会社が自己株式を買い受ける際の議事録。会社法第156条の取得枠決議と、第160条の特定株主からの取得における売主追加請求権、分配可能額規制への言及を含みます。
⚠ 本書式は弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布・公開を禁止する。 本書式は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別・具体的な法律相談に代わるものではない。
株主総会議事録(自己株式の取得)
第1部: 書式本文
創業者一族である株主【氏名】から保有株式の一部を会社が買い取ってほしい旨の申し出を受けたことを契機として、【株式会社〇〇】は自己株式の取得について株主総会に諮ることとした。【西暦】年【月】月【日】日午前【時】時、本店所在地【所在地】において臨時株主総会が開催され、出席株主(委任状出席を含む。)の議決権数が発行済株式総数に係る議決権総数【数】個のうち【数】個であったことから、定款所定の定足数を満たしていることが確認された上、代表取締役【氏名】が議長として議事を進行した。
議長は、自己株式の取得は株式会社の財産的基礎に影響を及ぼすため、会社法上の分配可能額規制に服することを説明した上、第1号議案「自己株式取得の件」を上程した。
議案の内容は次のとおりである。
1 取得する株式の種類及び数 【種類】株式【数】株を上限とする 2 株式の取得と引換えに交付する金銭等の総額 金【金額】円を上限とする 3 株式を取得することができる期間 【西暦】年【月】月【日】日から1年を超えない範囲で【西暦】年【月】月【日】日まで
議長は、上記取得対価の総額が、当会社の分配可能額(会社法第461条第2項所定の方法により算定される額)の範囲内にあることを、直近の計算書類に基づき確認した旨を付言した。具体的には、直近の貸借対照表上のその他資本剰余金及びその他利益剰余金の合計額から自己株式の帳簿価額その他法定の控除項目を差し引いた分配可能額が金【金額】円であり、本議案における取得対価の上限額金【金額】円がこれを下回っていることを、経理担当取締役【氏名】が試算資料に基づき説明した。
続いて議長は、第2号議案「特定株主からの自己株式取得の件」を上程し、特定の株主である【氏名】からのみ株式を取得することについて、他の株主に対し売主として自己をこの議案に追加するよう請求する機会を与える旨の通知を、本総会の日の2週間前までに全株主に対して行った経緯を説明した。
議長が第1号議案及び第2号議案の採否をそれぞれ諮ったところ、第1号議案については出席株主の議決権の過半数、第2号議案については出席株主の議決権の3分の2以上に当たる多数をもって、いずれも原案どおり承認可決された。
なお、本総会は、具体的な取得価格、取得する株式数及び取得日の決定を取締役会に一任する旨をあわせて決議した。議長は、この一任決議に基づく取締役会の決定は、本総会で定めた取得株式数の上限及び対価総額の上限の範囲内で行われるものであり、これを超える決定はできない旨を確認した。
以上をもって本総会の議案審議を終了したので、議長は閉会を宣した。
本議事録の内容を証するため、議長及び出席取締役は次のとおり記名押印(電子署名を含む)する。
【西暦】年【月】月【日】日 【株式会社〇〇】臨時株主総会 議長・代表取締役 【氏名】 印 出席取締役 【氏名】 印
第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン
A節: 特定の株主から取得する場合
特定の株主のみから自己株式を相対で取得する場合、会社法第160条第1項により株主総会の特別決議(同法第309条第2項第2号)を要し、また同条第2項及び第3項により、他の株主に対して自己をその株主に追加するよう請求する機会(売主追加請求権)を与えるための通知を行わなければならない。
修正条文例: 「当会社は、本総会の日の2週間前までに、株主【氏名】以外のすべての株主に対し、会社法第160条第3項に基づき、自己を売主として追加することを請求できる旨を通知した。」
一言解説: 売主追加請求権の通知を怠ると特別決議自体の効力が問題となり得るため、通知日及び通知方法を議事録又は添付書類に明記しておくことが重要である。定款に売主追加請求権の適用に関する別段の定めが置かれていないかについても、あらかじめ確認しておく必要がある。
B節: 全株主を対象に取得する場合
市場取引又は公開買付けの方法によらず、株主全員を対象として取得の申込みの機会を平等に与える方法による場合には、会社法第160条の特別決議及び通知は不要であり、同法第156条に基づく株主総会の普通決議で足りる。
修正条文例: 「本総会は、全株主を対象として、会社法第156条第1項各号に掲げる事項を定め、普通決議によりこれを決議した。」
一言解説: 全株主対象の取得であれば手続が簡素化される一方、実際の買付けは株主平等原則に配慮した方法(按分比例配分等)で実施する必要がある。申込総数が取得予定株式数を超えた場合の按分方法(持株数に応じた按分か、端数の処理方法等)についても、あらかじめ取締役会で決定しておくことが望ましい。
第3部: 書き方と法的ポイントの解説
本書式は、株式会社が自己の株式を株主との合意により有償で取得する場合の株主総会議事録として使用することを想定している。市場取引による取得や公開買付けによる取得のように会社法上異なる手続が適用される場面、及び取得請求権付株式・取得条項付株式の取得のように株主総会決議を要しない場面には、本書式をそのまま使用すべきではない。また、相続その他の一般承継により株式を取得した者から会社が買い取る場面では、売主追加請求権の適用に関する特則が別途置かれているため、通常の相対取得の書式とは記載を書き分ける必要がある。
根拠法令としては、自己株式の取得に関する株主総会決議事項(取得する株式の数、対価の総額、取得期間)を定める会社法第156条、特定の株主からの相対取得における特別決議及び売主追加請求権の通知義務を定める同法第160条、分配可能額による取得総額の制約を定める同法第461条、並びに取得価格等の具体的決定を取締役会に一任する実務上の根拠となる同法第158条が中心となる。取得した自己株式を消却する場合には、別途取締役会(取締役会非設置会社では取締役の決定)による消却の決定と会社法第178条に基づく手続を要するため、取得の議事録とは別に消却に関する書式を用意する必要がある。
実務上よくある失敗としては、第一に、取得対価の総額が分配可能額を超過していないかの確認を怠り、後日、取締役等が会社法第462条に基づく支払義務を負うリスクが生じる例が挙げられる。対策として、直近の計算書類に基づく分配可能額の算定結果を議事録に引用しておくことが有効である。第二に、特定株主からの取得において売主追加請求権の通知を失念し、決議の効力が争われる例がある。対策として、通知日・通知方法・通知先を明確に記載することが望ましい。第三に、取得することができる期間を1年を超えて定めてしまい、会社法第156条第1項第3号に反する例もあるため、期間の起算日と満了日を明記して1年以内であることを確認する必要がある。
このほか、取得した自己株式は、消却しない限り貸借対照表上純資産の控除項目として計上され続け、財務指標(自己資本比率等)に影響を及ぼす。取得後の保有方針(消却するか、役員・従業員への交付用に保有し続けるか等)についても、取得の決議とあわせて取締役会で方向性を確認しておくことが望ましい。また、取得した自己株式には議決権がなく(会社法第308条第2項)、剰余金の配当を受ける権利もない点についても、株主への説明資料に含めておくと誤解を防げる。
自己株式取得の可否及び分配可能額の算定は会社の財務状況によって結論が異なり得るため、個別事案については公認会計士又は弁護士等の専門家に確認することが望ましい。
第4部: 使用前チェックリスト
- [ ] 取得する株式の種類及び数の上限を明記したか
- [ ] 交付する金銭等の総額の上限を明記したか
- [ ] 取得することができる期間が1年以内であることを確認したか
- [ ] 取得対価の総額が分配可能額の範囲内であることを確認したか
- [ ] 特定株主からの取得の場合、特別決議(3分の2以上)の要件を満たしているか
- [ ] 特定株主からの取得の場合、他の株主への売主追加請求権の通知を行ったか
- [ ] 通知日が総会の日の2週間前までであることを確認したか
- [ ] 全株主対象の取得の場合、普通決議で足りることを確認したか
- [ ] 取得価格等の決定を取締役会に一任する場合、その旨を決議に含めたか
- [ ] 直近の計算書類に基づく分配可能額の算定根拠を確認したか
- [ ] 市場取引・公開買付けなど他の取得方法との混同がないか確認したか
- [ ] 個別事案について専門家へ確認する予定があるか