吸収分割契約を承認する株主総会の議事録。会社法第783条・第795条の承認決議と第789条の債権者保護手続に触れ、簡易分割や略式分割で決議を省略できる場合も解説。

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吸収分割契約の承認に関する株主総会議事録

第1部: 書式本文

本件吸収分割は、株式会社【分割会社名】(以下「分割会社」という。)がその事業の一部門である【事業部門名】に関して有する権利義務を、株式会社【承継会社名】(以下「承継会社」という。)に承継させるものである。分割会社と承継会社は、令和【年】年【月】月【日】日付で吸収分割契約(会社法第757条)を締結しており、当該契約の効力発生には、原則として両当事会社それぞれにおいて株主総会の特別決議による承認(会社法第783条第1項、第795条第1項、第309条第2項第12号)を要する。本書式は、このうち分割会社側の株主総会における承認決議を記録するものである。

議長【議長氏名】は、第【号】号議案「吸収分割契約承認の件」を上程し、本契約の主要な内容として、①承継させる権利義務の範囲(【事業部門名】に属する資産・負債・雇用契約等)、②承継会社が分割会社に対して交付する対価の内容(【対価の種類・数量】)、③効力発生日(【効力発生日】)を説明した。議長はあわせて、本議案が会社法第309条第2項第12号の定める特別決議事項であり、議決権を行使できる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席株主の議決権の3分の2以上の賛成を要する旨を確認した。

法務担当取締役【氏名】より、本件吸収分割に反対する株主は、会社法第785条の定めるところにより、分割会社に対し自己の有する株式を公正な価格で買い取ることを請求できる旨、及びその行使期限について説明がなされた。あわせて、分割会社の債権者のうち、吸収分割後に分割会社に対して債務の履行を請求できなくなる者については、会社法第789条に基づく異議申述の機会を確保するため、所定の期間を定めて公告及び個別催告を行う予定である旨が報告された。

なお、本件においては、承継させる資産の帳簿価額が分割会社の総資産額の5分の1を超えるため、会社法第784条第2項に定める簡易分割の要件(承継させる資産等が分割会社の総資産の5分の1以下であること等)を満たさず、本総会における株主総会決議を省略することはできない旨が併せて確認された。

財務担当取締役【氏名】からは、本契約の効力発生日の【日数】日前から、分割会社の本店に、吸収分割契約の内容、承継会社の定款・計算書類の要旨その他会社法施行規則に定める事項を記載した事前開示書面を備え置き、株主及び債権者の閲覧に供している旨の報告があった。監査役【氏名】は、承継させる資産・負債の評価が適正に行われていることを監査した結果、対価の相当性に問題は認められない旨を発言した。

議長は、承継対象となる雇用契約に関しては、労働契約承継法に基づき、承継される事業に主として従事する労働者に対する通知及び協議を、株主総会決議に先立ち実施済みである旨を確認し、当該労働者からの異議申出の状況についても法務担当取締役より報告を受けた。

審議の後、議長が採決を諮ったところ、出席株主の議決権の3分の2以上の賛成が得られたことが確認され、第【号】号議案は原案どおり承認可決された旨が宣言された。

本議事録は、吸収分割契約の内容及び決議の経過を正確に記録するため作成し、議長及び出席取締役がこれに記名押印する。

【作成日】 株式会社【分割会社名】 議長・代表取締役 【氏名】 印

第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン

A節: 分割会社側の議事録として記載する場合

「当会社(分割会社)は、承継会社に対し【事業部門名】に関する権利義務を承継させ、その対価として【対価内容】の交付を受ける。承継させる権利義務のうち、雇用契約に関しては労働契約承継法に定める手続を別途履践する。」 一言解説: 分割会社側では、承継させる資産等の範囲・対価・雇用契約の取扱いを具体的に記載し、簡易分割(会社法第784条第2項)の該当性を数値で示すと、株主総会決議の要否について後日の疑義を避けられる。

B節: 承継会社側の議事録として記載する場合

「当会社(承継会社)は、分割会社から【事業部門名】に関する権利義務を承継し、その対価として【対価内容】を交付する。本件は会社法第795条第1項の特別決議事項であり、出席株主の議決権の3分の2以上の賛成をもって承認された。」 一言解説: 承継会社側では、承継する資産等の内容に加え、簡易分割(会社法第796条第2項)の適用により株主総会決議を省略できる場合があるため、該当性の判断根拠(承継資産の対価の額が承継会社純資産額の5分の1以下であるか等)を明記しておくと監査対応がしやすい。

参考: 対価が現金のみの場合の記載例(承継会社側)

「当会社が分割会社に交付する対価は、金銭【金額】円とする。当会社の株主に対する新株の発行は行わない。」 一言解説: 対価が金銭のみである場合、承継会社の株主構成に変動が生じないため、株式の発行を伴う場合に比べて説明すべき事項が簡略化されるが、対価の相当性についての取締役の説明義務は別途生じる点に留意する。

第3部: 書き方と法的ポイントの解説

本書式は、分割会社が事業の一部門を切り出し、既存の別法人(承継会社)に承継させる場面で使用する。新たに会社を設立して事業を承継させる場合(新設分割)や、複数の会社が新設会社に事業を統合する場合には、適用条文・手続の構造が異なるため本書式をそのまま用いてはならない。

根拠法令は、会社法第757条(吸収分割契約の締結)、第783条第1項及び第795条第1項(両当事会社の株主総会特別決議、第309条第2項第12号)、第789条(分割会社の債権者異議手続)、第799条(承継会社の債権者異議手続)、第784条第2項及び第796条第2項(簡易分割による株主総会決議の省略)、第785条(反対株主の株式買取請求権)である。

実務でよくある失敗として、第一に、簡易分割の要件充足を誤認し、必要な株主総会決議を省略してしまうケースがある。総資産額の算定基準日及び算定方法を明確にし、専門家の確認を経て判断することが対策となる。第二に、債権者異議手続の公告・催告を効力発生日に近接して開始し、法定の期間(原則1か月以上)を確保できないケースがある。スケジュールを逆算して手続開始日を設定する必要がある。第三に、労働契約承継の手続(労働契約承継法に基づく通知・協議)を株主総会決議と並行して進めず、承継対象労働者への説明が遅延する例がある。第四に、事前開示書面の備置期間や記載事項の不足により、株主から差止請求(会社法第784条の2、第796条の2)の対象とされるリスクを見落とす例もあるため、開示書面のチェックは決議前に完了させておくべきである。

また、承継会社が分割会社の親会社等である場合や、逆に分割会社が承継会社の親会社等である場合には、会社法上の特別な規律(略式分割の要件など)が別途問題となることがあり、資本関係の有無を事前に整理しておくことも重要である。

なお、簡易分割の該当性、対価の相当性及び債権者異議手続の要否は個別の財務状況により異なるため、個別事案は専門家に確認のうえ手続を進める必要がある。

第4部: 使用前チェックリスト

  • [ ] 吸収分割契約の内容(承継対象・対価・効力発生日)を具体的に記載したか
  • [ ] 分割会社側の特別決議要件(会社法第783条第1項)を満たしたか
  • [ ] 承継会社側の特別決議要件(会社法第795条第1項)を満たしたか
  • [ ] 簡易分割(会社法第784条第2項・第796条第2項)の該当性を検討したか
  • [ ] 分割会社における債権者異議手続(会社法第789条)の要否・スケジュールを確認したか
  • [ ] 承継会社における債権者異議手続(会社法第799条)の要否・スケジュールを確認したか
  • [ ] 反対株主の株式買取請求権(会社法第785条)の案内を行ったか
  • [ ] 労働契約承継法に基づく労働者への通知・協議手続を確認したか
  • [ ] 事前開示書面の備置(効力発生日の一定期間前から)を行ったか
  • [ ] 議長及び出席取締役の記名押印欄を設けたか
  • [ ] 分割会社と承継会社の間に資本関係(親子会社関係)がないか確認したか
  • [ ] 対価が金銭・株式いずれの場合も相当性の説明資料を準備したか