していることを確認した。 2. 簡易手続(会社法第468条第1項)の適用の有無を算定資料に基づき確認した。 3. 反対株主の株式買取請求(会社法第469条)に関する通知・公告の要否を確認した。 4. 独占禁止法(私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律)第10条の企業結合届出の要否を確認した。
議長は、以上をもって本日の議事全部が終了した旨を述べ、【時】分閉会を宣言した。
上記の議事の経過及び結果を明確にするため、本議事録を作成し、議長及び出席取締役がこれに記名押印する。
【西暦】年【月】日 【株式会社◯◯】
議長・代表取締役 【氏名】 印 出席取締役 【氏名】 印 出席取締役 【氏名】 印 出席監査役 【氏名】 印
添付書類: 事業譲渡契約書案、譲受対象財産目録、対価算定資料
第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン
A. 譲受会社(他社の事業全部を譲り受ける立場)の場合
修正後の文例:
当社は、譲渡会社の営む【事業名】の全部を譲り受け、譲渡会社が保有する資産、負債、契約上の地位及び従業員との雇用関係のうち別紙目録記載のものを包括的に承継する。譲渡会社が本件譲受けの対象から除外した資産及び負債は別紙除外資産目録のとおりとする。
一言解説: 事業譲渡は合併と異なり個別の権利義務ごとに移転手続(債権譲渡通知、契約上の地位移転の相手方承諾、労働契約承継の個別同意等)を要するため、承継の対象範囲を資産・負債・契約・従業員に分けて別紙目録で特定し、議事録本文からも参照できるようにする。
B. 特別決議として簡易手続非該当性を明示する場合
修正後の文例:
議長は、本件譲受けの対価【◯】円が当社の直近の貸借対照表上の純資産額【◯】円の5分の1(【◯】円)を超えるため、会社法第468条第1項の簡易手続の要件を満たさず、株主総会の特別決議(会社法第467条第1項第3号、第309条第2項第11号)を要する旨を説明した。
一言解説: 簡易手続の基準は譲受資産の対価が譲受会社の純資産額の20%以下であることであり、基準日直近の貸借対照表数値を用いて機械的に算定する必要がある。境界値付近の場合は算定根拠を議事録に残し、後日の決議省略の適法性を説明できるようにする。
第3部: 書き方と法的ポイント解説
本書式は、株式会社が他社の営む事業の全部を譲り受ける場合の譲受会社側の株主総会議事録である。事業の一部の譲受けや、株式取得による子会社化(株式交付・株式交換)には用いない。事業の全部の譲受けは、譲受会社にとって重要な財産の取得であり、譲渡会社側の株主総会決議(会社法第467条第1項第1号又は第2号)とは別に、譲受会社側でも一定の場合に株主総会決議が必要となる点が本書式の対象である。
根拠法令は、事業の全部の譲受けについて株主総会の特別決議を要求する会社法第467条第1項第3号(会社法第309条第2項第11号)である。ただし、譲受資産の対価として交付する財産の帳簿価額の合計額が譲受会社の純資産額として法務省令で定める方法により算定される額の5分の1(定款でこれを下回る割合を定めた場合はその割合)を超えない場合は、簡易手続として株主総会決議を要しない(会社法第468条第1項)。この場合であっても、一定数の株主が反対する旨を通知したときは簡易手続の適用が除外される点に留意する。株主総会決議を要する場合、反対株主には会社法第469条に基づき株式買取請求権が認められる。また、事業の全部の譲受けにより一定規模以上の企業結合が生じる場合には、独占禁止法(私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律)第10条に基づき公正取引委員会への事前届出が必要となる場合があり、届出後の待機期間中は譲受けを実行できない点も確認を要する。
実務でよくある失敗として、第一に、譲り受ける「事業」の範囲、すなわち承継の対象となる資産、負債、契約上の地位、従業員の範囲を議事録及び契約書上明確に特定しないまま決議を行い、後日どの権利義務が承継されたのか当事者間及び第三者との間で紛争になるケースがある。承継対象を目録形式で個別に列挙し、除外資産・除外負債も明記することで紛争予防となる。第二に、簡易手続該当性の判断基準である20%基準の算定を誤り、本来は株主総会の特別決議を要する規模の譲受けであったにもかかわらず決議を省略してしまうリスクがある。純資産額の算定は直近の貸借対照表を基礎とし、対価の帳簿価額との比較を書面で残しておく必要がある。第三に、独占禁止法上の企業結合届出義務を見落とし、届出をしないまま事業譲渡を実行してしまう失敗がある。譲受対象事業の売上高規模等の届出基準への該当性は事前に確認し、必要な場合は公正取引委員会への届出及び待機期間の経過を実行日程に織り込む必要がある。
個別の事案については、承継対象財産の範囲の確定方法、労働契約承継の同意取得手続、独占禁止法上の届出基準への該当性などを含め、弁護士等の専門家に個別に確認することを推奨する。
第4部: 使用前チェックリスト
- [ ] 譲り受ける事業の範囲(資産・負債・契約上の地位・従業員)を目録形式で特定したか
- [ ] 簡易手続(会社法第468条第1項、純資産額の20%基準)の該当性を算定資料に基づき確認したか
- [ ] 簡易手続に該当する場合でも株主の反対通知による適用除外がないか確認したか
- [ ] 株主総会決議を要する場合、特別決議の定足数及び賛成割合(会社法第309条第2項)を満たしているか
- [ ] 反対株主の株式買取請求(会社法第469条)に関する手続を確認したか
- [ ] 独占禁止法第10条に基づく企業結合届出の要否及び待機期間を確認したか
- [ ] 譲渡会社側での株主総会決議(会社法第467条第1項第1号又は第2号)の実施状況を確認したか
- [ ] 効力発生日(事業の引渡日)が契約書と議事録で一致しているか
- [ ] 議長及び出席取締役の記名押印が漏れなく行われているか
- [ ] 個別事案の法的リスクについて弁護士等の専門家に確認したか