事業目的を追加・変更する定款変更の議事録。会社法第27条第1号の絶対的記載事項と第466条の手続を踏まえ、許認可事業を加える場合の目的記載の留意点を示します。
⚠ 本書式は弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布・公開を禁止する。 本書式は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別・具体的な法律相談に代わるものではない。
株主総会議事録(目的変更用)
第1部: 書式本文
当会社は、既存の【現行主力事業】に加え、取引先からの受注拡大を背景に【新規事業内容、例:古物商・労働者派遣事業等】への参入を検討してきたが、当該事業を営むには許認可の取得が前提となり、その申請には定款の目的欄に当該事業を許認可庁の求める文言で記載しておく必要があることが判明した。事前相談の段階で許認可庁の担当窓口からも、登記簿上の目的欄の記載が審査基準に合致していることが申請受理の前提となる旨の説明を受けている。そこで、許認可申請に先立ち、定款の目的を変更する議案を株主総会に付議することとした。
【会社名】株主総会議事録
開催日時 【年月日 時分】から【時分】まで 開催場所 【本店所在地または開催場所】 株主の総数【○名】、発行済株式総数【○株】、議決権を行使できる株主の数【○名】、その議決権の総数【○個】 本日出席した株主数【○名】(委任状による出席者【○名】を含む)、その有する議決権の数【○個】(議決権割合【○】%) 議長 定款の定めるところにより代表取締役【氏名】が就任した。
議長は、本総会が法令及び定款に定める定足数を満たして適法に成立していることを確認したうえ、開会を宣言した。
第1号議案 定款一部変更の件(目的の変更・追加) 議長は、当会社が新たに【新規事業の内容】を営むにあたり、定款第【○】条(目的)に次の事業を追加する必要がある旨を説明し、原案を朗読した。
(変更前) 第○条 当会社は、次の事業を営むことを目的とする。 1 【既存事業1】 2 【既存事業2】 3 前各号に附帯又は関連する一切の事業
(変更後) 第○条 当会社は、次の事業を営むことを目的とする。 1 【既存事業1】 2 【既存事業2】 3 【新規事業(許認可庁が求める文言に整合させた具体的記載)】 4 前各号に附帯又は関連する一切の事業
議長が本議案を議場に諮ったところ、出席株主の議決権の3分の2以上に当たる賛成をもって、原案どおり可決確定した旨を宣言した。
議長は、本決議による定款変更後、遅滞なく目的変更の登記を申請するとともに、【新規事業】に係る許認可申請の準備を進める旨を付言した。
第2号議案 新規事業の開始時期に関する報告の件 議長は、目的変更登記及び許認可の取得が完了するまでの間は【新規事業】を実際には開始しない方針である旨を報告し、株主はこれを了承した。あわせて、許認可取得までの社内体制整備(責任者の選任、必要な有資格者の確保等)についても順次進める旨を説明した。
他に議すべき事項がないため、議長は閉会を宣した。
本議事録の内容を証するため、議長及び出席取締役は次に記名押印する。
【年月日】 【会社名】株主総会 議長 【氏名】 印 取締役 【氏名】 印
第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン
A節(登記申請用)
登記官の審査を意識し、目的の記載を許認可申請書の文言と一致させる旨を明記する条項例。
議長は、追加する事業目的の文言について、あらかじめ管轄の許認可庁(例:都道府県知事、公安委員会等)に照会し、審査基準に合致する表現であることを確認済みである旨を報告した。
一言解説:登記官は目的の適法性・明確性を審査するが、許認可庁が求める文言と登記簿上の目的が一致していないと許認可申請自体が受理されないことがあるため、事前照会の経過を記録しておく実務的価値がある。照会結果を書面やメールで保存しておけば、登記申請時や許認可申請時に文言の根拠を説明できる資料としても活用できる。
B節(特別決議)
特別決議であることを前提に、議決権行使書・委任状による賛否集計を明示する条項例。
議長は、本議案が会社法309条2項11号の特別決議事項に当たることを確認し、書面による議決権行使及び委任状による賛否を含めて集計した結果、出席株主の議決権の3分の2以上の賛成を得たことを確認した。
一言解説:目的変更は既存事業の性質を変えうる重要事項であるため、書面・委任状分も含めた集計過程を議事録に残しておくと、決議の有効性を後日争われた際の証拠として機能する。株主数が多い会社ほど集計プロセスの透明性が問われやすく、集計担当者や集計方法をあらかじめ定めておくことが望ましい。
第3部: 書き方と法的ポイントの解説
本書式は、会社が営む事業目的を追加・変更する場合の株主総会議事録として用いる。とりわけ建設業、古物商、宅地建物取引業、労働者派遣事業など許認可を要する事業に新規参入する際、許認可申請の前提として定款目的の変更が必要になる場面で使用する。一方、単なる事業の縮小や名称整理に過ぎず登記事項に変更が生じない場合や、目的欄の文言を許認可庁と調整せずに先行して登記してしまうと後日の再変更が必要になるおそれがあるため、そのような段階では使用を避け、事前に許認可庁への照会を済ませてから決議する運用が望ましい。
根拠法令として、目的が定款の絶対的記載事項であることを定める会社法27条1号、及び定款変更に株主総会の特別決議を要する旨を定める会社法466条・309条2項11号がある。目的の変更は商業登記法上の変更登記事項でもあり、登記官は申請された目的の記載が適法性・明確性・具体性の観点から登記に適するかを審査する。
実務でよくある失敗として、第一に、許認可庁の審査基準を確認しないまま抽象的な文言で目的を追加し、許認可申請時に定款の再変更を求められるケースがある。決議前に許認可庁へ文言を照会しておくことで回避できる。第二に、既存の目的条項の末尾にある「前各号に附帯又は関連する一切の事業」との重複や矛盾を見落とし、登記官から補正を求められるケースがある。変更前後の条文全体を通しで確認することが望ましい。第三に、目的変更のみを行い、実際に許認可申請を行わないまま長期間放置し、事業実態と登記内容が乖離するケースもある。
さらに、複数の許認可を要する事業を同時に追加する場合、それぞれの許認可庁が求める文言表現が微妙に異なることがあり、一つの目的条項ですべての審査基準を満たそうとして文言が冗長・不明確になることがある。必要であれば号を分けて記載し、各許認可庁の審査に個別に対応できるよう整理することが望ましい。なお、許認可庁ごとに求める目的文言の運用は異なり、個別事案は専門家に確認のうえ進める必要がある。
第4部: 使用前チェックリスト
- [ ] 追加・変更する事業目的の文言を許認可庁の審査基準と照合したか
- [ ] 定款第【○】条(目的)の現行条文を正確に転記したか
- [ ] 「前各号に附帯又は関連する一切の事業」等の包括条項との整合を確認したか
- [ ] 特別決議の定足数・賛成要件(会社法309条2項)を満たしているか
- [ ] 書面議決権行使・委任状分を含めた賛否集計を行ったか
- [ ] 目的変更登記の添付書類(株主総会議事録・株主リスト等)を準備したか
- [ ] 登記申請予定日と許認可申請予定日のスケジュールを整理したか
- [ ] 既存事業と新規事業が矛盾・重複しないか確認したか
- [ ] 許認可取得までの間、新規事業を実際に開始しない旨を社内周知したか
- [ ] 新規事業に必要な有資格者・責任者の選任予定を確認したか
- [ ] 許認可庁への事前照会の記録(書面・メール等)を保存したか
- [ ] 議事録への記名押印者を確認したか