取締役会を置かない会社が株式分割を行う際の議事録。会社法第183条第2項の基準日・分割割合の決議文例と、第184条第2項の定款変更を要しない場合の取扱いを示します。

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株主総会議事録(株式の分割決議)

第1部: 書式本文

【会社名】(以下「当会社」という)は取締役会を設置していない株式会社であり、既存株主の保有株式数を引き上げ、将来の増資や株式譲渡における1株当たりの取引単価を調整する目的で、株式の分割を実施することとした。会社法上、株式の分割は本来取締役会設置会社であれば取締役会の決議事項とされているが(会社法183条2項)、当会社のように取締役会を置かない会社では、その決定は株主総会の決議によらなければならない。これを踏まえ、当会社は【開催年月日】、【開催場所】において臨時株主総会を開催した。

出席株主は【出席株主名又は代表者】であり、その議決権数は【出席議決権数】個(総議決権数【総議決権数】個)に達していることを、取締役【議長氏名】が議長として確認し、開会を宣した。当会社は取締役【取締役数】名を置くのみで取締役会を構成していないため、株式分割の決定を株主総会に委ねる必要があることが冒頭で改めて確認された。議長は、当会社が種類株式発行会社ではないこと、及び本分割が既存株主の持株比率に変動を生じさせない按分型の分割であることを説明したうえで、次の議案を上程した。採決の結果、出席株主の議決権の過半数の賛成により、本議案は原案どおり可決された。

第【号】号議案 株式の分割に関する件

  1. 分割の割合:普通株式1株につき【分割後株式数】株の割合をもって分割する
  2. 株式の分割に係る基準日:【基準日】
  3. 株式の分割がその効力を生ずる日:【効力発生日】
  4. 種類株式発行会社であるときに分割する株式の種類:【該当なし/該当種類株式名】
  5. 本分割の割合に応じ、会社法184条2項の規定に基づき、発行可能株式総数を【分割前発行可能株式総数】株から【分割後発行可能株式総数】株に増加する定款変更を、本総会の決議を要することなく行うものとする

議長は、あわせて、本分割の効力発生後、株主名簿の書換え及び基準日現在の株主に対する通知を速やかに実施する予定であること、また分割後の1株当たり純資産額や税務上の取扱いについては顧問税理士に確認済みであることを補足した。

議長は、以上の内容について異議のないことを確認し、他に付議すべき事項がない旨を告げたうえで、【閉会時刻】閉会を宣言した。

【作成年月日】 【会社名】臨時株主総会 議長・取締役 【氏名】 印

第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン

A節 非設置会社(取締役会を置かない会社)で株主総会普通決議により分割する場合

取締役会非設置会社では株式分割の決定機関が株主総会となるため(183条2項)、決議の位置づけを明確にする必要がある。取締役が複数いる会社では、業務執行の決定自体は取締役の過半数によることが原則(348条2項)であるが、183条2項は分割の決定を株主総会の決議事項と定めているため、この点を誤って取締役の過半数の決定のみで済ませないよう次のように明記する。

修正条文例:「当会社は取締役会を設置していないため、会社法183条2項の規定により、株式の分割に関する事項は株主総会の決議をもって定める。本総会は同項所定の普通決議の要件を満たして開催されたものである。」

一言解説: 取締役会設置会社であれば本議案は取締役会議事録の書式に置き換える必要があり、機関設計の相違を必ず確認したうえで書式を選択する。取締役が1名のみの会社であっても、183条2項の適用上は株主総会の決議を要する点に変わりはなく、取締役単独の決定書で代替することはできない。

B節 登記申請用(発行済株式総数の変更登記を行う場合)

株式分割の効力発生により発行済株式総数が増加するため、変更登記が必要となる。184条2項の特則により発行可能株式総数の増加についても株主総会決議を要しないが、登記申請書には本議事録に加えてその根拠を明示した書面を添付するのが実務上一般的であり、次のように補足する。

修正条文例:「本決議に基づき増加する発行可能株式総数は、会社法184条2項の規定により定款変更の決議を経ることなく効力を生じるものとし、変更登記の添付書類として本議事録を援用する。」

一言解説: 184条2項の特則は分割の割合に応じた按分的な増加に限られるため、按分比率を超えて発行可能株式総数を増加させたい場合は別途定款変更の特別決議が必要になる点に留意する。登記申請の際は、発行済株式総数の変更を証する書面として本議事録のほか、基準日設定に関する取締役(会)の決定書を求められる場合があるため、あらかじめ法務局に確認しておくとよい。

第3部: 書き方と法的ポイントの解説

本書式は、取締役会を設置していない株式会社が、既存株主の持株数を引き上げる目的や、将来の資金調達に備えて1株当たりの評価額を調整する目的で株式分割を行う場面での使用を想定している。創業間もない非設置会社では、種類株式による資金調達(優先株式の発行等)に先立って普通株式のみを分割し、投資家との株価交渉を行いやすくするために利用される例もある。取締役会設置会社が株式分割を行う場合は、決定機関が取締役会となる(183条2項)ため、本書式をそのまま株主総会議事録として使用することはできず、取締役会議事録の書式に置き換える必要がある。

根拠法令は、株式分割の決定機関及び決議事項を定める会社法183条2項(取締役会設置会社では取締役会、非設置会社では株主総会の決議により、分割の割合、基準日、効力発生日、種類株式発行会社では分割する株式の種類を定める)、そして分割の割合に応じた発行可能株式総数の増加に関する定款変更を株主総会決議なしに行うことを認める184条2項である。株式分割は株式併合や資本金の額の減少と異なり、既存株主の経済的持分に変動を生じさせないため、債権者保護手続や株式買取請求権に関する規定は適用されない。

実務上よくある失敗として、第一に、機関設計を誤り、取締役会設置会社であるにもかかわらず株主総会で株式分割を決議してしまう例がある。取締役会設置会社において株主総会のみで決議した場合、決定機関の瑕疵として分割の効力自体が争われるおそれがあるため、登記申請の前提として現行の機関設計(取締役会設置の有無)を必ず確認することが対策となる。第二に、184条2項の特則を誤解し、按分比率を超える発行可能株式総数の増加まで無決議で行ってしまう例があり、分割割合と発行可能株式総数の増加幅が正確に対応しているかを算式で検算することが必要である。誤って過大な発行可能株式総数を登記してしまった場合、後日改めて定款変更の株主総会決議を経て是正する必要が生じ、二度手間となる点にも注意すべきである。第三に、基準日を定めたにもかかわらず基準日公告(124条3項)を怠る例があり、公開会社では原則として基準日の2週間前までの公告が必要となる点に注意を要する(非公開会社では定款の定めにより公告を要しない場合がある)。

第四に、種類株式発行会社において分割対象とする株式の種類を明示しないまま決議し、後日どの種類の株式が分割されたのか判然としなくなる例もある。決議事項に分割対象の種類株式の名称を必ず記載し、非該当の種類株式については分割の対象外である旨を明記することが望ましい。

株式分割の実施が既存の種類株式や新株予約権に与える影響、及び基準日公告の要否については会社の公開・非公開の別や定款の定めによって結論が異なるため、個別事案は専門家に確認のうえで手続を進めることが望ましい。

第4部: 使用前チェックリスト

  • [ ] 当会社が取締役会設置会社か非設置会社かを確認し、決定機関(取締役会又は株主総会)を正しく選択したか
  • [ ] 分割の割合、基準日、効力発生日を具体的に記載したか
  • [ ] 種類株式発行会社の場合、分割する株式の種類を明記したか
  • [ ] 184条2項の特則を用いる場合、発行可能株式総数の増加幅が分割割合と正確に対応しているか確認したか
  • [ ] 按分比率を超える発行可能株式総数の増加が必要な場合、別途定款変更の特別決議を予定したか
  • [ ] 基準日公告(124条3項)の要否を会社の公開・非公開の別及び定款の定めに照らして確認したか
  • [ ] 発行済株式総数の変更登記のスケジュールを確認したか
  • [ ] 新株予約権者への影響(行使価額調整条項の有無)を確認したか
  • [ ] 議事録への出席取締役の記名押印欄を実態に合わせて調整したか
  • [ ] 効力発生日以降の株主名簿の書換え手続を確認したか
  • [ ] 決定機関の瑕疵を防ぐため、機関設計に応じた議事録(株主総会/取締役会)を正しく選択したか
  • [ ] 分割後の1株当たり評価額・税務上の取扱い及び単元株制度との整合性について税理士等に確認したか