全株式に譲渡制限を付す定款変更の議事録。会社法第309条第3項の特殊決議(株主の頭数及び議決権の要件)と第116条の反対株主の買取請求手続を踏まえた文例です。
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株式の譲渡制限の設定に関する株主総会議事録
第1部: 書式本文
株式会社【会社名】は設立以来、発行する株式のすべてについて譲渡制限を付さない、いわゆる公開会社として事業を営んできた。しかし株主の高齢化に伴う相続の発生や、株式の分散による意思決定の停滞を懸念する声が役員間で強まったことを受け、取締役会は、発行する全部の株式に譲渡制限を付す定款変更議案を株主総会に付議することを決定した。本議案は会社法第309条第3項第1号の定める特殊決議事項であり、通常の特別決議とは異なる厳格な要件のもとで審議される。
議長【議長氏名】は、本総会の招集手続及び決議要件を確認したうえで、第1号議案「発行する全部の株式に譲渡制限を設ける定款一部変更の件」を上程した。議長は、本議案の可決には、議決権を行使できる株主の頭数の半数以上であって、かつ当該株主の議決権の3分の2以上にあたる多数の賛成を要する旨(会社法第309条第3項第1号)を説明し、出席株主の議決権数及び頭数の集計結果を報告した。
議長は続けて、定款第【条数】条(発行可能株式総数等)の次に、譲渡制限に関する規定として新たに以下の条項を追加する旨を説明した。
「(株式の譲渡制限) 第【条数】条 当会社の株式を譲渡により取得するには、取締役会の承認を受けなければならない。ただし、当会社の株主に譲渡する場合には、承認をしたものとみなす。」
あわせて、譲渡等承認請求書の書式、指定買取人の指定手続(会社法第140条)及び株式買取請求に応じる際の資金確保について、財務担当取締役【氏名】より補足説明がなされた。また、本議案に反対する株主については、会社法第116条第1項第1号に基づき株式買取請求権が生じる旨、及びその行使期間・方法について議長より案内した。
審議の後、議長が採決を諮ったところ、出席株主の議決権の3分の2以上かつ株主の半数以上の賛成が得られたことが確認され、第1号議案は特殊決議として原案どおり可決確定した旨が宣言された。
なお、本議案の可決に伴い、当会社は今後、株式の譲渡を希望する株主から譲渡等承認請求書(会社法第136条)の提出を受けた場合、取締役会において承認の可否を決定し、決定内容を請求日から2週間以内に当該株主へ通知する必要がある旨、及び承認をしない場合には指定買取人を指定するか当会社自身が買い取る手続(会社法第140条から第144条まで)を要する旨、議長より併せて説明がなされた。監査役【氏名】は、株主名簿管理人への変更届出及び株式取扱規程の整備についても、定款変更の効力発生後速やかに対応する旨を発言した。
議事の経過の要領及び結果を記録するため、本議事録を作成し、議長及び出席取締役がこれに記名押印する。
【作成日】 株式会社【会社名】 議長・代表取締役 【氏名】 印
第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン
A節: 特殊決議としての要件明示を重視する場合
「本議案の可決には、当会社の議決権を行使することができる株主の半数以上(頭数)であって、当該株主の議決権の3分の2以上にあたる多数の賛成を要する。なお、定款により上記割合を上回る要件を定めることは妨げられない。」 一言解説: 会社法第309条第3項は特別決議よりも要件が重く、定款で加重できる旨(いわゆる「上回る割合」)を明記しておくと登記実務・監査対応の双方で疑義が生じにくい。
B節: 登記申請用に決議事項を簡潔化する場合
「第1号議案 発行する全部の株式について譲渡による取得に取締役会の承認を要する旨の定款一部変更の件 議長より上記議案を上程し、法令に定める特殊決議の要件を満たす賛成をもって原案どおり可決した。」 一言解説: 登記申請添付書類としては決議要件充足の記載を簡潔にまとめ、別紙で定款変更後の条文を添付する構成が実務上多く用いられる。登記官は議事録上の記載のみから決議要件の充足を審査するため、「特殊決議」である旨及び賛成した株主の議決権数・頭数の割合を数値で明示しておくと、補正の指摘を受けにくい。
参考: 譲渡承認機関を株主総会とする場合の書き換え例
「当会社の株式を譲渡により取得するには、株主総会の承認を受けなければならない。」 一言解説: 取締役会非設置会社や、譲渡承認の判断を株主全体の意思に委ねたい会社では、承認機関を株主総会とする設計も可能である。この場合、譲渡等承認請求に対する回答期限の起算点や決議方法(会社法第139条)が取締役会設置会社と異なるため、条文の対応関係を再確認する必要がある。
第3部: 書き方と法的ポイントの解説
本書式は、公開会社が非公開会社(全株式譲渡制限会社)へ移行する場面、すなわち発行する株式の全部について新たに譲渡制限を設ける場面で使用する。逆に、一部の種類株式のみに譲渡制限を付す場合や、既に全株式に譲渡制限がある会社が承認機関を変更するだけの場合は、決議要件(特別決議か特殊決議か)が異なるため本書式をそのまま使ってはならない。前者は会社法第111条第2項に基づく種類株主総会決議、後者は通常の特別決議(会社法第309条第2項第11号)で足りる場合があり、混同すると決議の瑕疵として無効・取消しの原因となり得る。上場会社や上場準備を進める会社が本書式を用いることは想定されていない点にも留意されたい。
根拠法令は、会社法第466条(定款変更)、第309条第3項第1号(特殊決議)、第107条第1項第1号及び第108条第1項第4号(譲渡制限株式に関する定め)、第136条から第145条まで(譲渡等承認請求及び指定買取人の手続)、第116条第1項第1号(反対株主の株式買取請求権)である。
実務でよくある失敗として、第一に、特別決議の定足数・賛成要件で採決してしまい、後日、特殊決議要件の充足性を争われるケースがある。招集通知に決議要件を明記し、議決権集計を頭数・議決権数の両面で残すことが対策となる。第二に、譲渡承認機関を「取締役会」とする条項を定めたにもかかわらず取締役会非設置会社であった、という不整合が生じることがある。定款上の機関設計と整合させたうえで条項化する必要がある。第三に、株式買取請求権の案内を怠り、後日の紛争を招く例がある。反対株主への通知・催告の期限管理を別途チェックリスト化することが望ましい。第四に、既に一部の種類株式のみ譲渡制限が付されている会社が、残りの種類株式にも譲渡制限を拡張する場合、種類株主総会決議(会社法第111条第2項)が別途必要になることを見落とす例も見られるため、種類株式の発行状況を事前に精査すべきである。
また、定款変更の効力発生日をいつにするかについても留意が必要である。総会決議の日をもって直ちに効力を生じさせる場合と、一定の周知期間を設けたうえで将来の日付を効力発生日とする場合とでは、株主名簿の管理や既存の株式譲渡契約への影響が異なるため、事業上の必要性に応じて選択すべきである。
加えて、譲渡制限設定後は、株式の相続や合併等の一般承継による株式取得についても、定款に「相続人等に対する売渡しの請求」(会社法第174条)の定めを別途置くかどうかを併せて検討する会社が多い。譲渡制限は「譲渡」による取得のみを規律するため、相続による分散を防ぎたい場合には別条項の手当てが必要になる点は誤解されやすい。
なお、本書式は一般的な記載例を示すものであり、株主構成や種類株式の有無、機関設計等の個別事情により条項の適否は異なるため、個別事案は専門家に確認のうえ利用されたい。
第4部: 使用前チェックリスト
- [ ] 発行する株式の全部に譲渡制限を付す議案であることを確認したか
- [ ] 会社法第309条第3項第1号の特殊決議要件(頭数・議決権数)を招集通知に明記したか
- [ ] 出席株主の議決権数及び頭数を集計し議事録に記載したか
- [ ] 譲渡承認機関(取締役会・株主総会等)を機関設計と整合させたか
- [ ] 定款変更後の条文案を条数まで具体的に記載したか
- [ ] 指定買取人の指定手続(会社法第140条)の要否を検討したか
- [ ] 反対株主への株式買取請求権(会社法第116条第1項第1号)の案内を行ったか
- [ ] 種類株式発行会社の場合、種類株主総会決議の要否を確認したか
- [ ] 定款変更の効力発生日と登記期限(2週間以内)を確認したか
- [ ] 議長及び出席取締役の記名押印欄を設けたか
- [ ] 相続その他の一般承継による株式分散への対応(売渡請求条項の要否)を検討したか
- [ ] 定款変更の効力発生日を総会当日とするか将来日とするか方針を決めたか